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生徒会の女たち

ー/ー



そこは、バウディアムスに存在する聖域。『生徒会室』。生徒会役員のみ立ち入ることを許された生徒会のためだけの領域だ。今日も生徒会の女たちは、バウディアムスの秩序を守るために活動をしている。
 1日を締めくくる鐘の音が鳴る。生徒会長、フィスティシア・エリザベート・エトゥラは日報を書きながらメモリア・ビアスの報告を聞いていた。


「――以上のことから、モニカ・エストレイラ、騎獅道旭。この両人は危険人物ではないと判断しました」

「……まぁ、一先ず任務ご苦労。ビアス」

「ありがとうございます」

「やはり、こういう仕事は慣れないか?」

「いえ、そういう訳では……」


 メモリアがフィスティシアから命じられた任務。それは、『モニカ・エストレイラ、騎獅道旭を監視し、バウディアムスに危害を加える危険人物か判断せよ』、という任務だった。メモリアは入学式からモニカと旭をバレないように監視し、常に動向を伺っては2人の危険性を判断していたのだった。


「聞きたいことがいくつかある。いいな」

「はい」


 フィスティシアはメモリアの任務の報告書に目を通し、机に肘をつきながら顎に手を当てて、ダルそうにペンを回す。日頃から練習していなければありえないようなペン回しを披露しながら、気だるげに欠伸をしながらメモリアに質問する。


「まず、報告書に誤字脱字が目立ちすぎる。適当な仕事をするな。生徒会としての示しがつかない」

「申し訳ありません」

「それと、内容の方だが……」


 あまりにも無気力でカタコトな返事をするメモリアをフィスティシアはじっと見つめる。視線に気がついたメモリアはピシッと背筋を伸ばしてフィスティシアを見つめ返す。


「……その話をする前に。()()()()、コーヒーを1杯淹れてくれないか」

「は……うん!」

「はぁ、いつからこんなポンコツになったんだお前は」

「ずっとだよ。隠してただけ」

「自慢げに言うな。それで、内容の話だがな!」


 机を勢いよく叩き、フィスティシアが立ち上がる。コーヒーを淹れる準備しているメモリアに迫り、提示された報告書を見せつける。
 そこに書かれていたのは、あの日メモリアが()()()()()()という報告だった。だが、そこにあった報告は到底信じられないものばかりだった。


「お前の言う『不可視の魔獣』のことは百歩譲って認めてやる。そういう魔獣もいるんだろう! 実技試験で同じようなのを見た気がするがな!」

「う、うん……」

「だが! お前が敗北を喫するような魔獣が! この世界に一体何匹いると思っている!」

「わ、分かんない……」

「少しは自分の実力を理解しろ!」

「はい……」


 報告書に書かれていた問題の部分。『不可視の魔獣に遭遇。その後、メモリア・ビアス、敗北の後撤退。その後の動向は不明』という1文だ。メモリア・ビアスという人間を知っていれば知っているほど、この1文に疑問を持つ。
 フィスティシアを支える生徒会副会長。一般生徒にとってメモリアは、そんな存在でしかない。だが、フィスティシアのようなメモリアをよく知る人物はそうではない。メモリア・ビアス()()()()()存在では断じてない。


「お前は、私の人生に唯一『敗北』の2文字を刻み込んだ人間だ。そのお前が、たかが魔獣程度に遅れをとるものか」

「……たまたまだよ」


 メモリア・ビアス。生徒会副会長にして、()()()()。実技試験にてフィスティシアを破ったただ1人の人物であり、フィスティシアの謙遜の原因でもある。学園序列二位の席に座り、あくまでもフィスティシアを支える立場に立つメモリアを、彼女を知る人々は密かに『最強』と呼ぶ。


「……お前が入れ込むほど、こいつらは面白い魔法使いなのだろうな」

「うん、フィスもきっと気に入るよ」

「あぁ、楽しみにしている」


 生徒会室という聖域で、2人は楽しそうに笑う。


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そこは、バウディアムスに存在する聖域。『生徒会室』。生徒会役員のみ立ち入ることを許された生徒会のためだけの領域だ。今日も生徒会の女たちは、バウディアムスの秩序を守るために活動をしている。
 1日を締めくくる鐘の音が鳴る。生徒会長、フィスティシア・エリザベート・エトゥラは日報を書きながらメモリア・ビアスの報告を聞いていた。
「――以上のことから、モニカ・エストレイラ、騎獅道旭。この両人は危険人物ではないと判断しました」
「……まぁ、一先ず任務ご苦労。ビアス」
「ありがとうございます」
「やはり、こういう仕事は慣れないか?」
「いえ、そういう訳では……」
 メモリアがフィスティシアから命じられた任務。それは、『モニカ・エストレイラ、騎獅道旭を監視し、バウディアムスに危害を加える危険人物か判断せよ』、という任務だった。メモリアは入学式からモニカと旭をバレないように監視し、常に動向を伺っては2人の危険性を判断していたのだった。
「聞きたいことがいくつかある。いいな」
「はい」
 フィスティシアはメモリアの任務の報告書に目を通し、机に肘をつきながら顎に手を当てて、ダルそうにペンを回す。日頃から練習していなければありえないようなペン回しを披露しながら、気だるげに欠伸をしながらメモリアに質問する。
「まず、報告書に誤字脱字が目立ちすぎる。適当な仕事をするな。生徒会としての示しがつかない」
「申し訳ありません」
「それと、内容の方だが……」
 あまりにも無気力でカタコトな返事をするメモリアをフィスティシアはじっと見つめる。視線に気がついたメモリアはピシッと背筋を伸ばしてフィスティシアを見つめ返す。
「……その話をする前に。|メ《・》|モ《・》|リ《・》|ア《・》、コーヒーを1杯淹れてくれないか」
「は……うん!」
「はぁ、いつからこんなポンコツになったんだお前は」
「ずっとだよ。隠してただけ」
「自慢げに言うな。それで、内容の話だがな!」
 机を勢いよく叩き、フィスティシアが立ち上がる。コーヒーを淹れる準備しているメモリアに迫り、提示された報告書を見せつける。
 そこに書かれていたのは、あの日メモリアが|そ《・》|の《・》|目《・》|で《・》|見《・》|た《・》という報告だった。だが、そこにあった報告は到底信じられないものばかりだった。
「お前の言う『不可視の魔獣』のことは百歩譲って認めてやる。そういう魔獣もいるんだろう! 実技試験で同じようなのを見た気がするがな!」
「う、うん……」
「だが! お前が敗北を喫するような魔獣が! この世界に一体何匹いると思っている!」
「わ、分かんない……」
「少しは自分の実力を理解しろ!」
「はい……」
 報告書に書かれていた問題の部分。『不可視の魔獣に遭遇。その後、メモリア・ビアス、敗北の後撤退。その後の動向は不明』という1文だ。メモリア・ビアスという人間を知っていれば知っているほど、この1文に疑問を持つ。
 フィスティシアを支える生徒会副会長。一般生徒にとってメモリアは、そんな存在でしかない。だが、フィスティシアのようなメモリアをよく知る人物はそうではない。メモリア・ビアス|そ《・》|の《・》|程《・》|度《・》|の《・》存在では断じてない。
「お前は、私の人生に唯一『敗北』の2文字を刻み込んだ人間だ。そのお前が、たかが魔獣程度に遅れをとるものか」
「……たまたまだよ」
 メモリア・ビアス。生徒会副会長にして、|学《・》|年《・》|首《・》|席《・》。実技試験にてフィスティシアを破ったただ1人の人物であり、フィスティシアの謙遜の原因でもある。学園序列二位の席に座り、あくまでもフィスティシアを支える立場に立つメモリアを、彼女を知る人々は密かに『最強』と呼ぶ。
「……お前が入れ込むほど、こいつらは面白い魔法使いなのだろうな」
「うん、フィスもきっと気に入るよ」
「あぁ、楽しみにしている」
 生徒会室という聖域で、2人は楽しそうに笑う。