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ー/ー
「単なる噂じゃないの? 浅尾さん、かっこいいから」
「でも和馬くんも、浅尾さんがいつも違う女を連れて歩いているの、見かけていたって」
「……昔の話でしょ?」
「それは分かんないけど。あれだけかっこよくて色気がある人だから、納得じゃない? いま彼女いないっていうのは本当らしいけど、釣った魚に餌をやらない男も結構いるしね。もしかしたら、浅尾さんもそういうタイプなんじゃないの……あ、やば。教授のところに行かなきゃ」
言いたいことだけ言って、結衣はバタバタと講義室を出て行った。
男の人は基本的に、追いかける恋のほうが燃える。それは知っている。でも、その後は? 追いかけていた相手をつかまえられたら、もう冷めてしまうのかな。それで別の人に目がいっちゃうの?
「愛茉、大丈夫?」
七海が心配そうな顔を向けてくる。
「え、なにが?」
「いまの話……」
「別に、気にしていないよ」
「愛茉の話を聞く限りでは、浅尾さんはちゃんと、愛茉のこと好きだと思うよ」
「うん、分かってる。早く学食に行こ。お腹空いてきちゃった」
別に、平静を装っているわけじゃない。本当に動揺はしていないの。
ただ、頭は冷静なのに、心の奥には重たい塊がある。それがなんなのかは、よく分からない。その塊は心の中をかき乱すわけでもなく、ただずっと居座っている。だから上手く息ができなくて苦しい。
桔平くんから電話があったのは、その2日後のことだった。
「……声、暗くね?」
「え? そ、そう?」
「なんかあった?」
どうしてすぐに分かるの? 普通にしているつもりなのに。
やっぱり桔平くんに否定してもらわないと、私は安心できないのかな。絶対にそんなことないって言えるほど、私は桔平くんのことを知らないから。
訊いたらいけない。分かっている。でも塊が消えてくれないの。心がずっと重たくて、息苦しいの。
「桔平くんが……彼女いるのに、いろんな人と関係を持っていたって話を聞いて。でも、ただの噂なんでしょ?」
桔平くんは、そんなことする人じゃない。きっと噂なんだよね。ぱっと見とか上辺の言動だけで、周りの人が勝手に桔平くんのイメージをつくっているんだよね。そんなのただの噂だって、早く笑い飛ばしてよ。
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「でも和馬くんも、浅尾さんがいつも違う女を連れて歩いているの、見かけていたって」
「……昔の話でしょ?」
「それは分かんないけど。あれだけかっこよくて色気がある人だから、納得じゃない? いま彼女いないっていうのは本当らしいけど、釣った魚に餌をやらない男も結構いるしね。もしかしたら、浅尾さんもそういうタイプなんじゃないの……あ、やば。教授のところに行かなきゃ」
言いたいことだけ言って、結衣はバタバタと講義室を出て行った。
男の人は基本的に、追いかける恋のほうが燃える。それは知っている。でも、その後は? 追いかけていた相手をつかまえられたら、もう冷めてしまうのかな。それで別の人に目がいっちゃうの?
「愛茉、大丈夫?」
七海が心配そうな顔を向けてくる。
「え、なにが?」
「いまの話……」
「別に、気にしていないよ」
「愛茉の話を聞く限りでは、浅尾さんはちゃんと、愛茉のこと好きだと思うよ」
「うん、分かってる。早く学食に行こ。お腹空いてきちゃった」
別に、平静を装っているわけじゃない。本当に動揺はしていないの。
ただ、頭は冷静なのに、心の奥には重たい塊がある。それがなんなのかは、よく分からない。その塊は心の中をかき乱すわけでもなく、ただずっと居座っている。だから上手く息ができなくて苦しい。
桔平くんから電話があったのは、その2日後のことだった。
「……声、暗くね?」
「え? そ、そう?」
「なんかあった?」
どうしてすぐに分かるの? 普通にしているつもりなのに。
やっぱり桔平くんに否定してもらわないと、私は安心できないのかな。絶対にそんなことないって言えるほど、私は桔平くんのことを知らないから。
訊いたらいけない。分かっている。でも塊が消えてくれないの。心がずっと重たくて、息苦しいの。
「桔平くんが……彼女いるのに、いろんな人と関係を持っていたって話を聞いて。でも、ただの噂なんでしょ?」
桔平くんは、そんなことする人じゃない。きっと噂なんだよね。ぱっと見とか上辺の言動だけで、周りの人が勝手に桔平くんのイメージをつくっているんだよね。そんなのただの噂だって、早く笑い飛ばしてよ。