最初の魔物
ー/ー
廊下に出てふと窓を見ると、五時間目までは澄んだ青空だったのに雲がかかり出していた。
昼時の日光に満ちた校舎内に、どこか陰りが見え始める。
すぐトイレに到着し、まずトイレットペーパーを点検していく。
なくなっていたら補充するけど、今回はどこも入っている。
でも替えのトイレットペーパーがなく、今あるペーパーも少なくなっているところが二つくらいあったから、保健室に取りに行こう。
効率を考えればゴミ袋を出しに行った後取りに行くのがいいけど、なんだかすぐにでも取りに出たい気分だ。
トイレという場所柄窓は奥にひとつだけ。ずらりと並ぶ個室の壁が影を作り、なんとも暗い場所だ。
いつも使っているから怖いと思ったことはないのに、今はぞわぞわと悪寒が広がる。
窓の多い廊下から暗いトイレに来て、日光に当たらなくなったから寒く感じるだけ。
そう理由をつけて掃除に着手した。
個室の袋の入れ替え、掃き掃除を終わらせてゴミ袋を縛る。
最後はブラシで掃くけど、正直面倒だ。奮い立たせた心はいつの間にか縮んでしまった。全員揃っている時でも面倒だからと省くことのある行程だ。私一人の状態でやる義理はない。
先生が見に来るわけでもないのに真面目にやるのも馬鹿らしい。最低限のことはしたんだし……。
袋の結び目を持ちながら、怠ける気持ちに身を任せつつあった。
それでも私の良心は最後までやろうと訴えかける。
ゴミ袋を出して、それから考えよう。
ゴミ置場に行った後手を洗い、トイレットペーパーを貰いに行く。
それが終わってからも私はどうするか決めかねていた。
なんとなく帰りたいなという気分にはなっていた。
教室にはまだ残っている人の話し声がする。その一方で階段を上がってから人とすれ違うこともなかった。
ペーパーがこぼれ落ちないようお腹に押しつけるようにして片手で抱え、ドアを開ける。
後は自然に閉まるのに任せて、壁に付けられている棚に視線を移そうとした時だ。
高校に相応しくない幼い女の子で、下半身は蜘蛛の化け物が狭い通路の真ん中を陣取っていた。
膨らんだ胴体から伸びる多数の脚が微かに動き、床をカサリと撫でる。
「ぎゃあああ!」
乾いた床にトイレットペーパーを落とし、悲鳴をあげた。もしも先に床掃除をしていたらぐちゃぐちゃになっているところだった。
ドアのノブに手をかけ外に逃げようとするものの、何度回しても開かない。
「鍵ないくせになんで開かないのよ……! 非常事態なのよ!開きなさいよ!」
いつもの私なら冷静に何かが挟まっていないか確かめるけど、そんなことにも気付かず無駄に回しながら八つ当たりしていた。
するとさっきまでのことが嘘だったかのようにドアが開いた。
すかさず左足から飛び出し押し付けるようにしてドアを閉め、トイレに背を向ける。
最寄りの階段を駆け下り、一階に着いたところで追いかけてこないか振り返った。
よかった。
よく考えたら追いかけてきたら足音くらいするわよね。
そしてなぜあんなものが学校にいるのかを考え、真っ先に夢が思い浮かぶ。
本当のことだったんだ……。
ストレス発散どころか恐怖のあまり逃げ出したけど、私は本当に魔物退治を引き受けたんだ。
それなら魔法も使えるということだ。
けれど呪文も何も教わっていないからどうすればいいのかわからない。
ただの夢と思っていたから質問も何もできていなかった。
魔法が使えないならせめて武器が欲しい……カッターナイフ、はかなり接近しないと使えないし、箒で叩くのはあり?
今ある物で武器になりそうな物を考えていると上から細長い影が落ちてくる。
見上げると縦向きの状態の棒が天井から生えてきた。
腕を伸ばして掴み、引っ張り出すと先端が現れ、槍だということがわかった。
これで戦えということ……槍を構えながらトイレの前へ舞い戻った。
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。
廊下に出てふと窓を見ると、五時間目までは澄んだ青空だったのに雲がかかり出していた。
昼時の日光に満ちた校舎内に、どこか陰りが見え始める。
すぐトイレに到着し、まずトイレットペーパーを点検していく。
なくなっていたら補充するけど、今回はどこも入っている。
でも替えのトイレットペーパーがなく、今あるペーパーも少なくなっているところが二つくらいあったから、保健室に取りに行こう。
効率を考えればゴミ袋を出しに行った後取りに行くのがいいけど、なんだかすぐにでも取りに出たい気分だ。
トイレという場所柄窓は奥にひとつだけ。ずらりと並ぶ個室の壁が影を作り、なんとも暗い場所だ。
いつも使っているから怖いと思ったことはないのに、今はぞわぞわと悪寒が広がる。
窓の多い廊下から暗いトイレに来て、日光に当たらなくなったから寒く感じるだけ。
そう理由をつけて掃除に着手した。
個室の袋の入れ替え、掃き掃除を終わらせてゴミ袋を縛る。
最後はブラシで掃くけど、正直面倒だ。奮い立たせた心はいつの間にか縮んでしまった。全員揃っている時でも面倒だからと省くことのある行程だ。私一人の状態でやる義理はない。
先生が見に来るわけでもないのに真面目にやるのも馬鹿らしい。最低限のことはしたんだし……。
袋の結び目を持ちながら、怠ける気持ちに身を任せつつあった。
それでも私の良心は最後までやろうと訴えかける。
ゴミ袋を出して、それから考えよう。
ゴミ置場に行った後手を洗い、トイレットペーパーを貰いに行く。
それが終わってからも私はどうするか決めかねていた。
なんとなく帰りたいなという気分にはなっていた。
教室にはまだ残っている人の話し声がする。その一方で階段を上がってから人とすれ違うこともなかった。
ペーパーがこぼれ落ちないようお腹に押しつけるようにして片手で抱え、ドアを開ける。
後は自然に閉まるのに任せて、壁に付けられている棚に視線を移そうとした時だ。
高校に相応しくない幼い女の子で、下半身は蜘蛛の化け物が狭い通路の真ん中を陣取っていた。
膨らんだ胴体から伸びる多数の脚が微かに動き、床をカサリと撫でる。
「ぎゃあああ!」
乾いた床にトイレットペーパーを落とし、悲鳴をあげた。もしも先に床掃除をしていたらぐちゃぐちゃになっているところだった。
ドアのノブに手をかけ外に逃げようとするものの、何度回しても開かない。
「鍵ないくせになんで開かないのよ……! 非常事態なのよ!開きなさいよ!」
いつもの私なら冷静に何かが挟まっていないか確かめるけど、そんなことにも気付かず無駄に回しながら八つ当たりしていた。
するとさっきまでのことが嘘だったかのようにドアが開いた。
すかさず左足から飛び出し押し付けるようにしてドアを閉め、トイレに背を向ける。
最寄りの階段を駆け下り、一階に着いたところで追いかけてこないか振り返った。
よかった。
よく考えたら追いかけてきたら足音くらいするわよね。
そしてなぜあんなものが学校にいるのかを考え、真っ先に夢が思い浮かぶ。
本当のことだったんだ……。
ストレス発散どころか恐怖のあまり逃げ出したけど、私は本当に魔物退治を引き受けたんだ。
それなら魔法も使えるということだ。
けれど呪文も何も教わっていないからどうすればいいのかわからない。
ただの夢と思っていたから質問も何もできていなかった。
魔法が使えないならせめて武器が欲しい……カッターナイフ、はかなり接近しないと使えないし、箒で叩くのはあり?
今ある物で武器になりそうな物を考えていると上から細長い影が落ちてくる。
見上げると縦向きの状態の棒が天井から生えてきた。
腕を伸ばして掴み、引っ張り出すと先端が現れ、槍だということがわかった。
これで戦えということ……槍を構えながらトイレの前へ舞い戻った。