第40話 手強い異形
ー/ー通路の先の部屋に入ってすぐ、固まって現れた7体の異形をみんなで蹴散らした。
そして部屋を見回したのだが、俺は部屋の中央にある奇妙な所が気になった。
なぜか1箇所だけ床が砂になっており、その上にやけに鮮やかな赤色の花が咲いているのだ。
調べたいとも思ったが、もしかしたら何かの仕掛けかもしれないので、樹に一応聞いてみた。
「…なあ、あれはなんだろうな?」
「ん?あ、あの花か。…別に、普通の花じゃないか?」
「そうか?なんか明らかに不自然だけど…」
その時、突然地面が大きく揺れた。
「な、なんだ!地震か!?」
「いえ、この国では地震は滅多に起こりません…まさか!」
メニィが声を張り上げると共に、中央の砂が盛り上がる。
そして、砂の中から怪物が現れた。
茶色っぽい色をした、大蛇のような怪物。
それを見て、メニィが再び声を上げた。
「あれは…『スネームラン』!」
「スネームラン…!?」
すると、樹が軽く説明を挟んでくれた。
「蛇系の中でも強いタイプだな…姜芽!ボス戦だ、気を引き締めろ!」
ボス戦、という言葉を使ってくれたおかげで大まかなイメージができた。
つまり、こいつは今までの奴らとは違う、手強い異形だという事か。
ならば、みんなで協力するだけだ。
「来たぞ!」
樹の言葉通り、それはこちらに向かって噛みついてきた。
俺は素早く宙返りして躱した。
―ついこの前まで、宙返りなんかとてもできなかったのに。異人の身軽さと身体能力は人間と比べると異常である事を痛感させられる。
メニィが[ランド]とか言って岩を作りだして蛇の頭にぶつけたが、岩の方が砕けた。
それを見た苺が魔法を打ち込んでくれたが、やはりさして効いていないように見えた。
傷を負わせるのも一筋縄ではいかないということか。
と、突然何かに腹を殴られた。
そして吹っ飛ばされ、壁に背中を打ち付けた。
痛みと共に、苺達の悲鳴も入ってきた。
どうやら、彼女らも攻撃を食らったらしい…樹は素早く回避したようだが。
一体何があったんだ…と思ったが、よく考えると今攻撃してきたのは何か、細長いものだった。
まるで、ムチのような…。
それで、はっと気付いた。
今のは、たぶん尻尾攻撃だ。
この手の敵の技としてはお馴染みの、尻尾を離れた所から出して薙ぎ払ったり突いたりする技なのだ。
とすると、やはりこいつは蛇型の異形であるようだ。
ふと見ると、樹が単身で蛇に攻撃していた。
棍の先端に水をまとわせていたから、何か技か奥義を使っているようだ。
一発目の攻撃は躱されていたが、二発目の攻撃は当たった。
そして、しばし空中で乱闘を繰り広げた後、頭突きを食らって撃ち落とされた。
「樹…!大丈夫か!」
「ああ…っと!」
すぐに蛇が噛みつきで追撃してきたので、樹は素早くジャンプして天井のツルに掴まって回避した。
「危ない危ない…」
蛇が戻ると、樹も地上に降り、こちらを見てきた。
「大丈夫だったか?3人とも…」
「ええ…物理ダメージは、ちょっときついですが…」
「そっか、メニィは術士だもんな。…あ、苺さんはどうだ?」
「心配いらないわ…しかし、少しだけ効いたわね…」
苺はそう言いながらさりげなく杖を出し、
「[ヒーリング]」
俺達みんなの傷を治療してくれた。
なぜわかったのかというと、今の魔法の詠唱を聞いて何となくわかったのである…理由は自分でもわからない。
「あっ…ありがとうございます」
メニィは苺に感謝の言葉を述べてすぐ、蛇の方を向いた。
そしてまた魔導書を開き、
「[デューン]!」
今度は砂嵐を召喚した。
それは砂嵐…には違いないだろうが、かなり強烈なもので、ものすごい音を立てて風が吹きすさんだ。
蛇は飛ばされこそしなかったが、大きくのけぞってうめき声を上げていた。
「おっ…!効いてるんじゃないか…!?」
砂嵐が消えると、蛇は体勢を立て直してこちらを睨んできた。
そして次の瞬間、俺達は一斉に飛び退いて散らばった。
というのも、今俺達がいた場所の地面から尻尾が飛び出してきたからだ。
「次は俺行くぜ!」
俺は勢いそのままに蛇に向かって走る。
そして高々とジャンプし、斧を振るった。
しかし、斧は弾かれた。
蛇の体は異様なほど硬く、まるで歯が立たなかった。
「なっ…!?」
驚いて硬直している間に、蛇は口を開けてきて…。
「!」
苺が、横から飛び込んで俺を助け出してくれた。
おかげで食われずに済んだ。
苺は地面につくと俺を下ろした。
「大丈夫?」
「ああ…助かったぜ」
「攻撃が防がれた時は、すぐに離脱に意識を向けなさい。たとえ一瞬の硬直でも、大きな隙になるのだから」
なんか、歴戦の戦士みたいなこと言われた。
でも、確かにその通りかもしれない。
攻撃を弾かれたらといってボヤッとしていれば、ある程度経験のある相手からすれば隙を見せたのと同じことであろう。
とりあえずは、攻撃が効かなかったらまず回避と離脱、と覚えておいたほうがよさそうだ。
「しかし、どうするんだ?攻撃が効かないんじゃ、打つ手がないぞ?」
「そんな事はないわ。物理が効かないなら、属性を試してみましょう」
「属性…?でも、苺の光とかメニィの地はあまり効いてなくなかったか?樹の水も、微妙な感じだったし…」
「ならば、生物的な弱点を突けないかしら」
「生物的な弱点?」
すると、樹がん?と言って、
「ちょっと待て。あいつは異形だぞ?普通の生物と同じ特性とか概念が通用するのか?」
「あら、知らないの?蛇系や鳥系など、普通の生物が元の異形は、その生物と同じ特性を持っている事が多いのよ」
「え、そうなのか?」
驚いた顔をする樹に、苺は少し呆れたように言った。
「あなた、探求者でしょ?冒険の途中で知る機会がなかったの?」
「いや、なかった訳じゃないけど…その…だな…。
まあとにかく、あいつには普通の蛇と同じ性質があるって事だよな?」
樹は強引にごまかし、俺の方を見てきた。
「姜芽、頼むぜ!変温動物は火に弱いはずだ!」
「わ、わかった!」
俺は蛇と正面から睨み合う。
そして、向こうが噛みついてきた瞬間にジャンプして、空中で術を繰り出す。
「炎法 [ソロファイア]」
火の玉を打ち出して顔にぶつけると、蛇は頭を上に向け、大きな唸り声を上げた。
その隙をついて、俺は畳み掛ける。
思えば、ここまでほとんど使う機会がなかった。
だが、まさかこうして…
それも、こんなキマる場面で使う事になろうとは。
俺は斧を後ろに構え、炎で包む。
そして、技を決めながら銘を叫ぶ…
「奥義 [フレイムポール]!」
燃え盛る斧を振り上げ、火柱を噴き上げ、さらに斧を振り下ろして追撃する、3連続の攻撃。
樹とキョウラ以外には初お披露目の、俺の初めての奥義だ。
果たしてどうか。
蛇の体は激しく燃え上がり、同時に大量の血を噴き出す。
そして、蛇は大きな唸り声を上げ、ズシーンと音を立てて倒れた。
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