表示設定
表示設定
目次 目次




11

ー/ー



 なんとなく気まずい空気が流れる中で注文をして、ミックスジュースとイチゴパフェが運ばれてきたあとも、私は言葉を選びながら七海と会話した。

 桔平くんは素知らぬ顔で、ミックスジュースを飲みながらスマホをいじっている。相変わらず、片方の手はずっと指がパタパタと動いていた。

「あれぇ、なんかお揃いで」

 私がイチゴパフェを食べ終えるころ、いつものように呑気な口調で飛んで火にいる夏の虫……翔流くんが登場した。
 
「オレらのことは気にしねぇでいいから。ただ、七海ちゃんに奢られに来ただけ」
「ふたりきりよりも、かけるんが正直に吐いてくれるかな~って思ってさ」
「え、なになに。なんか怖いんだけど」

 翔流くんは本当にいつも通りといった様子で、七海の隣に座る。私は内心ハラハラしていたけれど、できるだけ顔に出さないよう頑張っていた。

「あ、注文はあとで大丈夫です~」

 翔流くんの注文を取りに来た店員さんに笑顔で言ったあと、七海の表情が変わる。そのただならぬ気配を察して、翔流くんの顔が強張った。

「単刀直入に訊くけどさ。かけるん、なんで私とエッチしたの?」
 
 翔流くんのほうに体ごと向けて、まっすぐ顔を見ながら七海が切り出す。ズバッときた……。
 
「え? な、なんでって」
「そして、私とは何事もなかったみたいに彼女を作ってるのは、一体なんで?」

 ……怖い。怖いって、七海。翔流くんの目が、めちゃくちゃ泳いでいる。この時点で、ふたりの力関係がよく分かった。
 
「……いや、だってさ。ななみんは、俺のことなんとも思っていないわけでしょ? いつも、都合のいい友達みたいな扱いじゃん」

 七海が、愕然とした表情で翔流くんを見つめる。好きな人から、そんなことを言われたらショックだよね。そして翔流くんは、七海と目を合わさずに俯いたまま。

 誰も口を開かない。空気が鉛のよう……。

「質問に対する回答になってねぇぞ、翔流」

 沈黙を破ったのは、桔平くんの静かな声だった。翔流くんを射貫くように見据えている。

 翔流くんは桔平くんの視線に気圧されて息を呑んだあと、ひとつふたつ小さく頷いた。そしてちゃんと七海の顔を見ながら、ゆっくり口を開く。

「俺は……前から、ななみんのこと好きだったよ。好きでもない子に、手を出すわけないじゃん」

 やっぱり、翔流くんは七海のこと好きだったんだ。しかも前からって。七海にその気がまったくなさそうだから、諦めていたのかな。なにそれ、切ない。

「本当はあのとき、酔っていなかったし。ズルいことしたのは分かっているけど、でもそれで終わろうと思っていたんだよ。キッパリ気持ち切り替えようって。だから、別の人と付き合ってみたっていうか」

 苦笑いで、翔流くんが頭を掻く。
 
「でもさっき、フラれちゃった。ほかに本命の人がいて、そっちと上手くいったんだって。ひどくね? まだ2日しか経ってないのに。俺はキープだったみたいでさぁ」

 え、ということは。
 どうしよう、ドキドキしてきた。目の前で、すごいことが起きようとしている気がする。桔平くんは、また知らん顔になっているけれど。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 12


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 なんとなく気まずい空気が流れる中で注文をして、ミックスジュースとイチゴパフェが運ばれてきたあとも、私は言葉を選びながら七海と会話した。
 桔平くんは素知らぬ顔で、ミックスジュースを飲みながらスマホをいじっている。相変わらず、片方の手はずっと指がパタパタと動いていた。
「あれぇ、なんかお揃いで」
 私がイチゴパフェを食べ終えるころ、いつものように呑気な口調で飛んで火にいる夏の虫……翔流くんが登場した。
「オレらのことは気にしねぇでいいから。ただ、七海ちゃんに奢られに来ただけ」
「ふたりきりよりも、かけるんが正直に吐いてくれるかな~って思ってさ」
「え、なになに。なんか怖いんだけど」
 翔流くんは本当にいつも通りといった様子で、七海の隣に座る。私は内心ハラハラしていたけれど、できるだけ顔に出さないよう頑張っていた。
「あ、注文はあとで大丈夫です~」
 翔流くんの注文を取りに来た店員さんに笑顔で言ったあと、七海の表情が変わる。そのただならぬ気配を察して、翔流くんの顔が強張った。
「単刀直入に訊くけどさ。かけるん、なんで私とエッチしたの?」
 翔流くんのほうに体ごと向けて、まっすぐ顔を見ながら七海が切り出す。ズバッときた……。
「え? な、なんでって」
「そして、私とは何事もなかったみたいに彼女を作ってるのは、一体なんで?」
 ……怖い。怖いって、七海。翔流くんの目が、めちゃくちゃ泳いでいる。この時点で、ふたりの力関係がよく分かった。
「……いや、だってさ。ななみんは、俺のことなんとも思っていないわけでしょ? いつも、都合のいい友達みたいな扱いじゃん」
 七海が、愕然とした表情で翔流くんを見つめる。好きな人から、そんなことを言われたらショックだよね。そして翔流くんは、七海と目を合わさずに俯いたまま。
 誰も口を開かない。空気が鉛のよう……。
「質問に対する回答になってねぇぞ、翔流」
 沈黙を破ったのは、桔平くんの静かな声だった。翔流くんを射貫くように見据えている。
 翔流くんは桔平くんの視線に気圧されて息を呑んだあと、ひとつふたつ小さく頷いた。そしてちゃんと七海の顔を見ながら、ゆっくり口を開く。
「俺は……前から、ななみんのこと好きだったよ。好きでもない子に、手を出すわけないじゃん」
 やっぱり、翔流くんは七海のこと好きだったんだ。しかも前からって。七海にその気がまったくなさそうだから、諦めていたのかな。なにそれ、切ない。
「本当はあのとき、酔っていなかったし。ズルいことしたのは分かっているけど、でもそれで終わろうと思っていたんだよ。キッパリ気持ち切り替えようって。だから、別の人と付き合ってみたっていうか」
 苦笑いで、翔流くんが頭を掻く。
「でもさっき、フラれちゃった。ほかに本命の人がいて、そっちと上手くいったんだって。ひどくね? まだ2日しか経ってないのに。俺はキープだったみたいでさぁ」
 え、ということは。
 どうしよう、ドキドキしてきた。目の前で、すごいことが起きようとしている気がする。桔平くんは、また知らん顔になっているけれど。