最悪の事態2
ー/ー
「全員貴重品を確認しろ!」
最悪の事態に茫然としていると、学年主任が私も確認するよう言ってくる。
持ち歩いていたスマホは当然無事。一番重要な財布は個人ロッカーにあり、ダイヤルの数字を合わせて開けるとあった。
雪田の財布の他に男子の財布も盗まれたという。
私は他にないか考え、定期券を思い出した。定期入れを確認しようとしたところで先生に呼び止められ、教室の隅に連れられる。
「三河の鍵が原因とは決まっていないがこういうことが起きる。鍵の管理はしっかりしてくれないと困るんだ」
反省した様子で相槌を打ちながら、自分の管理を思い返す。持ち運ぶときも慎重にしていた。教室から科学教室に着いたときも確認した。
私にも落ち度はあったかもしれないけど、他の人の管理は私以上に杜撰なことも多い。
それなのに私の時に限ってなんで……
先生から解放され、自分の席で項垂れる。
五人が来る前に友達のところに行った方がいいかな。
それでも今日は葛田もいるから行きたくない。
迷っている内に窪田が来て教室に五人全員揃う。
入ってきたのを見た途端、雪田は財布盗まれたから返せないかもと言っていた。窪田はそれに驚く様子もなく、にやけ顔を崩さない。
同時に私が鍵をなくしたことも当然教える。
これは確実に来るコースだと思い、咲洲にも誘われたことだから向こうに避難する。
弁当箱と椅子を引いていく途中、ちらりと雪田の様子を見ると、窪田のスマホを見て笑っている。ろくなことではないと思うけど、やけに突っかかってくるのが遅い。
絢瀬は横につく私に災難だったねーと労ってくれるので、休み時間少なくしちゃってごめんねと謝る。
内心怒っているだろうけど、立ったままでも周回できるからと笑い飛ばしてくれる。坂田は無反応だけどこのことに腹を立てる性格ではない。
「そういえば三河ちゃん定期確認した?」
咲洲に言われて思い出す。そうだ、思い切り忘れていた。
「近くから見てて取りやすいからさ」
「ありがとう」
防犯も何もなく、リュックサックにそのままぶら下げていた定期入れ。腰を下ろして穴の空いた透明な窓を覗くと、定期がなかった。
「ない……!」
「三河ちゃんー?」
「定期盗られたかもしれない……!」
視線が集まる。
坂田までもが箸を止めて私を見つめていた。
「三河が犯人かと思ったのに」
「いやそれこそ容疑者から外れるために自分のも盗んだんだろ」
「三河ならやりそう。雪田の盗んだのも復讐だろ」
「陰湿だな」
「陰キャの復讐って感じだな。敵に回さないようにしよう」
犯人の疑いもかけられるなんて踏んだり蹴ったりだった。
雪田たちが復讐されるようなことをしているのはわかっているんでしょ。先生にバレないようこそこそといじめていたのを見ていたよね。
復讐だったとしてもなんで私が陰湿だなんて言われなきゃいけないのかしら。先に仕掛けてきたのはあっちなのに。
とにかく先生に報告しないと……報告はすぐにしなければいけない。でも先に弁当を食べたい。戻ってくるかわからない盗難事件のことで弁当を食べ損ねるのは嫌だ。
戻ってこないような気がする。今まで犯人が見つかったとか戻ってきたって話を聞いたことがないから。
盗難したことがばれたら学校に居づらくなるから、判明しても生徒には隠しているだけかもしれない。
ふと、盗難の犯人は守られるのに自分たちは野放しにされていることに気付く。俺はお前らを信頼しているからと。
入学して一ヶ月の頃から既に言っていた。何の根拠があってそんなことが言えるのか。
信頼していいようなメンバーじゃない。
生徒だけで解決できるような力を持つクラスじゃない。
「三河はそんなことしないって知ってるよ。定期盗まれて本当にショック受けてるもん。ほら〜駄目じゃん、物の管理はしっかりしないと。SHLで散々言われてきたでしょ?」
後ろから忍び寄ってきた窪田に振り向くと、私が探し求めていた鍵をぷらぷらと見せつけていた。
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持ち歩いていたスマホは当然無事。一番重要な財布は個人ロッカーにあり、ダイヤルの数字を合わせて開けるとあった。
雪田の財布の他に男子の財布も盗まれたという。
私は他にないか考え、定期券を思い出した。定期入れを確認しようとしたところで先生に呼び止められ、教室の隅に連れられる。
「三河の鍵が原因とは決まっていないがこういうことが起きる。鍵の管理はしっかりしてくれないと困るんだ」
反省した様子で相槌を打ちながら、自分の管理を思い返す。持ち運ぶときも慎重にしていた。教室から科学教室に着いたときも確認した。
私にも落ち度はあったかもしれないけど、他の人の管理は私以上に杜撰なことも多い。
それなのに私の時に限ってなんで……
先生から解放され、自分の席で項垂れる。
五人が来る前に友達のところに行った方がいいかな。
それでも今日は葛田もいるから行きたくない。
迷っている内に窪田が来て教室に五人全員揃う。
入ってきたのを見た途端、雪田は財布盗まれたから返せないかもと言っていた。窪田はそれに驚く様子もなく、にやけ顔を崩さない。
同時に私が鍵をなくしたことも当然教える。
これは確実に来るコースだと思い、咲洲にも誘われたことだから向こうに避難する。
弁当箱と椅子を引いていく途中、ちらりと雪田の様子を見ると、窪田のスマホを見て笑っている。ろくなことではないと思うけど、やけに突っかかってくるのが遅い。
絢瀬は横につく私に災難だったねーと労ってくれるので、休み時間少なくしちゃってごめんねと謝る。
内心怒っているだろうけど、立ったままでも周回できるからと笑い飛ばしてくれる。坂田は無反応だけどこのことに腹を立てる性格ではない。
「そういえば三河ちゃん定期確認した?」
咲洲に言われて思い出す。そうだ、思い切り忘れていた。
「近くから見てて取りやすいからさ」
「ありがとう」
防犯も何もなく、リュックサックにそのままぶら下げていた定期入れ。腰を下ろして穴の空いた透明な窓を覗くと、定期がなかった。
「ない……!」
「三河ちゃんー?」
「定期盗られたかもしれない……!」
視線が集まる。
坂田までもが箸を止めて私を見つめていた。
「三河が犯人かと思ったのに」
「いやそれこそ容疑者から外れるために自分のも盗んだんだろ」
「三河ならやりそう。雪田の盗んだのも復讐だろ」
「陰湿だな」
「陰キャの復讐って感じだな。敵に回さないようにしよう」
犯人の疑いもかけられるなんて踏んだり蹴ったりだった。
雪田たちが復讐されるようなことをしているのはわかっているんでしょ。先生にバレないようこそこそといじめていたのを見ていたよね。
復讐だったとしてもなんで私が陰湿だなんて言われなきゃいけないのかしら。先に仕掛けてきたのはあっちなのに。
とにかく先生に報告しないと……報告はすぐにしなければいけない。でも先に弁当を食べたい。戻ってくるかわからない盗難事件のことで弁当を食べ損ねるのは嫌だ。
戻ってこないような気がする。今まで犯人が見つかったとか戻ってきたって話を聞いたことがないから。
盗難したことがばれたら学校に居づらくなるから、判明しても生徒には隠しているだけかもしれない。
ふと、盗難の犯人は守られるのに自分たちは野放しにされていることに気付く。俺はお前らを信頼しているからと。
入学して一ヶ月の頃から既に言っていた。何の根拠があってそんなことが言えるのか。
信頼していいようなメンバーじゃない。
生徒だけで解決できるような力を持つクラスじゃない。
「三河はそんなことしないって知ってるよ。定期盗まれて本当にショック受けてるもん。ほら〜駄目じゃん、物の管理はしっかりしないと。SHLで散々言われてきたでしょ?」
後ろから忍び寄ってきた窪田に振り向くと、私が探し求めていた鍵をぷらぷらと見せつけていた。