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第4章〜㉒〜

ー/ー



さらに、オレの前方、数メートルの位置からは、こちらを振り返り、

「おい、ナツキ! どう言うことなんだ!? おまえ、このこと知ってたのか?」

数分前に、快活な笑顔を見せていた悪友が問い掛けてきた。

「あ、あぁ……」

 康之に、それだけ答えると、さらに、トーンを上げた声が響く。

「知ってて、ナニやってんだよ、おまえは!?」

大嶋や康之だけでなく、教室内のあちこちから漏れる声に、担任教師は、

「気持ちはわかるが、今から始業式だ! 校庭に移動するゾ〜」

と、教師らしく教室内の空気の切り替えをうながす。

「しゃ〜ねぇ。この話は、また後だ!」

 担任の一言に応じて、康之はそう言って、校庭に向かう。
 大嶋も、中嶋の元に駆け寄って、小嶋夏海の件を問おうとしていたが、

「詳しいことは、またあとで話すから……」

と、先送りにされたようだった。



 始業式の全校集会(校庭が広いので、全校生徒が一堂に会していた)と午前中二時間の授業、そして、クラスでの終礼が終了すると、時刻は、午前十一時半を回ろうとしていた。
 放課後の終礼が終わると、哲夫と康之、そして大嶋と中嶋が、自分の席に集まってきた。

「ユカに聞いたけど、坂井も知ってたの? ナツミのこと!」

 予想どおり、会話の口火を切ったのは、やはり、大嶋だった。

「あぁ……」

 始業前に康之に聞かれたときと同様に、短く返答すると、

「なんで、ナツミも、ユカも、坂井も、私に話してくれないの!?」

 憤まんやるかた無い、といった感じで、オレの席の机をバンッ、と両手で打った。
 大嶋の隣の中嶋は、困ったような表情で、

「ユカに話してなかったのは悪いと思うけど、ナツミの家のことでもあるから……」

と、友人を諭す。

「わかってる! だから、ナツミのことを話してもらえなかったことじゃなくて……気付けなかった自分に、腹が立ってるの!!」

 友人になだめられ、自身の想いを打ち明けた大嶋裕美子は、そう言ってうつむいた。
 中嶋や康之は、そんな彼女のようすを見て、掛ける言葉が見つからないようだった。
 メンバーの一同が沈黙に陥りそうになる、そんな中、哲夫が口を開く。

「ナツキ、オレとヤスユキの想いも、大嶋と同じだ……そこで、おまえに頼みたいことがあるんだが、いいか?」

 今まで口を開かなかった友人の意外な一言に、

「なんだ、哲夫? 頼みたいことって……」

と、応じると、男子バレーボール部の次期キャプテン候補は、こんな提案をしてきた。

「ナツキ自身も色々と考えているんじゃないかとは思うが……今の時点で、小嶋と向き合って話せるのは、ナツキ、おまえだけだ……オレたちが、小嶋に伝えられない想いを代わりに伝えて来てくれないか?」

「えっ!?」

 思わぬ申し入れに、次の言葉を探しあぐねていると、哲夫は、オレの机を取り囲んでいる二人にたずねる。

「ヤスユキ、大嶋……勝手に提案してしまって申し訳ないが、それでも良いか?」

「あぁ、いいぜ!」

 友人の言葉を快諾する康之。

「しょうがないな……確かに、夏休み中、ナツキと一番多く話してたのは坂井だしね……」

 大嶋も、クラスメートの提案に乗ることにしたようだ。
 一方のオレ自身は、朝一番に、放課後の予定について約束をしていた悪友の表情を確認しながら、

「いや、しかし……今日は、ヤスユキの話しを聞く約束が……」

と、口にするとーーーーーー。

「バカヤロー! 自分のヘタレさの言い訳にオレを使うんじゃねぇ! ツレの都合なんて関係なく、いま、自分のやるべきことを考えろ!」

 仲間内でジャレ合う時以外に、大声を出すことは滅多にない康之の強い語気に気圧され、

「あ、あぁ……わかった」

と、答える。
 康之は、こちらの返答に満足したような表情を見せ、大嶋と哲夫は、安堵した顔色で、胸をなでおろす。
 そんな自分たち四人のようすを黙って見ていた中嶋由香は、落ち着いた声で、

「坂井、覚悟は決まった?」

そうたずねてくる。
 メンバーの中で一人、冷静沈着なクラスメートの問い掛けに、

「お、おう……」

と、応じると、

「じゃ、時間もないし、ちょっと来て!」

そう言って、教室の外に移動するよう、うながした。
 そして、中嶋の後から廊下に向かおうとするオレに、

「ナツキ!」

と、呼び止める声がする。

「直接、バス停に向かうなら、この時期だし、水分補給も必要だろ? 昼飯代の代わりに、取っとけよ」

 ぶっきらぼうに言った康之は、百円玉と五十円玉を一枚ずつ手渡してきた。
 不意に提供された好意に、あらためて、友人の顔をマジマジと眺めると、悪友は、さらに言葉を続ける。

「なんだよ!? 昼飯は、あらためて奢ってやるから! ドリンクなら、それで足りるだろ?」

「ありがとう! 好意は遠慮なく受け取らせてもらう!」

 一言、感謝の言葉を述べ、オレは、通学カバンから財布とスマホを手に取り、さらに、()()()()()()()を取り出し、首に掛けてから、中嶋のあとを追うことにした。
 廊下に向かって足を踏み出した背中からは、

「ヤスユキ、ちょうどタイミングが良かったんじゃないか? 大嶋に相談に乗ってもらったらどうだ?」

と、語る哲夫の声と、

「そうだな……先に、大嶋に話しを聞いてもらうか……」

と答える康之の声が聞こえた。


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さらに、オレの前方、数メートルの位置からは、こちらを振り返り、
「おい、ナツキ! どう言うことなんだ!? おまえ、このこと知ってたのか?」
数分前に、快活な笑顔を見せていた悪友が問い掛けてきた。
「あ、あぁ……」
 康之に、それだけ答えると、さらに、トーンを上げた声が響く。
「知ってて、ナニやってんだよ、おまえは!?」
大嶋や康之だけでなく、教室内のあちこちから漏れる声に、担任教師は、
「気持ちはわかるが、今から始業式だ! 校庭に移動するゾ〜」
と、教師らしく教室内の空気の切り替えをうながす。
「しゃ〜ねぇ。この話は、また後だ!」
 担任の一言に応じて、康之はそう言って、校庭に向かう。
 大嶋も、中嶋の元に駆け寄って、小嶋夏海の件を問おうとしていたが、
「詳しいことは、またあとで話すから……」
と、先送りにされたようだった。
 始業式の全校集会(校庭が広いので、全校生徒が一堂に会していた)と午前中二時間の授業、そして、クラスでの終礼が終了すると、時刻は、午前十一時半を回ろうとしていた。
 放課後の終礼が終わると、哲夫と康之、そして大嶋と中嶋が、自分の席に集まってきた。
「ユカに聞いたけど、坂井も知ってたの? ナツミのこと!」
 予想どおり、会話の口火を切ったのは、やはり、大嶋だった。
「あぁ……」
 始業前に康之に聞かれたときと同様に、短く返答すると、
「なんで、ナツミも、ユカも、坂井も、私に話してくれないの!?」
 憤まんやるかた無い、といった感じで、オレの席の机をバンッ、と両手で打った。
 大嶋の隣の中嶋は、困ったような表情で、
「ユカに話してなかったのは悪いと思うけど、ナツミの家のことでもあるから……」
と、友人を諭す。
「わかってる! だから、ナツミのことを話してもらえなかったことじゃなくて……気付けなかった自分に、腹が立ってるの!!」
 友人になだめられ、自身の想いを打ち明けた大嶋裕美子は、そう言ってうつむいた。
 中嶋や康之は、そんな彼女のようすを見て、掛ける言葉が見つからないようだった。
 メンバーの一同が沈黙に陥りそうになる、そんな中、哲夫が口を開く。
「ナツキ、オレとヤスユキの想いも、大嶋と同じだ……そこで、おまえに頼みたいことがあるんだが、いいか?」
 今まで口を開かなかった友人の意外な一言に、
「なんだ、哲夫? 頼みたいことって……」
と、応じると、男子バレーボール部の次期キャプテン候補は、こんな提案をしてきた。
「ナツキ自身も色々と考えているんじゃないかとは思うが……今の時点で、小嶋と向き合って話せるのは、ナツキ、おまえだけだ……オレたちが、小嶋に伝えられない想いを代わりに伝えて来てくれないか?」
「えっ!?」
 思わぬ申し入れに、次の言葉を探しあぐねていると、哲夫は、オレの机を取り囲んでいる二人にたずねる。
「ヤスユキ、大嶋……勝手に提案してしまって申し訳ないが、それでも良いか?」
「あぁ、いいぜ!」
 友人の言葉を快諾する康之。
「しょうがないな……確かに、夏休み中、ナツキと一番多く話してたのは坂井だしね……」
 大嶋も、クラスメートの提案に乗ることにしたようだ。
 一方のオレ自身は、朝一番に、放課後の予定について約束をしていた悪友の表情を確認しながら、
「いや、しかし……今日は、ヤスユキの話しを聞く約束が……」
と、口にするとーーーーーー。
「バカヤロー! 自分のヘタレさの言い訳にオレを使うんじゃねぇ! ツレの都合なんて関係なく、いま、自分のやるべきことを考えろ!」
 仲間内でジャレ合う時以外に、大声を出すことは滅多にない康之の強い語気に気圧され、
「あ、あぁ……わかった」
と、答える。
 康之は、こちらの返答に満足したような表情を見せ、大嶋と哲夫は、安堵した顔色で、胸をなでおろす。
 そんな自分たち四人のようすを黙って見ていた中嶋由香は、落ち着いた声で、
「坂井、覚悟は決まった?」
そうたずねてくる。
 メンバーの中で一人、冷静沈着なクラスメートの問い掛けに、
「お、おう……」
と、応じると、
「じゃ、時間もないし、ちょっと来て!」
そう言って、教室の外に移動するよう、うながした。
 そして、中嶋の後から廊下に向かおうとするオレに、
「ナツキ!」
と、呼び止める声がする。
「直接、バス停に向かうなら、この時期だし、水分補給も必要だろ? 昼飯代の代わりに、取っとけよ」
 ぶっきらぼうに言った康之は、百円玉と五十円玉を一枚ずつ手渡してきた。
 不意に提供された好意に、あらためて、友人の顔をマジマジと眺めると、悪友は、さらに言葉を続ける。
「なんだよ!? 昼飯は、あらためて奢ってやるから! ドリンクなら、それで足りるだろ?」
「ありがとう! 好意は遠慮なく受け取らせてもらう!」
 一言、感謝の言葉を述べ、オレは、通学カバンから財布とスマホを手に取り、さらに、|祖《・》|父《・》|さ《・》|ん《・》|の《・》|形《・》|見《・》を取り出し、首に掛けてから、中嶋のあとを追うことにした。
 廊下に向かって足を踏み出した背中からは、
「ヤスユキ、ちょうどタイミングが良かったんじゃないか? 大嶋に相談に乗ってもらったらどうだ?」
と、語る哲夫の声と、
「そうだな……先に、大嶋に話しを聞いてもらうか……」
と答える康之の声が聞こえた。