ナオヤくんと恋人関係になったら、これから一緒に居る時間が長くなる。それは、別に構わないと思う。
構わないけど、楽しいか?……そこで、ふと彼曰くの『渾身の冗談』を思い出して、笑いそうになる。いつもあんなことをするわけじゃないだろうけど、きっと、楽しいんじゃないかと思う。
じゃあ、もっと根本的な問題……彼を好きになるのか? こればっかりは過ごしてみないとわからない。だけど、彼の横顔を見ているとドキドキするのは、わかる。その理由も。
だって、彼の横顔は深海くんのものだから。私が見るのは、いつも横顔だった。私は愛じゃないから、彼の笑顔を真正面で受けることは、なかった。あの笑顔が自分に向いたらって思ったことが、ないわけじゃない。いや、何度もある。あるけど……そんなことは、起こるはずがなかった。彼のあの優しい視線が、真っ直ぐに私の瞳を見つめるなんて、一生ないと思っていた。
それなのに、今、彼の視線は私に向けられている。まっすぐに、私だけを、見てくれている。それだけで、胸の奥が熱くなって、鼓動が高鳴る。
彼曰くの『恋人関係』になったら、あの時諦めていたものが、ずっとずっと手に入るということなんだ。
そう、気付いた。だから我知らず、私は頷いていた。
「そっか……」
顔を真っ赤にして頷いた私に、弓槻さんは小さな声でそう言った。そして、私とナオヤくん、両方の手を取って、がっしりと組ませた。
「カップル誕生! おめでとう~!!」
「あ、ありがとう……」
「ありがとうございます……?」
ナオヤくんは、何を祝われているのかわからないようだった。彼にとっては単に契約が成立したというだけなんだろう。
そんなナオヤくんの背中を、加地くんがバシンと思い切り叩いた。
「やるじゃん、深海!」
「何がですか?」
その、目を丸くしている様子を見るに、『恋人関係』になっても私からの一方通行なのは、変わらないんだろうなって、心の中で少しだけため息をついた。
皆には気付かれないように幸せな顔を浮かべながら、だけど。