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好き勝手言う子には飽き飽き

ー/ー



 私だけに被害が集中した日ならまだしも、こういう友達のことを言われた時に限って好きなもの同士で集まる授業がある。

 サッカーの授業で、初日だから好きなもの同士で練習することになった。
 最初はいつもの四人で集まっていたけど、授業の後半に人数を増やしてパス練習をさせられた。

 パス練習といっても一部の人のじゃれ合いになっていて、そのノリについていけない私たちは適当に突っ立っていた。

 しかし先生が近くを見回りに来るたび、授業態度に響いていないか心配になる。

 それを察したのか咲洲がボールをこちらに回してくれた。
 つま先でなんとかボールをせき止め、近くに蹴る。ボールは坂田の方に向い、髪の毛を邪魔そうに振りながらまた奥の人に蹴る。

 巡ってまた坂田に順番が戻ってきて、ボールを蹴った時。
 見当違いの方向に飛ばしてしまう。

 髪の毛で視界が狭まっているのか反応が遅かった。バッと見回して見つけるとボールの方向へ駆け出した。

 いいよいいよと、ボールの方向へいた松下が代わりに取りに行った。

 松下は親切な子で、まっちゃんと呼ばれている。
 緩く上がった口角と常に細められた目からして穏やかそうな印象を醸し出している。

 その後私たちにボールが回ってくることなく授業が終わる。

 いつもの四人で更衣室に向かう途中、廊下で広がっては迷惑だからと三人の後ろに回っていた。といっても三人横に広がって歩いているわけではなく、二人の斜め後方に坂田がついている。

 このグループの前方に葛田たちがいる。
 松下はその性格からほとんどの女子に慕われている。特に葛田には好かれていた。

「坂田さんてさ、髪の毛邪魔ならくくるか切ればいいのに。まっちゃんに取りに行かせたり試合でも変なことしたり、見てて鬱陶しいよ」

「えー取りに行ったのは私の意思だし……」

 松下はいつものふんわりとした話し方で、同意もはっきりとした否定もしなかった。

「でも邪魔そうだよね……目悪くなったりしないのかな」

 邪魔そうという部分にだけ共感するのは葛田と仲のいい北見。

「外から見ても鬱陶しいんだから本人は相当でしょ。あの髪になんのこだわりがあるんだか」

 こだわりとか、好き好んでああしているわけじゃない気がする。

 前に坂田が雪田の嫌がらせで後ろから髪の毛を持ち上げられたときのこと。雪田の手を払い後ろに持っていかれた髪をすぐさま元に戻した。

 あの反応は自分の容姿を気にしていた沙良木と重なる。きっと顔を見られたくないのだろう。

 他人の事情なんてわからないからそう言いたくなる気持ちもわかる。

 けど考えもせずただ自分の気持ちを吐き散らす性格がどうしても受け入れられない。

 一緒にいて思うところはあるけど、事情があるのかもしれないと本人に言ったって、同意しか求めないあの子はまた機嫌を損ねるだけ。
 嫌だ嫌だと思いつつも黙り込んでいた。

 今日は面倒な言動ばかり見て疲れた。
 塾もないし、さっさと帰ってゆっくり休みたい。カフェオレでも買って帰ろうかな。

 教科書を突っ込んで帰る支度を進めていると、SHLのために先生が来た。

「五班教室、六班トイレ掃除……」

 そうだった、掃除があるんだった。
 朝の会で言われていたのにすっかり忘れていた。

 休憩タイムは先延ばしになり、人知れず落胆する。
 速やかな準備も早く学校から出ていくためではなく、トイレ掃除に向かうためのものになってしまった。

 同じ班の子にあの五人はいないけれど、性格が合わないからやり辛い。

「三河ー」

 同じ班の高梨が、リュックサックを背負った状態で声をかけてくる。その横には高梨の友達が並んでいる。
 掃除の時にリュックサックは邪魔だから教室に置いていくと思ったのに。

「今日用事があるから先帰っていいかな?」

 そういうこと。
 リュックサックまで背負って帰る気満々じゃない。これで駄目なんて言えるわけがないし、もういっそいない方がマシ。

「はい、どうぞ」

「ありがとー! 三河神!」

 調子よく神と持ち上げる高梨にうんざりしながら、さっさと帰れと手を振る。
 高梨の後方であの五人がニヤニヤと見ていることから、用事というのもあいつらの差し金だと察した。

 どうせカラオケとかに誘ったんでしょ。
 高梨が五人に向き直り、行こうと声をかける。ぞろぞろと出口に向かっていくのを見てから、代わりに入ってくれる人はいないか見回す。

 坂田は早々に帰ったみたいだし、咲洲たちはゲームに熱中していて誘うのも申し訳ない。松下は言ったら手伝ってくれるけど、高梨が帰った穴埋めをさせるなんてと葛田がうるさくなるし……。

 狭い女子トイレで三人、四人いるとわちゃわちゃしていて大変だわ。数は少ない方がやりやすいし、二人でも一人でも一緒。

 一人でやりきってやると奮い立ち、もう家に帰れない残念さなんか忘れてしまった。


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 私だけに被害が集中した日ならまだしも、こういう友達のことを言われた時に限って好きなもの同士で集まる授業がある。
 サッカーの授業で、初日だから好きなもの同士で練習することになった。
 最初はいつもの四人で集まっていたけど、授業の後半に人数を増やしてパス練習をさせられた。
 パス練習といっても一部の人のじゃれ合いになっていて、そのノリについていけない私たちは適当に突っ立っていた。
 しかし先生が近くを見回りに来るたび、授業態度に響いていないか心配になる。
 それを察したのか咲洲がボールをこちらに回してくれた。
 つま先でなんとかボールをせき止め、近くに蹴る。ボールは坂田の方に向い、髪の毛を邪魔そうに振りながらまた奥の人に蹴る。
 巡ってまた坂田に順番が戻ってきて、ボールを蹴った時。
 見当違いの方向に飛ばしてしまう。
 髪の毛で視界が狭まっているのか反応が遅かった。バッと見回して見つけるとボールの方向へ駆け出した。
 いいよいいよと、ボールの方向へいた松下が代わりに取りに行った。
 松下は親切な子で、まっちゃんと呼ばれている。
 緩く上がった口角と常に細められた目からして穏やかそうな印象を醸し出している。
 その後私たちにボールが回ってくることなく授業が終わる。
 いつもの四人で更衣室に向かう途中、廊下で広がっては迷惑だからと三人の後ろに回っていた。といっても三人横に広がって歩いているわけではなく、二人の斜め後方に坂田がついている。
 このグループの前方に葛田たちがいる。
 松下はその性格からほとんどの女子に慕われている。特に葛田には好かれていた。
「坂田さんてさ、髪の毛邪魔ならくくるか切ればいいのに。まっちゃんに取りに行かせたり試合でも変なことしたり、見てて鬱陶しいよ」
「えー取りに行ったのは私の意思だし……」
 松下はいつものふんわりとした話し方で、同意もはっきりとした否定もしなかった。
「でも邪魔そうだよね……目悪くなったりしないのかな」
 邪魔そうという部分にだけ共感するのは葛田と仲のいい北見。
「外から見ても鬱陶しいんだから本人は相当でしょ。あの髪になんのこだわりがあるんだか」
 こだわりとか、好き好んでああしているわけじゃない気がする。
 前に坂田が雪田の嫌がらせで後ろから髪の毛を持ち上げられたときのこと。雪田の手を払い後ろに持っていかれた髪をすぐさま元に戻した。
 あの反応は自分の容姿を気にしていた沙良木と重なる。きっと顔を見られたくないのだろう。
 他人の事情なんてわからないからそう言いたくなる気持ちもわかる。
 けど考えもせずただ自分の気持ちを吐き散らす性格がどうしても受け入れられない。
 一緒にいて思うところはあるけど、事情があるのかもしれないと本人に言ったって、同意しか求めないあの子はまた機嫌を損ねるだけ。
 嫌だ嫌だと思いつつも黙り込んでいた。
 今日は面倒な言動ばかり見て疲れた。
 塾もないし、さっさと帰ってゆっくり休みたい。カフェオレでも買って帰ろうかな。
 教科書を突っ込んで帰る支度を進めていると、SHLのために先生が来た。
「五班教室、六班トイレ掃除……」
 そうだった、掃除があるんだった。
 朝の会で言われていたのにすっかり忘れていた。
 休憩タイムは先延ばしになり、人知れず落胆する。
 速やかな準備も早く学校から出ていくためではなく、トイレ掃除に向かうためのものになってしまった。
 同じ班の子にあの五人はいないけれど、性格が合わないからやり辛い。
「三河ー」
 同じ班の高梨が、リュックサックを背負った状態で声をかけてくる。その横には高梨の友達が並んでいる。
 掃除の時にリュックサックは邪魔だから教室に置いていくと思ったのに。
「今日用事があるから先帰っていいかな?」
 そういうこと。
 リュックサックまで背負って帰る気満々じゃない。これで駄目なんて言えるわけがないし、もういっそいない方がマシ。
「はい、どうぞ」
「ありがとー! 三河神!」
 調子よく神と持ち上げる高梨にうんざりしながら、さっさと帰れと手を振る。
 高梨の後方であの五人がニヤニヤと見ていることから、用事というのもあいつらの差し金だと察した。
 どうせカラオケとかに誘ったんでしょ。
 高梨が五人に向き直り、行こうと声をかける。ぞろぞろと出口に向かっていくのを見てから、代わりに入ってくれる人はいないか見回す。
 坂田は早々に帰ったみたいだし、咲洲たちはゲームに熱中していて誘うのも申し訳ない。松下は言ったら手伝ってくれるけど、高梨が帰った穴埋めをさせるなんてと葛田がうるさくなるし……。
 狭い女子トイレで三人、四人いるとわちゃわちゃしていて大変だわ。数は少ない方がやりやすいし、二人でも一人でも一緒。
 一人でやりきってやると奮い立ち、もう家に帰れない残念さなんか忘れてしまった。