信じられない反転
ー/ー
「確かに三河にはひどいことしたと思うよ? でも盗難まで私たちのせいにするなんて……」
一井が私から顔を逸らし、俯いた顔に長い髪が垂れる。いつの間にか来ていた雪田が慰めるように肩を寄せ、私を睨みつけた。
一井は細い指で髪を耳にかけた後、弱々しく手を前で組んだ。
なんでそんな可哀想な見せ方ができるのよ。弱りたいのはこっちの方よ。昨日まで好き勝手しておいて、いざ本当のことを言われたら弱い立場に転身するなんて……!
「本人が否定しているのに決めつけるな! 三河、お前は一井たちに心ない言葉をかけられて傷付いただろう。それでも同じように傷付けるのは間違ってるぞ!」
泣いていいのは私の方なのに、先生がまた泣いて肩を揺さぶってくる。
なんで私が怒られなきゃいけないのよ!決めつけるもなにも本当のことなのに!
「まず、盗難事件は私へのいじめのつもりで起こしたことです! 無関係ではありません! ……パンを買うため急いでいたのに鍵を拾ったなど本人の発言も矛盾していて、口封じのためにお金も渡しています」
怒りのあまり叩きつけるように声を上げてしまったけど、一息ついて荒くなった言葉を押し鎮める。
怒鳴ると私の印象が悪くなる……向こうがしおらしくしている時に言動を荒げてはいけない。五対一でいじめられて立場が弱いのは私だ。
一井を怒鳴りつけられる弱者にしてはいけない。
怒られるべきなのは向こう、私は落ち着いて証拠を出していけばいい。
自分を落ち着け、まずは友達を頼ろうと目を向ける。
「昨日の授業中鍵を教科書と一緒に置いていたのを見た人はいる?」
「見たよ、椅子に座った後ペンケースのそばに置いてた」
机の右端に座っていたから隣にいたのは咲洲だけだったけど、その咲洲が見ていてくれてよかった。
きっと端に座っていたから盗みやすかったのかもしれない。両隣に人がいれば気付かれるから。
「これで科学教室に来る途中に落とした可能性はない。窪田は真っ先に教室を出たから、私が授業終わりに落としたとしても拾うこともない」
「咲洲さんって三河の友達だよね? 二人で口裏合わせてるんじゃないの?」
「私は本当に見たよ」
海堀が横槍を入れてきたけど咲洲はすかさず言う。
「もちろん口裏なんて合わせていません。それと、口止め料のことですが、やりとりを見た人は?」
じっくりと視線を巡らせたけど、ここで私に味方する人はいなかった。
「お金なんてもらってないぞ」
あの時もらっていた男子が否定して、私側に傾きかけた空気がざわざわと波打つ。怪しくなってきた。
「借りたお金を返しただけだよ。ねえ」
「それは本当だよな?」
「はい」
なんであの五人の仕業だって言っても半信半疑だったのに、五人のしたことを否定する証言には信じ切って縋るように確かめるの?
「もうなんだか訳がわからなくなってきた! まあ、三河はお金を貸し借りを見て誤解したんだろう」
髪を掻き上げてお手上げというように腰に手を当てた先生が、強張った私を軽く笑い飛ばした。違います! と反射的に言うも、私ではなく時計の方へ向いてしまった。
「やばいなもう授業が終わる。とりあえず紙は回収するから前に持ってきてくれ」
茫然とする私を避けるように時が進む。
事情を知らない人たちはよくわからないといった様子で、結局どういうことなのと目を見合わせる。噂も含め知っている限りの情報を盛り立てて、勝手な予想が飛び交う。
藁をも掴む思いで先生に言った。
何か考えがあるんじゃないかと考えて、先生のやり方に疑問をぶつけなかった。
自分がされたことをみんなの前で言われるのは嫌だったけど耐えた。
自分たちに都合がいい謝罪の場にされた
何のために私は晒し者になったんだろう。
さっきの私を見て誰かの心は変わっただろうか?
何も得られず、ただ怒りを晒しただけだとしたら、何もしない方がマシだった。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
「確かに三河にはひどいことしたと思うよ? でも盗難まで私たちのせいにするなんて……」
一井が私から顔を逸らし、俯いた顔に長い髪が垂れる。いつの間にか来ていた雪田が慰めるように肩を寄せ、私を睨みつけた。
一井は細い指で髪を耳にかけた後、弱々しく手を前で組んだ。
なんでそんな可哀想な見せ方ができるのよ。弱りたいのはこっちの方よ。昨日まで好き勝手しておいて、いざ本当のことを言われたら弱い立場に転身するなんて……!
「本人が否定しているのに決めつけるな! 三河、お前は一井たちに心ない言葉をかけられて傷付いただろう。それでも同じように傷付けるのは間違ってるぞ!」
泣いていいのは私の方なのに、先生がまた泣いて肩を揺さぶってくる。
なんで私が怒られなきゃいけないのよ!決めつけるもなにも本当のことなのに!
「まず、盗難事件は私へのいじめのつもりで起こしたことです! 無関係ではありません! ……パンを買うため急いでいたのに鍵を拾ったなど本人の発言も矛盾していて、口封じのためにお金も渡しています」
怒りのあまり叩きつけるように声を上げてしまったけど、一息ついて荒くなった言葉を押し鎮める。
怒鳴ると私の印象が悪くなる……向こうがしおらしくしている時に言動を荒げてはいけない。五対一でいじめられて立場が弱いのは私だ。
一井を怒鳴りつけられる弱者にしてはいけない。
怒られるべきなのは向こう、私は落ち着いて証拠を出していけばいい。
自分を落ち着け、まずは友達を頼ろうと目を向ける。
「昨日の授業中鍵を教科書と一緒に置いていたのを見た人はいる?」
「見たよ、椅子に座った後ペンケースのそばに置いてた」
机の右端に座っていたから隣にいたのは咲洲だけだったけど、その咲洲が見ていてくれてよかった。
きっと端に座っていたから盗みやすかったのかもしれない。両隣に人がいれば気付かれるから。
「これで科学教室に来る途中に落とした可能性はない。窪田は真っ先に教室を出たから、私が授業終わりに落としたとしても拾うこともない」
「咲洲さんって三河の友達だよね? 二人で口裏合わせてるんじゃないの?」
「私は本当に見たよ」
海堀が横槍を入れてきたけど咲洲はすかさず言う。
「もちろん口裏なんて合わせていません。それと、口止め料のことですが、やりとりを見た人は?」
じっくりと視線を巡らせたけど、ここで私に味方する人はいなかった。
「お金なんてもらってないぞ」
あの時もらっていた男子が否定して、私側に傾きかけた空気がざわざわと波打つ。怪しくなってきた。
「借りたお金を返しただけだよ。ねえ」
「それは本当だよな?」
「はい」
なんであの五人の仕業だって言っても半信半疑だったのに、五人のしたことを否定する証言には信じ切って縋るように確かめるの?
「もうなんだか訳がわからなくなってきた! まあ、三河はお金を貸し借りを見て誤解したんだろう」
髪を掻き上げてお手上げというように腰に手を当てた先生が、強張った私を軽く笑い飛ばした。違います! と反射的に言うも、私ではなく時計の方へ向いてしまった。
「やばいなもう授業が終わる。とりあえず紙は回収するから前に持ってきてくれ」
茫然とする私を避けるように時が進む。
事情を知らない人たちはよくわからないといった様子で、結局どういうことなのと目を見合わせる。噂も含め知っている限りの情報を盛り立てて、勝手な予想が飛び交う。
藁をも掴む思いで先生に言った。
何か考えがあるんじゃないかと考えて、先生のやり方に疑問をぶつけなかった。
自分がされたことをみんなの前で言われるのは嫌だったけど耐えた。
自分たちに都合がいい謝罪の場にされた
何のために私は晒し者になったんだろう。
さっきの私を見て誰かの心は変わっただろうか?
何も得られず、ただ怒りを晒しただけだとしたら、何もしない方がマシだった。