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 放課後、校門前に二人で立つ。
 前にもこんなことがあったけど、明らかにあの時とは違う。これから向かう場所が決まっているし、何より隣に立つナオヤくんはナチュラルに私に向けて手を差し出してくる。
「じゃあ、手を繋ぎましょうか」
「……はい」
 差し出された手をそっと握ると、ナオヤくんの手が、そろりと握り返してくれた。無遠慮に差し出してきたかと思うと、なんて遠慮深い握り方だろう。
 驚きつつ、やっぱりほんの少し、嬉しく思ってしまった。そして、申し訳ない、とも。
(ごめんね、愛。私……深海くんと手を繋いでる)
 愛がやりたかったことを、私がしているのは、すごく悪いことをしている気分になる。
 だけど、そんな気分は、あっさり吹き飛ばされた。
「ようやく尚也と愛さん、二人と同じ地点に並びましたね」
 今日の予定……つまりはデート先のお店に着くなり、ナオヤくんはそう言った。
「並んだ? どういうこと?」
「知らなかったんですか?……あ、確かにあの時ヒトミさんはいなかったですね」
「え、何? 何のこと?」
 慌てる私に構わず、ナオヤくんはさっさと端末から注文している。二人分の飲み物と、一番人気メニューの特大パフェ。味はともかく、少食のナオヤくんの胃袋に収まるんだろうか。
 そんな心配をしていると……
「さて、尚也と愛さんの進捗でしたね」
「そんなこと、わかるの?」
「わかるというか……記憶に残っていますので」
 そう言って、自分の頭を指さす。そうだった。そこには、ナオヤくんと深海くん、二人分のマイクロチップが存在している。つまり、深海くん本人の記憶を持っているのだ。
 私だって文字通り四六時中、愛に付いているわけにはいかなかった。離れていた時間に深海くんと接する機会があったかもしれないんだった。
「あなたが離れている僅かな間、あなたは尚也に愛さんのことを任せていました。そんなことが度々ありましたよね」
「あった……かな。深海くんなら安心だと思って」
「ええ。尚也も随分と使命感に燃えていたようです。それに、本当に二人きりになれる時間が僅かしかないためか、喜んでいました」
 チクン、と胸の奥に痛みが走る。針先で突かれたような小さな痛み。だけど、じんじんと奥まで染み渡る、深くて重い痛みだ。
「そっか。二人は……両思いだったもんね」
「……そのようですね」
「深海くんの記憶だと、二人は告白……してたの?」
「ええ。尚也から愛さんに」
「……そっか」
 さぞかし、告白の機会を見計らうのに苦労しただろうな。私がずーっと、邪魔していたんだから。
 胸の奥に生まれた言い知れない気持ちは、どんどん重さを増して、体全体が引きずられるように重苦しくなってしまった。
 しかも、そんなタイミングで注文したものが届いてしまった。ウェイターロボットが静かな機械音と共に現れて、録音された音声で「オマタセシマシタ」と告げると、自動で運んできた皿をテーブルに並べていく。私の醸し出している底なし沼のような空気なんて、まるで気にせずに。
「ゴユックリ」と発して、ロボットは戻っていった。テーブルの上には、温かな紅茶が注がれたカップが2つと、鉢植えみたいに大きなガラスの中にクリームもフルーツもたっぷり盛られた美味しそうなパフェが並ぶ。
 テーブルの上は華やかで、私一人が、沈んだ顔をしているように思えた。



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 放課後、校門前に二人で立つ。
 前にもこんなことがあったけど、明らかにあの時とは違う。これから向かう場所が決まっているし、何より隣に立つナオヤくんはナチュラルに私に向けて手を差し出してくる。
「じゃあ、手を繋ぎましょうか」
「……はい」
 差し出された手をそっと握ると、ナオヤくんの手が、そろりと握り返してくれた。無遠慮に差し出してきたかと思うと、なんて遠慮深い握り方だろう。
 驚きつつ、やっぱりほんの少し、嬉しく思ってしまった。そして、申し訳ない、とも。
(ごめんね、愛。私……深海くんと手を繋いでる)
 愛がやりたかったことを、私がしているのは、すごく悪いことをしている気分になる。
 だけど、そんな気分は、あっさり吹き飛ばされた。
「ようやく尚也と愛さん、二人と同じ地点に並びましたね」
 今日の予定……つまりはデート先のお店に着くなり、ナオヤくんはそう言った。
「並んだ? どういうこと?」
「知らなかったんですか?……あ、確かにあの時ヒトミさんはいなかったですね」
「え、何? 何のこと?」
 慌てる私に構わず、ナオヤくんはさっさと端末から注文している。二人分の飲み物と、一番人気メニューの特大パフェ。味はともかく、少食のナオヤくんの胃袋に収まるんだろうか。
 そんな心配をしていると……
「さて、尚也と愛さんの進捗でしたね」
「そんなこと、わかるの?」
「わかるというか……記憶に残っていますので」
 そう言って、自分の頭を指さす。そうだった。そこには、ナオヤくんと深海くん、二人分のマイクロチップが存在している。つまり、深海くん本人の記憶を持っているのだ。
 私だって文字通り四六時中、愛に付いているわけにはいかなかった。離れていた時間に深海くんと接する機会があったかもしれないんだった。
「あなたが離れている僅かな間、あなたは尚也に愛さんのことを任せていました。そんなことが度々ありましたよね」
「あった……かな。深海くんなら安心だと思って」
「ええ。尚也も随分と使命感に燃えていたようです。それに、本当に二人きりになれる時間が僅かしかないためか、喜んでいました」
 チクン、と胸の奥に痛みが走る。針先で突かれたような小さな痛み。だけど、じんじんと奥まで染み渡る、深くて重い痛みだ。
「そっか。二人は……両思いだったもんね」
「……そのようですね」
「深海くんの記憶だと、二人は告白……してたの?」
「ええ。尚也から愛さんに」
「……そっか」
 さぞかし、告白の機会を見計らうのに苦労しただろうな。私がずーっと、邪魔していたんだから。
 胸の奥に生まれた言い知れない気持ちは、どんどん重さを増して、体全体が引きずられるように重苦しくなってしまった。
 しかも、そんなタイミングで注文したものが届いてしまった。ウェイターロボットが静かな機械音と共に現れて、録音された音声で「オマタセシマシタ」と告げると、自動で運んできた皿をテーブルに並べていく。私の醸し出している底なし沼のような空気なんて、まるで気にせずに。
「ゴユックリ」と発して、ロボットは戻っていった。テーブルの上には、温かな紅茶が注がれたカップが2つと、鉢植えみたいに大きなガラスの中にクリームもフルーツもたっぷり盛られた美味しそうなパフェが並ぶ。
 テーブルの上は華やかで、私一人が、沈んだ顔をしているように思えた。