写真の向こうの依頼人~クライアント~1-①
ー/ー 時間は朝(?)に遡る。
いつものように土岐田瑛比古さんはランチタイムに間に合うように出勤した。
会社に社員食堂があるように、ここ『明知探偵事務所』にも所員の為に食堂がある……訳ではない。
事務所のあるビルの一階に所長の弟夫妻がレストランを開いていて、昼時に事務所にいる所員はその店でランチをとることが『義務付け』られている。
美晴さんの愛妻弁当を食べる機会を奪うこの横暴に、当初猛反発した瑛比古さんであったが。
その安さ(なんと日替わりランチ一食三百円!)に、次に「それなら、その方が楽かな?」という美晴さんの言葉に、最後にその味に、陥落された。
ビル自体は所長と弟さんが親から受け継いだ共有財産であるが、ビルの管理にも金がかかり、家賃収入だけでは生活費が賄えない。
ならいっそここで商売しよう、と兄弟揃って新しい事業に着手した。
無謀なようだが、二人とも、全く別の職業からの転身というわけではない。
弟さんは実は某有名ホテルのレストランでチーフを勤めていた、という経歴の持ち主で、さすがに味は素晴らしい。
が、コスト面でまず壁にぶち当たり、なかなか経営を軌道に乗せることが出来なかった。
そこで兄弟愛あふれた兄貴(本人曰く)が、少しでも助けになるように、ランチ義務化を思いついた。ちなみに日替わりランチ三百円は、所長が補助金を出す、という形で成り立つ所員特別価格で、普通は六百円である(それでも今は破格だと思える、おいしさではあるが)。
人が入っている店は人を呼ぶのか、所員以外にも客は入るようになってきた。
が、それだけで店が繁盛するわけではない。
どれほどおいしい店でも、毎日同じ店のランチを食べさせられる所員の不平不満を感じて、弟シェフはメニューを改善していった。
元々フレンチ畑のシェフだったが、和洋中取り入れていき、今ではフレンチ風定食屋という看板が上がっている。
(でも、フレンチ『風』って文法上どうなんだろう?
フレンチ自体が『フランス風』の英訳であるから。純粋にフレンチではない、というのがシェフの主張であり、そうなったらしいのだけど。17才の時から瑛比古さん、聞いてはいけない気がして、その疑問、ずっと心の奥にしまっておいた。
ある日、キリがズバリ聞いてきた、シェフの目の前で。空気が凍りついた瞬間、ハルが『このフレンチはフランス料理って意味だから。フランス料理風ってことだよ』と答え、瑛比古さんもシェフも、ウンウンと頷いて、その日からソレが正解になっている。
もっともハルはフォローしたわけではなく、肯定的に捉えて訳しただけだと、瑛比古さんは知っている)
おかげで店は何とか軌道に乗れた。
その恩に報いるため、所員には家族も含めて格安でランチもディナーも振る舞われるようになった。
今では町内でレストランといえば『明知屋』と言われる名店になったここのランチは、瑛比古さんの職場での(唯一の)楽しみになっている。
ちなみに、この『明知』は「アケチ」と読み、所長とシェフの名字であり、決してどこぞの有名探偵の名前をもじったわけではない。
というか、レストランはともかく、探偵事務所に本名とはいえ、こんな中途半端に似た屋号をつけなくても、と瑛比古さんは思う。
が、実は所長の本名は明知小太郎と言う。
これは親を恨むべきか感謝すべきか悩む所ではある。というか、絶対狙ってやったろ!? と瑛比古さんは内心ツッコミしてしまう。
小太郎所長の場合、元・警察官という触れ込みプラス名前が客を呼び、電話帳広告以外には宣伝してないにも関わらず、ソレなりの客足が得られた為、感謝するべきであろう。
ついでにシェフは大二郎という。さらについでに付け加えるなら、二人には大した体格差はない。
さらにさらについでに、このビルは……そう「明知ビル」という。
いつものように土岐田瑛比古さんはランチタイムに間に合うように出勤した。
会社に社員食堂があるように、ここ『明知探偵事務所』にも所員の為に食堂がある……訳ではない。
事務所のあるビルの一階に所長の弟夫妻がレストランを開いていて、昼時に事務所にいる所員はその店でランチをとることが『義務付け』られている。
美晴さんの愛妻弁当を食べる機会を奪うこの横暴に、当初猛反発した瑛比古さんであったが。
その安さ(なんと日替わりランチ一食三百円!)に、次に「それなら、その方が楽かな?」という美晴さんの言葉に、最後にその味に、陥落された。
ビル自体は所長と弟さんが親から受け継いだ共有財産であるが、ビルの管理にも金がかかり、家賃収入だけでは生活費が賄えない。
ならいっそここで商売しよう、と兄弟揃って新しい事業に着手した。
無謀なようだが、二人とも、全く別の職業からの転身というわけではない。
弟さんは実は某有名ホテルのレストランでチーフを勤めていた、という経歴の持ち主で、さすがに味は素晴らしい。
が、コスト面でまず壁にぶち当たり、なかなか経営を軌道に乗せることが出来なかった。
そこで兄弟愛あふれた兄貴(本人曰く)が、少しでも助けになるように、ランチ義務化を思いついた。ちなみに日替わりランチ三百円は、所長が補助金を出す、という形で成り立つ所員特別価格で、普通は六百円である(それでも今は破格だと思える、おいしさではあるが)。
人が入っている店は人を呼ぶのか、所員以外にも客は入るようになってきた。
が、それだけで店が繁盛するわけではない。
どれほどおいしい店でも、毎日同じ店のランチを食べさせられる所員の不平不満を感じて、弟シェフはメニューを改善していった。
元々フレンチ畑のシェフだったが、和洋中取り入れていき、今ではフレンチ風定食屋という看板が上がっている。
(でも、フレンチ『風』って文法上どうなんだろう?
フレンチ自体が『フランス風』の英訳であるから。純粋にフレンチではない、というのがシェフの主張であり、そうなったらしいのだけど。17才の時から瑛比古さん、聞いてはいけない気がして、その疑問、ずっと心の奥にしまっておいた。
ある日、キリがズバリ聞いてきた、シェフの目の前で。空気が凍りついた瞬間、ハルが『このフレンチはフランス料理って意味だから。フランス料理風ってことだよ』と答え、瑛比古さんもシェフも、ウンウンと頷いて、その日からソレが正解になっている。
もっともハルはフォローしたわけではなく、肯定的に捉えて訳しただけだと、瑛比古さんは知っている)
おかげで店は何とか軌道に乗れた。
その恩に報いるため、所員には家族も含めて格安でランチもディナーも振る舞われるようになった。
今では町内でレストランといえば『明知屋』と言われる名店になったここのランチは、瑛比古さんの職場での(唯一の)楽しみになっている。
ちなみに、この『明知』は「アケチ」と読み、所長とシェフの名字であり、決してどこぞの有名探偵の名前をもじったわけではない。
というか、レストランはともかく、探偵事務所に本名とはいえ、こんな中途半端に似た屋号をつけなくても、と瑛比古さんは思う。
が、実は所長の本名は明知小太郎と言う。
これは親を恨むべきか感謝すべきか悩む所ではある。というか、絶対狙ってやったろ!? と瑛比古さんは内心ツッコミしてしまう。
小太郎所長の場合、元・警察官という触れ込みプラス名前が客を呼び、電話帳広告以外には宣伝してないにも関わらず、ソレなりの客足が得られた為、感謝するべきであろう。
ついでにシェフは大二郎という。さらについでに付け加えるなら、二人には大した体格差はない。
さらにさらについでに、このビルは……そう「明知ビル」という。
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