第73話 コーヒーとコーラの出会い
ー/ー「鴛鴦茶......コーヒー......はっ!!!」
亜細亜の言動から何かを閃いた恭治郎。さて、その閃きは如何なるものだろうか??
「そうですよ! どうして私はそれに気付かなかったのでしょうか!? 灯台下暗しはそういうことですね!!」
その閃きにえらく感動したのか、恭治郎は一人で納得している。そんな彼は二人からすれば奇異に映っているに違いない。
「恭治郎、一体何があったんだ......??」
恭治郎の変貌ぶりに困惑した亜細亜は薫を見つめて問いかける。だが、尋ねられた薫はというと?
「マスターはクラフトコーヒーを開発しているって言ってたけど......私もよくわからないなぁ??」
当然ながら、薫も恭治郎の興奮には着いていけていない。訳の分からない二人は意図せず顔を見合わせてしまっている。
「私はコーヒーマイスター!! コーヒーマイスターがコーヒーを疎かにするなどありえません!!! コーヒーの魅力を最大限活かすこと、それがコーヒーマイスターの使命なのですから!!!!」
感情が高揚した挙句、恭治郎は腹の底から叫んだ。日頃冷静な人間が高揚する場面はある意味で狂気だ。
「恭治郎、まずは落ち着け。儂らが着いていけん」
状況を理解できずとも、ひとまず恭治郎を宥めることにした亜細亜。とにかく、まずは事情を理解したい思いだ。
「私は、コーヒーからクラフトコーラを生み出します! それこそが私に相応しい!!!」
だが、それでも彼の興奮は冷めやらない。恭治郎にとって、その閃きは天啓に等しかったのだろう。
「お二人とも、私のクラフトコーラ作りに協力して下さいね!!!!!」
恭治郎はその一言を強く言い放った。あまりの押しの強さに、二人は半ば強制的に首を縦に振る他なかった。
――
そうして、三人はクラフトコーラ開発に明け暮れた。といっても、開発の大半は恭治郎が執り行っており、二人はそのサンプルを試飲する日々だった。
「どうですかね? コーラということで、パンチの強いコロンビア豆を用いたのですが......」
恭治郎はこれまでに様々な品種のコーヒーやスパイスの調合を試みた。だが、コーヒーからコーラを生み出すのは容易でなく、二人の苦悶に満ちた顔を見ることも多々あった。
「うぅん......。やっぱり、羽馴ブルボンの方がコーラっぽいかなぁ??」
普段はコーラに縁がない薫も、ほぼ毎日試飲を繰り返せばさすがに感覚が研ぎ澄まされていく。甘み・酸味・苦み、その三つの味わいに機微になるのも頷ける。
「儂も小娘に同じ。やはり本陣を疎かにしてはいけないな」
少々回りくどい言い方だが、亜細亜としては地元の名産を大事にした方がいいということだろう。確かに、町おこしというのは地元の特産品にこだわるのが道理かもしれない。
「だとしたら......これとこれなんてどぉ??」
薫が手に取ったのは明日葉とレモン。それらはいずれも羽馴島を代表する特産品であり、特にレモンは花レモンと評されるように爽やかな芳香が特徴的な果実である。
「明日葉とレモン......果たして、苦みと酸味は共存できるのでしょうか??」
恭治郎が言うように、それらは総じて個性の強い素材である。鴛鴦茶にミルクが共存できない実例を見ている手前、彼に不安がよぎるのも当然かもしれない。
「明日葉とレモン、日本とインドの懸け橋と成り得るか......」
亜細亜は神妙な面持ちで語る。それぞれの原産地は明日葉が日本、レモンはなんとインドだという。生まれの異なる両者がここ羽馴島の地で出会ったのは何か因縁めいたものを感じるが、亜細亜の思うそれはまた別のものかもしれない。
薫の閃きを信じ、恭治郎は明日葉とレモンを試作コーラへ調合する。強い存在感を放つ両者を、羽馴ブルボンは如何に取り纏めるのだろうか。今ここに、コーヒーマイスターたる恭治郎の実力が試される。
「出来ました。羽馴ブルボンをベースとした明日葉と花レモンの調和、いかがでしょうか......?」
恭治郎は緊張の面持ちでグラスを二人へ向けている。いくら世界に名だたるコーヒーマイスターといえど、コーヒーに明日葉とレモンをブレンドするなど考えたことはなかっただろう。
『......っ!!!』
試作品を口にした両者の表情は一変する。ふたりはまるで、未知との遭遇を果たしたように目を見開いている。
「嘘......これがコーラっ!!?」
普段はコーラなど口にしない薫も、試作品の味わいに戦慄している。
「これは、メリケンなど目ではないかも知れぬ!!」
アメリカ嫌いの亜細亜でさえこの反応。両者の反応を見た恭治郎は、亜細亜の飲みかけた一杯をおもむろに口にする。
「......何ですかこれは!!? まるで苦みが突き抜けていくようだ......!!!」
恭治郎が直感的に口にした言葉。第三者からすれば何とも伝わりにくいが、裏を返せばあまりにも複雑な味わいで言葉では言い表せない代物なのかもしれない。
「マスター......ところで炭酸は??」
恭治郎が試作コーラに感嘆している矢先、薫は肝心なことに気付く。コーラに炭酸がなければそれはただの砂糖水。コーラの要を疎かにしていたこと、その事実に恭治郎は苦悶してしまった。
亜細亜の言動から何かを閃いた恭治郎。さて、その閃きは如何なるものだろうか??
「そうですよ! どうして私はそれに気付かなかったのでしょうか!? 灯台下暗しはそういうことですね!!」
その閃きにえらく感動したのか、恭治郎は一人で納得している。そんな彼は二人からすれば奇異に映っているに違いない。
「恭治郎、一体何があったんだ......??」
恭治郎の変貌ぶりに困惑した亜細亜は薫を見つめて問いかける。だが、尋ねられた薫はというと?
「マスターはクラフトコーヒーを開発しているって言ってたけど......私もよくわからないなぁ??」
当然ながら、薫も恭治郎の興奮には着いていけていない。訳の分からない二人は意図せず顔を見合わせてしまっている。
「私はコーヒーマイスター!! コーヒーマイスターがコーヒーを疎かにするなどありえません!!! コーヒーの魅力を最大限活かすこと、それがコーヒーマイスターの使命なのですから!!!!」
感情が高揚した挙句、恭治郎は腹の底から叫んだ。日頃冷静な人間が高揚する場面はある意味で狂気だ。
「恭治郎、まずは落ち着け。儂らが着いていけん」
状況を理解できずとも、ひとまず恭治郎を宥めることにした亜細亜。とにかく、まずは事情を理解したい思いだ。
「私は、コーヒーからクラフトコーラを生み出します! それこそが私に相応しい!!!」
だが、それでも彼の興奮は冷めやらない。恭治郎にとって、その閃きは天啓に等しかったのだろう。
「お二人とも、私のクラフトコーラ作りに協力して下さいね!!!!!」
恭治郎はその一言を強く言い放った。あまりの押しの強さに、二人は半ば強制的に首を縦に振る他なかった。
――
そうして、三人はクラフトコーラ開発に明け暮れた。といっても、開発の大半は恭治郎が執り行っており、二人はそのサンプルを試飲する日々だった。
「どうですかね? コーラということで、パンチの強いコロンビア豆を用いたのですが......」
恭治郎はこれまでに様々な品種のコーヒーやスパイスの調合を試みた。だが、コーヒーからコーラを生み出すのは容易でなく、二人の苦悶に満ちた顔を見ることも多々あった。
「うぅん......。やっぱり、羽馴ブルボンの方がコーラっぽいかなぁ??」
普段はコーラに縁がない薫も、ほぼ毎日試飲を繰り返せばさすがに感覚が研ぎ澄まされていく。甘み・酸味・苦み、その三つの味わいに機微になるのも頷ける。
「儂も小娘に同じ。やはり本陣を疎かにしてはいけないな」
少々回りくどい言い方だが、亜細亜としては地元の名産を大事にした方がいいということだろう。確かに、町おこしというのは地元の特産品にこだわるのが道理かもしれない。
「だとしたら......これとこれなんてどぉ??」
薫が手に取ったのは明日葉とレモン。それらはいずれも羽馴島を代表する特産品であり、特にレモンは花レモンと評されるように爽やかな芳香が特徴的な果実である。
「明日葉とレモン......果たして、苦みと酸味は共存できるのでしょうか??」
恭治郎が言うように、それらは総じて個性の強い素材である。鴛鴦茶にミルクが共存できない実例を見ている手前、彼に不安がよぎるのも当然かもしれない。
「明日葉とレモン、日本とインドの懸け橋と成り得るか......」
亜細亜は神妙な面持ちで語る。それぞれの原産地は明日葉が日本、レモンはなんとインドだという。生まれの異なる両者がここ羽馴島の地で出会ったのは何か因縁めいたものを感じるが、亜細亜の思うそれはまた別のものかもしれない。
薫の閃きを信じ、恭治郎は明日葉とレモンを試作コーラへ調合する。強い存在感を放つ両者を、羽馴ブルボンは如何に取り纏めるのだろうか。今ここに、コーヒーマイスターたる恭治郎の実力が試される。
「出来ました。羽馴ブルボンをベースとした明日葉と花レモンの調和、いかがでしょうか......?」
恭治郎は緊張の面持ちでグラスを二人へ向けている。いくら世界に名だたるコーヒーマイスターといえど、コーヒーに明日葉とレモンをブレンドするなど考えたことはなかっただろう。
『......っ!!!』
試作品を口にした両者の表情は一変する。ふたりはまるで、未知との遭遇を果たしたように目を見開いている。
「嘘......これがコーラっ!!?」
普段はコーラなど口にしない薫も、試作品の味わいに戦慄している。
「これは、メリケンなど目ではないかも知れぬ!!」
アメリカ嫌いの亜細亜でさえこの反応。両者の反応を見た恭治郎は、亜細亜の飲みかけた一杯をおもむろに口にする。
「......何ですかこれは!!? まるで苦みが突き抜けていくようだ......!!!」
恭治郎が直感的に口にした言葉。第三者からすれば何とも伝わりにくいが、裏を返せばあまりにも複雑な味わいで言葉では言い表せない代物なのかもしれない。
「マスター......ところで炭酸は??」
恭治郎が試作コーラに感嘆している矢先、薫は肝心なことに気付く。コーラに炭酸がなければそれはただの砂糖水。コーラの要を疎かにしていたこと、その事実に恭治郎は苦悶してしまった。
みんなのリアクション
まだリアクションはありません。最初の一歩を踏み出しましょう!
おすすめ作品を読み込み中です…
作者の他の作品
この作者の他作品はありません。
この作品と似た作品
似た傾向の作品は見つかりませんでした。
この作品を読んだ人が読んでいる作品
読者の傾向からおすすめできる作品がありませんでした。
おすすめ作品は現在準備中です。
おすすめ作品の取得に失敗しました。時間をおいて再度お試しください。