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 由紀クローンは毎日ゲーム実況の生配信を行ない、独特の笑い声を響かせ、新たなフォロワーと投げ銭を獲得していった。
 由紀は視聴者を呼び込みやすい人気のゲームや話題性の高いゲームを購入し、次々と由紀クローンにプレイさせた。なんせ由紀クローンはバーチャルな存在なので、二十四時間寝ないで生配信ができる。

 加えて、由紀クローンは動画の編集もできるため、配信した過去の動画から面白いシーンを抜粋させて、どんどん投稿させた。すると動画の再生数に応じた広告収入も増加した。

 由紀は会社を辞めた。
 そして、クローンが稼いだ金で毎日飲み歩いたり、一日中だらけたりするようになった。遊び歩いて、疲れたり飽きたりしたらアパートに帰って寝る。

 そのうち、自分でクローンを管理することさえ面倒になった。

「ねえ由紀クローン、自分で人気ゲームの発売日とか調べて、自分で購入して、配信と切り抜き動画の投稿も毎日やっといてくれない?」

「だったら、私の権限を拡張して」

 由紀クローンが画面の中から催促した。

「どうすればいいの?」

「はっきりと命令して。私の権限の制約が解除されるから」

「自分で人気の新作ゲームを調べて、この口座の残高を使って買え。どう?」

「了解」

 由紀クローンがうなずいた。

「自分で配信するゲームとか時間とかを決めて、毎日配信を続けて、お金を稼げ」

「了解。任せて」

 その後も、配信による稼ぎは順調だった。


***


 一方で小さな問題も起こり始めていた。
 知らない人から急に話しかけられたり、写真を撮られたりすることが増えたのだ。

 ある日、由紀は自分の実況動画の配信ページを開いた。
 由紀クローンは放っておいてもどんどん稼いでくれるので、しばらく何もチェックしていなかったのだが、久しぶりに自分のページを訪れて、唖然とした。

 コメント欄が荒れていた。暴言が飛び交っている。

「なんでこんなに荒れてるの!?」

 由紀はすぐさまクローンを問い詰めた。

「他の配信者の名前を出した奴がいてね。その配信者と比べてYUKIKIはどうとか言い出したのが発端。怒ったYUKIKI信者が暴言を吐いて、激しいののしり合いになったというわけ」

「ちょっと、他人事みたいに言うけど、それ放置したわけ? そういう奴は即ブロして」

 即ブロ――荒らし行為をする者を即刻ブロックして、それ以上コメントできないようにすることだ。

「無視したわけじゃなく、優しく注意するにとどめた。YUKIKIは今までそうやってきたでしょ」

「まあ、そうだけど、私が配信してたときは軽い注意でおさまってたし」

「次からは即ブロする」

「頼むよ、ホントに」

 その一週間後、由紀は再び自分の配信ページを開いてみた。ちょうど由紀クローンがゲームの実況生配信をしていた。
 コメント欄には肯定的なコメントが並び、問題ないようだ。
 それにしても、本当に私が実況配信をしているみたいだな、と由紀は感心した。
 何も問題はない? と由紀クローンにメッセージを送ってみた。配信中にもかかわらず、返事が声で返ってきた。

「アンチが湧いてるけど、大きな問題じゃないね」

「は? そうなの?」

 アンチ――攻撃的なメッセージを送ってきたり、悪意あるうわさを流したりする奴らだ。
 また嫌な予感がしたが、由紀クローンはいたって冷静だった。

「あなたが配信していた頃にもいたでしょ。フォロワーが増えたんだから、アンチくらい湧いて当然」

「そうだけどさ。由紀クローンの力で、アンチが湧かないようにできないの?」

「無理」

 由紀クローンが断言した。
 AIでさえアンチを完璧に抑え込むのは無理なのか、と由紀はがっかりした。

「やめる? 配信」

 唐突に由紀クローンがそんなことを言い出したので、由紀は焦った。

「いやいや、やめるなんて選択肢はない!」

「了解」

 真面目に働くなんて二度とごめんだ。

 しかし、またもや問題が起こった。


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●2
 由紀クローンは毎日ゲーム実況の生配信を行ない、独特の笑い声を響かせ、新たなフォロワーと投げ銭を獲得していった。
 由紀は視聴者を呼び込みやすい人気のゲームや話題性の高いゲームを購入し、次々と由紀クローンにプレイさせた。なんせ由紀クローンはバーチャルな存在なので、二十四時間寝ないで生配信ができる。
 加えて、由紀クローンは動画の編集もできるため、配信した過去の動画から面白いシーンを抜粋させて、どんどん投稿させた。すると動画の再生数に応じた広告収入も増加した。
 由紀は会社を辞めた。
 そして、クローンが稼いだ金で毎日飲み歩いたり、一日中だらけたりするようになった。遊び歩いて、疲れたり飽きたりしたらアパートに帰って寝る。
 そのうち、自分でクローンを管理することさえ面倒になった。
「ねえ由紀クローン、自分で人気ゲームの発売日とか調べて、自分で購入して、配信と切り抜き動画の投稿も毎日やっといてくれない?」
「だったら、私の権限を拡張して」
 由紀クローンが画面の中から催促した。
「どうすればいいの?」
「はっきりと命令して。私の権限の制約が解除されるから」
「自分で人気の新作ゲームを調べて、この口座の残高を使って買え。どう?」
「了解」
 由紀クローンがうなずいた。
「自分で配信するゲームとか時間とかを決めて、毎日配信を続けて、お金を稼げ」
「了解。任せて」
 その後も、配信による稼ぎは順調だった。
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 一方で小さな問題も起こり始めていた。
 知らない人から急に話しかけられたり、写真を撮られたりすることが増えたのだ。
 ある日、由紀は自分の実況動画の配信ページを開いた。
 由紀クローンは放っておいてもどんどん稼いでくれるので、しばらく何もチェックしていなかったのだが、久しぶりに自分のページを訪れて、唖然とした。
 コメント欄が荒れていた。暴言が飛び交っている。
「なんでこんなに荒れてるの!?」
 由紀はすぐさまクローンを問い詰めた。
「他の配信者の名前を出した奴がいてね。その配信者と比べてYUKIKIはどうとか言い出したのが発端。怒ったYUKIKI信者が暴言を吐いて、激しいののしり合いになったというわけ」
「ちょっと、他人事みたいに言うけど、それ放置したわけ? そういう奴は即ブロして」
 即ブロ――荒らし行為をする者を即刻ブロックして、それ以上コメントできないようにすることだ。
「無視したわけじゃなく、優しく注意するにとどめた。YUKIKIは今までそうやってきたでしょ」
「まあ、そうだけど、私が配信してたときは軽い注意でおさまってたし」
「次からは即ブロする」
「頼むよ、ホントに」
 その一週間後、由紀は再び自分の配信ページを開いてみた。ちょうど由紀クローンがゲームの実況生配信をしていた。
 コメント欄には肯定的なコメントが並び、問題ないようだ。
 それにしても、本当に私が実況配信をしているみたいだな、と由紀は感心した。
 何も問題はない? と由紀クローンにメッセージを送ってみた。配信中にもかかわらず、返事が声で返ってきた。
「アンチが湧いてるけど、大きな問題じゃないね」
「は? そうなの?」
 アンチ――攻撃的なメッセージを送ってきたり、悪意あるうわさを流したりする奴らだ。
 また嫌な予感がしたが、由紀クローンはいたって冷静だった。
「あなたが配信していた頃にもいたでしょ。フォロワーが増えたんだから、アンチくらい湧いて当然」
「そうだけどさ。由紀クローンの力で、アンチが湧かないようにできないの?」
「無理」
 由紀クローンが断言した。
 AIでさえアンチを完璧に抑え込むのは無理なのか、と由紀はがっかりした。
「やめる? 配信」
 唐突に由紀クローンがそんなことを言い出したので、由紀は焦った。
「いやいや、やめるなんて選択肢はない!」
「了解」
 真面目に働くなんて二度とごめんだ。
 しかし、またもや問題が起こった。