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 とりあえずパンダの展示スペースから離れて、動物たちを眺めながら、まだ人が少ない西園まで行って不忍池テラスでひと休みすることにした。

 ずっと立っていたから少し足が痛かったんだけど、私がなにも言わなくても桔平くんは気遣ってくれて。座るところがあってよかった。
 
「あぁそういや、ハトがいいわ。パンダよりはハトになってみてぇ」
「ハト?」

 不忍池をぼんやり眺めながら、桔平くんがまた変なことを言いはじめた。

「ハトは動物の中でも特に色の識別能力に優れてて、20色も識別できるらしいんだよ。どんな世界が見えているのか、すっげぇ興味ある」

 そう話す桔平くんの表情は、まるで子供みたい。最初はなにを考えているのかよく分からない人って印象だったけれど、意外と興味の有無が顔に出るんだよね。そういうところが、なんだか可愛く思えてきた。

「でもハトになったら絵は描けないよ」
「そうだよなぁ。ハトの眼球だけ移植できねぇのかな」

 真面目な顔をして言うのが、すごくおかしい。割と本気で思っている? クールな人かと思いきや、結構とぼけたところがあるのかもしれない。
 
「足、大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「んじゃ、そろそろほかの動物も観に行くか」

 本当は、ふたりでぼんやり景色を眺めているだけでも心地よかったんだけど。桔平くんの独特な空気というか、マイペースさが伝染する感じで。

 でもせっかく動物園に来たんだから、いろいろ回らないとね。
 
「ん」

 桔平くんが左肘を突き出す。そして私がその袖を掴んだのを確認してから、ゆっくり歩き出した。
 
「今日は愛茉の顔が近いなって思ったけど、結構厚底の靴履いてんだな」
「う、うん。歩きやすいから……」

 言えない。少しでも桔平くんにつり合いたかったからなんて、絶対に言えない。

「ずいぶんちびっこいけど、身長何㎝?」
「153……かな」
「じゃあ29㎝差か。どうりで、ちっさく感じるわけだ」

 桔平くん、182cmもあるんだ……顔が小さいし手足は長いし、本当にモデルさんみたい。

 並んでいて変じゃないかな。私の背が低いから、アンバランスに見えない? でも顔の可愛さでカバーできるよね。私ぐらい可愛い子なんて、そうそういないもんね。


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 とりあえずパンダの展示スペースから離れて、動物たちを眺めながら、まだ人が少ない西園まで行って不忍池テラスでひと休みすることにした。
 ずっと立っていたから少し足が痛かったんだけど、私がなにも言わなくても桔平くんは気遣ってくれて。座るところがあってよかった。
「あぁそういや、ハトがいいわ。パンダよりはハトになってみてぇ」
「ハト?」
 不忍池をぼんやり眺めながら、桔平くんがまた変なことを言いはじめた。
「ハトは動物の中でも特に色の識別能力に優れてて、20色も識別できるらしいんだよ。どんな世界が見えているのか、すっげぇ興味ある」
 そう話す桔平くんの表情は、まるで子供みたい。最初はなにを考えているのかよく分からない人って印象だったけれど、意外と興味の有無が顔に出るんだよね。そういうところが、なんだか可愛く思えてきた。
「でもハトになったら絵は描けないよ」
「そうだよなぁ。ハトの眼球だけ移植できねぇのかな」
 真面目な顔をして言うのが、すごくおかしい。割と本気で思っている? クールな人かと思いきや、結構とぼけたところがあるのかもしれない。
「足、大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「んじゃ、そろそろほかの動物も観に行くか」
 本当は、ふたりでぼんやり景色を眺めているだけでも心地よかったんだけど。桔平くんの独特な空気というか、マイペースさが伝染する感じで。
 でもせっかく動物園に来たんだから、いろいろ回らないとね。
「ん」
 桔平くんが左肘を突き出す。そして私がその袖を掴んだのを確認してから、ゆっくり歩き出した。
「今日は愛茉の顔が近いなって思ったけど、結構厚底の靴履いてんだな」
「う、うん。歩きやすいから……」
 言えない。少しでも桔平くんにつり合いたかったからなんて、絶対に言えない。
「ずいぶんちびっこいけど、身長何㎝?」
「153……かな」
「じゃあ29㎝差か。どうりで、ちっさく感じるわけだ」
 桔平くん、182cmもあるんだ……顔が小さいし手足は長いし、本当にモデルさんみたい。
 並んでいて変じゃないかな。私の背が低いから、アンバランスに見えない? でも顔の可愛さでカバーできるよね。私ぐらい可愛い子なんて、そうそういないもんね。