窮地の一択
ー/ー
「物の管理をしっかりしろ!? どんな神経したら自分で盗んでおいてそんなこと言えるの!? 全くいつからそんな小賢しい真似を覚えたのかしら……!?」
あまりの衝撃に声が上擦り、ふざけた窪田の手首を掴む。
「盗んだなんて言いがかりだよ。三河が落としたのを拾ってあげたんだよ」
「その割には探す様子も見えなかったけど。いつ見つけたの? そもそもどこに落ちていたか言える?」
「うぅーん、それはねぇ……」
「ほら言えないでしょ。そういうところがお粗末な」「盗まれたのが本当でも三河の管理が甘いから盗まれるんでしょ」
言い淀んだ窪田に対し、それ見たことかと捲し立てようとすると一井が遮る。
腕を組みながら平然と言い切ったことに目を疑った。
海堀と窪田は後ろめたいことをしているという自覚があるのか時々周囲を気にしている。そして醜悪な行為に相応しい下品な笑い方をする。
一井にはその自覚がない。当たり前のことのように言った。
前から思っていたけどこいつらは本当に私と同じ人間なのか。頭の作りがそもそも違うのではないか。
「小賢しいのは三河の十八番じゃん。ちょっと似たようなことを返されたくらいでキレないでよ」
これまでのあいつらの行いを精算したら私が今怒ってなお足りないくらいだ。あまりの異常さに言葉を失っていると、一井は窪田の肩を抱いてここから去る。
あいつらに反省という言葉はないらしい。そしてクラス替えまで切り抜けることが困難だと判断する。
この学校は退学・留年する生徒も多く、下手したら一クラス減る。元からクラス数も多くないから五人の中の誰かと同じクラスになる確率は高いし、腐った蜜柑のように自分がしてきたいじめを伝播するだろう。
だから今年中に手を打たなければならない。
先生に言おう。悪化する可能性も高いけど、このままでは腐った生活が続くだけだ。
その後一井と窪田は連れ立って、財布を盗まれた男子に迷惑料の百円を渡しに行っていた。
彼の中では金も払われたから帳消しにされたことだろう。それに窪田だけでなく一井もいるのだ。
もしも先生に話を聞かれたとして正直に話すだろうか。
彼の天秤にかければ、正義感よりも一井の口止めが勝る気がする。
正直に言うのは正しいことだし、先生の好感を得られるかもしれない。しかしこの学校では正義感と成績なんて綿のように軽いものだ。
なんとか卒業して就職先が見つかればいいと考えている人ばかりの学校で、先生の機嫌を取りにいくものなのか。
正義感のために一井を不利に立たせられるだろうか。
咲洲たちの元に辿り着いた私を咲洲が覗き込み、
「三河ちゃん……さっきの話本当? 定期とか盗んだ窪田さんの方が悪いんじゃない?」
「うん。まさかあんなことしてくるとは思わなかった」
「先生に言った方がいいよ! うちらも見てたし絶対あいつらの方が立場悪いから!」
そう言う綾瀬は私の顔を真っ直ぐな目で覗き込んで何度も強く頷く。
今は加勢してくれるけど、先生に言った後五人に脅されても変わらないでいてくれる保証はない。
それならそれだけということだ。
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あまりの衝撃に声が上擦り、ふざけた窪田の手首を掴む。
「盗んだなんて言いがかりだよ。三河が落としたのを拾ってあげたんだよ」
「その割には探す様子も見えなかったけど。いつ見つけたの? そもそもどこに落ちていたか言える?」
「うぅーん、それはねぇ……」
「ほら言えないでしょ。そういうところがお粗末な」「盗まれたのが本当でも三河の管理が甘いから盗まれるんでしょ」
言い淀んだ窪田に対し、それ見たことかと捲し立てようとすると一井が遮る。
腕を組みながら平然と言い切ったことに目を疑った。
海堀と窪田は後ろめたいことをしているという自覚があるのか時々周囲を気にしている。そして醜悪な行為に相応しい下品な笑い方をする。
一井にはその自覚がない。当たり前のことのように言った。
前から思っていたけどこいつらは本当に私と同じ人間なのか。頭の作りがそもそも違うのではないか。
「小賢しいのは三河の十八番じゃん。ちょっと似たようなことを返されたくらいでキレないでよ」
これまでのあいつらの行いを精算したら私が今怒ってなお足りないくらいだ。あまりの異常さに言葉を失っていると、一井は窪田の肩を抱いてここから去る。
あいつらに反省という言葉はないらしい。そしてクラス替えまで切り抜けることが困難だと判断する。
この学校は退学・留年する生徒も多く、下手したら一クラス減る。元からクラス数も多くないから五人の中の誰かと同じクラスになる確率は高いし、腐った蜜柑のように自分がしてきたいじめを伝播するだろう。
だから今年中に手を打たなければならない。
先生に言おう。悪化する可能性も高いけど、このままでは腐った生活が続くだけだ。
その後一井と窪田は連れ立って、財布を盗まれた男子に迷惑料の百円を渡しに行っていた。
彼の中では金も払われたから帳消しにされたことだろう。それに窪田だけでなく一井もいるのだ。
もしも先生に話を聞かれたとして正直に話すだろうか。
彼の天秤にかければ、正義感よりも一井の口止めが勝る気がする。
正直に言うのは正しいことだし、先生の好感を得られるかもしれない。しかしこの学校では正義感と成績なんて綿のように軽いものだ。
なんとか卒業して就職先が見つかればいいと考えている人ばかりの学校で、先生の機嫌を取りにいくものなのか。
正義感のために一井を不利に立たせられるだろうか。
咲洲たちの元に辿り着いた私を咲洲が覗き込み、
「三河ちゃん……さっきの話本当? 定期とか盗んだ窪田さんの方が悪いんじゃない?」
「うん。まさかあんなことしてくるとは思わなかった」
「先生に言った方がいいよ! うちらも見てたし絶対あいつらの方が立場悪いから!」
そう言う綾瀬は私の顔を真っ直ぐな目で覗き込んで何度も強く頷く。
今は加勢してくれるけど、先生に言った後五人に脅されても変わらないでいてくれる保証はない。
それならそれだけということだ。