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第26話 嫉妬とお参り

ー/ー



12月25日

朝、目が覚めた俺が布団の中を覗き込と、いつものようにユウキとリョクが朝の俺のピーンとなっていたアレをガン見していた。

「今日もばっちぐー」

そう言ってユウキは右の親指を立てた。
しかし、その頬はいつもと違って少し朱色に染まっている気がするのは気のせいか。

「いやぁ、昨晩はお楽しみでしたねぇ」

そう言ったのはリョク。
なに、その『ちゃららら、ちゃっちゃっちゃ~』みたいな(いにしえ)のRPGのようなセリフ。
言っておくが、そんな事は当然無かったぞ?

「在りもしないことを捏造するんじゃない」

俺はそう言うと、既にアレも収まっていたこともありベッドから立ち上がる。

「いやいや、お楽しみだったじゃないですか『クライマックスごっこ』」

あぁ、その事か。
なんて紛らわしい奴だ。
ワザとなんだろうが。

俺はそんな事を思いながら、恋人に昇格したユウキの持ってくる服に着替えたのだった。

てってってって。

食堂にやって来ると、既に皆は席に着いていた。
俺達は、皆の熱い視線を浴びながら席に着く。

ふと、真正面に座るジャンヌに視線を向けると、いつになくご機嫌な顔をしていた。
そして、その視線を下にずらした時、それは起きた。

「痛ってぇええええっ!!!」

あまりに大きな声を上げてしまったため、皆はびっくりして俺の方に顔を向ける。

「浮気は駄目」

そう、痛みの正体は隣に陣取っているユウキが、俺の太ももを思いっ切り(つね)ったからであった。

「浮気も何も、いつものようにジャンヌの胸に視線が行っただけじゃないか……あ……いけね」

思わず本音を口走ってしまった。

「貴様!やっぱりそんな目で見ていたんじゃないかっ!」

怒号の主であるジャンヌに視線を移すと、さっきまでのご機嫌な顔とはうって変わって、たいそう恥じらい怒りながら胸を隠すようにして俺を睨んでいた。
まぁ、隠せてないんだが。

「いてててて!だから痛いって!」

今のはただの不可抗力というやつだろ?

「駄目。私以外の子の身体を見るのは全て浮気」

「いや、流石に普通に無理だろ。顔だけ見ろというのか?」

「わかった。邪な目で見なければOKにする」

自称嫁だった頃の方が遥かにマシじゃね?
もう俺にはおっぱいを見る自由も無くなってしまったというのか。
そんな事を思いながら、ユウキのちっぱいに目を向けたのだった。

「これは面白い事になってきたにゃ」

「せやなぁ。これは色々楽しめそうやで」

そう言ってひそひそ話をしているのは拇拇(もも)と千里。
いや、聞こえてるから。

「もう、お二人とも。あまり蒼治良(そうじろう)さんを困らせてはいけませんよ」

綾香が諭すように二人に言う。

「分かってるにゃ。言ってみただけにゃ」

「せやせや。本気やないって、冗談冗談」

二人は苦笑いしながら、綾香にそう答えた。
とはいえ、一応気を付けた方が良いだろう。
特に千里には、おっぱい風呂を堪能するリョクの存在がある。
それをうっかり見ようものなら‥‥‥。

「近くに居なかったからといって、間違っても手裏剣とか飛んでこないよな?」

「……その手があった」

ユウキはポンと手を叩く。

どうやら、余計な知恵を与えてしまったようだ。

------

聖暦2043年1月1日

あれから何事も無く‥‥いや、本当は何度かやらかしているのだが、まぁ、そんなことはともかく、年が明けた。

明けたは明けたが、まだ日が昇ってはいない。
そんな俺達は今、村から東に少しばかり行ったところにある小高い丘の上にある神社にやって来ていた。
厳密には、まだ到着していない。

何故かって?
そりゃあ、カドマツが俺の行く手を(はば)んでいるからだ。

もう分かってるよな?
まさか、この話から読み始めた、なんてことは無いよな?
よし、仕方ない教えてやろう。

『この時期のカドマツは、仕える主人の敷地に入らせまいと妨害行動をする』

ユウキの言葉だ。

ちなみに、ユウキはとうの昔に神社に到達して、何食わぬ顔して戻って来て木の上で俺の姿を眺めている。
多分俺が他の女のおっぱいとかを見たりしないか監視しているのだろう。
そんな余裕は、今の俺には無いから安心しろ。

「嘘。既に4回千里のおっぱい見てる」

何でバレたんだろう。
まさか、お前もジャンヌやリョク同様にニュ○タイプを手に入れたというのか?

じゃあ、なんで攻撃してこないんだ?

「今は数を数えてるだけ。後でいっぺんにする」

「心の中を読むなよ。てか、いっぺんには勘弁してくれ」

最悪死んでしまうかも知れない。
そんな事を思いながら、俺はカドマツに対峙していた。

あぁ、ちなみに綾香、侃三郎(かんざぶろう)(けい)、葉月の四人はとうに神社に到着している。
葉月は珪がお姫様抱っこしながら到達しているので、自力ではないのだが。

ついでに言うと、先生(セヴァスティアン)、ジャンヌ、拇拇(もも)燒梅(しゅうまい)、小春も既に到達している。
無論、小春は先生に連れて行って貰っている。
拇拇はユウキと同様にカドマツを素早い動きで避けつつ到達している一方、ジャンヌと燒梅は力業でカドマツを体当たりでぶっ飛ばしながらの到達だ。

つまりだな、残っているのは千里と俺だけだ。
このカドマツ、中々に素早くて抜け出すことが出来ないでいた。
俺ですらそうなのだから、踊り子(ダンサー)の千里が抜け出せるわけがなかった。

「ユウキ」

「なに?」

「俺が千里さんを抱っこして行っても良いか?」

「……構わない。おさわり2点+スキンシップ2点、おっぱい4点で合計8点上乗せになるけど」

おさわり点とスキンシップ点は分かるが、おっぱい点ってなんだ?

「とりあえずOKっていう事でいいんだな」

俺はユウキの返事を待つことなく、千里に言う。

「千里さん。速度上昇、筋力上昇、防御上昇を最大で掛けて下さい」

「ええけど、何するつもりなんや?」

「とりあえず、お願いします」

「分かったわ」

千里は踊りを始める。
今回助かったのは、カドマツがアクティブモンスターではないという事だ。
あくまで俺達の行く手を(はば)むだけのため、空気を読んで待ってくれている。

こうして、俺は千里のバフを受けた。
直後、千里をお姫様抱っこして神社を背に後ろに振り向いた。

「ちょ、それじゃ前見えへんで」

「大丈夫です。空間把握能力はある方ですので」
「それより最大限、身を縮めて下さい」

「わ、分かったわ」

身を縮めた千里をお姫様抱っこして分かった事。

おっぱい点‥‥‥成程な。
千里の両手で組んだ腕からあふれ出るおっぱいの感触を胸に感じながら、俺は合点がいったのだった。

「ぷはぁ!…危うく圧死するところでしたよぉ」

そんな中、千里の胸の間からリョクが顔を出した。

「何だ、お前いたのか」

「いやぁ、千里さんが激しく動くので、おっぱいにしがみつくのがやっとでして、ようやく外に出られましたよぉ」

なんて、うらやまけしからん妖精なんだ。

まぁ、そんな事はともかく、今は時間がない。
何故なら『日が昇り始めるまで』というタイムリミットがあるからである。

俺は背中に何度も当たるカドマツの痛みに耐えながら、とにかく駆け上がった。
駆け上がると言っても、普通に走っているわけではない。
ゴールの神社は坂道の上にあるため、走るというよりは足の(かかと)で大地を押して小刻みに飛んでいるような感じだ。

「いやぁ、中々良い感じじゃないですかぁ。蒼治良さん」

「………どうしよう……」

「え?どうしたんですかぁ?」

「止まり方が分からん」

『へ!?』

俺の言葉に、千里とリョクが素っ頓狂な声を上げる。

ちょうど、それと時を同じくしてカドマツの攻撃も止み、後ろの方から聞きなれない声が聞こえて来た。

「ふっふっふ。よくぞ上がって来た。まずはそれを褒めて……って!なんで後ろ向きで来とるんじゃっ!!!」
「ちょっ!ちょちょちょっ!!待てっ!止まるのじゃっ!!!」

止まりたいのは山々だが止まることが出来ないのだ。

「む?そういう事かや?ならば、わしに任せるが良い」
「そりゃ!」

誰だか良く分からんが、俺の思っていることを何故か理解しているその人の掛け声と共に、優しく俺の背中を押してくれる感触が広がった。

「おおっ!なんか止まれそう」

その言葉に千里とリョクはほっと胸を撫で下ろす。
というか、この世界に俺のプライバシーは一切ないのか?
まぁ、念話があるのだから思考が漏れたとしてもおかしくはないのだが。
そして、そんな事を考えているうちに普通に自力で止まれるくらいまで速度が落ち、程なく俺は歩みを止め千里をゆっくりと下ろした。

「さんきゅーやで、蒼治良はん」

その千里の言葉と時を同じくして背後から声がした。

「ふむ。何とか無事に時間どおりに到着する事が出来たようじゃのぅ」

先程の声の主と同じ声、恐らく何らかの方法で背中を押してくれた人に違いない。
俺は礼を言うため振り向いたのだが、ちょうど千里のバフの効果が消えたのか急に体が重くなり‥‥‥。

どさっ。

と、その人に覆いかぶさるように盛大に転倒してしまった。

「あいたたた……すみません」

俺は直ぐに立ち上がろうと床に手を付けたのだが、それはほんのり柔らかかった。

ぷにぷに。

その正体は、言わずもがな『おっぱい』であり『ちっぱい』であった。

「お主……結構スケベじゃのぅ」

「あっ、いや、そんなつもりでは……はっ!!!」

次の瞬間、俺の背後で恐ろしいまでの殺気を感じる。
恐る恐る振り返ると、そこに居たのはつい最近恋人になったばかりの小動物のユウキであった。

「私のは触りもしないのに、他の女のものには触る……」

「いや違う、これは不可抗力だ」

俺は立ち上がると直ぐに釈明する。
しかし、そこで話は終わらなかった。

「おお、なんじゃお主。わしが初めてであったか」

カラカラと笑いながら、その少女(・・)?は立ち上がると、俺の左腕に抱き付いて肘に胸を当てて来た。

「いやぁ、仕方ないかのぅ」
「このあふれ出る女の魅力は、お主では出せんわのぅ」

いや、どっこいどっこいですよ、見知らぬ方よ。
ユウキと全く大差のない少女?の身体を一瞥しながらそう思ったのだった。
と同時に、そんな彼女の側に落ちている、ひときわ大きなしめ縄に目をやった。

------

「それでは、付いて来るが良い」

その少女‥‥‥いや、この神社の主である『加藤まつ』年齢不詳さんの案内で、初日の出を拝むために移動を始める。
てか、また日本人転生者かよ。

そんな移動中、ユウキはずっと俺の腕をつかんで離さなかった。

なお、例の一件は千里と綾香の必死の説得により、何とか事なきを得ることが出来た。
ついでに、おっぱい点とかのマイナス点も全てチャラにすることが出来た。
やったぜ。

移動場所は左程遠くも無く、ものの数分で着いた。

「お、ちょうど出て来るところやで」

「もっと近くに行くにゃ」

千里と拇拇(もも)は出来るだけ間近で見ようと、手すりのある奥の方に駆けて行く。
そして、その他の面々もそれに続いた。

「おーい、あまり身を乗り出すでないぞ」

『加藤まつ』さんはそう言うと、ユウキが持つ腕とは逆の腕にしがみついてきた。
そんな彼女に、私の男に手を出すなと言わんばかりに威嚇するユウキ。

「まぁ、待て」

俺は視線でユウキに待ったをかけた後『加藤まつ』さんに振り向き、こう伝えた。

「申し訳ないのですが、私にはユウキが居りますので離れて頂けると助かるのですが……」

その言葉に一瞬キョトンとした後、大いに笑い出した。

「あははははは、冗談じゃ冗談」

そう言うと、彼女は俺の腕から離れた。

「どれ、わしも近くで日の出を楽しむとするかの」

彼女はそう言ってゆっくり歩き出したが直ぐに立ち止まり、振り返ってこう言った。

ユキ(・・)、良かったの」

そう言ってニンマリと笑ったあと、ゆっくりと千里たちの所へと歩いて行く。

「……なんだ、知り合いだったのか」

「うん。昔からの知り合い、友達」

「そうか」

ん?昔からの?
俺は光の速さの如きスピードで彼女(加藤まつ)に視線を向ける。

しかし、特に彼女の耳はごく普通であった。
そりゃそうだ。
どう考えても日本人転生者なのだから。

だが、やはり、この世界は何かがおかしい。
そんな事を思いながらも、とりあえずはユウキと共に初日の出を楽しんだのだった。


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12月25日
朝、目が覚めた俺が布団の中を覗き込と、いつものようにユウキとリョクが朝の俺のピーンとなっていたアレをガン見していた。
「今日もばっちぐー」
そう言ってユウキは右の親指を立てた。
しかし、その頬はいつもと違って少し朱色に染まっている気がするのは気のせいか。
「いやぁ、昨晩はお楽しみでしたねぇ」
そう言ったのはリョク。
なに、その『ちゃららら、ちゃっちゃっちゃ~』みたいな|古《いにしえ》のRPGのようなセリフ。
言っておくが、そんな事は当然無かったぞ?
「在りもしないことを捏造するんじゃない」
俺はそう言うと、既にアレも収まっていたこともありベッドから立ち上がる。
「いやいや、お楽しみだったじゃないですか『クライマックスごっこ』」
あぁ、その事か。
なんて紛らわしい奴だ。
ワザとなんだろうが。
俺はそんな事を思いながら、恋人に昇格したユウキの持ってくる服に着替えたのだった。
てってってって。
食堂にやって来ると、既に皆は席に着いていた。
俺達は、皆の熱い視線を浴びながら席に着く。
ふと、真正面に座るジャンヌに視線を向けると、いつになくご機嫌な顔をしていた。
そして、その視線を下にずらした時、それは起きた。
「痛ってぇええええっ!!!」
あまりに大きな声を上げてしまったため、皆はびっくりして俺の方に顔を向ける。
「浮気は駄目」
そう、痛みの正体は隣に陣取っているユウキが、俺の太ももを思いっ切り|抓《つね》ったからであった。
「浮気も何も、いつものようにジャンヌの胸に視線が行っただけじゃないか……あ……いけね」
思わず本音を口走ってしまった。
「貴様!やっぱりそんな目で見ていたんじゃないかっ!」
怒号の主であるジャンヌに視線を移すと、さっきまでのご機嫌な顔とはうって変わって、たいそう恥じらい怒りながら胸を隠すようにして俺を睨んでいた。
まぁ、隠せてないんだが。
「いてててて!だから痛いって!」
今のはただの不可抗力というやつだろ?
「駄目。私以外の子の身体を見るのは全て浮気」
「いや、流石に普通に無理だろ。顔だけ見ろというのか?」
「わかった。邪な目で見なければOKにする」
自称嫁だった頃の方が遥かにマシじゃね?
もう俺にはおっぱいを見る自由も無くなってしまったというのか。
そんな事を思いながら、ユウキのちっぱいに目を向けたのだった。
「これは面白い事になってきたにゃ」
「せやなぁ。これは色々楽しめそうやで」
そう言ってひそひそ話をしているのは|拇拇《もも》と千里。
いや、聞こえてるから。
「もう、お二人とも。あまり|蒼治良《そうじろう》さんを困らせてはいけませんよ」
綾香が諭すように二人に言う。
「分かってるにゃ。言ってみただけにゃ」
「せやせや。本気やないって、冗談冗談」
二人は苦笑いしながら、綾香にそう答えた。
とはいえ、一応気を付けた方が良いだろう。
特に千里には、おっぱい風呂を堪能するリョクの存在がある。
それをうっかり見ようものなら‥‥‥。
「近くに居なかったからといって、間違っても手裏剣とか飛んでこないよな?」
「……その手があった」
ユウキはポンと手を叩く。
どうやら、余計な知恵を与えてしまったようだ。
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聖暦2043年1月1日
あれから何事も無く‥‥いや、本当は何度かやらかしているのだが、まぁ、そんなことはともかく、年が明けた。
明けたは明けたが、まだ日が昇ってはいない。
そんな俺達は今、村から東に少しばかり行ったところにある小高い丘の上にある神社にやって来ていた。
厳密には、まだ到着していない。
何故かって?
そりゃあ、カドマツが俺の行く手を|阻《はば》んでいるからだ。
もう分かってるよな?
まさか、この話から読み始めた、なんてことは無いよな?
よし、仕方ない教えてやろう。
『この時期のカドマツは、仕える主人の敷地に入らせまいと妨害行動をする』
ユウキの言葉だ。
ちなみに、ユウキはとうの昔に神社に到達して、何食わぬ顔して戻って来て木の上で俺の姿を眺めている。
多分俺が他の女のおっぱいとかを見たりしないか監視しているのだろう。
そんな余裕は、今の俺には無いから安心しろ。
「嘘。既に4回千里のおっぱい見てる」
何でバレたんだろう。
まさか、お前もジャンヌやリョク同様にニュ○タイプを手に入れたというのか?
じゃあ、なんで攻撃してこないんだ?
「今は数を数えてるだけ。後でいっぺんにする」
「心の中を読むなよ。てか、いっぺんには勘弁してくれ」
最悪死んでしまうかも知れない。
そんな事を思いながら、俺はカドマツに対峙していた。
あぁ、ちなみに綾香、|侃三郎《かんざぶろう》、|珪《けい》、葉月の四人はとうに神社に到着している。
葉月は珪がお姫様抱っこしながら到達しているので、自力ではないのだが。
ついでに言うと、|先生《セヴァスティアン》、ジャンヌ、|拇拇《もも》、|燒梅《しゅうまい》、小春も既に到達している。
無論、小春は先生に連れて行って貰っている。
拇拇はユウキと同様にカドマツを素早い動きで避けつつ到達している一方、ジャンヌと燒梅は力業でカドマツを体当たりでぶっ飛ばしながらの到達だ。
つまりだな、残っているのは千里と俺だけだ。
このカドマツ、中々に素早くて抜け出すことが出来ないでいた。
俺ですらそうなのだから、|踊り子《ダンサー》の千里が抜け出せるわけがなかった。
「ユウキ」
「なに?」
「俺が千里さんを抱っこして行っても良いか?」
「……構わない。おさわり2点+スキンシップ2点、おっぱい4点で合計8点上乗せになるけど」
おさわり点とスキンシップ点は分かるが、おっぱい点ってなんだ?
「とりあえずOKっていう事でいいんだな」
俺はユウキの返事を待つことなく、千里に言う。
「千里さん。速度上昇、筋力上昇、防御上昇を最大で掛けて下さい」
「ええけど、何するつもりなんや?」
「とりあえず、お願いします」
「分かったわ」
千里は踊りを始める。
今回助かったのは、カドマツがアクティブモンスターではないという事だ。
あくまで俺達の行く手を|阻《はば》むだけのため、空気を読んで待ってくれている。
こうして、俺は千里のバフを受けた。
直後、千里をお姫様抱っこして神社を背に後ろに振り向いた。
「ちょ、それじゃ前見えへんで」
「大丈夫です。空間把握能力はある方ですので」
「それより最大限、身を縮めて下さい」
「わ、分かったわ」
身を縮めた千里をお姫様抱っこして分かった事。
おっぱい点‥‥‥成程な。
千里の両手で組んだ腕からあふれ出るおっぱいの感触を胸に感じながら、俺は合点がいったのだった。
「ぷはぁ!…危うく圧死するところでしたよぉ」
そんな中、千里の胸の間からリョクが顔を出した。
「何だ、お前いたのか」
「いやぁ、千里さんが激しく動くので、おっぱいにしがみつくのがやっとでして、ようやく外に出られましたよぉ」
なんて、うらやまけしからん妖精なんだ。
まぁ、そんな事はともかく、今は時間がない。
何故なら『日が昇り始めるまで』というタイムリミットがあるからである。
俺は背中に何度も当たるカドマツの痛みに耐えながら、とにかく駆け上がった。
駆け上がると言っても、普通に走っているわけではない。
ゴールの神社は坂道の上にあるため、走るというよりは足の|踵《かかと》で大地を押して小刻みに飛んでいるような感じだ。
「いやぁ、中々良い感じじゃないですかぁ。蒼治良さん」
「………どうしよう……」
「え?どうしたんですかぁ?」
「止まり方が分からん」
『へ!?』
俺の言葉に、千里とリョクが素っ頓狂な声を上げる。
ちょうど、それと時を同じくしてカドマツの攻撃も止み、後ろの方から聞きなれない声が聞こえて来た。
「ふっふっふ。よくぞ上がって来た。まずはそれを褒めて……って!なんで後ろ向きで来とるんじゃっ!!!」
「ちょっ!ちょちょちょっ!!待てっ!止まるのじゃっ!!!」
止まりたいのは山々だが止まることが出来ないのだ。
「む?そういう事かや?ならば、わしに任せるが良い」
「そりゃ!」
誰だか良く分からんが、俺の思っていることを何故か理解しているその人の掛け声と共に、優しく俺の背中を押してくれる感触が広がった。
「おおっ!なんか止まれそう」
その言葉に千里とリョクはほっと胸を撫で下ろす。
というか、この世界に俺のプライバシーは一切ないのか?
まぁ、念話があるのだから思考が漏れたとしてもおかしくはないのだが。
そして、そんな事を考えているうちに普通に自力で止まれるくらいまで速度が落ち、程なく俺は歩みを止め千里をゆっくりと下ろした。
「さんきゅーやで、蒼治良はん」
その千里の言葉と時を同じくして背後から声がした。
「ふむ。何とか無事に時間どおりに到着する事が出来たようじゃのぅ」
先程の声の主と同じ声、恐らく何らかの方法で背中を押してくれた人に違いない。
俺は礼を言うため振り向いたのだが、ちょうど千里のバフの効果が消えたのか急に体が重くなり‥‥‥。
どさっ。
と、その人に覆いかぶさるように盛大に転倒してしまった。
「あいたたた……すみません」
俺は直ぐに立ち上がろうと床に手を付けたのだが、それはほんのり柔らかかった。
ぷにぷに。
その正体は、言わずもがな『おっぱい』であり『ちっぱい』であった。
「お主……結構スケベじゃのぅ」
「あっ、いや、そんなつもりでは……はっ!!!」
次の瞬間、俺の背後で恐ろしいまでの殺気を感じる。
恐る恐る振り返ると、そこに居たのはつい最近恋人になったばかりの小動物のユウキであった。
「私のは触りもしないのに、他の女のものには触る……」
「いや違う、これは不可抗力だ」
俺は立ち上がると直ぐに釈明する。
しかし、そこで話は終わらなかった。
「おお、なんじゃお主。わしが初めてであったか」
カラカラと笑いながら、その|少女《・・》?は立ち上がると、俺の左腕に抱き付いて肘に胸を当てて来た。
「いやぁ、仕方ないかのぅ」
「このあふれ出る女の魅力は、お主では出せんわのぅ」
いや、どっこいどっこいですよ、見知らぬ方よ。
ユウキと全く大差のない少女?の身体を一瞥しながらそう思ったのだった。
と同時に、そんな彼女の側に落ちている、ひときわ大きなしめ縄に目をやった。
------
「それでは、付いて来るが良い」
その少女‥‥‥いや、この神社の主である『加藤まつ』年齢不詳さんの案内で、初日の出を拝むために移動を始める。
てか、また日本人転生者かよ。
そんな移動中、ユウキはずっと俺の腕をつかんで離さなかった。
なお、例の一件は千里と綾香の必死の説得により、何とか事なきを得ることが出来た。
ついでに、おっぱい点とかのマイナス点も全てチャラにすることが出来た。
やったぜ。
移動場所は左程遠くも無く、ものの数分で着いた。
「お、ちょうど出て来るところやで」
「もっと近くに行くにゃ」
千里と|拇拇《もも》は出来るだけ間近で見ようと、手すりのある奥の方に駆けて行く。
そして、その他の面々もそれに続いた。
「おーい、あまり身を乗り出すでないぞ」
『加藤まつ』さんはそう言うと、ユウキが持つ腕とは逆の腕にしがみついてきた。
そんな彼女に、私の男に手を出すなと言わんばかりに威嚇するユウキ。
「まぁ、待て」
俺は視線でユウキに待ったをかけた後『加藤まつ』さんに振り向き、こう伝えた。
「申し訳ないのですが、私にはユウキが居りますので離れて頂けると助かるのですが……」
その言葉に一瞬キョトンとした後、大いに笑い出した。
「あははははは、冗談じゃ冗談」
そう言うと、彼女は俺の腕から離れた。
「どれ、わしも近くで日の出を楽しむとするかの」
彼女はそう言ってゆっくり歩き出したが直ぐに立ち止まり、振り返ってこう言った。
「|ユキ《・・》、良かったの」
そう言ってニンマリと笑ったあと、ゆっくりと千里たちの所へと歩いて行く。
「……なんだ、知り合いだったのか」
「うん。昔からの知り合い、友達」
「そうか」
ん?昔からの?
俺は光の速さの如きスピードで|彼女《加藤まつ》に視線を向ける。
しかし、特に彼女の耳はごく普通であった。
そりゃそうだ。
どう考えても日本人転生者なのだから。
だが、やはり、この世界は何かがおかしい。
そんな事を思いながらも、とりあえずはユウキと共に初日の出を楽しんだのだった。