「何でいちいちそんなこと聞くんだ?」
「……先ほどの会話の中で、僕の名前が挙がっていませんでしたので」
気のせいだろうか。その声には、なんだか拗ねたような響きが紛れている気がした。
「のけ者にするんだったら、むしろ『深海くんは違う』って言うよ。当然、含まれてるから言う必要がなかったって言うか……」
「そうなのですか」
「そうなの」
加地くんと弓槻さんにきっぱりと言われて、ナオヤくんは戸惑っていた。その様子を見ていると、困惑していた空気がほわんと和らいで、自然と、笑みが浮かんだ。
「僕は、何かおかしなことをしましたか?」
「したよ。めっちゃした」
「深海くん、見かけによらず寂しがりなんだね」
軽い笑い声は、やがて大きな笑い声に変わっていく。
ナオヤくんは二人に両側から肩を組まれて、真ん中で縮こまっている。
それを見て思った。ああ、この人は凄いって。
あんなに声にも表情にも抑揚がないのに、それでもこんなにも人の心を動かすことができるんだ。
ケンカしていたわけじゃないとはいえ、あんなに固まっていた加地くんと弓槻さんを、ほんの少しの言葉で笑わせてしまった。
まるで、あの人みたいだ。
「……深海くん……」
彼がケンカの仲裁をした後みたいな、朗らかな空気が辺りを取り巻いている。
凄い。やっぱり、ナオヤくんは深海くんと同じだ。わざわざ、近づく必要なんてないんじゃないか。
今度、二人だけで話せる機会があったら、そう伝えよう。
「……何ですか?」
「ううん、何でもない」
妙にめざといところも、実は深海くんと同じだと言ってあげよう。
そう思ってニヤニヤしてしまっていた私を、ナオヤくんは怪訝な顔で見つめた。そして何か追求しようとしたのだろう、その時――
――未登録ノ訪問者ガイマス。未登録ノ訪問者ガイマス。
そう、アラートの声が鳴った。
訪問予定のない、つまりはIDを発行されていない訪問者が数分ゲートの前に立っていると、こうしてアラートが鳴る。
「……管理人でしょうか?」
でも管理人ならセキュリティ登録されているので、指紋認証すればいいはず。
首を傾げながらナオヤくんがゲート前のカメラをモニターに映し出した。すると、そこに映っていたのは……
「お母さん……!?」
私の……愛の、お母さんだった。