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第20話 面談2

ー/ー



 きた。と俺は思った。
 椎名の読みは正しかったのだろう。なんだかんだ言いつつもこの面談は次の部長を決めるための参考なのだ。
 俺はわざと考えるふりをして、時間をおいてから言った。

「…………椎名、とかがいいんじゃないんですかね」

「……へぇー」

 意外だと言わんばかりの目を轟先輩はしていた。
 そんなにおかしかっただろうか。確かに、俺の口から椎名の名前が出てくることなんてそうそうないのだが、部長に推薦できる人物は椎名、樫田、増倉の三人ぐらいだ。椎名はその中の一人だし、おかしくはないはずだ。

「どうしてそう思ったの?」

「えっと、それは……」

 まさか追及してくるとは。理由なんてないんだが、ここで何も言わないのは変だろう。
 何となくじゃダメだろうし……そういえば椎名がこの前言ってたな。

「……ほら、役者で同学年だけの時とかいつもまとめ役やってくれてますし」

 もはや椎名の言葉そのままなのだが、まぁいいだろう。
 しかし、轟先輩は何か思ったのか、追及をやめなかった。

「他には?」

「他!? あ、えっと…………そ、そういえば、こないだの部活動紹介の劇も椎名が持ってきたのものなんですよ。そういう行動力も部長には必要かなぁって!」

「……なんか無理やり引き出したような言い方だけど」

 無理やり引き出したんだよ! と言うわけにもいかず、俺は「あはは……」と笑ってごまかした。

「いやね。杉野んは樫田んの名前を言うと思ってた」

「へ?」

「だって仲いいし、それにまとめ役で言ったら二年生の中じゃ樫田んの名前が一番先に出るものなんじゃないの?」

「……」

 確かにその通りだ。この一年間、樫田は同学年の中でよくまとめ役をしてくれていた。それは部活動紹介の時の司会進行みたいな感じだった。
 俺は必死に反論を考えた。

「で、でもまとめ役だけが部長の素質じゃないですよね?」

「そうだね。まとめ役だけじゃダメだね。時には率先して部活をひっぱたり、ふざけている人を叱ったり、逆に褒めたりしなきゃだね」

「だったら……!」

「でもね、杉野ん。私が引っかかているのは、杉野んの口から椎名んの名前が出たことだよ」

 心臓がドクンと高鳴るのを感じた。
 背中全体に冷や汗をかき始めた。
 まるで轟先輩にすべてを見透かされているようだった。

「……」

 俺が何も言えずにいると、轟先輩は自分の意見を言ってきた。

「私が思うにね。杉野んって日和見主義っていうか長い物には巻かれるっていうか、あんまり自分の考えを持たず流されるタイプだと思うんだよね。だからさ、きっと椎名んと何か話してるでしょ?」

 その言葉に、俺は考えることすらできなくなった。
 椎名とのことだけじゃない。俺の性格のことまで核心を突かれたと思ったからだ。
 それでも俺は椎名とのことで何か言おうと必死に言葉を探した。

「お、俺は……」

「あ、大丈夫。言わなくていいよ」

 俺が何か言おうとする前に、轟先輩が手を前に出し、静止させた。

 へ? 

 きっと俺は間抜けな顔をしていただろう。

「今のは私の勝手な想像。だから杉野んと椎名んの事は聞かない」

 轟先輩はそう断言した。
 なぜ? どうして?
 俺は恐る恐る疑問に思ったことをそのまま聞いた。

「……何でですか?」

「だってそれを聞いたら私は部長としてその事に介入しないといけないかもしれない。けどね。その事は私じゃ解決できないから。きっと君たちじゃないと解決できないから。解決できない事を触れても仕方ないでしょ?」

 轟先輩はどこか寂しそうに笑いながらそう言った。
 確かにそうかもしれない。全国大会に行きたいことは引退する先輩たちに言っても仕方がない。もし先輩が全国大会を目指すこと反対なら椎名と衝突し問題はより大きくなってしまうかもしれない。

 ああ、なんとなく分かってしまった。先輩として部長として轟先輩は本当は俺と椎名のことを触れたいのだ。けれど、自分には解決する力がないから。もしくは後輩の問題は後輩で解決させようとしているのだ。

 それは部長としての責務なのか、本人の考えなのかは分からないが、俺は素直に轟先輩に敬意を抱いた。
 部長になるということはここまで考えないといけないのか。
 そう考えると、全国大会を目指すために部長になるとしている椎名は少々利己的ではないだろうか。いや、かといって樫田が部長に向いているかと聞かれればそうでもない気もする。

「それでね。杉野んには椎名んを助けてあげてほしいの」

 俺がそんなことを考えていると、轟先輩がそんなことを言った。

「? 俺が椎名を助ける?」

 突然この人は何を言い出すのだろうか。
 そう思いながらも話を聞いた。

「そう。杉野んと椎名んが何を考えているかは聞かない。でもね。きっとそれはとても辛いくて険しい道のりだから。それに椎名んを助けられるのは杉野んしかいないから」

 轟先輩は笑顔でそう言った。
 この人は、一体どこまで先を読んでいるのだろうか。
 けれど俺は、その想像がつかなかった。

「たぶんないと思いますよ。俺が椎名を助けることなんか。だってあいつ一人で何でも決めるし、俺なんかよりずっと頭いいし」

「頭の良さとかじゃないよ。例えば……困ったとき話を聞いてあげたり、辛いときそばにいて一緒に泣いたり、そんなことができるのは杉野んだけだよ」

 轟先輩はまるで何確信を持っているかのように自信満々にそう言った。
 けど俺はピンとこなかった。

「? そんなことなら誰でもいいじゃないですか」

「誰でもじゃダメだよ。心を許した人じゃないとね。椎名んは多分、部活の中じゃ杉野んにしか心を許してないよ」

 心を許す、か。椎名の態度を考えると、とてもそうは見えないが。
 意外と外から見たらそう見えるのだろうか。
 助ける。俺に何ができるかはわからないが、先輩に頼まれたら断るわけにはいかないか。

「まぁ、あいつが困っているなら、そりゃ助けますけど」

「約束だよ」

「はい」

「後、このことは私と杉野んの二人だけの秘密だよ」

「秘密、ですか?」

「そう、誰にも言っちゃダメだよ」

 轟先輩は人差し指を唇に当て、そう言った。
 どんな思惑があるのかはわからないが、俺は黙って頷いた。

「じゃ、この話は終了ー。えっと次は……」

「まだあるんですか!?」

 思わず、そんなことを言ってしまった。
 てっきり部長が誰がいいという質問が最後だと思っていた。

「次で最後だから。春大会でやる劇についてなんだけど」

「あ、はい」

 なんだ、業務連絡的なやつか。
 役についてだろうけど、俺はまたサブキャラポジションかなぁ。
 主演は津田先輩か轟先輩がやるんだろうし。
 今年の春大会はのんびりできそうだ。

「杉野ん、主演やらない?」

「え」



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 きた。と俺は思った。
 椎名の読みは正しかったのだろう。なんだかんだ言いつつもこの面談は次の部長を決めるための参考なのだ。
 俺はわざと考えるふりをして、時間をおいてから言った。
「…………椎名、とかがいいんじゃないんですかね」
「……へぇー」
 意外だと言わんばかりの目を轟先輩はしていた。
 そんなにおかしかっただろうか。確かに、俺の口から椎名の名前が出てくることなんてそうそうないのだが、部長に推薦できる人物は椎名、樫田、増倉の三人ぐらいだ。椎名はその中の一人だし、おかしくはないはずだ。
「どうしてそう思ったの?」
「えっと、それは……」
 まさか追及してくるとは。理由なんてないんだが、ここで何も言わないのは変だろう。
 何となくじゃダメだろうし……そういえば椎名がこの前言ってたな。
「……ほら、役者で同学年だけの時とかいつもまとめ役やってくれてますし」
 もはや椎名の言葉そのままなのだが、まぁいいだろう。
 しかし、轟先輩は何か思ったのか、追及をやめなかった。
「他には?」
「他!? あ、えっと…………そ、そういえば、こないだの部活動紹介の劇も椎名が持ってきたのものなんですよ。そういう行動力も部長には必要かなぁって!」
「……なんか無理やり引き出したような言い方だけど」
 無理やり引き出したんだよ! と言うわけにもいかず、俺は「あはは……」と笑ってごまかした。
「いやね。杉野んは樫田んの名前を言うと思ってた」
「へ?」
「だって仲いいし、それにまとめ役で言ったら二年生の中じゃ樫田んの名前が一番先に出るものなんじゃないの?」
「……」
 確かにその通りだ。この一年間、樫田は同学年の中でよくまとめ役をしてくれていた。それは部活動紹介の時の司会進行みたいな感じだった。
 俺は必死に反論を考えた。
「で、でもまとめ役だけが部長の素質じゃないですよね?」
「そうだね。まとめ役だけじゃダメだね。時には率先して部活をひっぱたり、ふざけている人を叱ったり、逆に褒めたりしなきゃだね」
「だったら……!」
「でもね、杉野ん。私が引っかかているのは、杉野んの口から椎名んの名前が出たことだよ」
 心臓がドクンと高鳴るのを感じた。
 背中全体に冷や汗をかき始めた。
 まるで轟先輩にすべてを見透かされているようだった。
「……」
 俺が何も言えずにいると、轟先輩は自分の意見を言ってきた。
「私が思うにね。杉野んって日和見主義っていうか長い物には巻かれるっていうか、あんまり自分の考えを持たず流されるタイプだと思うんだよね。だからさ、きっと椎名んと何か話してるでしょ?」
 その言葉に、俺は考えることすらできなくなった。
 椎名とのことだけじゃない。俺の性格のことまで核心を突かれたと思ったからだ。
 それでも俺は椎名とのことで何か言おうと必死に言葉を探した。
「お、俺は……」
「あ、大丈夫。言わなくていいよ」
 俺が何か言おうとする前に、轟先輩が手を前に出し、静止させた。
 へ? 
 きっと俺は間抜けな顔をしていただろう。
「今のは私の勝手な想像。だから杉野んと椎名んの事は聞かない」
 轟先輩はそう断言した。
 なぜ? どうして?
 俺は恐る恐る疑問に思ったことをそのまま聞いた。
「……何でですか?」
「だってそれを聞いたら私は部長としてその事に介入しないといけないかもしれない。けどね。その事は私じゃ解決できないから。きっと君たちじゃないと解決できないから。解決できない事を触れても仕方ないでしょ?」
 轟先輩はどこか寂しそうに笑いながらそう言った。
 確かにそうかもしれない。全国大会に行きたいことは引退する先輩たちに言っても仕方がない。もし先輩が全国大会を目指すこと反対なら椎名と衝突し問題はより大きくなってしまうかもしれない。
 ああ、なんとなく分かってしまった。先輩として部長として轟先輩は本当は俺と椎名のことを触れたいのだ。けれど、自分には解決する力がないから。もしくは後輩の問題は後輩で解決させようとしているのだ。
 それは部長としての責務なのか、本人の考えなのかは分からないが、俺は素直に轟先輩に敬意を抱いた。
 部長になるということはここまで考えないといけないのか。
 そう考えると、全国大会を目指すために部長になるとしている椎名は少々利己的ではないだろうか。いや、かといって樫田が部長に向いているかと聞かれればそうでもない気もする。
「それでね。杉野んには椎名んを助けてあげてほしいの」
 俺がそんなことを考えていると、轟先輩がそんなことを言った。
「? 俺が椎名を助ける?」
 突然この人は何を言い出すのだろうか。
 そう思いながらも話を聞いた。
「そう。杉野んと椎名んが何を考えているかは聞かない。でもね。きっとそれはとても辛いくて険しい道のりだから。それに椎名んを助けられるのは杉野んしかいないから」
 轟先輩は笑顔でそう言った。
 この人は、一体どこまで先を読んでいるのだろうか。
 けれど俺は、その想像がつかなかった。
「たぶんないと思いますよ。俺が椎名を助けることなんか。だってあいつ一人で何でも決めるし、俺なんかよりずっと頭いいし」
「頭の良さとかじゃないよ。例えば……困ったとき話を聞いてあげたり、辛いときそばにいて一緒に泣いたり、そんなことができるのは杉野んだけだよ」
 轟先輩はまるで何確信を持っているかのように自信満々にそう言った。
 けど俺はピンとこなかった。
「? そんなことなら誰でもいいじゃないですか」
「誰でもじゃダメだよ。心を許した人じゃないとね。椎名んは多分、部活の中じゃ杉野んにしか心を許してないよ」
 心を許す、か。椎名の態度を考えると、とてもそうは見えないが。
 意外と外から見たらそう見えるのだろうか。
 助ける。俺に何ができるかはわからないが、先輩に頼まれたら断るわけにはいかないか。
「まぁ、あいつが困っているなら、そりゃ助けますけど」
「約束だよ」
「はい」
「後、このことは私と杉野んの二人だけの秘密だよ」
「秘密、ですか?」
「そう、誰にも言っちゃダメだよ」
 轟先輩は人差し指を唇に当て、そう言った。
 どんな思惑があるのかはわからないが、俺は黙って頷いた。
「じゃ、この話は終了ー。えっと次は……」
「まだあるんですか!?」
 思わず、そんなことを言ってしまった。
 てっきり部長が誰がいいという質問が最後だと思っていた。
「次で最後だから。春大会でやる劇についてなんだけど」
「あ、はい」
 なんだ、業務連絡的なやつか。
 役についてだろうけど、俺はまたサブキャラポジションかなぁ。
 主演は津田先輩か轟先輩がやるんだろうし。
 今年の春大会はのんびりできそうだ。
「杉野ん、主演やらない?」
「え」