表示設定
表示設定
目次 目次




第25話 クリスマス

ー/ー



12月24日の夕方。

村の中央広場ではツリー6本を円状に配置・飾りつけも終わり、並べられたテーブルには『まりも食堂』夫妻やその他の調理の出来る面々がつくった料理が並べられていっている。

つまりだな、この世界でも日本式のクリスマスでお祝いが行われるって事だな。
まぁ、俺は晩年まではずっとクリぼっちだったから、ここまで村を上げてやるのは初めてだ。

やっぱり日本からの転生者が多いせいなのか?
いや、この世界がそもそも転生により行われているのかどうかは、ジャンヌの言う『脱出』という言葉から疑いの余地があるのだが。

「おい、ボーっとしてないで料理を運べ」

料理が盛り付けられたお皿を、両手に載せてテーブルに運ぼうとしているジャンヌが、すれ違いざまに言う。
前みたく針を刺すような言い方は、もう無くなっていた。

そんなにビクビクしなくても、誰にも言わないぞ?

そんな事を思いながら、サンタのコスプレをしたジャンヌの胸やらふとももに、ごくごく自然に視線を向ける。
にもかかわらず、視線を向けるたびにジャンヌは身震いをしていた。
どんだけ感覚が鋭いんだ?

ともかく、村の中で新入りが何もしないのもアレなので、俺も料理を運ぶのを手伝った。

そして、準備も終わり、村人総出でのクリスマス会が開始されたのだ。
と言っても、総勢36名という限界集落さながらの宴会だが、そこはやはり人間。
既に気の合う仲間でかたまりが出来ている。

例えば、侃三郎(かんざぶろう)、綾香、(けい)、葉月の上級国民グループ。

その真逆である、俺、千里、拇拇(もも)熊猫(パンダ)燒梅(しゅうまい)、リョクの一般国民グループ。
ユウキとジャンヌは見た目だけは上級国民っぽいが、俺達の側にいる。

先生(セヴァスティアン)は、ギルド長のロリーナさんや鍛冶屋のイワノフ氏、教会もどきのシスターのデアボラさん、ボッタクル商店の爨親子とグループを組んで和気藹々とお喋りをしている。
そんな先生を、ジャンヌは遠目から熱い視線を向けていた。

「だっ…誰も熱い視線など向けてないっ!」

顔を真っ赤にしてジャンヌは否定した。
なんで、この世界の住人は、ことごとく俺の思考を読むんだよ。
俺のプライバシーは、きちんと守って欲しいものだ。

そんな事を思っていると、ふと下の方から視線を感じた。

じー。

誰かは言わずもがな、小型生物のユウキである。
まさか、お前も俺の思考を読んでいるというのか?

「蒼治良は、ジャンヌの胸とふとももに熱い視線を向けている」

「俺って、そんなにあいつに視線を向けているか?」

「向けてる。侃三郎(かんざぶろう)と綾香が互いの視線をいつも気にしてるくらいには」

『なっ!』

俺達から少し離れたところに陣取っている侃三郎と綾香のハモる声が聞こえてきた。

「ほほぅ、それは興味深いな。詳しく」

「ユウキ殿、待たれい!」

「ユウキさん、お待ちになってっ!」

興味を示す俺に対し、それを妨げるべく二人は慌ててユウキの下に駆け寄ってきた。
こうして、俺はジャンヌに向けている邪な視線について、うやむやにすることに成功したのである。

------

宴が始まってから何時間か経過した。

村唯一の子供である小春の姿が既にないことから、夜の10時は過ぎてるのだろう。
大人については未だに元気な者もいれば、既に酔いつぶれている者もいたり色々である。

そんな俺は、臨時に設置されたベンチに腰掛けてそれらを見ている。
隣には言わずもがな小型生物のユウキが、皿に盛ったアップルパイをもっしゃもっしゃと食べている。

一度だけそれを見た後に再び周囲を見渡した時、俺は既視感を感じる。

あれ?これって前世で同じ事あったよな。
何となくベンチの位置や皆が(たむろ)する場所も、あそこ(病院の中庭)によく似ていた。

「これ」

そんな既視感を感じていた俺に、ユウキがいつの間に手にしていたのか長く黒い物を渡してきた。

「剣?」

「そう」

俺は渡された剣の鞘を抜く。
すると炎を纏っているかの如き漆黒の刃が、その姿を現した。
勿論、本当に炎を纏っているのではなく、宴に使われている明かりがそうさせているのだ。

「これはまさか…」

「そう、それは魔剣ディアブル改」

「すげぇな…よく切れそう…ってあれ?」

手を切らないように刃の腹の部分を触ると、ふにふにとした柔らい感触が広がる。
しかし、普通に剣を左右に揺らしてみても刃がブレることはない。
何技術で出来てんだ?

「これは綾香達が手に入れてくれた伝説の素材『オロチナミンH軟鋼』によるもの」

あぁ、あの15話でいきなり登場した意味不明なやつか。

「後でお礼を言っておかないとな」

「それだけじゃない」

「ん?まだ何かあるのか?」

ユウキはこくりと首を一度だけ縦に振って言葉を続けた。

「剣に気をこめるようにしてみて」

「こうか?」

俺は気をこめるような感じで、剣の柄を握る手に力を入れた。
するとどうでしょう。
見る見るうちに剣の刃に漆黒のオーラが纏うではありませんか。

「なにこれ凄い」

「これはイワノフとデアボラの合作によるもの」
「これでいちいち事前に液体を付ける必要もない」

「すげぇ…って、これお高いんじゃないのか?」

「それほどでもない」
「綾香達にはそれぞれ50万エル、イワノフとデアボラにはそれぞれ25万エル渡しただけ」

「へぇ…って!合計250万エルじゃねーか!」

俺の言葉に何をそんなに驚いてるの?みたいにユウキは首を傾げた。

「そんなの貰っていいのかよ…」

「問題ない。夫へのプレゼント」

「いや、だから付き合ってすらいないっての」
「………ホントに貰っていいの?」

「うん」

コクリと一度だけユウキは首を縦に振った。

「ありがとな」

そう言って漆黒の剣に視線を向ける。

「気に入ったかい(・・)

「……それ、もしかして改と掛けてるのか?」

互いに見つめ合ったが、程なくユウキは視線を反らした。
何となく頬を赤らめているようにも見える。
俺は気付かない振りをしてあげた。

「……それで、あいつ(・・・)が誘って来たんだな」

「あいつ?」

首を傾げるユウキの目の前に、俺は小さな箱を一つ差し出した。

「これは?」

「まぁ、開けてみてくれ」

ユウキはそれを手に取ると蓋を開けた。

「おぉ、髪飾り」

そう、それはジャンヌと氷の洞窟で手に入れた『雪片の髪飾り』

「いいの?」

「そのつもりで渡したんだが」

その言葉にユウキは一度だけ首を縦に振った後、髪飾りを手に取り自身の髪に付ける。

色白の肌に光り輝く銀髪、そして真っ白な髪飾り。
どんだけ白で染めるつもりだ?
まぁ、似合ってるけど。

「夫からの初めての誕生日プレゼント」

「いや、だから付き合ってすらないっての」
「って、今日誕生日だったのか?」

「うん」

「……うーん、まぁ、丁度いいか」

俺は頭を掻いた後、言葉を続けた。

「まぁ、なんだ」
「出会ってからそろそろ半年も経つし、付き合ってみるか?」

「こんなところで付き合うの?」

頬を少し赤らめながらユウキは答える。

「多分、俺が言ってる『付き合う』とお前の言ってる『付き合う』は別物だからな」
「この作品は全年齢版だし、そもそも恥ずかしいなら言うんじゃない」

「知ってる」
「じゃあ、いきなり離婚宣言?」

「……まぁ、嫌なら強制はしないが」

「する」

「そうか。じゃあ、そうしよう」

こうして、俺達は付き合う事になった。
あぁ、先程も言ったように18禁的な付き合うではないからな。

そして、恥ずかしかったからか酒に酔っていたからなのかは分からないが、皆の前で俺達は突如として『クライマックスごっこ』を始めたのだった。


次のエピソードへ進む 第26話 嫉妬とお参り


みんなのリアクション

12月24日の夕方。
村の中央広場ではツリー6本を円状に配置・飾りつけも終わり、並べられたテーブルには『まりも食堂』夫妻やその他の調理の出来る面々がつくった料理が並べられていっている。
つまりだな、この世界でも日本式のクリスマスでお祝いが行われるって事だな。
まぁ、俺は晩年まではずっとクリぼっちだったから、ここまで村を上げてやるのは初めてだ。
やっぱり日本からの転生者が多いせいなのか?
いや、この世界がそもそも転生により行われているのかどうかは、ジャンヌの言う『脱出』という言葉から疑いの余地があるのだが。
「おい、ボーっとしてないで料理を運べ」
料理が盛り付けられたお皿を、両手に載せてテーブルに運ぼうとしているジャンヌが、すれ違いざまに言う。
前みたく針を刺すような言い方は、もう無くなっていた。
そんなにビクビクしなくても、誰にも言わないぞ?
そんな事を思いながら、サンタのコスプレをしたジャンヌの胸やらふとももに、ごくごく自然に視線を向ける。
にもかかわらず、視線を向けるたびにジャンヌは身震いをしていた。
どんだけ感覚が鋭いんだ?
ともかく、村の中で新入りが何もしないのもアレなので、俺も料理を運ぶのを手伝った。
そして、準備も終わり、村人総出でのクリスマス会が開始されたのだ。
と言っても、総勢36名という限界集落さながらの宴会だが、そこはやはり人間。
既に気の合う仲間でかたまりが出来ている。
例えば、|侃三郎《かんざぶろう》、綾香、|珪《けい》、葉月の上級国民グループ。
その真逆である、俺、千里、|拇拇《もも》、|熊猫《パンダ》の|燒梅《しゅうまい》、リョクの一般国民グループ。
ユウキとジャンヌは見た目だけは上級国民っぽいが、俺達の側にいる。
|先生《セヴァスティアン》は、ギルド長のロリーナさんや鍛冶屋のイワノフ氏、教会もどきのシスターのデアボラさん、ボッタクル商店の爨親子とグループを組んで和気藹々とお喋りをしている。
そんな先生を、ジャンヌは遠目から熱い視線を向けていた。
「だっ…誰も熱い視線など向けてないっ!」
顔を真っ赤にしてジャンヌは否定した。
なんで、この世界の住人は、ことごとく俺の思考を読むんだよ。
俺のプライバシーは、きちんと守って欲しいものだ。
そんな事を思っていると、ふと下の方から視線を感じた。
じー。
誰かは言わずもがな、小型生物のユウキである。
まさか、お前も俺の思考を読んでいるというのか?
「蒼治良は、ジャンヌの胸とふとももに熱い視線を向けている」
「俺って、そんなにあいつに視線を向けているか?」
「向けてる。|侃三郎《かんざぶろう》と綾香が互いの視線をいつも気にしてるくらいには」
『なっ!』
俺達から少し離れたところに陣取っている侃三郎と綾香のハモる声が聞こえてきた。
「ほほぅ、それは興味深いな。詳しく」
「ユウキ殿、待たれい!」
「ユウキさん、お待ちになってっ!」
興味を示す俺に対し、それを妨げるべく二人は慌ててユウキの下に駆け寄ってきた。
こうして、俺はジャンヌに向けている邪な視線について、うやむやにすることに成功したのである。
------
宴が始まってから何時間か経過した。
村唯一の子供である小春の姿が既にないことから、夜の10時は過ぎてるのだろう。
大人については未だに元気な者もいれば、既に酔いつぶれている者もいたり色々である。
そんな俺は、臨時に設置されたベンチに腰掛けてそれらを見ている。
隣には言わずもがな小型生物のユウキが、皿に盛ったアップルパイをもっしゃもっしゃと食べている。
一度だけそれを見た後に再び周囲を見渡した時、俺は既視感を感じる。
あれ?これって前世で同じ事あったよな。
何となくベンチの位置や皆が|屯《たむろ》する場所も、|あそこ《病院の中庭》によく似ていた。
「これ」
そんな既視感を感じていた俺に、ユウキがいつの間に手にしていたのか長く黒い物を渡してきた。
「剣?」
「そう」
俺は渡された剣の鞘を抜く。
すると炎を纏っているかの如き漆黒の刃が、その姿を現した。
勿論、本当に炎を纏っているのではなく、宴に使われている明かりがそうさせているのだ。
「これはまさか…」
「そう、それは魔剣ディアブル改」
「すげぇな…よく切れそう…ってあれ?」
手を切らないように刃の腹の部分を触ると、ふにふにとした柔らい感触が広がる。
しかし、普通に剣を左右に揺らしてみても刃がブレることはない。
何技術で出来てんだ?
「これは綾香達が手に入れてくれた伝説の素材『オロチナミンH軟鋼』によるもの」
あぁ、あの15話でいきなり登場した意味不明なやつか。
「後でお礼を言っておかないとな」
「それだけじゃない」
「ん?まだ何かあるのか?」
ユウキはこくりと首を一度だけ縦に振って言葉を続けた。
「剣に気をこめるようにしてみて」
「こうか?」
俺は気をこめるような感じで、剣の柄を握る手に力を入れた。
するとどうでしょう。
見る見るうちに剣の刃に漆黒のオーラが纏うではありませんか。
「なにこれ凄い」
「これはイワノフとデアボラの合作によるもの」
「これでいちいち事前に液体を付ける必要もない」
「すげぇ…って、これお高いんじゃないのか?」
「それほどでもない」
「綾香達にはそれぞれ50万エル、イワノフとデアボラにはそれぞれ25万エル渡しただけ」
「へぇ…って!合計250万エルじゃねーか!」
俺の言葉に何をそんなに驚いてるの?みたいにユウキは首を傾げた。
「そんなの貰っていいのかよ…」
「問題ない。夫へのプレゼント」
「いや、だから付き合ってすらいないっての」
「………ホントに貰っていいの?」
「うん」
コクリと一度だけユウキは首を縦に振った。
「ありがとな」
そう言って漆黒の剣に視線を向ける。
「気に入った|かい《・・》」
「……それ、もしかして改と掛けてるのか?」
互いに見つめ合ったが、程なくユウキは視線を反らした。
何となく頬を赤らめているようにも見える。
俺は気付かない振りをしてあげた。
「……それで、|あいつ《・・・》が誘って来たんだな」
「あいつ?」
首を傾げるユウキの目の前に、俺は小さな箱を一つ差し出した。
「これは?」
「まぁ、開けてみてくれ」
ユウキはそれを手に取ると蓋を開けた。
「おぉ、髪飾り」
そう、それはジャンヌと氷の洞窟で手に入れた『雪片の髪飾り』
「いいの?」
「そのつもりで渡したんだが」
その言葉にユウキは一度だけ首を縦に振った後、髪飾りを手に取り自身の髪に付ける。
色白の肌に光り輝く銀髪、そして真っ白な髪飾り。
どんだけ白で染めるつもりだ?
まぁ、似合ってるけど。
「夫からの初めての誕生日プレゼント」
「いや、だから付き合ってすらないっての」
「って、今日誕生日だったのか?」
「うん」
「……うーん、まぁ、丁度いいか」
俺は頭を掻いた後、言葉を続けた。
「まぁ、なんだ」
「出会ってからそろそろ半年も経つし、付き合ってみるか?」
「こんなところで付き合うの?」
頬を少し赤らめながらユウキは答える。
「多分、俺が言ってる『付き合う』とお前の言ってる『付き合う』は別物だからな」
「この作品は全年齢版だし、そもそも恥ずかしいなら言うんじゃない」
「知ってる」
「じゃあ、いきなり離婚宣言?」
「……まぁ、嫌なら強制はしないが」
「する」
「そうか。じゃあ、そうしよう」
こうして、俺達は付き合う事になった。
あぁ、先程も言ったように18禁的な付き合うではないからな。
そして、恥ずかしかったからか酒に酔っていたからなのかは分からないが、皆の前で俺達は突如として『クライマックスごっこ』を始めたのだった。