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第9章〜To Love You More(もっとあなたを好きになる)〜⑦

ー/ー



ステージの上では、一曲目を披露し終えた白草四葉が次の曲に備えたMCを始めるところだった。
 中庭に特設されたステージの上からは、百人以上の規模に膨れ上がった観衆が見渡せた。

 オープン・スクールでの学校見学に来た中学生らしい容貌の子たちが多いが、中には芦宮高校の在校生も相当数が参加していることがわかる。

 白草四葉は、一曲目の『射手座☆午後九時Don't be late』を歌い終わった高揚感に浸りながら、ステージ前の観衆の声に手を振りながら応える。

 上空には雲ひとつない青空が広がり、中学生や在校生を中心にした観客の盛り上がりぶりは、講堂で一年生のみを相手に行ったクラブ紹介の時以上だ。

 春休み前から、一ヶ月半以上の期間、懸命に練ってきた自分の計画通りにものごとが進んでいるようすに満足感を覚えながら、四葉は、計画の完遂に向けて、自らを鼓舞するように、

「みんな、ありがとう〜!!!!」

と、ステージ前とカメラの向こうの視聴者に向かって語りかける。

「始まったばかりで残念なんだけど……なんと、次が、最後の曲になります」

 ステージ前からは、

「「「えぇ〜〜〜〜〜!!!!」」

という絶叫。
《ミンスタライブ》のコメント欄も、

「もっと、四葉チャンを見たい〜!」
「四葉チャン、がんばって〜〜〜!」
「運営さん、アンコールお願い〜!」

というメッセージの投稿が続いている。
 四葉は、ステージ前の観衆の反応に、満面の笑みで、再び

「みんなの気持ち、嬉しい! ありがとう!」

と、応えたあと、MCを続ける。

「でも、このあとの曲には、サプライズなゲストに来てもらっています!」

ここで、

「「「おぉ〜〜〜〜〜!!!!」」

というオーディエンスの反応を待ってから、

「最後の一曲『To Love You More』の重要なパートであるバイオリンを担当してくれるのは――――――」

と、タップリと間を置いてから、ゲストの紹介を行う。。

「芦宮高校生徒会副会長にして、このオープン・スクールの企画実行団体でもある広報部部長でもある花金鳳花さんです!!」

 四葉の紹介とともに、ステージ裏から、登場した鳳花は『うまぴょい伝説』のイントロをバイオリンで奏でながら、下級生の横に立ったあと、一拍おいて、同じ曲のサビの部分を弾く。
 ソーシャルゲームをプレイしているであろう中高生男子を中心に、

「「「うおぉ〜〜〜〜〜!!!!」」

と、湧き上がる声に一礼した彼女は、緊張する素振りも見せずに語りだす。

「白草さん……いえ、ヨツバチャンと呼ばせてもらった方が良いのかな? 今日は、こんな楽しそうな場に呼んでくれてありがとう」

「花金センパイ……いえ、鳳花サン。わたしの方こそ、共演できて、とっても嬉しいです! 生のバイオリンの演奏があるのと無いのでは、この曲の迫力が全然違いますから!」

「四葉チャンとお客さんの期待に応えられるよう、がんばるわ」

「はい! よろしくお願いします。それでは……時間も押しているようなので、さっそく、行きましょう! 聞いてください。セリーヌ・ディオンで、『To Love You More』」

 曲名と告げた四葉が鳳花に視線を送ると、バイオリン奏者は、イントロを奏で始め、最後の曲目の演奏が始まった。

 そのアナウンスを耳にしながら、ステージ前の中庭に到着した天竹葵は、マーチングバンドが到着する予定のステージ左側の位置にたどり着けるよう、小柄な身体で、人混みを縫うように進む。

 わたしの大好きなその腕に戻らせて
 以前のようにまたわたしを求めて
 もう一度わたしに触れて
 そして、あの頃を思い出してほしいの
 あなたが誰よりもわたしを求めていた頃を

 ステージに注目している中学生や在校生をかきわけ、なんとか、マーチングを終えた吹奏楽部が待機する予定の場所まで到達した。

 行かないで!わたしの心は引き裂かれてしまう
 彼女は、わたしほどあなたを愛さない
 わたしはあなたと一緒にいる
 彼女が去って行った後も
 わたしが、ずっとここに居るってあなたにはわかるはず

 ステージ上で堂に入った振る舞いで、お得意の楽曲を歌い上げる四葉を見上げたあと、肩で息をする葵は、曲がサビの部分に差し掛かるのと同時に、自分と同じく背丈の大きくない女生徒が、キョロキョロと周りを見渡していることに気づいた。

 わたしは、心のなかで あなたをずっと待っている
 あなたをもっと愛せるのは、わたしだけ
 いつかきっとわかるハズ、わたしならあなたが必要とするすべてを与えられるって
 もっとわたしにあなたを愛させて

(こんなに暑い日なのに、マスクをした上に、帽子を目深に被って大丈夫なの?)

 そう、考えながら、マスク姿の少女を目にした葵は、間奏の間に、声を掛けようとするが――――――。

 初めて会ったみたいにわたしを見て
 どこにも行けないようにわたしを抱きしめて
 ただわたしを信じてくれるだけでいいの
 あなたに見せてあげる
 あなたの心が知りたがっているすべてのことを

 2コーラス目の歌が始まり、盛り上がった観客の声に、彼女自身の声がかき消される。
 そうするうちに、少し離れた位置にいた女子生徒は、人混みにまぎれて葵の前から姿を消した。


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ステージの上では、一曲目を披露し終えた白草四葉が次の曲に備えたMCを始めるところだった。
 中庭に特設されたステージの上からは、百人以上の規模に膨れ上がった観衆が見渡せた。
 オープン・スクールでの学校見学に来た中学生らしい容貌の子たちが多いが、中には芦宮高校の在校生も相当数が参加していることがわかる。
 白草四葉は、一曲目の『射手座☆午後九時Don't be late』を歌い終わった高揚感に浸りながら、ステージ前の観衆の声に手を振りながら応える。
 上空には雲ひとつない青空が広がり、中学生や在校生を中心にした観客の盛り上がりぶりは、講堂で一年生のみを相手に行ったクラブ紹介の時以上だ。
 春休み前から、一ヶ月半以上の期間、懸命に練ってきた自分の計画通りにものごとが進んでいるようすに満足感を覚えながら、四葉は、計画の完遂に向けて、自らを鼓舞するように、
「みんな、ありがとう〜!!!!」
と、ステージ前とカメラの向こうの視聴者に向かって語りかける。
「始まったばかりで残念なんだけど……なんと、次が、最後の曲になります」
 ステージ前からは、
「「「えぇ〜〜〜〜〜!!!!」」
という絶叫。
《ミンスタライブ》のコメント欄も、
「もっと、四葉チャンを見たい〜!」
「四葉チャン、がんばって〜〜〜!」
「運営さん、アンコールお願い〜!」
というメッセージの投稿が続いている。
 四葉は、ステージ前の観衆の反応に、満面の笑みで、再び
「みんなの気持ち、嬉しい! ありがとう!」
と、応えたあと、MCを続ける。
「でも、このあとの曲には、サプライズなゲストに来てもらっています!」
ここで、
「「「おぉ〜〜〜〜〜!!!!」」
というオーディエンスの反応を待ってから、
「最後の一曲『To Love You More』の重要なパートであるバイオリンを担当してくれるのは――――――」
と、タップリと間を置いてから、ゲストの紹介を行う。。
「芦宮高校生徒会副会長にして、このオープン・スクールの企画実行団体でもある広報部部長でもある花金鳳花さんです!!」
 四葉の紹介とともに、ステージ裏から、登場した鳳花は『うまぴょい伝説』のイントロをバイオリンで奏でながら、下級生の横に立ったあと、一拍おいて、同じ曲のサビの部分を弾く。
 ソーシャルゲームをプレイしているであろう中高生男子を中心に、
「「「うおぉ〜〜〜〜〜!!!!」」
と、湧き上がる声に一礼した彼女は、緊張する素振りも見せずに語りだす。
「白草さん……いえ、ヨツバチャンと呼ばせてもらった方が良いのかな? 今日は、こんな楽しそうな場に呼んでくれてありがとう」
「花金センパイ……いえ、鳳花サン。わたしの方こそ、共演できて、とっても嬉しいです! 生のバイオリンの演奏があるのと無いのでは、この曲の迫力が全然違いますから!」
「四葉チャンとお客さんの期待に応えられるよう、がんばるわ」
「はい! よろしくお願いします。それでは……時間も押しているようなので、さっそく、行きましょう! 聞いてください。セリーヌ・ディオンで、『To Love You More』」
 曲名と告げた四葉が鳳花に視線を送ると、バイオリン奏者は、イントロを奏で始め、最後の曲目の演奏が始まった。
 そのアナウンスを耳にしながら、ステージ前の中庭に到着した天竹葵は、マーチングバンドが到着する予定のステージ左側の位置にたどり着けるよう、小柄な身体で、人混みを縫うように進む。
 わたしの大好きなその腕に戻らせて
 以前のようにまたわたしを求めて
 もう一度わたしに触れて
 そして、あの頃を思い出してほしいの
 あなたが誰よりもわたしを求めていた頃を
 ステージに注目している中学生や在校生をかきわけ、なんとか、マーチングを終えた吹奏楽部が待機する予定の場所まで到達した。
 行かないで!わたしの心は引き裂かれてしまう
 彼女は、わたしほどあなたを愛さない
 わたしはあなたと一緒にいる
 彼女が去って行った後も
 わたしが、ずっとここに居るってあなたにはわかるはず
 ステージ上で堂に入った振る舞いで、お得意の楽曲を歌い上げる四葉を見上げたあと、肩で息をする葵は、曲がサビの部分に差し掛かるのと同時に、自分と同じく背丈の大きくない女生徒が、キョロキョロと周りを見渡していることに気づいた。
 わたしは、心のなかで あなたをずっと待っている
 あなたをもっと愛せるのは、わたしだけ
 いつかきっとわかるハズ、わたしならあなたが必要とするすべてを与えられるって
 もっとわたしにあなたを愛させて
(こんなに暑い日なのに、マスクをした上に、帽子を目深に被って大丈夫なの?)
 そう、考えながら、マスク姿の少女を目にした葵は、間奏の間に、声を掛けようとするが――――――。
 初めて会ったみたいにわたしを見て
 どこにも行けないようにわたしを抱きしめて
 ただわたしを信じてくれるだけでいいの
 あなたに見せてあげる
 あなたの心が知りたがっているすべてのことを
 2コーラス目の歌が始まり、盛り上がった観客の声に、彼女自身の声がかき消される。
 そうするうちに、少し離れた位置にいた女子生徒は、人混みにまぎれて葵の前から姿を消した。