文化祭
16/20(はぁ~、実行委員の仕事、すっかり長引いちゃったなぁ)
文化祭当日の午後6時、私は学校の廊下を小走りで移動していた。窓から見える景色はすっかり薄闇に包まれている。
(詩乃ちゃん、まだ多目的教室にいるかな? もし帰ってたらどうしよう?)
「お~い詩乃ちゃ~ん。実行委員の仕事終わったよぉ~」
ガチャリ。
私は詩乃ちゃんが詩集を販売している多目的教室の扉を開ける。
すると詩乃ちゃんは一人ポツンと机の前に座っていた。
「あっ、美麻里ちゃん……遅かったね」
「ごめん詩乃ちゃん。仕事長引いちゃって」
「うん……待ってた」
扉を閉めながら私は詩乃ちゃんに近づく。
詩乃ちゃんは少し疲れた様子を見せていた。
「どうたった? 詩集の販売」
「うん……売れたよ。7冊ほど」
「そうなんだ! 凄いね! やっぱり詩乃ちゃんって才能あるんだよ!」
「う、うん。買ってもらえてよかった」
詩乃ちゃんは照れ笑いを浮かべる。
私も釣られて笑みを作った。
「前の学校のクラスメイトも来てくれたんだ。そしたら色々お喋りして、詩の販売の手伝いもしてくれた。それで多分、売れたんだと思う」
「……ふぅんそっかぁ。良かったね」
えへへ、という感じで詩乃ちゃんが笑う。
やっぱりちょっと自慢気な感じだった。
「あ、あの……美麻里ちゃん」
「なぁに?」
「明日って文化祭の振替休日……だよね? 予定空いてる?」
「……うん、空いてるけど」
「だ、だったら……」
詩乃ちゃんはもじもじしながら口を開く。
「わ、私の家に来れないかな?」
「詩乃ちゃんの家?」
「う、うん。文化祭はろくに美麻里ちゃんと遊べなかったから、その分休日に遊べたらいいなって。美麻里ちゃんと一緒なら、きっと楽しい……って思うの」
「…………」
詩乃ちゃんは上目遣いにおずおずと私の顔を窺う。
私はそんな緊張した様子を見て、クスリと笑った。
「うんいいよ! 私も詩乃ちゃんの家に行きたいな」
「ほ、ホント!?」
詩乃ちゃんがバッと顔を上げてキラキラと目を輝かせる。
「うん、ホントだよ。文化祭は全然だったけど、私も友達と思い出作りしたいって思ってた所なんだ。あ~あ、こんなことなら実行委員の仕事なんて引き受けなきゃよかった」
「…………」
詩乃ちゃんはじっと私を見つめる。
そして椅子から立ちあがり、どこか改まった態度で言葉を紡いだ。
「あ、あの、美麻里ちゃん……」
「ん? なに?」
「……ありがとう。私と友達になってくれて」
詩乃ちゃんは私に近づき、微笑みを見せる。
「わ、私、引っ越ししてからはずっと塞ぎこんでたけど、こうして美麻里ちゃんが詩の出店に誘ってくれたから、私も勇気を出すことができたんだ。多分私一人じゃ、誰かに詩を見せるなんてことできなかったと思う。美麻里ちゃんと出会えて、本当によかった。
……だから……だから」
詩乃ちゃんが私の傍まで歩み寄り、ぎゅっと私の手を握る。
「これからも、私の親友でいてください! 私の詩、もっと美麻里ちゃんに見てほしい!」
詩乃ちゃんは大きな声で真摯な気持ちを打ち明ける。
その言葉を聞いて、私は胸が熱くなった。
「うん、勿論だよ詩乃ちゃん! 私も詩乃ちゃんと親友になれてよかった! 詩乃ちゃんの詩、たくさん見せてね!」
文化祭当日の午後6時、私は学校の廊下を小走りで移動していた。窓から見える景色はすっかり薄闇に包まれている。
(詩乃ちゃん、まだ多目的教室にいるかな? もし帰ってたらどうしよう?)
「お~い詩乃ちゃ~ん。実行委員の仕事終わったよぉ~」
ガチャリ。
私は詩乃ちゃんが詩集を販売している多目的教室の扉を開ける。
すると詩乃ちゃんは一人ポツンと机の前に座っていた。
「あっ、美麻里ちゃん……遅かったね」
「ごめん詩乃ちゃん。仕事長引いちゃって」
「うん……待ってた」
扉を閉めながら私は詩乃ちゃんに近づく。
詩乃ちゃんは少し疲れた様子を見せていた。
「どうたった? 詩集の販売」
「うん……売れたよ。7冊ほど」
「そうなんだ! 凄いね! やっぱり詩乃ちゃんって才能あるんだよ!」
「う、うん。買ってもらえてよかった」
詩乃ちゃんは照れ笑いを浮かべる。
私も釣られて笑みを作った。
「前の学校のクラスメイトも来てくれたんだ。そしたら色々お喋りして、詩の販売の手伝いもしてくれた。それで多分、売れたんだと思う」
「……ふぅんそっかぁ。良かったね」
えへへ、という感じで詩乃ちゃんが笑う。
やっぱりちょっと自慢気な感じだった。
「あ、あの……美麻里ちゃん」
「なぁに?」
「明日って文化祭の振替休日……だよね? 予定空いてる?」
「……うん、空いてるけど」
「だ、だったら……」
詩乃ちゃんはもじもじしながら口を開く。
「わ、私の家に来れないかな?」
「詩乃ちゃんの家?」
「う、うん。文化祭はろくに美麻里ちゃんと遊べなかったから、その分休日に遊べたらいいなって。美麻里ちゃんと一緒なら、きっと楽しい……って思うの」
「…………」
詩乃ちゃんは上目遣いにおずおずと私の顔を窺う。
私はそんな緊張した様子を見て、クスリと笑った。
「うんいいよ! 私も詩乃ちゃんの家に行きたいな」
「ほ、ホント!?」
詩乃ちゃんがバッと顔を上げてキラキラと目を輝かせる。
「うん、ホントだよ。文化祭は全然だったけど、私も友達と思い出作りしたいって思ってた所なんだ。あ~あ、こんなことなら実行委員の仕事なんて引き受けなきゃよかった」
「…………」
詩乃ちゃんはじっと私を見つめる。
そして椅子から立ちあがり、どこか改まった態度で言葉を紡いだ。
「あ、あの、美麻里ちゃん……」
「ん? なに?」
「……ありがとう。私と友達になってくれて」
詩乃ちゃんは私に近づき、微笑みを見せる。
「わ、私、引っ越ししてからはずっと塞ぎこんでたけど、こうして美麻里ちゃんが詩の出店に誘ってくれたから、私も勇気を出すことができたんだ。多分私一人じゃ、誰かに詩を見せるなんてことできなかったと思う。美麻里ちゃんと出会えて、本当によかった。
……だから……だから」
詩乃ちゃんが私の傍まで歩み寄り、ぎゅっと私の手を握る。
「これからも、私の親友でいてください! 私の詩、もっと美麻里ちゃんに見てほしい!」
詩乃ちゃんは大きな声で真摯な気持ちを打ち明ける。
その言葉を聞いて、私は胸が熱くなった。
「うん、勿論だよ詩乃ちゃん! 私も詩乃ちゃんと親友になれてよかった! 詩乃ちゃんの詩、たくさん見せてね!」
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