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七曜の魔法使い

ー/ー



それはかつて、王を護る魔法使いとして知られていた者たちだ。守護者たる七人は、その功績と実力から『七曜の魔法使い』と呼ばれていた。『輝く者、月曜(ネルス)』を筆頭に、七曜の魔法使いは王の刃として、盾として戦い続けていたという歴史がある。どうしてそれが現在のように歪められてしまったのかは誰にも分からない。


「誰か来る……?」


 彼らが、彼女らが何に従い、何を目指して、何を成そうとしているのか。それを知るものはまだ誰もいない。


「……エストレイラ、アマル、課題だ。今すぐに一般人を保護しつつ仲間との合流を急げ」

「え?!」

()だ。正体は分からんがな。死にたくなれば早く動け」


 アステシアは羽織っていた上着を脱ぎ捨ててモニカに投げつける。アステシアは常に黒いローブを羽織っている。いつも同じような服装で、膝下の黒いニーハイソックスしか見えない。そんなアステシアの、ローブの下の姿を見ることができたモニカとソフィアは、顔を真っ赤にして逃げもせずアステシアの後ろ姿を見ていた。


「……何をしている。早く逃げろ」

「は、はい!」


 完全に見惚れていた2人はアステシアの一言で走り出す。その途中もチラチラとアステシアを覗き見る。
 真面目なアステシアらしからぬ露出度が高い服。腰から下の絶対防御のせいか、上半身の軽装が信じられないほど目立つ。だが、どこからか魔法使いとしての風格も感じられる、オシャレだけではない服装だった。


「”月輪(ルナ・リング)”」


 アステシアを中心に、今宵の月のような、見事な三日月が映し出される。まだモニカたちには敵の姿どころか気配すら感じることができなかった。だが、アステシアは確かにどこかを見つめ、真剣な表情をしていた。


「……ねぇ、モニカちゃん」


 古書館に訪れていた来客に避難を促している途中、ソフィアはモニカにとある提案をした。


「私たちも戦った方がよくない?」

「な、なんで……?」

「だって、アステシア先生に全部丸投げなんて、なんか嫌じゃん!」

「ダメだよ! せめて誰かと合流してからじゃないと……勝手に行動しちゃ混乱させるだけでしょ」

「ぐぅ……その通りだけどモニカちゃんに言われるとムカつく……」


 どうしてか戦いに参加したがるソフィアを何とか説得させ、モニカたちは古書館の中を駆け回る。だが、広大すぎる館内で手当り次第にクラスメイトを探すのは無謀だったらしく、いくら走っても誰も見つからない。


「おかしいでしょ! なんでこれだけ走って見つからないの!?」

「誰か、合図でもしてくれればいいんだけど……」

「……手分けして探さない?」

「心配だけど、そっちの方がよさそうだね」


 その会話を最後に、2人は正反対の方向に走っていく。もはや、どこがどこへの道なのか分からないまま、2人は後先を考えずに走り出した。ソフィアと別れてすぐ、モニカは正面から走ってくる誰かを発見した。


「え、エストレイラさん?!」

「トルリーンちゃん!」


 白い肌と透明だと勘違いしてしまうほどの純白のおかげか、その人影の正体はあっさりと分かった。徐々にアリシアに近づいていく度、アリシアの背後にも、いくつか人影があることにモニカは気づく。それは、頼もしいことこの上ない仲間の姿だった。


「お、旭のお気に入りちゃんじゃん」

「エストレイラさんね。お前はいい加減に人の名前を覚えな、レオノール」


 見間違えるはずもない見た目だ。片方の男は黒髪にイエローのメッシュが入っている。実技試験において、旭、パーシーに次いで3番の実力を発揮した実技試験優秀者、レオノール・ブラックハウンド。そして、相変わらずの和服と2本の刀を携えた、宮本国綱だ。2人とも既に臨戦態勢は整っているようで、特にレオノールの周りにはパリパリと青白い電気が奔る。アリシアの髪が逆立っているのがその証拠だ。


「国綱、4人目だぞ! そろそろいいだろ!」

「僕は2人を守るのに集中したいから、行くなら一人でいけ」

「じゃあ行かねぇ! 旭とも合流したいしな」


 アリシアたちと合流したモニカは、現在の情報を共有した。何者かが神精樹の古書館に襲撃したこと、アステシアから課された課題。そして、つい先程までソフィアと同行していたこと。


「……じゃあ、トルリーンさんとエストレイラさんは来た道を戻って、アマルさんと合流してくれ。僕はレオノールと行動する」

「了解」

「えっ!? 大丈夫なの?」

「あぁ、心配無用さ。僕はこれでもタイマンなら旭に勝てるくらいには強いんだよ」


 旭の実力を知っているモニカはその言葉を聞いてドン引きしていた。すると突然、足を止めて戸惑うモニカの手を引き、アリシアが駆け出した。アリシアの細腕は信じられない力でモニカの腕を掴んで離さない。


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それはかつて、王を護る魔法使いとして知られていた者たちだ。守護者たる七人は、その功績と実力から『七曜の魔法使い』と呼ばれていた。『輝く者、|月曜《ネルス》』を筆頭に、七曜の魔法使いは王の刃として、盾として戦い続けていたという歴史がある。どうしてそれが現在のように歪められてしまったのかは誰にも分からない。
「誰か来る……?」
 彼らが、彼女らが何に従い、何を目指して、何を成そうとしているのか。それを知るものはまだ誰もいない。
「……エストレイラ、アマル、課題だ。今すぐに一般人を保護しつつ仲間との合流を急げ」
「え?!」
「|敵《・》だ。正体は分からんがな。死にたくなれば早く動け」
 アステシアは羽織っていた上着を脱ぎ捨ててモニカに投げつける。アステシアは常に黒いローブを羽織っている。いつも同じような服装で、膝下の黒いニーハイソックスしか見えない。そんなアステシアの、ローブの下の姿を見ることができたモニカとソフィアは、顔を真っ赤にして逃げもせずアステシアの後ろ姿を見ていた。
「……何をしている。早く逃げろ」
「は、はい!」
 完全に見惚れていた2人はアステシアの一言で走り出す。その途中もチラチラとアステシアを覗き見る。
 真面目なアステシアらしからぬ露出度が高い服。腰から下の絶対防御のせいか、上半身の軽装が信じられないほど目立つ。だが、どこからか魔法使いとしての風格も感じられる、オシャレだけではない服装だった。
「”|月輪《ルナ・リング》”」
 アステシアを中心に、今宵の月のような、見事な三日月が映し出される。まだモニカたちには敵の姿どころか気配すら感じることができなかった。だが、アステシアは確かにどこかを見つめ、真剣な表情をしていた。
「……ねぇ、モニカちゃん」
 古書館に訪れていた来客に避難を促している途中、ソフィアはモニカにとある提案をした。
「私たちも戦った方がよくない?」
「な、なんで……?」
「だって、アステシア先生に全部丸投げなんて、なんか嫌じゃん!」
「ダメだよ! せめて誰かと合流してからじゃないと……勝手に行動しちゃ混乱させるだけでしょ」
「ぐぅ……その通りだけどモニカちゃんに言われるとムカつく……」
 どうしてか戦いに参加したがるソフィアを何とか説得させ、モニカたちは古書館の中を駆け回る。だが、広大すぎる館内で手当り次第にクラスメイトを探すのは無謀だったらしく、いくら走っても誰も見つからない。
「おかしいでしょ! なんでこれだけ走って見つからないの!?」
「誰か、合図でもしてくれればいいんだけど……」
「……手分けして探さない?」
「心配だけど、そっちの方がよさそうだね」
 その会話を最後に、2人は正反対の方向に走っていく。もはや、どこがどこへの道なのか分からないまま、2人は後先を考えずに走り出した。ソフィアと別れてすぐ、モニカは正面から走ってくる誰かを発見した。
「え、エストレイラさん?!」
「トルリーンちゃん!」
 白い肌と透明だと勘違いしてしまうほどの純白のおかげか、その人影の正体はあっさりと分かった。徐々にアリシアに近づいていく度、アリシアの背後にも、いくつか人影があることにモニカは気づく。それは、頼もしいことこの上ない仲間の姿だった。
「お、旭のお気に入りちゃんじゃん」
「エストレイラさんね。お前はいい加減に人の名前を覚えな、レオノール」
 見間違えるはずもない見た目だ。片方の男は黒髪にイエローのメッシュが入っている。実技試験において、旭、パーシーに次いで3番の実力を発揮した実技試験優秀者、レオノール・ブラックハウンド。そして、相変わらずの和服と2本の刀を携えた、宮本国綱だ。2人とも既に臨戦態勢は整っているようで、特にレオノールの周りにはパリパリと青白い電気が奔る。アリシアの髪が逆立っているのがその証拠だ。
「国綱、4人目だぞ! そろそろいいだろ!」
「僕は2人を守るのに集中したいから、行くなら一人でいけ」
「じゃあ行かねぇ! 旭とも合流したいしな」
 アリシアたちと合流したモニカは、現在の情報を共有した。何者かが神精樹の古書館に襲撃したこと、アステシアから課された課題。そして、つい先程までソフィアと同行していたこと。
「……じゃあ、トルリーンさんとエストレイラさんは来た道を戻って、アマルさんと合流してくれ。僕はレオノールと行動する」
「了解」
「えっ!? 大丈夫なの?」
「あぁ、心配無用さ。僕はこれでもタイマンなら旭に勝てるくらいには強いんだよ」
 旭の実力を知っているモニカはその言葉を聞いてドン引きしていた。すると突然、足を止めて戸惑うモニカの手を引き、アリシアが駆け出した。アリシアの細腕は信じられない力でモニカの腕を掴んで離さない。