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第37話 ラボの施設

ー/ー



「ユストゥスさんがフリッツの体調を一目で見破ったのは、やっぱ二人の絆とか? 仲良いですもんねぇ」
「そういえばお二人はラボの同期と伺ったが、以前から付き合いが長いのだろうか?」

 フリッツはフリーデンやモーズに対して〈くん付け〉をして呼んでいるが、唯一ユストゥスだけは呼び捨てにして呼んでいる。
 敬称を付けているのは自分より年下だから後輩だから、という訳でもないだろう。何せラボの古参であるいう水銀に対しても、その敬称を付けているのだから。

「う〜ん、特別長いとは思わないかな。ユストゥスと僕は大学の頃からの付き合いでね。あ、でも今年で知り合ってから十年になるのか。時が過ぎるのは早いねぇ」
「いやめっちゃ付き合い長いじゃないですか」
「あはは。でも常に一緒に居た訳じゃないよ」

 フリッツは笑いながら、ユストゥスとの馴れ初めを話してくれる。

「ユストゥスは昔から頭がよくて、周りからも才能を認められた天才でね。若干21歳で教授に抜擢され、大学で教鞭を振るっていたぐらいだ。僕は授業を受ける生徒側として出会った。だから学友としての交流はしてなかったよ」
「に、21歳で……!?」

 教授になるにはあまりにも若過ぎる年齢に、モーズは絶句した。その年代のモーズは、医者になる為に日夜勉強をしていた年頃だ。
 教わる立場ではなく教える立場、それも助手や准教授を経ずにいきなり教授。その経歴だけでユストゥスの有り余る才能が伝わってくる。

「でも彼は誰よりも僕の努力を見てくれて、授業外も会うようになって、僕の研究テーマに合わせたゼミをわざわざ立ち上げて、そこで一緒に『珊瑚』の研究に没頭していた。大学を出ても彼の教授助手をしながら研究を続けていたら、ラボからお声がかかった、って流れだね」
「順当な流れですね〜」
「でもね。本当はユストゥスだけだったんだよ、ラボの推薦」

 フリッツは包み隠さず、当時の事を語ってくれた。

「けど彼は『私に声がかかって、フリッツにかからないなんて絶対おかしい』って所長に面と向かってごねにごねて、僕の推薦までもぎ取っちゃってね〜。いやぁ、あの時は驚いたというか焦ったというか、もう笑うしかなかったよねぇ」

 しかも入所試験でウミヘビと拳で語り合っちゃうし、ハラハラし通しだったとフリッツは笑いながら自分の膝を叩く。
 そしてひとしきり笑った後、彼は笑みを控え真面目な表情を浮かべた。

「ユストゥスはユーモアが足りないし怒りっぽいから取っ付き難いだろうけど、彼は何に対しても全力で、真剣で、妥協を知らない一途な人だ。……可能ならあまり、身構えないで欲しいかな」

 ◇

「貴重な話が聞けたな」
「おー。俺もユストゥスさんが教授だったて話は初めて聞いたけど、納得だわ」

 フリッツの見舞いを終え、寄宿舎から出たモーズとフリーデンは彼が語ってくれた話を振り返っていた。
 特にユストゥスから指導を受けていた身であるフリーデンは、

「あの人、教えるのすげぇ上手いのよ」

 素直にユストゥスを高く評価をした。フリッツの言葉にもフリーデンの評価にも、忖度は感じられない。
 今はまだほとんど話した事はないが、いずれユストゥスと腹蔵(ふくぞう)なく話せる日が来て欲しい。モーズはそう思えた。

「いつか私もご教授頂きたいな」
「いつかな。ま、今は研修ってか施設案内が先だっ。何処から見たいとかあるか?」
「それはやはり、ラボで使えるおおまかな設備を……。それから、ウミヘビの居住区を見たい」
「おし、任せろっ」

 フリーデンは腕時計型電子機器を操作し、画面からホログラムを空中にラボの、人工島アバトンの簡単な地図を投影し説明を始める。
 オフィウクス・ラボの地下にはコールドスリープ患者が眠る冷安室。一階はエントランスと自動人形(オートマタ)のメンテナンス室。二階は共同研究室。三階は飼育室。四階は資料室。五階以上の階層は()()()()()。他のクスシは普段そこに籠っているらしい。
 そして天に届かんばかりの高さにある最上階。そこには天文台があるそうだ。

「他にも医務室とか植物園とか車庫とか武器庫とか製作所あるけど、研修中のモーズは共同研究室で使える設備を覚えれば十分だと思うな。他に欲しい機材ができたり、とことん打ち込みたい事が出来たら個人研究室を所望すればいいからさ」
「成る程、説明ありがとう。個人的に植物園が非常に気になるが、今は位置だけ把握しておこう」

 フリーデンはまた腕時計を操作して、ウミヘビの居住区『ネグラ』の詳細がよく見えるよう地図をズームをした。

「そんでウミヘビの居住区。通称ネグラは町一つ分の広さで、建ってる建物は基本宿舎だから研究に必要な設備はあんまない。けど、ウミヘビを観察したいなら『訓練場』とかおすすめだぞ」
「訓練場?」
「珊瑚処分遠征に備えて特訓できる設備。戦闘員は日夜そこで鍛えてんの。クスシとしてもウミヘビと『珊瑚』、どちらの特性も同時に学べるから結構世話になる。
 ラボからも『訓練場』にあるシミュレーションルームならアクセスできるけど、その時シミュレーションルームを使っている奴しかコンタクト取れないから、直接行った方が色んな奴と話せる」

 そこでフリーデンはホログラムを消し、ネグラに向け足を進めた。
 モーズもその後に続く。

「クスシ側の最大のメリットは、アイギスを扱う練習ができる事かな。ま、実際に見て貰った方が早いから行くぞ〜」
「了解した」


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「ユストゥスさんがフリッツの体調を一目で見破ったのは、やっぱ二人の絆とか? 仲良いですもんねぇ」
「そういえばお二人はラボの同期と伺ったが、以前から付き合いが長いのだろうか?」
 フリッツはフリーデンやモーズに対して〈くん付け〉をして呼んでいるが、唯一ユストゥスだけは呼び捨てにして呼んでいる。
 敬称を付けているのは自分より年下だから後輩だから、という訳でもないだろう。何せラボの古参であるいう水銀に対しても、その敬称を付けているのだから。
「う〜ん、特別長いとは思わないかな。ユストゥスと僕は大学の頃からの付き合いでね。あ、でも今年で知り合ってから十年になるのか。時が過ぎるのは早いねぇ」
「いやめっちゃ付き合い長いじゃないですか」
「あはは。でも常に一緒に居た訳じゃないよ」
 フリッツは笑いながら、ユストゥスとの馴れ初めを話してくれる。
「ユストゥスは昔から頭がよくて、周りからも才能を認められた天才でね。若干21歳で教授に抜擢され、大学で教鞭を振るっていたぐらいだ。僕は授業を受ける生徒側として出会った。だから学友としての交流はしてなかったよ」
「に、21歳で……!?」
 教授になるにはあまりにも若過ぎる年齢に、モーズは絶句した。その年代のモーズは、医者になる為に日夜勉強をしていた年頃だ。
 教わる立場ではなく教える立場、それも助手や准教授を経ずにいきなり教授。その経歴だけでユストゥスの有り余る才能が伝わってくる。
「でも彼は誰よりも僕の努力を見てくれて、授業外も会うようになって、僕の研究テーマに合わせたゼミをわざわざ立ち上げて、そこで一緒に『珊瑚』の研究に没頭していた。大学を出ても彼の教授助手をしながら研究を続けていたら、ラボからお声がかかった、って流れだね」
「順当な流れですね〜」
「でもね。本当はユストゥスだけだったんだよ、ラボの推薦」
 フリッツは包み隠さず、当時の事を語ってくれた。
「けど彼は『私に声がかかって、フリッツにかからないなんて絶対おかしい』って所長に面と向かってごねにごねて、僕の推薦までもぎ取っちゃってね〜。いやぁ、あの時は驚いたというか焦ったというか、もう笑うしかなかったよねぇ」
 しかも入所試験でウミヘビと拳で語り合っちゃうし、ハラハラし通しだったとフリッツは笑いながら自分の膝を叩く。
 そしてひとしきり笑った後、彼は笑みを控え真面目な表情を浮かべた。
「ユストゥスはユーモアが足りないし怒りっぽいから取っ付き難いだろうけど、彼は何に対しても全力で、真剣で、妥協を知らない一途な人だ。……可能ならあまり、身構えないで欲しいかな」
 ◇
「貴重な話が聞けたな」
「おー。俺もユストゥスさんが教授だったて話は初めて聞いたけど、納得だわ」
 フリッツの見舞いを終え、寄宿舎から出たモーズとフリーデンは彼が語ってくれた話を振り返っていた。
 特にユストゥスから指導を受けていた身であるフリーデンは、
「あの人、教えるのすげぇ上手いのよ」
 素直にユストゥスを高く評価をした。フリッツの言葉にもフリーデンの評価にも、忖度は感じられない。
 今はまだほとんど話した事はないが、いずれユストゥスと|腹蔵《ふくぞう》なく話せる日が来て欲しい。モーズはそう思えた。
「いつか私もご教授頂きたいな」
「いつかな。ま、今は研修ってか施設案内が先だっ。何処から見たいとかあるか?」
「それはやはり、ラボで使えるおおまかな設備を……。それから、ウミヘビの居住区を見たい」
「おし、任せろっ」
 フリーデンは腕時計型電子機器を操作し、画面からホログラムを空中にラボの、人工島アバトンの簡単な地図を投影し説明を始める。
 オフィウクス・ラボの地下にはコールドスリープ患者が眠る冷安室。一階はエントランスと|自動人形《オートマタ》のメンテナンス室。二階は共同研究室。三階は飼育室。四階は資料室。五階以上の階層は|個《・》|別《・》|研《・》|究《・》|室《・》。他のクスシは普段そこに籠っているらしい。
 そして天に届かんばかりの高さにある最上階。そこには天文台があるそうだ。
「他にも医務室とか植物園とか車庫とか武器庫とか製作所あるけど、研修中のモーズは共同研究室で使える設備を覚えれば十分だと思うな。他に欲しい機材ができたり、とことん打ち込みたい事が出来たら個人研究室を所望すればいいからさ」
「成る程、説明ありがとう。個人的に植物園が非常に気になるが、今は位置だけ把握しておこう」
 フリーデンはまた腕時計を操作して、ウミヘビの居住区『ネグラ』の詳細がよく見えるよう地図をズームをした。
「そんでウミヘビの居住区。通称ネグラは町一つ分の広さで、建ってる建物は基本宿舎だから研究に必要な設備はあんまない。けど、ウミヘビを観察したいなら『訓練場』とかおすすめだぞ」
「訓練場?」
「珊瑚処分遠征に備えて特訓できる設備。戦闘員は日夜そこで鍛えてんの。クスシとしてもウミヘビと『珊瑚』、どちらの特性も同時に学べるから結構世話になる。
 ラボからも『訓練場』にあるシミュレーションルームならアクセスできるけど、その時シミュレーションルームを使っている奴しかコンタクト取れないから、直接行った方が色んな奴と話せる」
 そこでフリーデンはホログラムを消し、ネグラに向け足を進めた。
 モーズもその後に続く。
「クスシ側の最大のメリットは、アイギスを扱う練習ができる事かな。ま、実際に見て貰った方が早いから行くぞ〜」
「了解した」