寵姫 アナベル 7話
ー/ー エルヴィスの怒号が周囲に響く。
パトリックは一瞬ホッとしたように彼を見たが、すぐに襲撃者が攻撃を繰り出したことにより、慌てて避けた。
彼が戦っている姿を見て、自身も剣を抜き応戦する。
「ヤッちまえ!」
「おうよ!」
まだ複数いる襲撃者たちがエルヴィスにも襲いかかる。彼はとても冷たいまなざしで襲撃者たちを射抜き、剣を振り下ろした。
次から次へと襲いかかる襲撃者たちを蹴散らしながら、アナベルのもとへ近付く。
「ベル、無事か!?」
「あ、あたしは平気、です……!」
エルヴィスは視線を落とし、地面に転がっている男の姿と、今にも男性の象徴を踏みつぶそうとしているアナベルの格好に気付き、目を丸くした。
「……どういう状況だ、これ?」
「襲いかかってきたから、つい」
応戦しました、と小声でつぶやくアナベルに、エルヴィスは「そうか、よくやった」と彼女を褒める。
ぱっと顔を上げてエルヴィスを見るアナベルに、彼は安心させるように微笑んだ。
「あのー、こっちも手を貸してほしいのですがーっ!」
パトリックが一人で何人もの相手をしていることに気付き、エルヴィスはそれに応えた。
「避けろ、パトリック!」
「はいっ」
さっと横に避けるパトリック。見計らったようにエルヴィスが氷の魔法を使う。
襲撃者たちの足を凍らせて、その場に留めた。
「ぐ、動かない……!」
「ハン! こんな氷……ッ!」
必死にもがいて足を動かそうとする者、火の魔法を使って溶かそうとする者、襲撃者たちは氷の魔法から逃れようと、いろいろ試している。
「無駄だ。その氷は溶けない」
エルヴィスの重低音が、彼らの耳に届く。
「誰に依頼され、彼女を襲った」
怒りのオーラが見える。アナベルはパトリックに近付いて、怪我をしている彼に回復魔法を使った。
「そりゃア、その女が邪魔って人からさァ」
ぴくり、とエルヴィスの眉が跳ねあがる。
「――言う気はなさそうだな?」
「任務の失敗は、死で贖う――……」
襲撃者たちは口の中に仕込んでいた毒薬をかみ砕き、飲み込んだ。
――自ら命を絶った彼らに、エルヴィスは眉間に皺を刻む。
「ぁ……」
その様子を見ていたアナベルが、顔を青ざめさせてふらりとよろけた。
エルヴィスは素早く彼女を抱きとめる。
「――大丈夫、ではなさそうだな」
血の気の引いた顔をしているアナベルに、エルヴィスが声をかける。彼女はぶるりと身体を震わせた。
こんなふうに明確に狙われたことなど一度もなく、冷静になった途端、急激に恐ろしくなったのだ。
「……エルヴィス陛下、この男はどうしますか?」
アナベルの放つ香りにあてられた男は、今も夢と現実を彷徨っているようで「ぐへへ」と良くわからない笑い声を上げている。
「逃げ出さないように捕縛して、口の中から毒薬を抜き、勝手に死なないようにしろ」
「はっ、かしこまりました」
パトリックは胸元に手を置き、頭を下げる。エルヴィスはアナベルをひょいと抱き上げた。
「――怖かったろう、ベル。もう安心していい」
「……は、はい……」
エルヴィスの香りに包まれて、アナベルはようやく安堵したように目を閉じた。
宮殿の中に入り、警備を強化するように命じると、彼女を寝室へ運ぶ。
ベッドに座らせると、彼女の足元に跪いた。
アナベルがそっと目を開けると、エルヴィスの心配そうな瞳と視線が絡む。
「エルヴィス……」
縋るような、声が出た。震える身体と声に、アナベル自身が驚いた。
そっと、エルヴィスが彼女の手を包み込むように握る。
彼の体温を感じて、アナベルはその瞳から大粒の涙を流した。
ポロポロと涙を流すアナベルに、エルヴィスは手を離して両腕を広げる。
アナベルは迷わずに彼の胸の中に飛び込んだ。
声を押し殺して泣くアナベルの背中を、エルヴィスは優しく撫でる。
――どのくらいそうしていたのか、わからない。
エルヴィスはアナベルが落ち着くまで、背中を撫でてくれていた。
「……ごめんなさい、泣いてしまって。こういうことも、覚悟していたはずなのに……」
ようやく落ち着いて、アナベルはそっと身体を離した。まだ心配そうに眉を下げているエルヴィスに謝罪の言葉を口にすると、彼は緩やかに首を左右に振る。
「いや……、私のほうこそ……まさかこんなに早く仕掛けてくるとは思わず、後手になってしまった。申し訳ない」
アナベルは慌てて、「エルヴィスのせいではありませんっ!」と力強く言葉を紡いだ。
「……それに、あの者たちは、私の命も奪おうとした。ついになりふり構わずになってきたようだ」
エルヴィスは先程の襲撃者たちのことを思い返す。
王都の人間ではないことは明らかだった。暗殺者にしてはあまりにもお粗末な襲撃者だったことも踏まえ、誰かが雇った私兵だろうと考える。
(――そんなことをするのは、一人しかいないだろう――……)
あわよくばエルヴィスの命すら奪い、自分がこの国の頂点にでも立とうとしていたのか、とエルヴィスは苦々しく唇を噛んだ。
「それにしても、あの男だけなぜ生きたまま地面に?」
パトリックが相手をしていた襲撃者たちは、彼によって倒されその命を落としていた。だが、アナベルを直接狙った相手は生きているようだった。
「――わたくしの、魔法です。……わたくし、エルヴィスに話していないことが、あるの……」
アナベルは真摯な表情を浮かべて、エルヴィスを見つめた。彼は目を大きく見開き、「話してくれるのかい?」と優しく問いかける。
小さく彼女がうなずくのを見て、再びベッドに座らせてエルヴィスは彼女の隣に座った。
「……わたくし、香りを操る魔法が使えるのです」
「香りを操る……?」
「はい。甘い香り、辛い香り、苦い香り……様々な香りを。わたくしはさっきの人に、それを使いました。甘い香りで脳内を痺れさせ、辛い香りで眩暈を起こさせたのです」
香りを操り、幻想の魔法をかけた。そうすれば高確率で相手は夢の中へ誘われる。
――だが、この魔法のことは、旅芸人の一座でも一部の人しか知らない。
パトリックは一瞬ホッとしたように彼を見たが、すぐに襲撃者が攻撃を繰り出したことにより、慌てて避けた。
彼が戦っている姿を見て、自身も剣を抜き応戦する。
「ヤッちまえ!」
「おうよ!」
まだ複数いる襲撃者たちがエルヴィスにも襲いかかる。彼はとても冷たいまなざしで襲撃者たちを射抜き、剣を振り下ろした。
次から次へと襲いかかる襲撃者たちを蹴散らしながら、アナベルのもとへ近付く。
「ベル、無事か!?」
「あ、あたしは平気、です……!」
エルヴィスは視線を落とし、地面に転がっている男の姿と、今にも男性の象徴を踏みつぶそうとしているアナベルの格好に気付き、目を丸くした。
「……どういう状況だ、これ?」
「襲いかかってきたから、つい」
応戦しました、と小声でつぶやくアナベルに、エルヴィスは「そうか、よくやった」と彼女を褒める。
ぱっと顔を上げてエルヴィスを見るアナベルに、彼は安心させるように微笑んだ。
「あのー、こっちも手を貸してほしいのですがーっ!」
パトリックが一人で何人もの相手をしていることに気付き、エルヴィスはそれに応えた。
「避けろ、パトリック!」
「はいっ」
さっと横に避けるパトリック。見計らったようにエルヴィスが氷の魔法を使う。
襲撃者たちの足を凍らせて、その場に留めた。
「ぐ、動かない……!」
「ハン! こんな氷……ッ!」
必死にもがいて足を動かそうとする者、火の魔法を使って溶かそうとする者、襲撃者たちは氷の魔法から逃れようと、いろいろ試している。
「無駄だ。その氷は溶けない」
エルヴィスの重低音が、彼らの耳に届く。
「誰に依頼され、彼女を襲った」
怒りのオーラが見える。アナベルはパトリックに近付いて、怪我をしている彼に回復魔法を使った。
「そりゃア、その女が邪魔って人からさァ」
ぴくり、とエルヴィスの眉が跳ねあがる。
「――言う気はなさそうだな?」
「任務の失敗は、死で贖う――……」
襲撃者たちは口の中に仕込んでいた毒薬をかみ砕き、飲み込んだ。
――自ら命を絶った彼らに、エルヴィスは眉間に皺を刻む。
「ぁ……」
その様子を見ていたアナベルが、顔を青ざめさせてふらりとよろけた。
エルヴィスは素早く彼女を抱きとめる。
「――大丈夫、ではなさそうだな」
血の気の引いた顔をしているアナベルに、エルヴィスが声をかける。彼女はぶるりと身体を震わせた。
こんなふうに明確に狙われたことなど一度もなく、冷静になった途端、急激に恐ろしくなったのだ。
「……エルヴィス陛下、この男はどうしますか?」
アナベルの放つ香りにあてられた男は、今も夢と現実を彷徨っているようで「ぐへへ」と良くわからない笑い声を上げている。
「逃げ出さないように捕縛して、口の中から毒薬を抜き、勝手に死なないようにしろ」
「はっ、かしこまりました」
パトリックは胸元に手を置き、頭を下げる。エルヴィスはアナベルをひょいと抱き上げた。
「――怖かったろう、ベル。もう安心していい」
「……は、はい……」
エルヴィスの香りに包まれて、アナベルはようやく安堵したように目を閉じた。
宮殿の中に入り、警備を強化するように命じると、彼女を寝室へ運ぶ。
ベッドに座らせると、彼女の足元に跪いた。
アナベルがそっと目を開けると、エルヴィスの心配そうな瞳と視線が絡む。
「エルヴィス……」
縋るような、声が出た。震える身体と声に、アナベル自身が驚いた。
そっと、エルヴィスが彼女の手を包み込むように握る。
彼の体温を感じて、アナベルはその瞳から大粒の涙を流した。
ポロポロと涙を流すアナベルに、エルヴィスは手を離して両腕を広げる。
アナベルは迷わずに彼の胸の中に飛び込んだ。
声を押し殺して泣くアナベルの背中を、エルヴィスは優しく撫でる。
――どのくらいそうしていたのか、わからない。
エルヴィスはアナベルが落ち着くまで、背中を撫でてくれていた。
「……ごめんなさい、泣いてしまって。こういうことも、覚悟していたはずなのに……」
ようやく落ち着いて、アナベルはそっと身体を離した。まだ心配そうに眉を下げているエルヴィスに謝罪の言葉を口にすると、彼は緩やかに首を左右に振る。
「いや……、私のほうこそ……まさかこんなに早く仕掛けてくるとは思わず、後手になってしまった。申し訳ない」
アナベルは慌てて、「エルヴィスのせいではありませんっ!」と力強く言葉を紡いだ。
「……それに、あの者たちは、私の命も奪おうとした。ついになりふり構わずになってきたようだ」
エルヴィスは先程の襲撃者たちのことを思い返す。
王都の人間ではないことは明らかだった。暗殺者にしてはあまりにもお粗末な襲撃者だったことも踏まえ、誰かが雇った私兵だろうと考える。
(――そんなことをするのは、一人しかいないだろう――……)
あわよくばエルヴィスの命すら奪い、自分がこの国の頂点にでも立とうとしていたのか、とエルヴィスは苦々しく唇を噛んだ。
「それにしても、あの男だけなぜ生きたまま地面に?」
パトリックが相手をしていた襲撃者たちは、彼によって倒されその命を落としていた。だが、アナベルを直接狙った相手は生きているようだった。
「――わたくしの、魔法です。……わたくし、エルヴィスに話していないことが、あるの……」
アナベルは真摯な表情を浮かべて、エルヴィスを見つめた。彼は目を大きく見開き、「話してくれるのかい?」と優しく問いかける。
小さく彼女がうなずくのを見て、再びベッドに座らせてエルヴィスは彼女の隣に座った。
「……わたくし、香りを操る魔法が使えるのです」
「香りを操る……?」
「はい。甘い香り、辛い香り、苦い香り……様々な香りを。わたくしはさっきの人に、それを使いました。甘い香りで脳内を痺れさせ、辛い香りで眩暈を起こさせたのです」
香りを操り、幻想の魔法をかけた。そうすれば高確率で相手は夢の中へ誘われる。
――だが、この魔法のことは、旅芸人の一座でも一部の人しか知らない。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
エルヴィスの怒号が周囲に響く。
パトリックは一瞬ホッとしたように彼を見たが、すぐに襲撃者が攻撃を繰り出したことにより、慌てて避けた。
彼が戦っている姿を見て、自身も剣を抜き応戦する。
「ヤッちまえ!」
「おうよ!」
「おうよ!」
まだ複数いる襲撃者たちがエルヴィスにも襲いかかる。彼はとても冷たいまなざしで襲撃者たちを|射抜《いぬ》き、剣を振り下ろした。
次から次へと襲いかかる襲撃者たちを蹴散らしながら、アナベルのもとへ近付く。
「ベル、無事か!?」
「あ、あたしは平気、です……!」
「あ、あたしは平気、です……!」
エルヴィスは視線を落とし、地面に転がっている男の姿と、今にも男性の象徴を踏みつぶそうとしているアナベルの格好に気付き、目を丸くした。
「……どういう状況だ、これ?」
「襲いかかってきたから、つい」
「襲いかかってきたから、つい」
応戦しました、と小声でつぶやくアナベルに、エルヴィスは「そうか、よくやった」と彼女を褒める。
ぱっと顔を上げてエルヴィスを見るアナベルに、彼は安心させるように微笑んだ。
「あのー、こっちも手を貸してほしいのですがーっ!」
パトリックが一人で何人もの相手をしていることに気付き、エルヴィスはそれに応えた。
「避けろ、パトリック!」
「はいっ」
「はいっ」
さっと横に避けるパトリック。見計らったようにエルヴィスが氷の魔法を使う。
襲撃者たちの足を凍らせて、その場に留めた。
「ぐ、動かない……!」
「ハン! こんな氷……ッ!」
「ハン! こんな氷……ッ!」
必死にもがいて足を動かそうとする者、火の魔法を使って溶かそうとする者、襲撃者たちは氷の魔法から|逃《のが》れようと、いろいろ試している。
「無駄だ。その氷は溶けない」
エルヴィスの重低音が、彼らの耳に届く。
「誰に依頼され、彼女を襲った」
怒りのオーラが見える。アナベルはパトリックに近付いて、怪我をしている彼に回復魔法を使った。
「そりゃア、その女が邪魔って人からさァ」
ぴくり、とエルヴィスの眉が跳ねあがる。
「――言う気はなさそうだな?」
「任務の失敗は、死で|贖《あがな》う――……」
「任務の失敗は、死で|贖《あがな》う――……」
襲撃者たちは口の中に仕込んでいた毒薬をかみ砕き、飲み込んだ。
――自ら命を絶った彼らに、エルヴィスは眉間に|皺《しわ》を刻む。
「ぁ……」
その様子を見ていたアナベルが、顔を青ざめさせてふらりとよろけた。
エルヴィスは素早く彼女を抱きとめる。
「――大丈夫、ではなさそうだな」
血の気の引いた顔をしているアナベルに、エルヴィスが声をかける。彼女はぶるりと身体を震わせた。
こんなふうに明確に狙われたことなど一度もなく、冷静になった途端、急激に恐ろしくなったのだ。
「……エルヴィス陛下、この男はどうしますか?」
アナベルの放つ香りにあてられた男は、今も夢と現実を彷徨っているようで「ぐへへ」と良くわからない笑い声を上げている。
「逃げ出さないように捕縛して、口の中から毒薬を抜き、勝手に死なないようにしろ」
「はっ、かしこまりました」
「はっ、かしこまりました」
パトリックは胸元に手を置き、頭を下げる。エルヴィスはアナベルをひょいと抱き上げた。
「――怖かったろう、ベル。もう安心していい」
「……は、はい……」
「……は、はい……」
エルヴィスの香りに包まれて、アナベルはようやく安堵したように目を閉じた。
宮殿の中に入り、警備を強化するように命じると、彼女を寝室へ運ぶ。
ベッドに座らせると、彼女の足元に|跪《ひざまず》いた。
アナベルがそっと目を開けると、エルヴィスの心配そうな瞳と視線が絡む。
「エルヴィス……」
|縋《すが》るような、声が出た。震える身体と声に、アナベル自身が驚いた。
そっと、エルヴィスが彼女の手を包み込むように握る。
彼の体温を感じて、アナベルはその瞳から大粒の涙を流した。
ポロポロと涙を流すアナベルに、エルヴィスは手を離して両腕を広げる。
アナベルは迷わずに彼の胸の中に飛び込んだ。
声を押し殺して泣くアナベルの背中を、エルヴィスは優しく撫でる。
――どのくらいそうしていたのか、わからない。
エルヴィスはアナベルが落ち着くまで、背中を撫でてくれていた。
「……ごめんなさい、泣いてしまって。こういうことも、覚悟していたはずなのに……」
ようやく落ち着いて、アナベルはそっと身体を離した。まだ心配そうに眉を下げているエルヴィスに謝罪の言葉を口にすると、彼は緩やかに首を左右に振る。
「いや……、私のほうこそ……まさかこんなに早く仕掛けてくるとは思わず、後手になってしまった。申し訳ない」
アナベルは慌てて、「エルヴィスのせいではありませんっ!」と力強く言葉を紡いだ。
「……それに、あの者たちは、私の命も奪おうとした。ついになりふり構わずになってきたようだ」
エルヴィスは先程の襲撃者たちのことを思い返す。
王都の人間ではないことは明らかだった。暗殺者にしてはあまりにもお粗末な襲撃者だったことも踏まえ、誰かが雇った私兵だろうと考える。
(――そんなことをするのは、一人しかいないだろう――……)
あわよくばエルヴィスの命すら奪い、自分がこの国の頂点にでも立とうとしていたのか、とエルヴィスは苦々しく唇を噛んだ。
「それにしても、あの男だけなぜ生きたまま地面に?」
パトリックが相手をしていた襲撃者たちは、彼によって倒されその命を落としていた。だが、アナベルを直接狙った相手は生きているようだった。
「――わたくしの、魔法です。……わたくし、エルヴィスに話していないことが、あるの……」
アナベルは|真摯《しんし》な表情を浮かべて、エルヴィスを見つめた。彼は目を大きく見開き、「話してくれるのかい?」と優しく問いかける。
小さく彼女がうなずくのを見て、再びベッドに座らせてエルヴィスは彼女の隣に座った。
「……わたくし、香りを操る魔法が使えるのです」
「香りを操る……?」
「はい。甘い香り、辛い香り、苦い香り……様々な香りを。わたくしはさっきの人に、それを使いました。甘い香りで脳内を痺れさせ、辛い香りで眩暈を起こさせたのです」
「香りを操る……?」
「はい。甘い香り、辛い香り、苦い香り……様々な香りを。わたくしはさっきの人に、それを使いました。甘い香りで脳内を痺れさせ、辛い香りで眩暈を起こさせたのです」
香りを操り、幻想の魔法をかけた。そうすれば高確率で相手は夢の中へ誘われる。
――だが、この魔法のことは、旅芸人の一座でも一部の人しか知らない。