第75話 宝の在り処?
ー/ー とある昼下がり、京子はアイスコーヒーを片手にあるものを見つめていた。彼女の手にあるのは、冷水により時間をかけて抽出したコールドブリュー。そのコーヒーと重なるように彼女の顔もまた苦いものだ。
「あの工房に似つかわしくないタッチねぇ。これは一体何なのかしら?」
以前、京子が工房で見つけて放置したままだった一枚の紙。それは子供が書き記した何かの地図のように思える。おそらくは、工房の主と思われる『羽成健造』には子供がいたのかもしれない。
「えぇと、裏側には......何か書いてあるわね? 『みなもとのはなれのざいほう、ここにおいてきた。はるなときょうじろうにはわらわれたけど、このいしはきっとかいぞくのたからものさ。』 か......」
京子は思いを馳せる。子供の頃、近所の男の子たちが宝物だと言ってガラクタ集めをしていたことを。例えばそれは、やけにツルツルな小石や打ち棄てられたホイールカバーだったりした。だが、男の子にとってはそんなガラクタでさえも宝物のように見えるのだろう。京子はそんな風に推察した。
「懐かしいなぁ......。そんな男の子たちに交じって遊んでいた私って、なんだか不思議」
子供の頃の京子は男勝りだったようで、男の子たちの集団に交じっていたことが常だったらしい。そういう意味で、母子共々紅一点なのは同じなのかもしれない。
「あっ、そろそろお買い物に行かなきゃ!」
物思いに耽ると、時の流れは早く感じられる。時計を見た京子は、慌てて夕食の買い出しへ出掛けた。
――
のりこがリビングへやってきた。机には、先程京子が置いていった地図のような何かがある。
「これはもしや宝の地図? そういえば、あの洞窟に何かがあった気がする!」
のりこは思い出した。神隠しに遭ったあの日、洞窟で何かに躓いたことを。その何かはその場に似つかわしくない人工物のようなものだったこと。それがのりこの脳裏に蘇った。
「おねえちゃん、いきなりどうしたのさ??」
のりこの顔を不思議そうに見つめるりょうた。その問いかけに対して、彼女は間髪入れずに話を続ける。
「あれはきっとハナレドンの秘宝に違いないわ! そうよ! あれこそがきっと羽馴島の大秘宝なのよ!!」
のりこの昂りで、りょうたは思い出した。ハナレドンという架空の生物を探しに出掛けた結果、カラスの集団に襲われた苦い過去を。
「おねえちゃん、そうやってまた僕の事を騙そうとしてるね? けれど、その手はもう食わないよ!」
ハナレドンといういかにもな名前に唆されたりょうた。そんな自分が愚かしいと自らを悔いた。だが、その出来事によってハヤテが仲間になったことも事実。
「違うの! 私は確かにあの時、羽馴島の財宝があると予感したの! これは探検隊として調査する必要があるわね!!」
彼女に唆されまいとりょうたは身構えるが、ハンチングキャップを被ったのりこの目は真剣そのものである。
「りょうた、この地図の裏をよく見なさい。この古代文字はきっと、ハナレドンに関する記録そのものなのよ」
地図の裏面に書かれた歪な文字。だが、それは単純に子供が書き残した文字であって決して古代文字のような崇高なものではない。
「えぇと...... 『みなもとのはなれのざいほう、ここにおいてきた』」
歪ながらも平仮名だらけのその文章を一つ一つ読み上げていくりょうた。実を言うと、先程の文面には続きがある。
「『うみのわれるひ、そこにざいほうへのみちがひらかれる。』なるほど、これは本当に宝の地図かも知れないね? けれど、海が割れるってどういうことだろう??」
ハナレドンもとい羽馴の財宝、りょうたは信じてみたくなったようだ。彼の反応を見たのりこは高らかに断言した。
「海が割れる、それはつまり文字通り海面を叩き割る事なのよ!!」
のりこの何とも大胆な想像力。以前、本当に海を割ろうとして片腕を痛めてしまったことは追憶の彼方にあるようだ。
「海が割れる......もしかしたら、近々本当に海が割れるかもな?」
二人の傍らで、炭酸コーヒーを嗜んでいた良行が話に割って入る。一見すると良行までもが妄言を発しているように聞こえるが、彼にはきちんとした裏付けがあるようだ。
「おとうさんまで変なこと言ってる......」
だが、そんなことはりょうたに皆目見当がつかない。第一、海が割れるとすればモーセに相当する神の所業だろう。
「ほら、試しにこれを見てごらん?」
良行が、手元で操作していたタブレット画面を二人に見せる。そこには、1ヶ月間の潮時表が表示されていた。
「これは潮時表ってもので、海の満ち引きの目安になるんだ。この表に基づくと、大潮ってのがあってね」
良行の話が長くて少々分かりにくいが、要するに海は日によって干満の度合いがある。例えば大潮は干満の差が激しく、海底が露わになるほど海面が下がる事もあるくらいだ。
「なるほど、つまりこの大潮の日に何かがあるってことなんだね?」
おぼろげながらも、良行の話を飲み込んだりょうた。潮の干満は海のレジャーにおいて重要な要素であるため、知っておくと何かと役に立つ。
「オーシオ、何だか手強そうね!!」
一方、のりこはまるで話を理解していなかった。
「あの工房に似つかわしくないタッチねぇ。これは一体何なのかしら?」
以前、京子が工房で見つけて放置したままだった一枚の紙。それは子供が書き記した何かの地図のように思える。おそらくは、工房の主と思われる『羽成健造』には子供がいたのかもしれない。
「えぇと、裏側には......何か書いてあるわね? 『みなもとのはなれのざいほう、ここにおいてきた。はるなときょうじろうにはわらわれたけど、このいしはきっとかいぞくのたからものさ。』 か......」
京子は思いを馳せる。子供の頃、近所の男の子たちが宝物だと言ってガラクタ集めをしていたことを。例えばそれは、やけにツルツルな小石や打ち棄てられたホイールカバーだったりした。だが、男の子にとってはそんなガラクタでさえも宝物のように見えるのだろう。京子はそんな風に推察した。
「懐かしいなぁ......。そんな男の子たちに交じって遊んでいた私って、なんだか不思議」
子供の頃の京子は男勝りだったようで、男の子たちの集団に交じっていたことが常だったらしい。そういう意味で、母子共々紅一点なのは同じなのかもしれない。
「あっ、そろそろお買い物に行かなきゃ!」
物思いに耽ると、時の流れは早く感じられる。時計を見た京子は、慌てて夕食の買い出しへ出掛けた。
――
のりこがリビングへやってきた。机には、先程京子が置いていった地図のような何かがある。
「これはもしや宝の地図? そういえば、あの洞窟に何かがあった気がする!」
のりこは思い出した。神隠しに遭ったあの日、洞窟で何かに躓いたことを。その何かはその場に似つかわしくない人工物のようなものだったこと。それがのりこの脳裏に蘇った。
「おねえちゃん、いきなりどうしたのさ??」
のりこの顔を不思議そうに見つめるりょうた。その問いかけに対して、彼女は間髪入れずに話を続ける。
「あれはきっとハナレドンの秘宝に違いないわ! そうよ! あれこそがきっと羽馴島の大秘宝なのよ!!」
のりこの昂りで、りょうたは思い出した。ハナレドンという架空の生物を探しに出掛けた結果、カラスの集団に襲われた苦い過去を。
「おねえちゃん、そうやってまた僕の事を騙そうとしてるね? けれど、その手はもう食わないよ!」
ハナレドンといういかにもな名前に唆されたりょうた。そんな自分が愚かしいと自らを悔いた。だが、その出来事によってハヤテが仲間になったことも事実。
「違うの! 私は確かにあの時、羽馴島の財宝があると予感したの! これは探検隊として調査する必要があるわね!!」
彼女に唆されまいとりょうたは身構えるが、ハンチングキャップを被ったのりこの目は真剣そのものである。
「りょうた、この地図の裏をよく見なさい。この古代文字はきっと、ハナレドンに関する記録そのものなのよ」
地図の裏面に書かれた歪な文字。だが、それは単純に子供が書き残した文字であって決して古代文字のような崇高なものではない。
「えぇと...... 『みなもとのはなれのざいほう、ここにおいてきた』」
歪ながらも平仮名だらけのその文章を一つ一つ読み上げていくりょうた。実を言うと、先程の文面には続きがある。
「『うみのわれるひ、そこにざいほうへのみちがひらかれる。』なるほど、これは本当に宝の地図かも知れないね? けれど、海が割れるってどういうことだろう??」
ハナレドンもとい羽馴の財宝、りょうたは信じてみたくなったようだ。彼の反応を見たのりこは高らかに断言した。
「海が割れる、それはつまり文字通り海面を叩き割る事なのよ!!」
のりこの何とも大胆な想像力。以前、本当に海を割ろうとして片腕を痛めてしまったことは追憶の彼方にあるようだ。
「海が割れる......もしかしたら、近々本当に海が割れるかもな?」
二人の傍らで、炭酸コーヒーを嗜んでいた良行が話に割って入る。一見すると良行までもが妄言を発しているように聞こえるが、彼にはきちんとした裏付けがあるようだ。
「おとうさんまで変なこと言ってる......」
だが、そんなことはりょうたに皆目見当がつかない。第一、海が割れるとすればモーセに相当する神の所業だろう。
「ほら、試しにこれを見てごらん?」
良行が、手元で操作していたタブレット画面を二人に見せる。そこには、1ヶ月間の潮時表が表示されていた。
「これは潮時表ってもので、海の満ち引きの目安になるんだ。この表に基づくと、大潮ってのがあってね」
良行の話が長くて少々分かりにくいが、要するに海は日によって干満の度合いがある。例えば大潮は干満の差が激しく、海底が露わになるほど海面が下がる事もあるくらいだ。
「なるほど、つまりこの大潮の日に何かがあるってことなんだね?」
おぼろげながらも、良行の話を飲み込んだりょうた。潮の干満は海のレジャーにおいて重要な要素であるため、知っておくと何かと役に立つ。
「オーシオ、何だか手強そうね!!」
一方、のりこはまるで話を理解していなかった。
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