イタガ攻防戦 3
ー/ー
「アシノ殿、魔人やトロールの調査は良いのですか?」
モモは疑問をアシノにぶつける。
「そうよ、何ならムツヤっちにトロールを殲滅してもらっても」
アシノは1つため息を付いて話し始めた。
「やっぱルー、お前はまだ冷静さを失ってるな。そしてモモ、お前はあのヘンテコな魔人の言うことを信じるのか?」
言われて2人だけでなくユモトもハッとした。いつの間にか自分たちは根拠もない明日の夜に襲撃をするという魔人の言葉を信じ込んでいたのだ。
「今の所、ムツヤは最大の戦力だ。それを引き連れて山に行っている間に街が襲われたらどうする。そして、ムツヤを街に置いて私達だけで行くとしても魔人どころか、トロールの群れに囲まれたら終わりだ」
「そうね……」
もっともなアシノの意見にルーはシュンとして一言だけ言葉を返した。
「どのみち私達はムツヤと行動を共にするしか無い。そして私達が今できることは」
アシノはベッドにドカッと座ってポンポンと叩く。
「いつ来るかわからない敵に備えて十分休んでおくことだ。ほら、さっさと着替えて男共は隣の部屋へ行け」
アシノはムツヤとユモトにシッシッと手を振った。また部屋のすみでカチャカチャと音を立ててムツヤは鎧を脱ぐ。
着替えが終わるとムツヤとユモトは部屋を出ていき、ムツヤと手を繋いで寝る必要のあるヨーリィもトテトテと遅れて出ていった。
アシノとルー、モモの3人だけになった部屋でふとルーは呟いた。
「何か今日の私ダサダサでぜーんぜんダメねー」
「そんな事はありませんよ、故郷が魔人に襲われると知ったら、私も冷静ではいられません」
モモはルーの隣に座って優しく言う。
「やーん、モモちゃんやさしー!!!」
そう言ってルーはモモに抱きつく、突然の行為にモモはあわわと慌てた。
「良いからさっさと寝るぞ、私は疲れてるんだ」
アシノは面倒くさそうに部屋の明かりを消す。
朝日が差し込みユモトは目が覚めた。隣のベッドを見るとムツヤとヨーリィが手を繋いだままスースーと寝息を立てて寝ている。
まるで本当の兄妹みたいだなと、ふふっとやらわかな笑顔で見つめた後うーんと伸びをした。
同じ頃アシノとモモも目を覚ました。
「おはようございます、アシノ殿」
「あぁ、おはよう」
二人のベッドを挟んで真ん中ではルーが布団を蹴飛ばしていびきをかいて寝ている。
今夜、魔人との決戦があるかもしれないとは思えない程穏やかな朝だった。
しかし、街は騒がしかった。
支度を整えムツヤ達が街へ出ると、治安維持部隊や武装をした冒険者が通りを行き交っていた。
だが、賑やかというわけではない。朝市はやっておらず、一般人は数えるほどしか外に居ない。
冒険者ギルドに向かうとガヤガヤと人でごった返していた。それを見てルーは安心からかふぅーっとため息交じりの息を吐く。
「あ、アシノ様ー!!」
受付嬢がそう言ってアシノに向かって手を振るとギルドに居る人間の視線が全てアシノ達に向けられる。
アシノはちょっと照れくさそうにしているのを隠しながら、人波をかき分けてズンズンと進む、ムツヤ達もその後を付いて行った。
「アシノ様、クーラ様がお待ちです」
「えぇ、わかりました」
奥の会議室へ通され、扉が開くと、イタガの冒険者ギルドのマスター、クーラが待っていた。
「お待ちしておりましたアシノ様とお連れの皆様、どうぞお座り下さい」
アシノは軽く一礼して部屋に入る。それに習い皆も同じく礼をした。
「周囲の街へ連絡を取り、戦力を回してもらいました。住民には治安維持部隊から外に出ないよう警告をして頂いております」
「助かりますクーラ様」
「アシノ様、魔人やトロールについて何か情報は掴めましたか?」
「いえ、昨日は魔人の急襲や皆の疲れも考慮し、街に居ました。今は街に戦力が集まっているので、私達は森へ入り調査をしたいと考えています」
「かしこまりました、何かあればこの連絡石をお使い下さい。どうかご武運を」
「ありがとうございます、クーラ様」
短く現状と今後の方針を伝えるとアシノはさっと席を立ち、また一礼して部屋を出ていく。ムツヤ達もその後に続いた。
また冒険者たちの注目を浴びながらギルドを出る。そしてそのまま街を出て森の中へと入と、周囲に人が居ないことを確認するとアシノは宣言した。
「ここをキャンプ地とする!!!」
「……、どういう事よ」
ルーはジト目でアシノを見つめた。
「ここを私達の拠点にして彼奴等を迎え撃つんだよ」
「この様な場所で良いのでしょうか?」
ユモトも不安そうに尋ねた。アシノは一体何を考えているのだろうと。
「こんな場所だから良いんだよ、ここは街が近いからどこから攻められてもすぐに駆けつけられる」
「それなら街の中に居れば良いじゃない!!」
ルーがもっともらしい意見を言うが、アシノは首を振る。
「ぶっちゃけた話、あの魔人に抵抗できるのはムツヤぐらいしか居ない。だが、ムツヤは正体を隠さなくてはいけない」
「そんな事知ってるわよ」
「だからムツヤには正体不明の冒険者になって貰わなくちゃ困る」
ハッとモモは気付き、アシノに言う。
「つまり、襲撃が始まるまでここで待ち、始まったら変装したムツヤ殿を……」
「その通りだ、考えたがそれが最善だと私は思う。色々と無茶な部分はあるが、街を守るためには仕方がない」
アシノは自分の無力さに少し腹を立てていたが、冷静になることに徹した。
「ムツヤ、昨日の装備に着替えておけ。カバンは私が預かる、必要な道具は今のうちにこっちの普通のカバンに移しておけ」
「わがりました」
ムツヤは皆から見えない場所でユモトに手伝ってもらいながら青い鎧を身にまとった。その間手の空いている者たちはテントを2つ立てる。
「ここからは持久戦だ、なるべく消耗を抑えて襲撃が来るまで待つぞ」
アシノが言うと皆うなずく。これから大きな戦いが始まると思うと、新米冒険者のモモとユモトは心臓の高鳴りが止められなかった。
それを見抜いたのか、アシノは2人に声をかける。
「そう緊張するな、お前達は特訓もしたんだ。私達はムツヤのカバンを守りながらトロールを遊撃して倒していく、気を抜くのはダメだが、緊張しすぎるのも動きが固くなる」
「はい、そうですね」
「僕もできる限り精一杯の事をします」
モモとユモトは肩の力を抜いて言った。
それから皆はテントで武器の手入れや座って深呼吸などをしていた。アシノは寝っ転がり、ルーは爆睡している。
何故だか時間の進みが遅く感じた。
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モモは疑問をアシノにぶつける。
「そうよ、何ならムツヤっちにトロールを殲滅してもらっても」
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「やっぱルー、お前はまだ冷静さを失ってるな。そしてモモ、お前はあのヘンテコな魔人の言うことを信じるのか?」
言われて2人だけでなくユモトもハッとした。いつの間にか自分たちは根拠もない明日の夜に襲撃をするという魔人の言葉を信じ込んでいたのだ。
「今の所、ムツヤは最大の戦力だ。それを引き連れて山に行っている間に街が襲われたらどうする。そして、ムツヤを街に置いて私達だけで行くとしても魔人どころか、トロールの群れに囲まれたら終わりだ」
「そうね……」
もっともなアシノの意見にルーはシュンとして一言だけ言葉を返した。
「どのみち私達はムツヤと行動を共にするしか無い。そして私達が今できることは」
アシノはベッドにドカッと座ってポンポンと叩く。
「いつ来るかわからない敵に備えて十分休んでおくことだ。ほら、さっさと着替えて男共は隣の部屋へ行け」
アシノはムツヤとユモトにシッシッと手を振った。また部屋のすみでカチャカチャと音を立ててムツヤは鎧を脱ぐ。
着替えが終わるとムツヤとユモトは部屋を出ていき、ムツヤと手を繋いで寝る必要のあるヨーリィもトテトテと遅れて出ていった。
アシノとルー、モモの3人だけになった部屋でふとルーは呟いた。
「何か今日の私ダサダサでぜーんぜんダメねー」
「そんな事はありませんよ、故郷が魔人に襲われると知ったら、私も冷静ではいられません」
モモはルーの隣に座って優しく言う。
「やーん、モモちゃんやさしー!!!」
そう言ってルーはモモに抱きつく、突然の行為にモモはあわわと慌てた。
「良いからさっさと寝るぞ、私は疲れてるんだ」
アシノは面倒くさそうに部屋の明かりを消す。
朝日が差し込みユモトは目が覚めた。隣のベッドを見るとムツヤとヨーリィが手を繋いだままスースーと寝息を立てて寝ている。
まるで本当の兄妹みたいだなと、ふふっとやらわかな笑顔で見つめた後うーんと伸びをした。
同じ頃アシノとモモも目を覚ました。
「おはようございます、アシノ殿」
「あぁ、おはよう」
二人のベッドを挟んで真ん中ではルーが布団を蹴飛ばしていびきをかいて寝ている。
今夜、魔人との決戦があるかもしれないとは思えない程穏やかな朝だった。
しかし、街は騒がしかった。
支度を整えムツヤ達が街へ出ると、治安維持部隊や武装をした冒険者が通りを行き交っていた。
だが、賑やかというわけではない。朝市はやっておらず、一般人は数えるほどしか外に居ない。
冒険者ギルドに向かうとガヤガヤと人でごった返していた。それを見てルーは安心からかふぅーっとため息交じりの息を吐く。
「あ、アシノ様ー!!」
受付嬢がそう言ってアシノに向かって手を振るとギルドに居る人間の視線が全てアシノ達に向けられる。
アシノはちょっと照れくさそうにしているのを隠しながら、人波をかき分けてズンズンと進む、ムツヤ達もその後を付いて行った。
「アシノ様、クーラ様がお待ちです」
「えぇ、わかりました」
奥の会議室へ通され、扉が開くと、イタガの冒険者ギルドのマスター、クーラが待っていた。
「お待ちしておりましたアシノ様とお連れの皆様、どうぞお座り下さい」
アシノは軽く一礼して部屋に入る。それに習い皆も同じく礼をした。
「周囲の街へ連絡を取り、戦力を回してもらいました。住民には治安維持部隊から外に出ないよう警告をして頂いております」
「助かりますクーラ様」
「アシノ様、魔人やトロールについて何か情報は掴めましたか?」
「いえ、昨日は魔人の急襲や皆の疲れも考慮し、街に居ました。今は街に戦力が集まっているので、私達は森へ入り調査をしたいと考えています」
「かしこまりました、何かあればこの連絡石をお使い下さい。どうかご武運を」
「ありがとうございます、クーラ様」
短く現状と今後の方針を伝えるとアシノはさっと席を立ち、また一礼して部屋を出ていく。ムツヤ達もその後に続いた。
また冒険者たちの注目を浴びながらギルドを出る。そしてそのまま街を出て森の中へと入と、周囲に人が居ないことを確認するとアシノは宣言した。
「ここをキャンプ地とする!!!」
「……、どういう事よ」
ルーはジト目でアシノを見つめた。
「ここを私達の拠点にして彼奴等を迎え撃つんだよ」
「この様な場所で良いのでしょうか?」
ユモトも不安そうに尋ねた。アシノは一体何を考えているのだろうと。
「こんな場所だから良いんだよ、ここは街が近いからどこから攻められてもすぐに駆けつけられる」
「それなら街の中に居れば良いじゃない!!」
ルーがもっともらしい意見を言うが、アシノは首を振る。
「ぶっちゃけた話、あの魔人に抵抗できるのはムツヤぐらいしか居ない。だが、ムツヤは正体を隠さなくてはいけない」
「そんな事知ってるわよ」
「だからムツヤには正体不明の冒険者になって貰わなくちゃ困る」
ハッとモモは気付き、アシノに言う。
「つまり、襲撃が始まるまでここで待ち、始まったら変装したムツヤ殿を……」
「その通りだ、考えたがそれが最善だと私は思う。色々と無茶な部分はあるが、街を守るためには仕方がない」
アシノは自分の無力さに少し腹を立てていたが、冷静になることに徹した。
「ムツヤ、昨日の装備に着替えておけ。カバンは私が預かる、必要な道具は今のうちにこっちの普通のカバンに移しておけ」
「わがりました」
ムツヤは皆から見えない場所でユモトに手伝ってもらいながら青い鎧を身にまとった。その間手の空いている者たちはテントを2つ立てる。
「ここからは持久戦だ、なるべく消耗を抑えて襲撃が来るまで待つぞ」
アシノが言うと皆うなずく。これから大きな戦いが始まると思うと、新米冒険者のモモとユモトは心臓の高鳴りが止められなかった。
それを見抜いたのか、アシノは2人に声をかける。
「そう緊張するな、お前達は特訓もしたんだ。私達はムツヤのカバンを守りながらトロールを遊撃して倒していく、気を抜くのはダメだが、緊張しすぎるのも動きが固くなる」
「はい、そうですね」
「僕もできる限り精一杯の事をします」
モモとユモトは肩の力を抜いて言った。
それから皆はテントで武器の手入れや座って深呼吸などをしていた。アシノは寝っ転がり、ルーは爆睡している。
何故だか時間の進みが遅く感じた。