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第8話 のりことりょうたの1日

ー/ー



 さてさてこちらは、のりことりょうたの通学している光景。二人は京子の付き添いで、徒歩20分ほどの道のりを歩いている。
「おねえちゃん、道草してると遅刻しちゃうよ!」
 のりこは弟から注意を受ける。しかし、彼女はそんなことなどお構いなしだ。
「......あれ、何かしら?」
 そこには一匹のタヌキがいた。よく見ると、頬に三日月を思わせる切り傷がある。
「ルナちゃん、こっちへおいで!」
 のりこは、タヌキをルナと勝手に命名した。しかし、ルナは警戒しているのか一定の距離を保ったまま微動だにしない。
 タヌキは本来、とても臆病な生き物。だが、それでものりこはルナの気を惹くことに夢中だ。
「のりちゃん、行くわよ!」
 みかねた京子は、のりこの腕を力づくで引く。少々強引かも知れないが、これも親の立場上仕方のないことだ。
「痛い痛いっ! 分かったからやめて!!」
 のりこは、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にする。その様子を、ルナはただじっと見つめる。
ーー
 二人の通う校門には、学校名の書かれた古びた一枚板が掛けられている。それは苔に覆われていて、開校から長い月日の経過を思わせる。
「さて、担任の先生にご挨拶しないと」
 京子は、のりこ達を連れて職員室へ向かう。何事も、はじめが肝心だ。
「おはようございます。この度、この小学校へ転校して参りました島長です。先生方、のりことりょうたをよろしくお願いいたします」
 付き添いを終えた京子は、そのまま帰路へと着く。あとは本人達次第だ。
ーー
「クラスの人たち、仲良くしてくれるかなぁ......」
 りょうたは、転校生らしい期待と不安が入り混じった面持ちだ。一方、のりこはどうだろうか……?
「テンコーセーか何か知らないけど、どこからでもかかってきなさい!!」
 のりこ、初日から痛々しい勘違い。第一に、転校生はのりこ自身である。
 果たして、初日から彼女は何と戦うつもりなのか? そこは敢えて触れないことにしよう。
ーー
 まずは、りょうたの自己紹介から覗いていこう。こちらは真っ当に転校生の姿。
「はっ、はじめまして......。と、本島から来ました、島長りょうたです......。よ、よろしくお願いします......」
 りょうたは、緊張のあまり表情が強張っている。そこへ、担任の先生から温かいフォローが入る。
「みんな、りょうた君に拍手!」
 クラス一同、拍手で彼を迎えた。りょうたの第一歩は手ごたえあり。
ーー
さて、のりこはどうだろうか? 先程は、何故か臨戦態勢な彼女だったが……。
「私、本島から来た島長のりこよ。テンコーセーってのは、どこにいるのかしら?」
 のりこの勘違いは、一切手直しされないまま進んでしまった。こういう人物、社会にも一人や二人見かけないだろうか?
「のりこちゃん、転校生はあなたのことよ?」
 先生の顔が引きつる。クラス一同も、のりこの言動に訳が分からず口をぽかんと開けている。
「先生、よく見たらこのクラスは男子ばかりね。これはつまり、ハーレムっ!?」
 のりこは、クラスメイトを見回してからの一言。おそらく、のりこは紅一点と言いたいのだろう。
「のりこちゃんは少し変わった子かもしれないけど、みんな仲良くしてあげてね?」
 先生は必死にのりこを擁護するが、のりこは意に介していない。彼女の暴走は止まらない。
「テンコーセーのみんな、よろしく!」
 のりこの勘違いは徹頭徹尾、先生は前途多難と悩む。これが、のりこの初日だった。
ーー
「のりことりょうたは、学校どうだった?」
 良行が二人に尋ねる。帰宅後の一家団欒、会話が弾む。
「人数は少ないけど、みんな仲良しだよ」
 りょうたの感触は好調。子供達が学校で馴染めるか、親の立場からすると重要な問題だ。しかし、のりこは何だか不機嫌。
「なんで私のクラスは、男子しかいないのよ!」
 のりこの学年は男子が多勢。どうやら、この春にクラスで唯一の女の子が他県へ引っ越してしまったらしい。
「男子たちは、きっと私を雌でも見るようないやらしい目をしているに違いないわ!」
 それを聞いたりょうたは、どことなく冷ややかな目で彼女を見つめる。それはおそらく、姉の思い込みでしかないと。
 昔からやんちゃで、女子とうまく馴染めず専ら男子と遊んでいる彼女のことだ。むしろそれは、本人にとって好都合ではなかろうか......りょうたは内心そう思っていた。
「だって、いきなり遊ぼうって声を掛けてきた男の子がいたのよ。これってつまりプロポーズじゃない!?」
 どういうわけか、のりこは変に色気づいている。紅一点という環境は、男勝りな女子でさえ色気づかせてしまうものなのだろうか?
「いいじゃない。のりこきっと人気者になれるわよ!」
 のりこの話を聞いた京子は、面白半分に茶化す。母の目線から、彼女の思いは杞憂であると見抜いている。
 みんなの話を聞いて、特別に心配はなさそうだと確信した京子だった。


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 さてさてこちらは、のりことりょうたの通学している光景。二人は京子の付き添いで、徒歩20分ほどの道のりを歩いている。
「おねえちゃん、道草してると遅刻しちゃうよ!」
 のりこは弟から注意を受ける。しかし、彼女はそんなことなどお構いなしだ。
「......あれ、何かしら?」
 そこには一匹のタヌキがいた。よく見ると、頬に三日月を思わせる切り傷がある。
「ルナちゃん、こっちへおいで!」
 のりこは、タヌキをルナと勝手に命名した。しかし、ルナは警戒しているのか一定の距離を保ったまま微動だにしない。
 タヌキは本来、とても臆病な生き物。だが、それでものりこはルナの気を惹くことに夢中だ。
「のりちゃん、行くわよ!」
 みかねた京子は、のりこの腕を力づくで引く。少々強引かも知れないが、これも親の立場上仕方のないことだ。
「痛い痛いっ! 分かったからやめて!!」
 のりこは、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にする。その様子を、ルナはただじっと見つめる。
ーー
 二人の通う校門には、学校名の書かれた古びた一枚板が掛けられている。それは苔に覆われていて、開校から長い月日の経過を思わせる。
「さて、担任の先生にご挨拶しないと」
 京子は、のりこ達を連れて職員室へ向かう。何事も、はじめが肝心だ。
「おはようございます。この度、この小学校へ転校して参りました島長です。先生方、のりことりょうたをよろしくお願いいたします」
 付き添いを終えた京子は、そのまま帰路へと着く。あとは本人達次第だ。
ーー
「クラスの人たち、仲良くしてくれるかなぁ......」
 りょうたは、転校生らしい期待と不安が入り混じった面持ちだ。一方、のりこはどうだろうか……?
「テンコーセーか何か知らないけど、どこからでもかかってきなさい!!」
 のりこ、初日から痛々しい勘違い。第一に、転校生はのりこ自身である。
 果たして、初日から彼女は何と戦うつもりなのか? そこは敢えて触れないことにしよう。
ーー
 まずは、りょうたの自己紹介から覗いていこう。こちらは真っ当に転校生の姿。
「はっ、はじめまして......。と、本島から来ました、島長りょうたです......。よ、よろしくお願いします......」
 りょうたは、緊張のあまり表情が強張っている。そこへ、担任の先生から温かいフォローが入る。
「みんな、りょうた君に拍手!」
 クラス一同、拍手で彼を迎えた。りょうたの第一歩は手ごたえあり。
ーー
さて、のりこはどうだろうか? 先程は、何故か臨戦態勢な彼女だったが……。
「私、本島から来た島長のりこよ。テンコーセーってのは、どこにいるのかしら?」
 のりこの勘違いは、一切手直しされないまま進んでしまった。こういう人物、社会にも一人や二人見かけないだろうか?
「のりこちゃん、転校生はあなたのことよ?」
 先生の顔が引きつる。クラス一同も、のりこの言動に訳が分からず口をぽかんと開けている。
「先生、よく見たらこのクラスは男子ばかりね。これはつまり、ハーレムっ!?」
 のりこは、クラスメイトを見回してからの一言。おそらく、のりこは紅一点と言いたいのだろう。
「のりこちゃんは少し変わった子かもしれないけど、みんな仲良くしてあげてね?」
 先生は必死にのりこを擁護するが、のりこは意に介していない。彼女の暴走は止まらない。
「テンコーセーのみんな、よろしく!」
 のりこの勘違いは徹頭徹尾、先生は前途多難と悩む。これが、のりこの初日だった。
ーー
「のりことりょうたは、学校どうだった?」
 良行が二人に尋ねる。帰宅後の一家団欒、会話が弾む。
「人数は少ないけど、みんな仲良しだよ」
 りょうたの感触は好調。子供達が学校で馴染めるか、親の立場からすると重要な問題だ。しかし、のりこは何だか不機嫌。
「なんで私のクラスは、男子しかいないのよ!」
 のりこの学年は男子が多勢。どうやら、この春にクラスで唯一の女の子が他県へ引っ越してしまったらしい。
「男子たちは、きっと私を雌でも見るようないやらしい目をしているに違いないわ!」
 それを聞いたりょうたは、どことなく冷ややかな目で彼女を見つめる。それはおそらく、姉の思い込みでしかないと。
 昔からやんちゃで、女子とうまく馴染めず専ら男子と遊んでいる彼女のことだ。むしろそれは、本人にとって好都合ではなかろうか......りょうたは内心そう思っていた。
「だって、いきなり遊ぼうって声を掛けてきた男の子がいたのよ。これってつまりプロポーズじゃない!?」
 どういうわけか、のりこは変に色気づいている。紅一点という環境は、男勝りな女子でさえ色気づかせてしまうものなのだろうか?
「いいじゃない。のりこきっと人気者になれるわよ!」
 のりこの話を聞いた京子は、面白半分に茶化す。母の目線から、彼女の思いは杞憂であると見抜いている。
 みんなの話を聞いて、特別に心配はなさそうだと確信した京子だった。