第41話 見つけたものは
ー/ー「ふう…」
俺は、額に滴る汗を拭った。
今更だが、遺跡の中もなかなか暑い。
直射日光が当たらない分マシなのだろうが。
「姜芽さん…!」
メニィが駆け寄ってきた。
「姜芽さんの奥義…すごくカッコよかったです!」
「そ、そうか…?」
「はい!」
そう言われると、悪い気はしない。
一方の苺は…というと、「やるじゃない。てか、奥義持ってたのね」と、手をゆっくり叩きながら言ってきた。
「持ってた…って、普通持ってるもんなんだろ?」
「いいえ、持ってない者も少なくないわ。だから…」
と、突然苺は黙り込み、少しうつむいて目を閉じた。
「…苺?」
やがて、彼女は目を開いた。
「…あっ、ごめんなさい」
その目は青色になっていた。
「苺さん、大丈夫ですか?」
「はい…おや?ここは…」
「ここはルードの南の遺跡だよ。覚えてないのか?オレたちみんなで来ただろ?」
「…あっ、そうでした。皆さんに、紫の…もう一人の私は、何か言いませんでしたか?」
「大丈夫だよ。苺さんの特性については、紫の方の苺さんから聞かせてもらった」
「そう、ですか…」
苺は会釈してきたが、申し訳無さそうだった。
自分が特異な性質を持っている事を、申し訳なく思っているのだろうか。
誰でも何かしら特性があるものなのだから、それを恥じらう必要はないと思うのだが。
「ところで、私の記憶につながる手がかりは見つけられましたか?」
「…あ」
すっかり忘れていた。
遺跡はこれ以上奥へは進めないようなので、とりあえず今しがた倒した蛇の異形を解体した。
中に何かあるかもしれない…と思ったのもあるが、一番は樹とメニィの希望によるものだ。
なんでも、この「スネームラン」のような大型の動物型の異形の肉は食用になるらしい。
特に、この砂漠では貴重な食糧だとの事だ。
異形…すなわち魔物を食うなんて発想は正直なかった。
そもそも、本当に食えるのか?という疑問が湧く。
だが、切り出した肉を見ると、これは確かに美味いかもな…なんて思ってしまった。
それはキメの細かい、鮮やかな色の肉だった…見た目的には、鶏肉にも似ている。
思わず唐揚げを連想したが、実際に蛇系異形の肉は唐揚げにすると美味いらしい。
一度食べてみたい、とどこかで思ってしまった。
みんなで役割を分担して、異形の解体を進めた。
俺は斧を使って骨を割ったり、骨周りの肉をかき取る作業をしていたのだが、その最中に妙なものを見つけた。
それは、5センチほどの大きさで角張った、白い石のようなものだった。
声を張り上げて樹達を呼んだ。
「おーい、ちょっと来てくれ。なんか変なのが出たぞ」
「ん?どうした?」
「何か見つけたんですか?」
「わかりました、少々お待ちを」
樹達はそれぞれ違った返事をしながら、こちらへ向かってきた。
そして、3人にモノを見せた。
「これ、何かわかるか?」
樹は腕を組んで唸る。
「うーん…こりゃ、『忘れじの結石』っぽいな」
「なんだそりゃ?」
「一部の異形の体内に稀に生成される石だ。記憶力を高める効果があるってんで、砕いて薬にしたり、魔法に使われたりする事がある。まあ、使ってみたことないけどな」
「へえ…」
すると、メニィが目を輝かせた。
「忘れじの結石!?これが…!?」
「え、どうした?」
「この石は、私達の間では重要かつ貴重な魔法薬の材料の一つなんですよ!私も名前を聞いた事がありましたが…実物を見たことはありませんでした!」
「魔法薬…?」
すると、苺が解説してくれた。
「その名の通り、魔法の効果を有する薬品です。瞬間的に傷を癒やすものや、一時的に疲労を感じなくなるものなどがあります。ポーションとも言います」
「なるほどな。で、これがその魔法薬の材料なのか?」
俺は、メニィの方に向き直りながら言った。
「はい!この石は、飲んだ人に過去の記憶を思い出させる追憶薬や、特定の記憶を半永久的に忘れなくできる記憶固定薬の材料になるんです。…っと、そうだ。ちょっと石を貸してください」
メニィに石を預けると、彼女は石を両手で持ち、魔力を流し込んだ。
しかし、石には何の変化もない。
「…ありゃ、何も起こんないな?」
俺は予想外だったな、と思ったのだが、メニィはなぜか嬉しそうだった。
「これでいいんです。忘れじの結石は外見が白くて硬く、魔力の伝導性が全くないので、それで他の似た石と区別ができるんです」
「なるほど、つまりこれは間違いなくその『忘れじの結石』なんどな?」
「はい。しかも、こんなに大きいものを…。もしお店でこれを買おうとしたら、恐らく8万テルンはします。それだけ貴重なものですよ」
「8万…結構するな」
樹は魔法薬に関する知識があるのだろうか。
「そうだ!これで追憶薬を作って、苺さんに飲んでみてもらいませんか?」
「え?」
「追憶薬は、入れる忘れじの結石が多いほど効果が増すんです。これだけ大きければ、効果はかなり大きいはずです。きっと、苺さんが忘れてしまった事も思い出せますよ!」
苺は少し顔が明るくなったが、樹の言葉でまた暗くなった。
「いや、でもよ。苺さんは記憶を取り戻せない魔法をかけられてるんだろ?それを解かない事には、どうしようもなくないか?」
「…」
メニィも黙ってしまった。
だが、ここで俺はこう呼びかけた。
「そうかもしんないけどよ、やるだけやってみようぜ。始めから動かなきゃ、何も変わらないんだぜ!」
すると、樹の表情も明るくなった。
「…そうか、そうだよな。悪いな、やる気を落とすような事言っちまって。
よし、そうとなれば早速試してみようぜ!」
「はい!でも、さすがにここではできませんね。一度、私の家に行かせてもらえませんか?」
「もちろんだ。邪魔はしないから、じっくり作ってくれ。さあ、姜芽。行こうぜ!」
「ああ!」
かくして、またルードへ戻る事になった…高級な魔法薬の材料と、大量の肉を土産にして。
正直、肉を持って遺跡を出るのが大変だった。
荷物が大幅に増えた状態で溝を飛び越えたり、段差を登ったりするのはなかなか骨が折れる。
その大変さは、正直遺跡を探索していた時以上であった。
なにはともあれ、何とか遺跡を脱出し、馬車までたどり着けた。
みんなは肉を見て喜んでくれたが、俺達は喜びより疲労のほうが大きかった。
もう暗くなっていたので、さっそく今しがた手に入れてきた肉を煌汰達に調理してもらい、それを食べて寝た。
ルードへ行くのは、明日の夜明け前という事になった。
メニィはひとり嬉しそうだった。
考えるまでもなくわかる…久しぶりに自宅に帰れる事が嬉しいのだろう。
自宅…か。
俺の実家の家族…両親と弟は、元気にしてるだろうか。
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