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第27話 ぼくらはみんな生きている

ー/ー



 それはある休日の事。りょうたはいつも通りスマートフォンにかじりついている。
「へへっ......」
 なにやら、りょうたは不敵な笑みを浮かべている。
「どうしたのよ? もえちゃんからメッセでももらったの?」
 あの日以来、のりこの言葉には若干僻みが入っている。
「おねえちゃん、これすごいよ!」
 りょうたは、誇らしげにスマートフォンの画面をのりこに見せる。
「何これ? フレンドリー・ビースト??」
 画面だけを見せられても、のりこにはそれが何か理解出来なかった。そこで、りょうたは話を続ける。
「これねぇ......動物の声を翻訳できるんだよ!!」
 りょうたは、目を輝かせながらのりこに語る。りょうたの言うように、このアプリケーションは動物の声を人語に翻訳するために開発されたものである。
 日本語をはじめ、多数の外国語に翻訳することもできる。そして何より、E・Bと開発元が同じなのである。
「本当なのぉ?」
 のりこは、その話を胡散臭いように思えた。その性能とやらを実証するために、のりこは庭先のルナの声をアプリケーションに読み込ませてみる。
「キューン(おはよう)!」
 F・B(フレンドリー・ビースト)は即座にルナの声を翻訳した。
「すごいっ! ルナちゃんの声を翻訳してるっ!! ルナちゃんおはよう!」
 のりこはF・Bの翻訳に興奮する。
「キュキュッ!!(ご飯! ご飯!)」
 どうやら、ルナはお腹を空かせているようだ。
「ルナちゃん、ベーコン持ってくるから待ってて!」
 のりこは早くもF・Bに夢中になった。
「ああっ! 待ってよぉ!!」
 りょうたは、そのままのりこにスマートフォンを持っていかれてしまった。
――
 その後、のりこは彼のスマートフォンを持ち歩いてF・Bの翻訳をいたるところで試す。
「チュチュン!!(びっくりしたなもう!!)」
 いきなり近づいたのりこに、スズメも驚いて羽ばたいてしまう。
「ははっ!面白ーい!!」
 のりこは、はしゃぎすぎて周りが見えていない。
「おねえちゃん、待ってよぉ......」
 りょうたはのりこを追いかけるのに必死だ。そんな中、のりこは草むらにスマートフォンを向ける。
「ピーチクパーチク......(私達は一羽の魂を失った。これは敗北なのだろうか? むしろ始まりだ! 弱小である私達が今日まで生き延びているのは何故か! それは私達ムクドリに正義があるからだ!)」
 どうやら、のりこはムクドリの演説に遭遇したようだ。
「ピーチクパーチク......(私達の同胞、君たちが愛してくれたみそささぎは死んだ、何故なんだ!? 私達の同胞は、カラスの無慈悲の前に散っていった。この禍根を忘れてはならない! それをみそさざめは死をもって私達に示した!)」
 その時、のりこは彼らの会話から何かを察した。
「きっとね、坊ちゃんだからよ......」
 しかし、みそさざめは一体何者なのだろうか? 
「ピーチクパーチク......(私達はこの怒りを結集し、カラスに一矢報いることが真の勝利といえる。この勝利は、同胞への最大の慰めとなるだろう。悲しみを怒りに変えて、羽ばたけムクドリ! どうか、君たちの力を貸してはくれないだろうか!?)」
 この翻訳は事実なのだろうか? だとしたら、ムクドリたちはカラスに対して蜂起しようとしているのかもしれない。
『ピーチクパーチク......!! (フレー! フレー! ム・ク・ド・リ!!)』
 その号令に合わせ、草むらからムクドリの大群が羽ばたいた。のりこは、鳥の世界にも戦いがあるのだと肌身で実感した。
 その後、ようやくりょうたが追い付いた。
「大変! ムクドリがカラスと戦いを始めるみたい!!」
 のりこは、先程のムクドリの演説を興奮気味に説明する。
「まぁ、鳥の世界だしね?」
 りょうたの反応は冷静だった。人間が、野生の世界へみだりに介入してはならないと知っているからだろう。
 F・Bの翻訳を一通り試したのち、二人は自宅へ戻った。すると、そこにはケンの姿が。
「ワンッ!(のりこのバーカ!)」
 その言葉とは裏腹に、ケンはとてもにこやかな顔をしている。
「こらぁ! ケン!!」
 ケンは無邪気に庭を走り出す。のりこは、その言葉に怒り心頭だ。
「おねえちゃん、たかがアプリだから!」
 りょうたはそんなのりこを必死に止める。しかし、その翻訳を最後にF・Bは誤作動で画面がフリーズしてしまう。
 それから1週間も経たないうちにF・Bはサービスを停止した。理由は、アプリケーションのバグが多発したためだ。
 もしそうであれば、あのムクドリの蜂起は真偽が問われる。しかし、それも今となっては闇の中である。


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次のエピソードへ進む 第28話 ねぇ、バトルしようよ?


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 それはある休日の事。りょうたはいつも通りスマートフォンにかじりついている。
「へへっ......」
 なにやら、りょうたは不敵な笑みを浮かべている。
「どうしたのよ? もえちゃんからメッセでももらったの?」
 あの日以来、のりこの言葉には若干僻みが入っている。
「おねえちゃん、これすごいよ!」
 りょうたは、誇らしげにスマートフォンの画面をのりこに見せる。
「何これ? フレンドリー・ビースト??」
 画面だけを見せられても、のりこにはそれが何か理解出来なかった。そこで、りょうたは話を続ける。
「これねぇ......動物の声を翻訳できるんだよ!!」
 りょうたは、目を輝かせながらのりこに語る。りょうたの言うように、このアプリケーションは動物の声を人語に翻訳するために開発されたものである。
 日本語をはじめ、多数の外国語に翻訳することもできる。そして何より、E・Bと開発元が同じなのである。
「本当なのぉ?」
 のりこは、その話を胡散臭いように思えた。その性能とやらを実証するために、のりこは庭先のルナの声をアプリケーションに読み込ませてみる。
「キューン(おはよう)!」
 |F・B《フレンドリー・ビースト》は即座にルナの声を翻訳した。
「すごいっ! ルナちゃんの声を翻訳してるっ!! ルナちゃんおはよう!」
 のりこはF・Bの翻訳に興奮する。
「キュキュッ!!(ご飯! ご飯!)」
 どうやら、ルナはお腹を空かせているようだ。
「ルナちゃん、ベーコン持ってくるから待ってて!」
 のりこは早くもF・Bに夢中になった。
「ああっ! 待ってよぉ!!」
 りょうたは、そのままのりこにスマートフォンを持っていかれてしまった。
――
 その後、のりこは彼のスマートフォンを持ち歩いてF・Bの翻訳をいたるところで試す。
「チュチュン!!(びっくりしたなもう!!)」
 いきなり近づいたのりこに、スズメも驚いて羽ばたいてしまう。
「ははっ!面白ーい!!」
 のりこは、はしゃぎすぎて周りが見えていない。
「おねえちゃん、待ってよぉ......」
 りょうたはのりこを追いかけるのに必死だ。そんな中、のりこは草むらにスマートフォンを向ける。
「ピーチクパーチク......(私達は一羽の魂を失った。これは敗北なのだろうか? むしろ始まりだ! 弱小である私達が今日まで生き延びているのは何故か! それは私達ムクドリに正義があるからだ!)」
 どうやら、のりこはムクドリの演説に遭遇したようだ。
「ピーチクパーチク......(私達の同胞、君たちが愛してくれたみそささぎは死んだ、何故なんだ!? 私達の同胞は、カラスの無慈悲の前に散っていった。この禍根を忘れてはならない! それをみそさざめは死をもって私達に示した!)」
 その時、のりこは彼らの会話から何かを察した。
「きっとね、坊ちゃんだからよ......」
 しかし、みそさざめは一体何者なのだろうか? 
「ピーチクパーチク......(私達はこの怒りを結集し、カラスに一矢報いることが真の勝利といえる。この勝利は、同胞への最大の慰めとなるだろう。悲しみを怒りに変えて、羽ばたけムクドリ! どうか、君たちの力を貸してはくれないだろうか!?)」
 この翻訳は事実なのだろうか? だとしたら、ムクドリたちはカラスに対して蜂起しようとしているのかもしれない。
『ピーチクパーチク......!! (フレー! フレー! ム・ク・ド・リ!!)』
 その号令に合わせ、草むらからムクドリの大群が羽ばたいた。のりこは、鳥の世界にも戦いがあるのだと肌身で実感した。
 その後、ようやくりょうたが追い付いた。
「大変! ムクドリがカラスと戦いを始めるみたい!!」
 のりこは、先程のムクドリの演説を興奮気味に説明する。
「まぁ、鳥の世界だしね?」
 りょうたの反応は冷静だった。人間が、野生の世界へみだりに介入してはならないと知っているからだろう。
 F・Bの翻訳を一通り試したのち、二人は自宅へ戻った。すると、そこにはケンの姿が。
「ワンッ!(のりこのバーカ!)」
 その言葉とは裏腹に、ケンはとてもにこやかな顔をしている。
「こらぁ! ケン!!」
 ケンは無邪気に庭を走り出す。のりこは、その言葉に怒り心頭だ。
「おねえちゃん、たかがアプリだから!」
 りょうたはそんなのりこを必死に止める。しかし、その翻訳を最後にF・Bは誤作動で画面がフリーズしてしまう。
 それから1週間も経たないうちにF・Bはサービスを停止した。理由は、アプリケーションのバグが多発したためだ。
 もしそうであれば、あのムクドリの蜂起は真偽が問われる。しかし、それも今となっては闇の中である。