最悪の事態1
ー/ー
私たち二人は公園でゆっくりしていたが、帰る頃になって、背負ってもらうのは断りつつも家まで送ってもらい、外のライトに照らされる沙良木を見ていた。
今は二人しかいないからライトの当たるところまで来てくれたんだ。通行人もなく、家の誰も窓を見ていない環境に感謝した。
保冷剤のおかげかあざの痛みはあっという間に引いていき、朝起きたときにはもう存在を忘れていた。
何事もなく教室に入り黒板を見ると、今日は日直当番の日だと気付く。
面倒だけど当たり前のことだから役目を果たすとして、こんな日は魔物退治したいと思ってしまった。何もない日の放課後を魔物退治に使うのは損だけど、元から帰るのが遅くなるような日なら気にならないのだ。
それでも帰宅部だし塾さえなければ放課後の時間なんて有り余っているなと思って、今日はやっぱり戦いの練習に留めておく。
SHLで学級日誌を受け取ると、高校初の日直当番が始まった。
日直当番の役目といえば移動教室での鍵かけ。
四時間目にある科学の移動のため廊下に出て、全員が出るのを入り口の横で待つ。案の定五人の行動は遅く、最後に窪田が不自然に笑いながら出てきた。
すれ違い様に私を見るから何か言ってくるのかと思ったけど何もない。何なの? と鼻を鳴らしてから鍵をかけた。
科学教室に着いた私は机に教科書などを下ろす。その時鍵はペンケースの隣に横たわっていた。授業は先生が前で実験するのを見るだけで、その最中に横の友達と感想を言い合う。
もちろんお互い授業の邪魔にならないように。
チャイムが鳴る数秒前、席は自由だから友達と雑談する時間と化していた。後ろの方にいた雪田が購買でパンを買うという話が聞こえた。
「財布教室に置いてきちゃったからタイムロスだなあ」
「じゃあ私直行するから立て替えとくよ。何がいい?」
「え、まじ、ありがとう! あったらメロンパンとハムパンで」
残念そうにする雪田に、窪田が快く立て替えを申し出た。
一階で行われるパン販売は競争が激しく、教室の位置的に三年生が一番有利だった。しかしこの科学教室はその三年生に匹敵する近さで、直行すれば人気のパンを変えるチャンスだった。
窪田たちは教室の入り口近くを陣取り、チャイムが鳴った途端速やかに出て行った。
私も鍵を開ける必要があるから持ち物をのせた教科書を垂直に持ち上げ、友達に先んじて出て行く。
しかし教室に着き教科書の上にのせたペンケースの横を見ると、あるはずだった鍵がなくなっていた。仕方なく一つ一つを持ち上げて挟まっていないか確認したけどない。
来る途中に落としたかと思い床に注意を払いながら戻る。見つからないまま科学教室に辿り着き、昼食のためさっさと帰ろうとする先生を運良く引き留めた。
先生から化学教室の鍵を借り座っていたところを探し回るけどない。
初めての当番でつまずいて軽く焦る。
みんなの昼休みを奪うことになり、責められるかもしれない。
こんな失敗五人が見逃すはずがない。
とにかく、拾った人が職員室の鍵置き場に持って行った可能性もある。急ぎ足で職員室に行くと科学教室の鍵を返し、一年生の教室の鍵を見る。
一年二組……ない。
板から突き出たフックが手ぶらなのを見て、焦りが心に突き刺さる。
担任はいないし、聞いてもどこにいるかわからないらしい。
もしかしたら鍵を持っている人と入れ違いになっていて、今は教室が開いているかもと淡い期待を抱いて戻る。
階段を上り終え、曲がり角に隠されていた教室前が姿を現す。
期待は砕け、教室の前ではクラスのほぼ全員が立っていた。
これから担任探しに走り回るのかと思うと徒労感が押し寄せてくる。
鍵ないのー? と疑問の視線が投げかけられる。
すると人だかりを見た学年主任が事情を聞いた。
学年主任は一年全クラスの鍵を持っており、とりあえず鍵を開けてくれる。
そして担任もやってきて、私を呼び寄せ事情を聞く。
最後に見たのは科学教室に着いてからで、一度戻って探したけれど見つからなかった、とわかる限りのことを話した。
全てを聞き終えた担任は、鍵の管理は防犯に繋がるとわかり切ったことを言ってくる。
盗難事件が多発していることまで教えてくれるから、この学校の治安に乾いた呆れ笑いさえ浮かんできた。
「あれ、財布がない!」
教室から雪田の声が上がった。呆れ笑いから一転血の気が引き、私の横から担任が教室に駆け込む。
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今は二人しかいないからライトの当たるところまで来てくれたんだ。通行人もなく、家の誰も窓を見ていない環境に感謝した。
保冷剤のおかげかあざの痛みはあっという間に引いていき、朝起きたときにはもう存在を忘れていた。
何事もなく教室に入り黒板を見ると、今日は日直当番の日だと気付く。
面倒だけど当たり前のことだから役目を果たすとして、こんな日は魔物退治したいと思ってしまった。何もない日の放課後を魔物退治に使うのは損だけど、元から帰るのが遅くなるような日なら気にならないのだ。
それでも帰宅部だし塾さえなければ放課後の時間なんて有り余っているなと思って、今日はやっぱり戦いの練習に留めておく。
SHLで学級日誌を受け取ると、高校初の日直当番が始まった。
日直当番の役目といえば移動教室での鍵かけ。
四時間目にある科学の移動のため廊下に出て、全員が出るのを入り口の横で待つ。案の定五人の行動は遅く、最後に窪田が不自然に笑いながら出てきた。
すれ違い様に私を見るから何か言ってくるのかと思ったけど何もない。何なの? と鼻を鳴らしてから鍵をかけた。
科学教室に着いた私は机に教科書などを下ろす。その時鍵はペンケースの隣に横たわっていた。授業は先生が前で実験するのを見るだけで、その最中に横の友達と感想を言い合う。
もちろんお互い授業の邪魔にならないように。
チャイムが鳴る数秒前、席は自由だから友達と雑談する時間と化していた。後ろの方にいた雪田が購買でパンを買うという話が聞こえた。
「財布教室に置いてきちゃったからタイムロスだなあ」
「じゃあ私直行するから立て替えとくよ。何がいい?」
「え、まじ、ありがとう! あったらメロンパンとハムパンで」
残念そうにする雪田に、窪田が快く立て替えを申し出た。
一階で行われるパン販売は競争が激しく、教室の位置的に三年生が一番有利だった。しかしこの科学教室はその三年生に匹敵する近さで、直行すれば人気のパンを変えるチャンスだった。
窪田たちは教室の入り口近くを陣取り、チャイムが鳴った途端速やかに出て行った。
私も鍵を開ける必要があるから持ち物をのせた教科書を垂直に持ち上げ、友達に先んじて出て行く。
しかし教室に着き教科書の上にのせたペンケースの横を見ると、あるはずだった鍵がなくなっていた。仕方なく一つ一つを持ち上げて挟まっていないか確認したけどない。
来る途中に落としたかと思い床に注意を払いながら戻る。見つからないまま科学教室に辿り着き、昼食のためさっさと帰ろうとする先生を運良く引き留めた。
先生から化学教室の鍵を借り座っていたところを探し回るけどない。
初めての当番でつまずいて軽く焦る。
みんなの昼休みを奪うことになり、責められるかもしれない。
こんな失敗五人が見逃すはずがない。
とにかく、拾った人が職員室の鍵置き場に持って行った可能性もある。急ぎ足で職員室に行くと科学教室の鍵を返し、一年生の教室の鍵を見る。
一年二組……ない。
板から突き出たフックが手ぶらなのを見て、焦りが心に突き刺さる。
担任はいないし、聞いてもどこにいるかわからないらしい。
もしかしたら鍵を持っている人と入れ違いになっていて、今は教室が開いているかもと淡い期待を抱いて戻る。
階段を上り終え、曲がり角に隠されていた教室前が姿を現す。
期待は砕け、教室の前ではクラスのほぼ全員が立っていた。
これから担任探しに走り回るのかと思うと徒労感が押し寄せてくる。
鍵ないのー? と疑問の視線が投げかけられる。
すると人だかりを見た学年主任が事情を聞いた。
学年主任は一年全クラスの鍵を持っており、とりあえず鍵を開けてくれる。
そして担任もやってきて、私を呼び寄せ事情を聞く。
最後に見たのは科学教室に着いてからで、一度戻って探したけれど見つからなかった、とわかる限りのことを話した。
全てを聞き終えた担任は、鍵の管理は防犯に繋がるとわかり切ったことを言ってくる。
盗難事件が多発していることまで教えてくれるから、この学校の治安に乾いた呆れ笑いさえ浮かんできた。
「あれ、財布がない!」
教室から雪田の声が上がった。呆れ笑いから一転血の気が引き、私の横から担任が教室に駆け込む。