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第41話 ヤギのカーフィー

ー/ー



「メェェェェェッ!!」
 二人の正面から歩み寄ってくる真っ白な何か。地面を踏み鳴らしながらやってきたそいつは、白ヤギだった。
『わぁっ!!』
 二人は、驚きのあまり体がのけ反ってしまう。そのヤギは、どういうわけか目が血走っている。そんなヤギが二人の正面を切り裂くように駆け抜けてきたのだから無理もない。
 白ヤギは二人に構うことなく、コーヒーの木を目掛けてまっしぐら。彼はコーヒーの木へ到着するなり、コーヒーチェリーをムシャムシャと食べ始める。
「この子ね? 羽馴牧場のアイドル、カーフィーちゃん!!」
 京子たちが二人へ追い付いた時に、彼女が放った第一声はこれだ。何を隠そう、彼こそが羽馴牧場名物、白ヤギのカーフィーである。
「会いたかったわ! カーフィーちゃぁん!」
 京子はカーフィーを見つけると、食事中にも拘わらず彼を思い切り抱きしめた。そんな彼女の抱擁に気付いていないのか、カーフィーは無心にコーヒーチェリーを食べ続けている。
「あの子、カーフィーちゃんていうのね......」
 のりこは唖然としている。カーフィーという可愛らしい名前とは裏腹に、その瞳の奥に何かが憑依しているように思えたからだ。
 確かに、中世ヨーロッパにおいてコーヒーは『悪魔の飲み物』と形容されたくらいだ。コーヒーは、きっと人間以外の生物も虜にしてしまうほどの魔力を秘めているに違いない。
「へぇ......『カルディの伝説』は本当だったんだなぁ!」
 コーヒーチェリーにむしゃぶりつくカーフィーを見て、良行は感嘆の息を漏らした。
「何それ? もしかして海賊の財宝??」
 その言葉をのりこは訝しむ。伝説といえば財宝が付き物という先入観は、探検隊を結成してしまうのりこなら当然のことだろうか?
「違うよ。『カルディの伝説』は、コーヒーの発見にまつわる昔話だよ。『カルディの伝説』には、ヤギが登場するんだ」
 良行は、のりこへ『カルディの伝説』について分かりやすく解説していく。それは、コーヒーの起源として語られる有名な説話なのだが、ここでは割愛する。
 詳細を知りたい読者は原典を参照されたし。なお、カルディとは説話に登場するヤギ使いの名前である。
「......つまり、カルディってヤギはコーヒーを発見したのね!?」
 どうやら、のりこは良行の話をうまく理解できなかったようだ。良行は、のりこがきっと5教科の中で一番苦手なのは国語なのだろうと察した。
「おねえちゃん、それは絶対違う!」
 さすがのりょうたも、これには全力で首を横に振る。のりこの理解力には、実の弟でも頭を抱えてしまう。
「のりこ、後できちんと説明するな?」
 こういう言葉遣いに、良行の親としての寛大さがにじみ出る。父親として、のりこの個性を理解し尊重したい。
 親としての理想は抱きつつも、それを決して我が子へ押し付けるようなことはしない。子供達がのびのび育っていくこと、それが良行の一番の願いだ。
「メェェェェェッ!!」
 コーヒーチェリーを食べ終えたカーフィーは、ようやく京子の抱擁に気付き困惑していた。命の危機を察したのか、彼は必死に抵抗している。
「あっ! カーフィーちゃぁん!!」
 一瞬の隙を突いて、カーフィーは彼女の抱擁から抜け出した。一方、京子は口惜しそうな表情をしている。
「悲しいけど、カーフィーちゃんは自由なのよね......。私一人が、みんなのカーフィーちゃんを独占してはいけないわね」
 京子は何かを悟ったような口ぶりで呟くが、カーフィーはただ単に驚いただけだろう。そんなカーフィーは、のりこの下へ駆け寄って来た。
「メェェェェェッ!!」
 カーフィーは、のりこに甘えるように頭を擦り付ける。
「きみ、可愛いね!」
 のりこは両手で彼の頬に優しく触れ、おでこをそっと当てる。のりこには心なしか笑みがこぼれる。カーフィーも、のりこと触れ合えて満足しているようだ。
「おねえちゃんって、昔から動物に好かれるのは何でだろう?」
 りょうたにとっては、それが長年の疑問である。ケンにルナ、それにハヤテ。
 いずれの動物も、真っ先に手懐けているのはのりこである。無自覚ながらも、のりこには動物を惹きつける何かがあるのかもしれない。
「りょうた、これだけは覚えておくんだ。人の魅力は、学力や運動だけでは全てを推し量れない。それは、おねえちゃんを見ていれば分かるだろう?」
 良行は、りょうたの頭を優しく撫でながら語りかける。それを聞いたりょうたは、ただ黙って頷いた。


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「メェェェェェッ!!」
 二人の正面から歩み寄ってくる真っ白な何か。地面を踏み鳴らしながらやってきたそいつは、白ヤギだった。
『わぁっ!!』
 二人は、驚きのあまり体がのけ反ってしまう。そのヤギは、どういうわけか目が血走っている。そんなヤギが二人の正面を切り裂くように駆け抜けてきたのだから無理もない。
 白ヤギは二人に構うことなく、コーヒーの木を目掛けてまっしぐら。彼はコーヒーの木へ到着するなり、コーヒーチェリーをムシャムシャと食べ始める。
「この子ね? 羽馴牧場のアイドル、カーフィーちゃん!!」
 京子たちが二人へ追い付いた時に、彼女が放った第一声はこれだ。何を隠そう、彼こそが羽馴牧場名物、白ヤギのカーフィーである。
「会いたかったわ! カーフィーちゃぁん!」
 京子はカーフィーを見つけると、食事中にも拘わらず彼を思い切り抱きしめた。そんな彼女の抱擁に気付いていないのか、カーフィーは無心にコーヒーチェリーを食べ続けている。
「あの子、カーフィーちゃんていうのね......」
 のりこは唖然としている。カーフィーという可愛らしい名前とは裏腹に、その瞳の奥に何かが憑依しているように思えたからだ。
 確かに、中世ヨーロッパにおいてコーヒーは『悪魔の飲み物』と形容されたくらいだ。コーヒーは、きっと人間以外の生物も虜にしてしまうほどの魔力を秘めているに違いない。
「へぇ......『カルディの伝説』は本当だったんだなぁ!」
 コーヒーチェリーにむしゃぶりつくカーフィーを見て、良行は感嘆の息を漏らした。
「何それ? もしかして海賊の財宝??」
 その言葉をのりこは訝しむ。伝説といえば財宝が付き物という先入観は、探検隊を結成してしまうのりこなら当然のことだろうか?
「違うよ。『カルディの伝説』は、コーヒーの発見にまつわる昔話だよ。『カルディの伝説』には、ヤギが登場するんだ」
 良行は、のりこへ『カルディの伝説』について分かりやすく解説していく。それは、コーヒーの起源として語られる有名な説話なのだが、ここでは割愛する。
 詳細を知りたい読者は原典を参照されたし。なお、カルディとは説話に登場するヤギ使いの名前である。
「......つまり、カルディってヤギはコーヒーを発見したのね!?」
 どうやら、のりこは良行の話をうまく理解できなかったようだ。良行は、のりこがきっと5教科の中で一番苦手なのは国語なのだろうと察した。
「おねえちゃん、それは絶対違う!」
 さすがのりょうたも、これには全力で首を横に振る。のりこの理解力には、実の弟でも頭を抱えてしまう。
「のりこ、後できちんと説明するな?」
 こういう言葉遣いに、良行の親としての寛大さがにじみ出る。父親として、のりこの個性を理解し尊重したい。
 親としての理想は抱きつつも、それを決して我が子へ押し付けるようなことはしない。子供達がのびのび育っていくこと、それが良行の一番の願いだ。
「メェェェェェッ!!」
 コーヒーチェリーを食べ終えたカーフィーは、ようやく京子の抱擁に気付き困惑していた。命の危機を察したのか、彼は必死に抵抗している。
「あっ! カーフィーちゃぁん!!」
 一瞬の隙を突いて、カーフィーは彼女の抱擁から抜け出した。一方、京子は口惜しそうな表情をしている。
「悲しいけど、カーフィーちゃんは自由なのよね......。私一人が、みんなのカーフィーちゃんを独占してはいけないわね」
 京子は何かを悟ったような口ぶりで呟くが、カーフィーはただ単に驚いただけだろう。そんなカーフィーは、のりこの下へ駆け寄って来た。
「メェェェェェッ!!」
 カーフィーは、のりこに甘えるように頭を擦り付ける。
「きみ、可愛いね!」
 のりこは両手で彼の頬に優しく触れ、おでこをそっと当てる。のりこには心なしか笑みがこぼれる。カーフィーも、のりこと触れ合えて満足しているようだ。
「おねえちゃんって、昔から動物に好かれるのは何でだろう?」
 りょうたにとっては、それが長年の疑問である。ケンにルナ、それにハヤテ。
 いずれの動物も、真っ先に手懐けているのはのりこである。無自覚ながらも、のりこには動物を惹きつける何かがあるのかもしれない。
「りょうた、これだけは覚えておくんだ。人の魅力は、学力や運動だけでは全てを推し量れない。それは、おねえちゃんを見ていれば分かるだろう?」
 良行は、りょうたの頭を優しく撫でながら語りかける。それを聞いたりょうたは、ただ黙って頷いた。