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1.咲き誇りし華の根源-1

ー/ー



 夜闇に黒く沈んだ窓硝子が、執務室の風景を映し出す――。
 メイシアとの電話のあとすぐ、ルイフォンは緊急の会議を開くために皆を集めた。
 鷹刀一族総帥イーレオと、護衛のチャオラウ。次期総帥エルファンに、総帥の補佐たるミンウェイ。
 そして、鷹刀一族の『対等な協力者』〈(フェレース)〉こと、ルイフォン――の五人。
 すっかり寂しくなってしまった光景に、ルイフォンの胸が痛む。
 しかし、それは今だけだ。すぐにメイシアとリュイセンを取り戻してみせる。
 ルイフォンは心の中で誓い、猫の目を鋭く光らせる。拳をぐっと握りしめ、決意も新たに口火を切った。
「こんな夜遅い時間にすまない。先ほど予定通り、無事にメイシアと連絡を取ることができた。それで俺から――〈(フェレース)〉から、今後について提案がある」
 端的なテノールが響き渡る。
 場の空気が研ぎ澄まされ、一気に緊張を帯びていくのが分かる。おそらく誰もが、この言葉を待っていたのだ。
「ルイフォン。お前のことだ、その策に自信があるんだろう?」
 美麗な口元をほころばせながら、イーレオが問う。眼鏡の奥の目は、いたずらを思いついた子供のように楽しげに細められていた。
「ああ、勿論だ」
「そうだろうと思って、ハオリュウとシュアンにも連絡を入れておいた。急なことだから、さすがにハオリュウは無理だったが、シュアンはあとから来るそうだ。待たせるのは悪いから、先に話を始めていてほしいと言われている」
「!」
 ルイフォンは目を見開いた。
 内容も聞かずに彼らに声を掛けるということは、全面的にルイフォンを信頼し、その案を採用するつもりでいるということだ。
 握りしめた掌が、うっすらと汗を帯びる。
「ハオリュウには、メイシアが電話すると言っていたから、彼にも話がいくはずだ」
 平静を保ち、ルイフォンは言う。
「ああ、そうか。そうだな。それがいい」
 魅惑の低音が、安堵に溶けた。
 愛する異母姉をリュイセンにさらわれたハオリュウは、一時は鷹刀一族に絶縁状を叩きつけんばかりに怒り狂った。その非難の言葉の数々を、凶賊(ダリジィン)の総帥たるイーレオが、ひとことの弁解もなく黙って受け入れたという。
 イーレオは、その一幕を思い出していたに違いない。それで、ハオリュウは今ごろ、メイシアの声を聞いて一安心だと、胸を撫で下ろしたのだろう。
 ルイフォンは、ぐるりと皆の顔に瞳を巡らせ、最後にミンウェイの美貌の上で目を止めた。
 生粋の鷹刀一族の顔立ちであるが、その(つや)やかな黒髪は本来の直毛ではなく、豪奢に波を打っている。『母親の身代わり、という心の檻から出てらっしゃい』と、ミンウェイがこの屋敷に来たとき、世話を焼いたユイランが掛けた変身の魔法だ。
(ムスカ)〉に――ヘイシャオに、溺愛という支配を受けていたミンウェイ。彼女が――彼女の『秘密』が、この先の鍵となる……。
 ルイフォンは、ごくりと唾を呑み込んだ。
「まず、メイシアとの電話の内容を報告する」
 そう言って、彼は話を始めた。


「……――つまり現状でも、タオロンに依頼をすれば、鷹刀が一族の意志と決めた『死』を〈(ムスカ)〉に与え、メイシアを救出することができる。だが、ほぼ部外者のタオロンにすべてを託すのは、道理に合わないと俺は考える」
 ルイフォンは、そこで言葉を切った。
 ここからが本題だ。
「〈(ムスカ)〉は、もと一族であるヘイシャオを生き返らせた『もの』だ。そして奴を作ったのは、鷹刀の血を引く俺の異父姉、セレイエ。――ならば〈(ムスカ)〉に関する責任は、鷹刀にあるといえる。故に、奴に『死』を与える者は、一族の人間であるべきだ」
 ルイフォンは語気を強めて言い放ち、大きく息を吸う。自然と胸を張る姿勢になり、反らされた背中の上で金の鈴が煌めいた。
 そして彼は、その名を挙げる。
「すなわち、リュイセン!」
 告げた瞬間、皆が色めきだった。
 誰もが、何かを内に抱えた顔になる。しかし構わずに、ルイフォンは続けた。
「現状において〈(ムスカ)〉の最も近くにいる一族の者。難攻不落のあの庭園に、既に侵入を果たしている人物だ。彼をおいて、他に適任者はいない」
 挑発的ともいえる眼差しで、ルイフォンはイーレオを見やる。
「よって〈(フェレース)〉は、『鷹刀の後継者』たる、鷹刀リュイセンに〈(ムスカ)〉を討ち取らせることを提案する!」
 力強いテノールが、執務室の窓硝子を震わせた。
 湧き上がる高揚に、知れず全身が上気する。
 リュイセンの追放処分を承知していて、あえて『鷹刀の後継者』と口にした。それに対し、イーレオがどんな反応を示すか――。
「〈(フェレース)〉」
 感情という揺らぎを消し去った、凪いだ海のような声が響いた。ルイフォンの思惑を探るべく、無風を保つ――イーレオの低音は、そんな色合いをしていた。
「リュイセンは、一族から除籍されている。故に、鷹刀とは無関係だ」
「分かっている。だから、リュイセンがことを()したあとで構わない、遡って、追放を取り消せばいい」
 当然、来るであろうと思っていた言葉を、用意しておいた台詞で返す。
 間髪を()れずのルイフォンに、イーレオは「ふむ……」と呟いた。神妙な顔をしつつも、片頬杖(かたほおづえ)で潰されていないほうの頬が、ぴくりと動く。いい手応えだと、ルイフォンは内心でほくそ笑んだ。
 崩した姿勢のままのイーレオは、視線を上げることでルイフォンの顔をじっと見つめ、そして問う。
「つまりお前は、リュイセンが〈(ムスカ)〉を討つことを条件に、リュイセンの追放を解いてほしい、と言っているわけか」
「そういうことだ」
「ほう? リュイセンは、お前のメイシアをさらった張本人だぞ。どうして、肩入れをする?」
 ルイフォンの思惑を知ったからだろう。イーレオは態度を一変させ、興味津々といった表情を隠しもせずに揶揄混じりの口角を上げた。
「俺だって、初めはリュイセンを絶対に許せねぇと思ったさ。……でも、違うだろ? あいつが好きで俺を裏切るわけがない。そんなことは分かりきっている。何か事情があるんだ。――だったら、俺のほうから手を差し伸べてやるべきだろ?」
 猫の目を光らせ、きっぱりと言い切る。そう思えるようになるまでには、それなりの葛藤があったが、もう過去の話だ。
 さも当然、といった(てい)のルイフォンに、イーレオが低く嗤う。
「だが、今のリュイセンは『敵』だ。〈(ムスカ)〉の部下になっている。そのリュイセンに、どうやって〈(ムスカ)〉を討たせるつもりだ?」
「リュイセンは〈(ムスカ)〉に脅されて従っているだけだ。だから俺が――〈(フェレース)〉が、その原因を取り除いて、あいつを〈(ムスカ)〉の束縛から解放すればいい」
 鋭く斬り込むような返答。そして、それを皆のざわめきが包み込む。
 イーレオにとっても、予想外の宣言だったらしい。総帥たる彼が、驚きに声を揺らす。
「お前は、リュイセンが〈(ムスカ)〉に従っている理由を解き明かした――ということか?」
「理由を読み解いた――だ。だから、まだ憶測に過ぎないけどな……」
 ルイフォンの口の中に、苦いものが混じる。それまで威勢のよかった口調が急速に力を失い、ぽつりとした呟きに変わる。
「……でも、あいつが俺にすら隠して、すべてを裏切るしかなかった理由なんて、他にあり得ない……」
「ルイフォン! それは、いったい何!?」
 弱々しく消えていくテノールの語尾と、弾かれたような草の香りが空中でぶつかり合った。
 見れば、ミンウェイがソファーから立ち上がり、波打つ髪をなびかせている。
「ミンウェイ……」
「教えて! リュイセンは、私のために裏切ったんでしょう?」
「あ、ああ……」
 ルイフォンは迫力に()されて思わず頷き、慌てて「でも、お前が悪いわけじゃない!」と、付け加えた。
「俺は――〈(フェレース)〉は、リュイセンが〈(ムスカ)〉に従った理由をこう考えている。根拠は、メイシアからの情報だ」
 聡明なメイシアは、〈(ムスカ)〉から重要な情報を聞き出してくれていた。
 彼女は、〈(ムスカ)〉にこう言われたという。

『リュイセンと私は、〈ベラドンナ〉の『秘密』を共有する同志となったのですよ』

 その『秘密』とは、ミンウェイ本人が知らない――ミンウェイが『知りたくもない』ようなものらしい。
 つまり、ミンウェイが知れば深く傷つくであろう、重大で、そして非道な『秘密』ということだ。
「リュイセンは、ミンウェイの『秘密』を無理やり聞かされたんだ。そして、『秘密』を知ったことで、あいつは〈(ムスカ)〉に従うようになった。――ならば、〈(ムスカ)〉が使った脅し文句は、これしかない」
 ルイフォンは言葉を切り、〈(ムスカ)〉の声色を真似るかのように、一段、低い声を作る。

「『この『秘密』を『ミンウェイ本人』にバラされたくなければ、私に従え』」

 ――一瞬の沈黙。
 それから、誰からともなく、ざわめきの吐息が漏れた。
「なるほど」
 皆を代表するかのように、イーレオが相槌を打つ。
「ミンウェイを傷つけるような『秘密』から彼女を守るために、リュイセンは裏切った――ということか。あり得る……いや、それが真実なのだろう。ルイフォンの――〈(フェレース)〉の言う通りに」
「――じゃ、じゃあ、リュイセンが〈(ムスカ)〉の言いなりになってまで、私から隠したいほどの重大な『秘密』って、なんなの……?」
 紅の取れかけた唇を震わせ、ミンウェイが割り込むようにして尋ねた。勢いに反して、その声はか細くかすれており、漠然とした不安に駆られたのか、彼女の顔はみるみるうちに蒼白になる。
 それは、当然の質問――予期していた質問だった。
 ルイフォンは唇を噛み、しかし「すまん」と、はっきりと告げた。
「その答えは少し待ってほしい。勿論、『秘密』に心当たりはある。けど、そこがさっき『憶測に過ぎない』と言っていた部分で、俺の頭の中では理屈は成立しているけど、証拠がない。まだ空論でしかないんだ。だから、証拠を掴むまで――」
「小難しいことを言ってないで、心当たりがあるなら、さっさと教えなさいよ!」
 絹を裂くような声が、ルイフォンを遮った。青白い顔で精いっぱいの虚勢を張りながら、ミンウェイは唇を(とが)らせる。
 けれど、ルイフォンも引くわけにはいかなかった。
 これは、リュイセンがすべてと引き換えにしてでも、ミンウェイから隠そうとした『秘密』なのだ。憶測の段階で、おいそれと口にしてよいものではないはずだ。
「ミンウェイ、本当にすまない。でも、俺の憶測は、お前を傷つけるものなんだ。俺は自分の考えが正しいと思っているけど、万が一、見当違いだったら申し訳が立たない。――だから、まずは調べたい。そして、証拠を手に入れてから、きちんと説明したい」
「そこまで言っておいて、重要なところで黙るなんて、おかしいわ!」
 ミンウェイはルイフォンを睨みつけるように柳眉を逆立て、更に言葉を重ねる。
「だって、ルイフォンは自分の理屈に自信があるんでしょ!? ならば言うべきだわ! 私も、あなたの頭の良さは認めているし、憶測が外れている可能性があることも承知したわ!」
「……っ」
 言葉を詰まらせたルイフォンに、「〈(フェレース)〉」と低い声が掛かった。
「お前はさっき、『リュイセンが〈(ムスカ)〉に脅されている原因を取り除いて、あいつを〈(ムスカ)〉の束縛から解放する』と言ったな」
「あ、ああ」
「それはつまり、ミンウェイが『秘密』を知ることで、『秘密』を『秘密』でなくする。そして、リュイセンが〈(ムスカ)〉に従う理由を失わせる。――ということだな?」
「……そうだ」
「だったら、ミンウェイに教えなければ意味がないだろう?」
 押さえつけるようなイーレオの物言いに、ルイフォンは猫の目を(とが)らせる。
「だから! きちんと証拠を手に入れてから、だ! 〈(フェレース)〉は、いい加減な情報でミンウェイを翻弄させるような真似はしたくない」
 ルイフォンが正面から対峙すると、イーレオは表情の読めない美貌で畳み掛けた。
「では、その証拠はどこにあると踏んでいる?」
「生前のヘイシャオが〈七つの大罪〉に提出した研究報告書に載っていると思う。ヘイシャオの研究室を家探しするか、〈七つの大罪〉に侵入(クラッキング)をかけるかで手に入れる」
 答えながら、説得力に欠けるな、とルイフォンは奥歯を噛んだ。案の定、イーレオが鼻で笑った。
「だったら、なおのこと、ミンウェイに憶測とやらを話して協力を願うべきだろう。ヘイシャオの研究室は、ミンウェイが昔、住んでいた家にあるんだからな」
「…………」
 ルイフォンの溜め息が、虚空に溶けた。
 ミンウェイに『秘密』を隠したまま、この作戦を認めてもらうのは無理だろうと、初めから分かっていた。だが、言いたくなかったのだ。……せめて、証拠を掴むまでは。
 それは、ケジメのようなもので、リュイセンへの義理立てのような感情だ。
 何故なら、ミンウェイに『秘密』を教えることは、リュイセンがすべてを裏切り、失うことを対価に守ろうとした、ミンウェイの心の安寧を奪い去ることになるからだ。すなわち、リュイセンの愛を踏みにじる行為なのだから……。
 うなだれたルイフォンに、イーレオの低音が落とされる。
「鷹刀の総帥として、『対等な協力者』である〈(フェレース)〉に要請する。お前の憶測を詳しく話せ」
「……『要請』じゃなくて『命令』――だろ」
 王者の傲然たる美貌を見上げ、ルイフォンは、うそぶく。だが彼自身、自分のほうが道理が通っていないのは分かりきっていた。
 彼は観念したように力なく姿勢を正し、ゆっくりと口を開く。
「ミンウェイの『秘密』――それは、ミンウェイが『健康であること』だ」
「……なっ!? 私の健康が、どうして『秘密』なのよ!?」
 詰め寄るミンウェイに、しかしルイフォンは、彼女から逃げるように顔をそむけた。そして、『彼女以外の三人』に向かって問いかける。
「親父、エルファン、チャオラウ……。古い時代の鷹刀を知っている者なら、不思議に思っていたんじゃないのか……? 病弱な母親から生まれたミンウェイが、何故、健康なのだろう――って」
 彼らは皆、一様にびくりと体を震わせた。
 予想通りの反応など、まるで嬉しくなかった。ルイフォンは小さく息を吐き、無表情の〈(フェレース)〉の顔となって、イーレオを捕らえる。
「親父……、生前のヘイシャオとの最後の電話――あれは、ミンウェイが生まれるよりも前だよな? 内容……ちゃんと覚えているか?」
 刹那――。
 イーレオは頬杖の手から顔を浮かせ、凶賊(ダリジィン)の総帥らしからぬ動揺をあらわにした。
「そういう……ことか…………!」
「……ああ。ずっと言っている通り、憶測に過ぎないけどな。……でも、それしか考えられないだろ?」
 ミンウェイが『健康であること』に秘密があるのではないかと疑ったのは、ルイフォンがシュアンと話したときのことだった。
 シュアンは、〈(ムスカ)〉は『ミンウェイの命』を盾にリュイセンを脅したに違いない、と主張していた。『〈(ムスカ)〉の持っている薬を投与しなければ、ミンウェイが死ぬ』といった類の嘘に乗せられ、リュイセンはありもしない薬を得るために裏切ったのだと。
 だが、リュイセンに嘘は通用しないのだ。
 大局的に本質を見抜く、天性の勘を持った兄貴分は、それが嘘なら絶対に騙されない。彼が信じたのなら、それは真実なのだ。『抗いようもない事実(ネタ)』を提示され、リュイセンは身動きを取れなくなったのだ。
 では、『抗いようもない事実(ネタ)』とは何か――?
 そう考えたとき、リュイセンの兄、レイウェンの憂い顔が蘇った。古い時代の鷹刀を知る、最後の直系である彼は、育たなかった兄弟たちのことを今でも悼み続けていた。
 鷹刀一族にとって『健康であること』は尊く、そして『稀有』。
「この『秘密』は、ミンウェイ本人は知らないだろう。そして、ヘイシャオの記憶を持つ〈(ムスカ)〉なら知っている。――メイシアが聞き出した〈(ムスカ)〉の言葉とも、辻褄が合う」
「……なるほどな」
 深い溜め息と共に、イーレオがソファーに身を投げ出した。頭を抱えるように髪を掻き上げると、はらはらと落ちる黒髪が美貌に影を落とす。
「ルイフォン? ど……、どういうことよ!? ――お祖父様……! どういう意味でしょうか!」
 ミンウェイが声を張り上げた。
 だが、打ちひしがれたようなイーレオの姿は変わらず、ならばと、彼女はエルファンとチャオラウに救いを求めて視線を送るが、彼らもイーレオと同様の顔で押し黙ったままだった。
「ちょっ、ちょっと……ルイフォン! 私だけが置いてきぼりだわ!」
 彼女は声を(とが)らせ、ぎろりと彼を睨みつける。――が、その唇は心細げに、わなないていた。
「き、きちんと説明しなさい!」
「あ、ああ……。すまん……、……っ」
 ルイフォンは、ミンウェイの一族そのものの美貌と向き合い、しかし、言いよどむ。
「ルイフォン!」
 ミンウェイは高い鼻梁をつんと上に向け、歯切れの悪い彼に畳み掛けるように続けようとして……そこで一度、息を止める。陶器のような白い喉が、こくりと動いた。
 それから、意を決したように――問う。
「つまり……、私の健康は作られたものだった、ってこと……? リュイセンは、それを秘密にしておくために〈(ムスカ)〉に従ったというの!?」
 鮮やかな緋色の衣服が、炎のように見えた。
 烈火をまとうミンウェイは、絶対に引かぬと(あで)やかに咲き誇った。


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 夜闇に黒く沈んだ窓硝子が、執務室の風景を映し出す――。
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 すっかり寂しくなってしまった光景に、ルイフォンの胸が痛む。
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 場の空気が研ぎ澄まされ、一気に緊張を帯びていくのが分かる。おそらく誰もが、この言葉を待っていたのだ。
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 美麗な口元をほころばせながら、イーレオが問う。眼鏡の奥の目は、いたずらを思いついた子供のように楽しげに細められていた。
「ああ、勿論だ」
「そうだろうと思って、ハオリュウとシュアンにも連絡を入れておいた。急なことだから、さすがにハオリュウは無理だったが、シュアンはあとから来るそうだ。待たせるのは悪いから、先に話を始めていてほしいと言われている」
「!」
 ルイフォンは目を見開いた。
 内容も聞かずに彼らに声を掛けるということは、全面的にルイフォンを信頼し、その案を採用するつもりでいるということだ。
 握りしめた掌が、うっすらと汗を帯びる。
「ハオリュウには、メイシアが電話すると言っていたから、彼にも話がいくはずだ」
 平静を保ち、ルイフォンは言う。
「ああ、そうか。そうだな。それがいい」
 魅惑の低音が、安堵に溶けた。
 愛する異母姉をリュイセンにさらわれたハオリュウは、一時は鷹刀一族に絶縁状を叩きつけんばかりに怒り狂った。その非難の言葉の数々を、|凶賊《ダリジィン》の総帥たるイーレオが、ひとことの弁解もなく黙って受け入れたという。
 イーレオは、その一幕を思い出していたに違いない。それで、ハオリュウは今ごろ、メイシアの声を聞いて一安心だと、胸を撫で下ろしたのだろう。
 ルイフォンは、ぐるりと皆の顔に瞳を巡らせ、最後にミンウェイの美貌の上で目を止めた。
 生粋の鷹刀一族の顔立ちであるが、その|艷《つや》やかな黒髪は本来の直毛ではなく、豪奢に波を打っている。『母親の身代わり、という心の檻から出てらっしゃい』と、ミンウェイがこの屋敷に来たとき、世話を焼いたユイランが掛けた変身の魔法だ。
〈|蝿《ムスカ》〉に――ヘイシャオに、溺愛という支配を受けていたミンウェイ。彼女が――彼女の『秘密』が、この先の鍵となる……。
 ルイフォンは、ごくりと唾を呑み込んだ。
「まず、メイシアとの電話の内容を報告する」
 そう言って、彼は話を始めた。
「……――つまり現状でも、タオロンに依頼をすれば、鷹刀が一族の意志と決めた『死』を〈|蝿《ムスカ》〉に与え、メイシアを救出することができる。だが、ほぼ部外者のタオロンにすべてを託すのは、道理に合わないと俺は考える」
 ルイフォンは、そこで言葉を切った。
 ここからが本題だ。
「〈|蝿《ムスカ》〉は、もと一族であるヘイシャオを生き返らせた『もの』だ。そして奴を作ったのは、鷹刀の血を引く俺の異父姉、セレイエ。――ならば〈|蝿《ムスカ》〉に関する責任は、鷹刀にあるといえる。故に、奴に『死』を与える者は、一族の人間であるべきだ」
 ルイフォンは語気を強めて言い放ち、大きく息を吸う。自然と胸を張る姿勢になり、反らされた背中の上で金の鈴が煌めいた。
 そして彼は、その名を挙げる。
「すなわち、リュイセン!」
 告げた瞬間、皆が色めきだった。
 誰もが、何かを内に抱えた顔になる。しかし構わずに、ルイフォンは続けた。
「現状において〈|蝿《ムスカ》〉の最も近くにいる一族の者。難攻不落のあの庭園に、既に侵入を果たしている人物だ。彼をおいて、他に適任者はいない」
 挑発的ともいえる眼差しで、ルイフォンはイーレオを見やる。
「よって〈|猫《フェレース》〉は、『鷹刀の後継者』たる、鷹刀リュイセンに〈|蝿《ムスカ》〉を討ち取らせることを提案する!」
 力強いテノールが、執務室の窓硝子を震わせた。
 湧き上がる高揚に、知れず全身が上気する。
 リュイセンの追放処分を承知していて、あえて『鷹刀の後継者』と口にした。それに対し、イーレオがどんな反応を示すか――。
「〈|猫《フェレース》〉」
 感情という揺らぎを消し去った、凪いだ海のような声が響いた。ルイフォンの思惑を探るべく、無風を保つ――イーレオの低音は、そんな色合いをしていた。
「リュイセンは、一族から除籍されている。故に、鷹刀とは無関係だ」
「分かっている。だから、リュイセンがことを|為《な》したあとで構わない、遡って、追放を取り消せばいい」
 当然、来るであろうと思っていた言葉を、用意しておいた台詞で返す。
 間髪を|容《い》れずのルイフォンに、イーレオは「ふむ……」と呟いた。神妙な顔をしつつも、|片頬杖《かたほおづえ》で潰されていないほうの頬が、ぴくりと動く。いい手応えだと、ルイフォンは内心でほくそ笑んだ。
 崩した姿勢のままのイーレオは、視線を上げることでルイフォンの顔をじっと見つめ、そして問う。
「つまりお前は、リュイセンが〈|蝿《ムスカ》〉を討つことを条件に、リュイセンの追放を解いてほしい、と言っているわけか」
「そういうことだ」
「ほう? リュイセンは、お前のメイシアをさらった張本人だぞ。どうして、肩入れをする?」
 ルイフォンの思惑を知ったからだろう。イーレオは態度を一変させ、興味津々といった表情を隠しもせずに揶揄混じりの口角を上げた。
「俺だって、初めはリュイセンを絶対に許せねぇと思ったさ。……でも、違うだろ? あいつが好きで俺を裏切るわけがない。そんなことは分かりきっている。何か事情があるんだ。――だったら、俺のほうから手を差し伸べてやるべきだろ?」
 猫の目を光らせ、きっぱりと言い切る。そう思えるようになるまでには、それなりの葛藤があったが、もう過去の話だ。
 さも当然、といった|体《てい》のルイフォンに、イーレオが低く嗤う。
「だが、今のリュイセンは『敵』だ。〈|蝿《ムスカ》〉の部下になっている。そのリュイセンに、どうやって〈|蝿《ムスカ》〉を討たせるつもりだ?」
「リュイセンは〈|蝿《ムスカ》〉に脅されて従っているだけだ。だから俺が――〈|猫《フェレース》〉が、その原因を取り除いて、あいつを〈|蝿《ムスカ》〉の束縛から解放すればいい」
 鋭く斬り込むような返答。そして、それを皆のざわめきが包み込む。
 イーレオにとっても、予想外の宣言だったらしい。総帥たる彼が、驚きに声を揺らす。
「お前は、リュイセンが〈|蝿《ムスカ》〉に従っている理由を解き明かした――ということか?」
「理由を読み解いた――だ。だから、まだ憶測に過ぎないけどな……」
 ルイフォンの口の中に、苦いものが混じる。それまで威勢のよかった口調が急速に力を失い、ぽつりとした呟きに変わる。
「……でも、あいつが俺にすら隠して、すべてを裏切るしかなかった理由なんて、他にあり得ない……」
「ルイフォン! それは、いったい何!?」
 弱々しく消えていくテノールの語尾と、弾かれたような草の香りが空中でぶつかり合った。
 見れば、ミンウェイがソファーから立ち上がり、波打つ髪をなびかせている。
「ミンウェイ……」
「教えて! リュイセンは、私のために裏切ったんでしょう?」
「あ、ああ……」
 ルイフォンは迫力に|圧《お》されて思わず頷き、慌てて「でも、お前が悪いわけじゃない!」と、付け加えた。
「俺は――〈|猫《フェレース》〉は、リュイセンが〈|蝿《ムスカ》〉に従った理由をこう考えている。根拠は、メイシアからの情報だ」
 聡明なメイシアは、〈|蝿《ムスカ》〉から重要な情報を聞き出してくれていた。
 彼女は、〈|蝿《ムスカ》〉にこう言われたという。
『リュイセンと私は、〈ベラドンナ〉の『秘密』を共有する同志となったのですよ』
 その『秘密』とは、ミンウェイ本人が知らない――ミンウェイが『知りたくもない』ようなものらしい。
 つまり、ミンウェイが知れば深く傷つくであろう、重大で、そして非道な『秘密』ということだ。
「リュイセンは、ミンウェイの『秘密』を無理やり聞かされたんだ。そして、『秘密』を知ったことで、あいつは〈|蝿《ムスカ》〉に従うようになった。――ならば、〈|蝿《ムスカ》〉が使った脅し文句は、これしかない」
 ルイフォンは言葉を切り、〈|蝿《ムスカ》〉の声色を真似るかのように、一段、低い声を作る。
「『この『秘密』を『ミンウェイ本人』にバラされたくなければ、私に従え』」
 ――一瞬の沈黙。
 それから、誰からともなく、ざわめきの吐息が漏れた。
「なるほど」
 皆を代表するかのように、イーレオが相槌を打つ。
「ミンウェイを傷つけるような『秘密』から彼女を守るために、リュイセンは裏切った――ということか。あり得る……いや、それが真実なのだろう。ルイフォンの――〈|猫《フェレース》〉の言う通りに」
「――じゃ、じゃあ、リュイセンが〈|蝿《ムスカ》〉の言いなりになってまで、私から隠したいほどの重大な『秘密』って、なんなの……?」
 紅の取れかけた唇を震わせ、ミンウェイが割り込むようにして尋ねた。勢いに反して、その声はか細くかすれており、漠然とした不安に駆られたのか、彼女の顔はみるみるうちに蒼白になる。
 それは、当然の質問――予期していた質問だった。
 ルイフォンは唇を噛み、しかし「すまん」と、はっきりと告げた。
「その答えは少し待ってほしい。勿論、『秘密』に心当たりはある。けど、そこがさっき『憶測に過ぎない』と言っていた部分で、俺の頭の中では理屈は成立しているけど、証拠がない。まだ空論でしかないんだ。だから、証拠を掴むまで――」
「小難しいことを言ってないで、心当たりがあるなら、さっさと教えなさいよ!」
 絹を裂くような声が、ルイフォンを遮った。青白い顔で精いっぱいの虚勢を張りながら、ミンウェイは唇を|尖《とが》らせる。
 けれど、ルイフォンも引くわけにはいかなかった。
 これは、リュイセンがすべてと引き換えにしてでも、ミンウェイから隠そうとした『秘密』なのだ。憶測の段階で、おいそれと口にしてよいものではないはずだ。
「ミンウェイ、本当にすまない。でも、俺の憶測は、お前を傷つけるものなんだ。俺は自分の考えが正しいと思っているけど、万が一、見当違いだったら申し訳が立たない。――だから、まずは調べたい。そして、証拠を手に入れてから、きちんと説明したい」
「そこまで言っておいて、重要なところで黙るなんて、おかしいわ!」
 ミンウェイはルイフォンを睨みつけるように柳眉を逆立て、更に言葉を重ねる。
「だって、ルイフォンは自分の理屈に自信があるんでしょ!? ならば言うべきだわ! 私も、あなたの頭の良さは認めているし、憶測が外れている可能性があることも承知したわ!」
「……っ」
 言葉を詰まらせたルイフォンに、「〈|猫《フェレース》〉」と低い声が掛かった。
「お前はさっき、『リュイセンが〈|蝿《ムスカ》〉に脅されている原因を取り除いて、あいつを〈|蝿《ムスカ》〉の束縛から解放する』と言ったな」
「あ、ああ」
「それはつまり、ミンウェイが『秘密』を知ることで、『秘密』を『秘密』でなくする。そして、リュイセンが〈|蝿《ムスカ》〉に従う理由を失わせる。――ということだな?」
「……そうだ」
「だったら、ミンウェイに教えなければ意味がないだろう?」
 押さえつけるようなイーレオの物言いに、ルイフォンは猫の目を|尖《とが》らせる。
「だから! きちんと証拠を手に入れてから、だ! 〈|猫《フェレース》〉は、いい加減な情報でミンウェイを翻弄させるような真似はしたくない」
 ルイフォンが正面から対峙すると、イーレオは表情の読めない美貌で畳み掛けた。
「では、その証拠はどこにあると踏んでいる?」
「生前のヘイシャオが〈七つの大罪〉に提出した研究報告書に載っていると思う。ヘイシャオの研究室を家探しするか、〈七つの大罪〉に|侵入《クラッキング》をかけるかで手に入れる」
 答えながら、説得力に欠けるな、とルイフォンは奥歯を噛んだ。案の定、イーレオが鼻で笑った。
「だったら、なおのこと、ミンウェイに憶測とやらを話して協力を願うべきだろう。ヘイシャオの研究室は、ミンウェイが昔、住んでいた家にあるんだからな」
「…………」
 ルイフォンの溜め息が、虚空に溶けた。
 ミンウェイに『秘密』を隠したまま、この作戦を認めてもらうのは無理だろうと、初めから分かっていた。だが、言いたくなかったのだ。……せめて、証拠を掴むまでは。
 それは、ケジメのようなもので、リュイセンへの義理立てのような感情だ。
 何故なら、ミンウェイに『秘密』を教えることは、リュイセンがすべてを裏切り、失うことを対価に守ろうとした、ミンウェイの心の安寧を奪い去ることになるからだ。すなわち、リュイセンの愛を踏みにじる行為なのだから……。
 うなだれたルイフォンに、イーレオの低音が落とされる。
「鷹刀の総帥として、『対等な協力者』である〈|猫《フェレース》〉に要請する。お前の憶測を詳しく話せ」
「……『要請』じゃなくて『命令』――だろ」
 王者の傲然たる美貌を見上げ、ルイフォンは、うそぶく。だが彼自身、自分のほうが道理が通っていないのは分かりきっていた。
 彼は観念したように力なく姿勢を正し、ゆっくりと口を開く。
「ミンウェイの『秘密』――それは、ミンウェイが『健康であること』だ」
「……なっ!? 私の健康が、どうして『秘密』なのよ!?」
 詰め寄るミンウェイに、しかしルイフォンは、彼女から逃げるように顔をそむけた。そして、『彼女以外の三人』に向かって問いかける。
「親父、エルファン、チャオラウ……。古い時代の鷹刀を知っている者なら、不思議に思っていたんじゃないのか……? 病弱な母親から生まれたミンウェイが、何故、健康なのだろう――って」
 彼らは皆、一様にびくりと体を震わせた。
 予想通りの反応など、まるで嬉しくなかった。ルイフォンは小さく息を吐き、無表情の〈|猫《フェレース》〉の顔となって、イーレオを捕らえる。
「親父……、生前のヘイシャオとの最後の電話――あれは、ミンウェイが生まれるよりも前だよな? 内容……ちゃんと覚えているか?」
 刹那――。
 イーレオは頬杖の手から顔を浮かせ、|凶賊《ダリジィン》の総帥らしからぬ動揺をあらわにした。
「そういう……ことか…………!」
「……ああ。ずっと言っている通り、憶測に過ぎないけどな。……でも、それしか考えられないだろ?」
 ミンウェイが『健康であること』に秘密があるのではないかと疑ったのは、ルイフォンがシュアンと話したときのことだった。
 シュアンは、〈|蝿《ムスカ》〉は『ミンウェイの命』を盾にリュイセンを脅したに違いない、と主張していた。『〈|蝿《ムスカ》〉の持っている薬を投与しなければ、ミンウェイが死ぬ』といった類の嘘に乗せられ、リュイセンはありもしない薬を得るために裏切ったのだと。
 だが、リュイセンに嘘は通用しないのだ。
 大局的に本質を見抜く、天性の勘を持った兄貴分は、それが嘘なら絶対に騙されない。彼が信じたのなら、それは真実なのだ。『抗いようもない|事実《ネタ》』を提示され、リュイセンは身動きを取れなくなったのだ。
 では、『抗いようもない|事実《ネタ》』とは何か――?
 そう考えたとき、リュイセンの兄、レイウェンの憂い顔が蘇った。古い時代の鷹刀を知る、最後の直系である彼は、育たなかった兄弟たちのことを今でも悼み続けていた。
 鷹刀一族にとって『健康であること』は尊く、そして『稀有』。
「この『秘密』は、ミンウェイ本人は知らないだろう。そして、ヘイシャオの記憶を持つ〈|蝿《ムスカ》〉なら知っている。――メイシアが聞き出した〈|蝿《ムスカ》〉の言葉とも、辻褄が合う」
「……なるほどな」
 深い溜め息と共に、イーレオがソファーに身を投げ出した。頭を抱えるように髪を掻き上げると、はらはらと落ちる黒髪が美貌に影を落とす。
「ルイフォン? ど……、どういうことよ!? ――お祖父様……! どういう意味でしょうか!」
 ミンウェイが声を張り上げた。
 だが、打ちひしがれたようなイーレオの姿は変わらず、ならばと、彼女はエルファンとチャオラウに救いを求めて視線を送るが、彼らもイーレオと同様の顔で押し黙ったままだった。
「ちょっ、ちょっと……ルイフォン! 私だけが置いてきぼりだわ!」
 彼女は声を|尖《とが》らせ、ぎろりと彼を睨みつける。――が、その唇は心細げに、わなないていた。
「き、きちんと説明しなさい!」
「あ、ああ……。すまん……、……っ」
 ルイフォンは、ミンウェイの一族そのものの美貌と向き合い、しかし、言いよどむ。
「ルイフォン!」
 ミンウェイは高い鼻梁をつんと上に向け、歯切れの悪い彼に畳み掛けるように続けようとして……そこで一度、息を止める。陶器のような白い喉が、こくりと動いた。
 それから、意を決したように――問う。
「つまり……、私の健康は作られたものだった、ってこと……? リュイセンは、それを秘密にしておくために〈|蝿《ムスカ》〉に従ったというの!?」
 鮮やかな緋色の衣服が、炎のように見えた。
 烈火をまとうミンウェイは、絶対に引かぬと|艶《あで》やかに咲き誇った。