22
22/40夜、各々が情報を持ち帰ってきて会議が始まる。堺たちが入室してくるまでの間、部下の浮田、中寺、取石、加茂、綾園たちが交互の高石に先に情報を持ってくる。しかしどれも大きなネタになるものがない。
堺、三島が入室してきたが淡路の姿はなかった。始まりの儀式が終わり、三島の第一声が部屋に響いた。
「逃走車両が、交野市の溜池で見つかった。逃走車両を遺棄したあと、犯人は予め用意していた車に乗り換え形跡がある。現在、鑑識で車種などの割出しをしている。判明次第、担当を割り振る。では、順番に報告」
どこも大した情報は得られていない。隠し玉を持っていなければ、の話だ。
今回の犯人は、かなり用意周到だった。車が破棄されていた場所に車のタイヤ痕、靴跡があっても、犯人へと繋がる糸は途切れている気がしてならない。
知捜は宮本のどこまで掴んでいるのだろうか。宮本の身辺を洗っている高石は、安立の歩いた後を従いていっているみたいに思えて、ムカムカとしてくる。報告を糸屋に任せ、高石は腹の中で晴れない靄を持て余していた。
号令が懸かり、中寺たちを呼び止めた。
「誰か飲みに付き合え!」
「自分、行きたいです!」
「すんません高石さん。今回は捜査本部が家から近いし、せっかくやから家に帰るって、妻にも言ってるんですよ。糸屋、高石さんを、しっかりもてなすんやで」
中寺を筆頭に、取石、加茂、綾園も同じですと言わんばかりに会議室から出て行く。全員が家族がいるわけではないのに。ただ浮田だけが暗い顔をして残っていた。
仕方がない。高石は今夜こそは吐き掛けまいと、二人を連れだって天満橋にある居酒屋に繰り出した。
翌朝、捜査会議が始まる会議室に入ってきた高石の部下たちは、糸屋の項垂れている姿を見て何があったか察していた。
「今日は収穫があったらええな」
中寺は、挨拶替わりに糸屋の肩を二度叩いてから椅子に座った。
浮田を含めた他の四人も、糸屋の肩に手を置いてから座っていく。高石は居心地が悪くて、早く係長たちが入ってこないか、初めて捜査会議を待ち遠しいと思った。
高石の肩に、誰かが手を置いた。
「何やねん」
分かっていても、部下の視線が分厚い肉を通って神経に少し刺さって苛立っていた。
「タカやん。おはよう」
見上げてあった顔に、糸屋に嘔吐物を吹っ掛けた罰がこれかと、思わざる得なかった。
「河内さん。声、掛かったんですか」
「昨日の夕方に連絡あってな。お金、どこにおるんやろうか」
河内は階級が同じでも、先輩刑事。どんな深刻な時でも、笑っている風な口元をしている河内が高石は嫌いだった。さっさと警部試験を受ければいいものを、のらりくらりと躱している。
高石の一番に嫌っている理由は、仲がいい訳でもないのに、いつも「タカやん」馴れ馴れしい素振りをしてくるからだった。
「知りませんがな。それを探すのが仕事ですやん」
「そうやな」
「よかったですね。四人は府内におって。あと六人も近くやったらいいですね」
糸屋の言うとおり、連絡が取れた四人ともが府内にいてくれて幸運だった。
やはり事情を聞くなら、対面できることに越したことはない。人はどれだけ隠そうとしても、完璧に隠すことは難しい。初対面の人間でも長年刑事をしていると、アンテナが反応する。昨日電話した六名は全国に散らばっていて、会うこともできなくはないが、仕方がない。
「九時半に阪急高槻駅ですよね。ちょっと時間がありますけど」
一人目の待ち合わせ場所が、駅の高架下にあるファミレスを指定してきた。
「中途半端な時間やけど、何してはるんですかね?」
「さあな。でも、大学を卒業して就職した会社は、辞めてるやろうな」
「何でそう思うんですか?」
「経歴には外食産業ってあったやろ。正味、バイトの穴埋めは社員の仕事やし、ノルマも相当キツい。下手したら朝から朝まで働かされたりする。それに客の質もある。わかるやろ。刑事しとったら」
「――そう、ですね」思い当たることが多くあるのが分かった様子だった。
「早よ着いたら、何か食って待ってたらええねん。俺らも生身の人間やねんから」
朝を食べてこなかった高石の腹は、皮下脂肪の下でグルグルと唸っていた。
待ち合わせのファミレスには、九時少し前に着いた。
店内最奥の隅が空いていて、案内してくれるウエイトレスに席を指定して、背凭れが高いソファに座った。
案外に店内は賑わっている。平日の朝に老人がいるのはわかるが、夫婦らしき男女も何組かいた。あとはスーツ姿のサラリーマンと、学生が教科書とノートを広げている。
「メニューになります」
「朝のファミレスって、結構、人が入ってるもんなんですね。高石さん、何を食べますか?」
糸屋がメニューを広げる。時間的に、モーニング・メニューらしい。
「自分は和食にします」
「俺はパンケーキ・セットにトースト付けとくわ」
「高石さんって、食べるもん可愛いですよね」と、糸屋が呼びしのボタンを押した。
約束していた九時半を過ぎた。料理の残骸はすでに引き下げられて、糸屋はアイスコーヒー、高石にはオレンジジュースが目の前に置かれている。
「来ないですね」糸屋は数分おきに腕時計を確認していた。
「天田(あまだ)って名前でしたよね。何かあったんですかね」
「俺に聞かれても知らんがな。十時になっても来んかったら、連絡したらええやろ。相手も都合っちゅうもんがあるやろうしな」
ちびちび飲んでいた糸屋のコーヒーがなくなった時、入口から男が一人、入ってきた。男は出迎えたウエイトレスを無視して、店内を見回している。
高石は男に向かって手を上げた。糸屋も手を上げた素振りを見て、入り口を確認している。
グレーのスエットのズボンに、白いタンクトップ。伸びっぱなしの髪の束は、手入れもされずに好き放題に毛先が跳ねている。
「天田さんですか?」天田は壊れたみたいに、何度も頷いた。
糸屋の身体が、反射的に仰け反っている。
「どうぞ座ってください」
どかっとソファに座った天田は、メニューを手に取ったかと思うと、近くを通ったウエイトレスに注文をした。よく見ると髪には白いフケが、女性がパーティーで付けるラメの役割をしている。
さらに白いタンクトップも黄ばんでいて、スエットのズボンも毛玉だらけ。一番応えたのが、天田から出ている酸っぱい臭いだ。
糸屋はハンカチで鼻と口を塞いでいる。注意したいが、高石もさりげなく口元に手を当てた。
「早速ですが、宮本正守を覚えていますか?」
高石は写真を差し出した。天田は一度だけ頷いた。この男から、情報は引き出せそうにもなかったが、呼び出した以上は職務を遂行しなければならない。
「どんな人間でした? 覚えている限りでいいんで」
天田は高石たちの頭上をぼうっと見てから、首を傾げた。それが答だった。
電話をした時は、気弱そうではあったがちゃんと話ができていた。でも今、目の前にいる天田は一言も声を出さない。
「そうですか。もし何か思い出したら、連絡を貰えますか? 貴重なお時間、ありがとうございました」
高石は名刺を差し出して席を立った。
「あ」
「何か、思い出しはりましたか?」
「ご飯代」天田の言葉に、二人とも肩を大きく落とした。
時間を空けて残りの二人に会ったが、おぼろげな蜃気楼のような記憶しか持ち合わせていなかった。
「宮本って、よっぽど暗かったんですかね」
「いや、サークルに入っとったから、それはないやろうけど」
「けど?」
「何もない」
社会人になれば、確かに人脈はある程度は広がる。働いてからの繋がりは、脆くて見えにくい場合が多い。中には社会人になってから親友と呼べる友人ができるケースもあるが、それは稀だと高石は思っている。
ならば学生時代に何らかの繋がりが、今回の事件に少なからず絡んでいる気がしてならない。
高石は止まっていた手を動かして、牛丼を掻き込んだ。肉の油と甘醤油が、口の中を占領している。
「高石さん。それって刑事の勘ってやつですか?」
「アホか」
「高石さんの携帯ですか? 昨日お電話を貰った、宮本と同じゼミやった――」
「どうもお電話ありがとうございます」
挨拶もそこそこに、高石は電話で一通り、宮本の学生時代の話を聞いていた。隣で糸屋が、送られてきたメール画面を見せてきた。
堺、三島が入室してきたが淡路の姿はなかった。始まりの儀式が終わり、三島の第一声が部屋に響いた。
「逃走車両が、交野市の溜池で見つかった。逃走車両を遺棄したあと、犯人は予め用意していた車に乗り換え形跡がある。現在、鑑識で車種などの割出しをしている。判明次第、担当を割り振る。では、順番に報告」
どこも大した情報は得られていない。隠し玉を持っていなければ、の話だ。
今回の犯人は、かなり用意周到だった。車が破棄されていた場所に車のタイヤ痕、靴跡があっても、犯人へと繋がる糸は途切れている気がしてならない。
知捜は宮本のどこまで掴んでいるのだろうか。宮本の身辺を洗っている高石は、安立の歩いた後を従いていっているみたいに思えて、ムカムカとしてくる。報告を糸屋に任せ、高石は腹の中で晴れない靄を持て余していた。
号令が懸かり、中寺たちを呼び止めた。
「誰か飲みに付き合え!」
サッと部下たちの目が泳いだ。
酒癖が悪いのは高石自身、自覚していたし、飲みに行く度に部下全員に嘔吐物をどうしてか、ぶっ掛けてしまっていた。
酒癖が悪いのは高石自身、自覚していたし、飲みに行く度に部下全員に嘔吐物をどうしてか、ぶっ掛けてしまっていた。
「自分、行きたいです!」
糸屋が嬉しそうに手を上げている。
「すんません高石さん。今回は捜査本部が家から近いし、せっかくやから家に帰るって、妻にも言ってるんですよ。糸屋、高石さんを、しっかりもてなすんやで」
中寺を筆頭に、取石、加茂、綾園も同じですと言わんばかりに会議室から出て行く。全員が家族がいるわけではないのに。ただ浮田だけが暗い顔をして残っていた。
仕方がない。高石は今夜こそは吐き掛けまいと、二人を連れだって天満橋にある居酒屋に繰り出した。
翌朝、捜査会議が始まる会議室に入ってきた高石の部下たちは、糸屋の項垂れている姿を見て何があったか察していた。
「今日は収穫があったらええな」
中寺は、挨拶替わりに糸屋の肩を二度叩いてから椅子に座った。
浮田を含めた他の四人も、糸屋の肩に手を置いてから座っていく。高石は居心地が悪くて、早く係長たちが入ってこないか、初めて捜査会議を待ち遠しいと思った。
高石の肩に、誰かが手を置いた。
「何やねん」
分かっていても、部下の視線が分厚い肉を通って神経に少し刺さって苛立っていた。
「タカやん。おはよう」
見上げてあった顔に、糸屋に嘔吐物を吹っ掛けた罰がこれかと、思わざる得なかった。
「河内さん。声、掛かったんですか」
高石は河内から顔を逸らして前を向いた。
河内は、良くも悪くもない冴えない中年で、本部に出入りしている業者から買ったスーツはくたびれていた。髪は整髪料の量が多いのか、いつもべた付いて見える。それなのにこの河内には、一回り離れた可愛らしい伴侶がいた。
河内は、良くも悪くもない冴えない中年で、本部に出入りしている業者から買ったスーツはくたびれていた。髪は整髪料の量が多いのか、いつもべた付いて見える。それなのにこの河内には、一回り離れた可愛らしい伴侶がいた。
「昨日の夕方に連絡あってな。お金、どこにおるんやろうか」
河内は階級が同じでも、先輩刑事。どんな深刻な時でも、笑っている風な口元をしている河内が高石は嫌いだった。さっさと警部試験を受ければいいものを、のらりくらりと躱している。
高石の一番に嫌っている理由は、仲がいい訳でもないのに、いつも「タカやん」馴れ馴れしい素振りをしてくるからだった。
「知りませんがな。それを探すのが仕事ですやん」
「そうやな」
河内のリズムも苦手だった。
朝礼と捜査会議と割り当てが終わると同時に高石はいの一番に会議室を出た。後ろから糸屋が「待ってくださいよ。昨日の失態は気にしてませんから」と的外れな声が聞こえてきた。
アポが取れた六名のうち三人と会う約束になっていた。
朝礼と捜査会議と割り当てが終わると同時に高石はいの一番に会議室を出た。後ろから糸屋が「待ってくださいよ。昨日の失態は気にしてませんから」と的外れな声が聞こえてきた。
アポが取れた六名のうち三人と会う約束になっていた。
「よかったですね。四人は府内におって。あと六人も近くやったらいいですね」
糸屋の言うとおり、連絡が取れた四人ともが府内にいてくれて幸運だった。
やはり事情を聞くなら、対面できることに越したことはない。人はどれだけ隠そうとしても、完璧に隠すことは難しい。初対面の人間でも長年刑事をしていると、アンテナが反応する。昨日電話した六名は全国に散らばっていて、会うこともできなくはないが、仕方がない。
「九時半に阪急高槻駅ですよね。ちょっと時間がありますけど」
一人目の待ち合わせ場所が、駅の高架下にあるファミレスを指定してきた。
「中途半端な時間やけど、何してはるんですかね?」
「さあな。でも、大学を卒業して就職した会社は、辞めてるやろうな」
「何でそう思うんですか?」
時間があったから、下道を通っている。まだ通勤ラッシュの名残が、高石たちの車のスピードを緩めている。
「経歴には外食産業ってあったやろ。正味、バイトの穴埋めは社員の仕事やし、ノルマも相当キツい。下手したら朝から朝まで働かされたりする。それに客の質もある。わかるやろ。刑事しとったら」
「――そう、ですね」思い当たることが多くあるのが分かった様子だった。
「早よ着いたら、何か食って待ってたらええねん。俺らも生身の人間やねんから」
朝を食べてこなかった高石の腹は、皮下脂肪の下でグルグルと唸っていた。
待ち合わせのファミレスには、九時少し前に着いた。
店内最奥の隅が空いていて、案内してくれるウエイトレスに席を指定して、背凭れが高いソファに座った。
案外に店内は賑わっている。平日の朝に老人がいるのはわかるが、夫婦らしき男女も何組かいた。あとはスーツ姿のサラリーマンと、学生が教科書とノートを広げている。
「メニューになります」
ウエイトレスが無愛想にメニューを置くと、さっさと去って行った。
「朝のファミレスって、結構、人が入ってるもんなんですね。高石さん、何を食べますか?」
糸屋がメニューを広げる。時間的に、モーニング・メニューらしい。
「自分は和食にします」
「俺はパンケーキ・セットにトースト付けとくわ」
厚さがある生地に、黄金色のシロップが涎(よだれ)を誘う。
「高石さんって、食べるもん可愛いですよね」と、糸屋が呼びしのボタンを押した。
約束していた九時半を過ぎた。料理の残骸はすでに引き下げられて、糸屋はアイスコーヒー、高石にはオレンジジュースが目の前に置かれている。
「来ないですね」糸屋は数分おきに腕時計を確認していた。
「天田(あまだ)って名前でしたよね。何かあったんですかね」
「俺に聞かれても知らんがな。十時になっても来んかったら、連絡したらええやろ。相手も都合っちゅうもんがあるやろうしな」
ちびちび飲んでいた糸屋のコーヒーがなくなった時、入口から男が一人、入ってきた。男は出迎えたウエイトレスを無視して、店内を見回している。
高石は男に向かって手を上げた。糸屋も手を上げた素振りを見て、入り口を確認している。
グレーのスエットのズボンに、白いタンクトップ。伸びっぱなしの髪の束は、手入れもされずに好き放題に毛先が跳ねている。
「天田さんですか?」天田は壊れたみたいに、何度も頷いた。
糸屋の身体が、反射的に仰け反っている。
「どうぞ座ってください」
どかっとソファに座った天田は、メニューを手に取ったかと思うと、近くを通ったウエイトレスに注文をした。よく見ると髪には白いフケが、女性がパーティーで付けるラメの役割をしている。
さらに白いタンクトップも黄ばんでいて、スエットのズボンも毛玉だらけ。一番応えたのが、天田から出ている酸っぱい臭いだ。
糸屋はハンカチで鼻と口を塞いでいる。注意したいが、高石もさりげなく口元に手を当てた。
「早速ですが、宮本正守を覚えていますか?」
高石は写真を差し出した。天田は一度だけ頷いた。この男から、情報は引き出せそうにもなかったが、呼び出した以上は職務を遂行しなければならない。
「どんな人間でした? 覚えている限りでいいんで」
天田は高石たちの頭上をぼうっと見てから、首を傾げた。それが答だった。
電話をした時は、気弱そうではあったがちゃんと話ができていた。でも今、目の前にいる天田は一言も声を出さない。
「そうですか。もし何か思い出したら、連絡を貰えますか? 貴重なお時間、ありがとうございました」
高石は名刺を差し出して席を立った。
「あ」
「何か、思い出しはりましたか?」
天田に呼び止められたと思った高石と糸屋は立ち止まった。
「ご飯代」天田の言葉に、二人とも肩を大きく落とした。
時間を空けて残りの二人に会ったが、おぼろげな蜃気楼のような記憶しか持ち合わせていなかった。
「宮本って、よっぽど暗かったんですかね」
時間が押して、既に二時を回っている。
高石と糸屋は、道沿いにあった牛丼チェーン店で遅い昼を摂っていた。
高石と糸屋は、道沿いにあった牛丼チェーン店で遅い昼を摂っていた。
「いや、サークルに入っとったから、それはないやろうけど」
「けど?」
箸を止めた糸屋が、期待する目で高石の話の続きを待っている。
「何もない」
社会人になれば、確かに人脈はある程度は広がる。働いてからの繋がりは、脆くて見えにくい場合が多い。中には社会人になってから親友と呼べる友人ができるケースもあるが、それは稀だと高石は思っている。
ならば学生時代に何らかの繋がりが、今回の事件に少なからず絡んでいる気がしてならない。
高石は止まっていた手を動かして、牛丼を掻き込んだ。肉の油と甘醤油が、口の中を占領している。
「高石さん。それって刑事の勘ってやつですか?」
糸屋の言葉に吹き出しそうになった。
「アホか」
高石は勘など不確かなものを信じてはない。ただ胸元に小石が詰っているような違和感があって気持ちが悪いだけ。
牛丼と一緒に流れてしまえと、さらに牛丼を口に掻き込んだ。
店を出て直ぐに、高石の携帯が鳴った。
牛丼と一緒に流れてしまえと、さらに牛丼を口に掻き込んだ。
店を出て直ぐに、高石の携帯が鳴った。
「高石さんの携帯ですか? 昨日お電話を貰った、宮本と同じゼミやった――」
「どうもお電話ありがとうございます」
挨拶もそこそこに、高石は電話で一通り、宮本の学生時代の話を聞いていた。隣で糸屋が、送られてきたメール画面を見せてきた。
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