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イタガ攻防戦 4

ー/ー



 昼になっても何も起こらず、ムツヤ達は昼食を取っていた。緊張からか会話は少なく、ピリピリとした空気だったが。

「やっぱユモトちゃんの料理はオイピー!!! 嫁にならない?」

「ですから、僕は男です」

 そんな空気を察したのか、それとも何も考えていないのかルーは1人騒いでいた。

「一応作戦を伝えておくぞ、トロールが近くに現れた場合はムツヤを置いて私達は街に戻り、他の冒険者と共に戦う」

 ムツヤを1人置いていくということにモモは少し心配になったが、最善の手だと自分に言い聞かせる。

「トロールが遠くに現れた場合はムツヤは急ぎそこへ向かって迎撃、この場合も私達は街へ戻る」

「はい、わがりまじた」

 太陽がどんどん西へ沈んでいき、やがて赤くなり、見えなくなった。

 それからしばらくして、ムツヤが何か気配を感じ取る。

「来ます!! 近いです!!」

「よしわかった、作戦通りに動くぞ」

 ムツヤをこの場に残してアシノ達は街へ走り出した。その最中連絡石で街にトロールが出たことと方角を知らせた。

 街に松明と燭台の明かりが一斉に付いた、魔術師は照明弾も用意している。

 戦いの始まりだ。

 ムツヤが感じ取った通り、トロールが森から出て、ムツヤを見ると棍棒片手に襲いかかってきた。

 風のようにそれを避けるとムツヤはトロールを蹴り飛ばすと、巨体が吹っ飛び木に激突をした。走り、喉元に剣を突き立てるとトロールは絶命する。

 後ろからまた2匹、回転するようにムツヤはトロールを切り裂き片付けた。

 そんな事をしているとワラワラと集まりだしてくる。

 同じ頃、ムツヤが食い止めきれなかったトロールが街へ襲撃を掛けていた。

 半信半疑だった者たちも、本当だったと緊張が走る。 

 照明弾が打ち上げられ、冒険者や治安維持部隊が弓と魔法で遠距離の攻撃をしてトロールに攻撃を始めた。

 何匹かは途中で力尽きたが、タフなトロールは近くまで走ってくる。

 ここからは白兵戦だ。

 トロールを囲んで数人がかりで斬りつけるが、反撃の振り回された棍棒で1人が吹き飛ばされ動かなくなる。生死はわからない。

 1人の女魔法使いがトロールの接近を許してしまった。

「い、いや、来ないで」

 もう駄目かと思ったその時パァンパァンと乾いた音がし、トロールは怯む。雷撃が直撃し、片膝を付いた所に誰かがトロールの背中に剣を突き立てた。

 アシノ達遊撃隊が街へ到着したのだ。

「大丈夫か?」

 アシノが女魔法使いに声をかける。

「は、はい!! 大丈夫です、ありがとうございました!」

 礼を言うと女魔法使いは街の方へ下がっていった。

 ルーは精霊の背中に乗り、動き回りながらまた別の精霊を操ってトロールを攻撃していた。

 ユモトは防御壁と攻撃魔法を使い分けてトロールに電撃を浴びせ、大きな氷柱で貫く。

 モモが無力化の盾で棍棒を受け止めると、トロールはギョッとした顔をし、次の瞬間には腹が切り裂かれていた。

 アシノはワインボトルをパァンパァンとトロールの顔めがけて発射している。

 それは致命傷にはならないが、トロールを怯ませるには充分だった。トドメは他のものが刺す。

 ヨーリィの姿が見えない。何をしているのかと思えば暗がりから木の杭が飛び、トロールの首筋に刺さる。

 万が一攻撃を受けて枯れ葉に変わってしまった所を他の冒険者に見られないようにするため、小柄さと素早さを生かして暗がりからトロールの急所へ木の杭を投げるよう指示されていた。

 見事な連携でトロールを片付けていく様を見て他の冒険者達は「さすが勇者アシノのパーティだ」と感心していた。

 アシノの持つワインボトルも格好がつかないと真っ黒に塗り上げていたので、謎の魔法を使っているように見えるのだろう。

 だが、どこに隠れていたのだと思うぐらいのトロール達が街を目掛けて次々とやってくる。

 流石にアシノ達も他の冒険者達も疲弊してきた。そんな時に信じられない光景が起きて皆、一瞬そちらに気を取られる。

 森の中からトロールが上空へ打ち上げられているのだ。

(あのバカ、なるべく目立つなって言ったのに……)

 アシノの内心を知らずに森の中ではムツヤが暴れていた。

 トロールを蹴り飛ばし、殴り飛ばし、切り裂いて戦っている。久しぶりの遠慮のいらない戦いにムツヤはテンションが上がって暴れすぎてしまったのだ。

 アシノ達がトロールと戦っている時と同じ頃、ムツヤもトロールの群れと遭遇していた。

「ぐおおおおおお!!!!」

 1匹のトロールが叫び声を上げながら棍棒を振り上げて走り寄ってくる。

 青い鎧を身にまとったムツヤは一瞬で距離を詰めて右手でトロールの腹を力いっぱい殴った。

「ぐぷっ」と妙な声を出してトロールは吹き飛び、木に激突し、絶命する。木はメキメキと音を立てて折れる。

 混乱するトロール達をよそに、ムツヤは次の1匹に走り、飛び蹴りを食らわせた。他のトロールを巻き込みながら吹っ飛んでいく。

 トロールがムツヤを囲み始める。剣を抜いて1匹の首を刎ねたかと思うと、そのまま回転し次の1匹の腹を切り裂き、飛び上がってトロールを縦に真っ二つにする。

 ムツヤの中に高揚感が溢れ出てくる。人目を気にせず思う存分戦える喜びが記憶の底から戻ってきたのだ。

 背後を取った敵を足払いし、宙に浮かすとそのままサマーソルトキックを繰り出し、天高くトロールを打ち上げた。

 他のトロールとの戦いでも剣で切る以外に何十匹も宙に打ち上げ、アシノや街の冒険者達が目撃したのはそれだ。

 ムツヤの居る方角は月明かりを背にしているため、より一層目立つそれは街の冒険者をどよめかせた。


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 昼になっても何も起こらず、ムツヤ達は昼食を取っていた。緊張からか会話は少なく、ピリピリとした空気だったが。
「やっぱユモトちゃんの料理はオイピー!!! 嫁にならない?」
「ですから、僕は男です」
 そんな空気を察したのか、それとも何も考えていないのかルーは1人騒いでいた。
「一応作戦を伝えておくぞ、トロールが近くに現れた場合はムツヤを置いて私達は街に戻り、他の冒険者と共に戦う」
 ムツヤを1人置いていくということにモモは少し心配になったが、最善の手だと自分に言い聞かせる。
「トロールが遠くに現れた場合はムツヤは急ぎそこへ向かって迎撃、この場合も私達は街へ戻る」
「はい、わがりまじた」
 太陽がどんどん西へ沈んでいき、やがて赤くなり、見えなくなった。
 それからしばらくして、ムツヤが何か気配を感じ取る。
「来ます!! 近いです!!」
「よしわかった、作戦通りに動くぞ」
 ムツヤをこの場に残してアシノ達は街へ走り出した。その最中連絡石で街にトロールが出たことと方角を知らせた。
 街に松明と燭台の明かりが一斉に付いた、魔術師は照明弾も用意している。
 戦いの始まりだ。
 ムツヤが感じ取った通り、トロールが森から出て、ムツヤを見ると棍棒片手に襲いかかってきた。
 風のようにそれを避けるとムツヤはトロールを蹴り飛ばすと、巨体が吹っ飛び木に激突をした。走り、喉元に剣を突き立てるとトロールは絶命する。
 後ろからまた2匹、回転するようにムツヤはトロールを切り裂き片付けた。
 そんな事をしているとワラワラと集まりだしてくる。
 同じ頃、ムツヤが食い止めきれなかったトロールが街へ襲撃を掛けていた。
 半信半疑だった者たちも、本当だったと緊張が走る。 
 照明弾が打ち上げられ、冒険者や治安維持部隊が弓と魔法で遠距離の攻撃をしてトロールに攻撃を始めた。
 何匹かは途中で力尽きたが、タフなトロールは近くまで走ってくる。
 ここからは白兵戦だ。
 トロールを囲んで数人がかりで斬りつけるが、反撃の振り回された棍棒で1人が吹き飛ばされ動かなくなる。生死はわからない。
 1人の女魔法使いがトロールの接近を許してしまった。
「い、いや、来ないで」
 もう駄目かと思ったその時パァンパァンと乾いた音がし、トロールは怯む。雷撃が直撃し、片膝を付いた所に誰かがトロールの背中に剣を突き立てた。
 アシノ達遊撃隊が街へ到着したのだ。
「大丈夫か?」
 アシノが女魔法使いに声をかける。
「は、はい!! 大丈夫です、ありがとうございました!」
 礼を言うと女魔法使いは街の方へ下がっていった。
 ルーは精霊の背中に乗り、動き回りながらまた別の精霊を操ってトロールを攻撃していた。
 ユモトは防御壁と攻撃魔法を使い分けてトロールに電撃を浴びせ、大きな氷柱で貫く。
 モモが無力化の盾で棍棒を受け止めると、トロールはギョッとした顔をし、次の瞬間には腹が切り裂かれていた。
 アシノはワインボトルをパァンパァンとトロールの顔めがけて発射している。
 それは致命傷にはならないが、トロールを怯ませるには充分だった。トドメは他のものが刺す。
 ヨーリィの姿が見えない。何をしているのかと思えば暗がりから木の杭が飛び、トロールの首筋に刺さる。
 万が一攻撃を受けて枯れ葉に変わってしまった所を他の冒険者に見られないようにするため、小柄さと素早さを生かして暗がりからトロールの急所へ木の杭を投げるよう指示されていた。
 見事な連携でトロールを片付けていく様を見て他の冒険者達は「さすが勇者アシノのパーティだ」と感心していた。
 アシノの持つワインボトルも格好がつかないと真っ黒に塗り上げていたので、謎の魔法を使っているように見えるのだろう。
 だが、どこに隠れていたのだと思うぐらいのトロール達が街を目掛けて次々とやってくる。
 流石にアシノ達も他の冒険者達も疲弊してきた。そんな時に信じられない光景が起きて皆、一瞬そちらに気を取られる。
 森の中からトロールが上空へ打ち上げられているのだ。
(あのバカ、なるべく目立つなって言ったのに……)
 アシノの内心を知らずに森の中ではムツヤが暴れていた。
 トロールを蹴り飛ばし、殴り飛ばし、切り裂いて戦っている。久しぶりの遠慮のいらない戦いにムツヤはテンションが上がって暴れすぎてしまったのだ。
 アシノ達がトロールと戦っている時と同じ頃、ムツヤもトロールの群れと遭遇していた。
「ぐおおおおおお!!!!」
 1匹のトロールが叫び声を上げながら棍棒を振り上げて走り寄ってくる。
 青い鎧を身にまとったムツヤは一瞬で距離を詰めて右手でトロールの腹を力いっぱい殴った。
「ぐぷっ」と妙な声を出してトロールは吹き飛び、木に激突し、絶命する。木はメキメキと音を立てて折れる。
 混乱するトロール達をよそに、ムツヤは次の1匹に走り、飛び蹴りを食らわせた。他のトロールを巻き込みながら吹っ飛んでいく。
 トロールがムツヤを囲み始める。剣を抜いて1匹の首を刎ねたかと思うと、そのまま回転し次の1匹の腹を切り裂き、飛び上がってトロールを縦に真っ二つにする。
 ムツヤの中に高揚感が溢れ出てくる。人目を気にせず思う存分戦える喜びが記憶の底から戻ってきたのだ。
 背後を取った敵を足払いし、宙に浮かすとそのままサマーソルトキックを繰り出し、天高くトロールを打ち上げた。
 他のトロールとの戦いでも剣で切る以外に何十匹も宙に打ち上げ、アシノや街の冒険者達が目撃したのはそれだ。
 ムツヤの居る方角は月明かりを背にしているため、より一層目立つそれは街の冒険者をどよめかせた。