両手を添えた一本の缶コーヒーが、すっかり冷え切った体をその手だけでもと温めていく。真冬の朝早い時間、真夜中に振っていた雪はようやく止んだが、街灯の足元にうっすらと積もった白色の姿は消えていない。
家の門の前、冷えた塀にもたれた少女は暗い夜空に吐息を浮かべると、静寂の星空へ耳を澄ます。
今か今かと待ちわびるのは、タイヤが回りペダルの軋む自転車の音。他のものとは決して間違えない、聞きなれた音。
思い返すのは、あの夜。離れてしまった手のひら。ようやく見せてくれた彼の涙と笑顔。優しい声に、深海の瞳。
胸がつぶれてしまう前に、コーヒーを一口含んで、少女は喉を潤す。まだ暗い道の向こうを見つめ、ゆっくり瞼を閉じる。
彼がいつ帰ってきてもいいように。戻ってきた時、誰もいないことに、悲しまないように。
離れてしまったこの手を、もう一度強く繋げるように。そう、願いを込めて。