第3章〜⑲〜
ー/ー
こうして、この日の午後は、コカリナに関する調査と『夏休みの友』との戯れを切り上げ、小嶋夏海を彼女の自宅に送ることになった。
空調の効いたショッピング・モールのベンチでしばらく休ませてもらったあと、「もう、大丈夫だと思う」と言う彼女の言葉で、図書館へと戻り、荷物を片付け、小嶋家へと向かう。
彼女の自宅は、図書館の近くを走る県道を西へと進み、新築の公団マンションとショッピング街のある信号を右折して、さらに北西の方角に向かった場所にあった。目の前には、遊具が豊富に設置されている児童公園があり、図書館からは、自転車で十五分ほどの距離だ。
公園の北西側に建つ家屋は、比較的新しく、立派なモノに見えた。
「ありがとう――――――送ってもらったお礼に、ウチに上がってもらいたいところだけど……」
「いや、気を使わないで、今日は体調を優先してくれ」
彼女の言葉に、そう返答すると、
「うん……そうだね……落ち着いたら、連絡させてもらう」
彼女はそう言って、自転車を敷地内に停めて、玄関から室内に入って行った。
小嶋夏海が、自宅に入るのを見届けて、自分も停めていた自転車を押し、帰宅の準備に入る。
小中学校の時の校区が異なるため、同じ市内とは言え、この辺りにはあまり来ることがなかったが、閑静な住宅街という感じで、落ち着いた雰囲気のある場所だと感じる。
目の前の公園に目を向けると、真夏の最も暑い時間帯ということもあってか、さすがに子どもたちの姿はなかったが、かわりに、フェンスの向こうの木陰になっている場所に一匹の猫が寝転んでいた。
こげ茶色と黒の縞模様は、フェンスと木陰の色にまぎれて保護色のようになっており、よく目を凝らさないと見過ごすところだったが、土の上でゴロンと転がり薄い色の毛の腹が見えたことで、魚のサバにも似た毛色が、たしかに、そこに存在することが確認できる。
それは、先週、彼女に贈った、ネコリナと名付けられた陶器製の小物と似た模様にも見えた。
(あれが、小嶋の言ってた近所のネコだろうか?)
そんなことを考えながら、再度、自転車のスタンドを立てて、公園の敷地内に入り、もっと近くで確認しようと、近寄ると――――――。
サッ
と、身を翻して茶サバ色の猫は、走り去って行った。
「警戒心の強いヤツだな……」
一人言をつぶやいたあとに、『時のコカリナ』の能力を使って、
「なかなか懐かない近所のネコを撫でてみたい!」
彼女が、そんなことを言っていたことを思い出し、
(アイテムなしで、あのネコを手懐けるには、骨が折れるかもな……)
と、苦笑しながら、公園を出て自宅に戻ることにした。
※
その日の夜、夕食を終えて、自室に戻り、動画サイトを見ながら時間を潰していると、
《小嶋夏海:新着メッセージがあります》
スマホの画面上部に、メッセージアプリの着信を示す通知が表示された。
通知部分をタップすると、
==============
今日は、ゴメンね。
いま、だいじょうぶ?
==============
こんなメッセージが現れたので、すぐに返事を返す。
==============
今日のことは気にしないでくれ
あと、ちょうど暇していた。
==============
メッセージを送信すると、すぐに既読のマークがつき、
==============
良かった!
時間があるなら、
ちょっと、話せない?
==============
と、返信が返ってきた。
《OK!》と、クマのキャラクターのスタンプを返すと、程なくして通話の着信音が響いた。
画面を確認すると、中央部に《小嶋夏海》と表示されている。
通話ボタンをタップし、
「お疲れさま。体調は、どうだ?小嶋」
すぐに声を掛けると、
「うん、ありがと。もう大丈夫だから……」
と、返事が返ってきた。落ち着いた口調で、声の張りも戻っているようだ。
「そうか! それなら、良かった。それより、話したいことがあったのか?」
そうたずねると、
「うん……今日、急に気分が悪くなった理由について、坂井に聞いてもらいたい、って思ってね…………」
と、彼女は言い、過去の思い出について話し始めた。
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空調の効いたショッピング・モールのベンチでしばらく休ませてもらったあと、「もう、大丈夫だと思う」と言う彼女の言葉で、図書館へと戻り、荷物を片付け、小嶋家へと向かう。
彼女の自宅は、図書館の近くを走る県道を西へと進み、新築の公団マンションとショッピング街のある信号を右折して、さらに北西の方角に向かった場所にあった。目の前には、遊具が豊富に設置されている児童公園があり、図書館からは、自転車で十五分ほどの距離だ。
公園の北西側に建つ家屋は、比較的新しく、立派なモノに見えた。
「ありがとう――――――送ってもらったお礼に、ウチに上がってもらいたいところだけど……」
「いや、気を使わないで、今日は体調を優先してくれ」
彼女の言葉に、そう返答すると、
「うん……そうだね……落ち着いたら、連絡させてもらう」
彼女はそう言って、自転車を敷地内に停めて、玄関から室内に入って行った。
小嶋夏海が、自宅に入るのを見届けて、自分も停めていた自転車を押し、帰宅の準備に入る。
小中学校の時の校区が異なるため、同じ市内とは言え、この辺りにはあまり来ることがなかったが、閑静な住宅街という感じで、落ち着いた雰囲気のある場所だと感じる。
目の前の公園に目を向けると、真夏の最も暑い時間帯ということもあってか、さすがに子どもたちの姿はなかったが、かわりに、フェンスの向こうの木陰になっている場所に一匹の猫が寝転んでいた。
こげ茶色と黒の縞模様は、フェンスと木陰の色にまぎれて保護色のようになっており、よく目を凝らさないと見過ごすところだったが、土の上でゴロンと転がり薄い色の毛の腹が見えたことで、魚のサバにも似た毛色が、たしかに、そこに存在することが確認できる。
それは、先週、彼女に贈った、ネコリナと名付けられた陶器製の小物と似た模様にも見えた。
(あれが、小嶋の言ってた近所のネコだろうか?)
そんなことを考えながら、再度、自転車のスタンドを立てて、公園の敷地内に入り、もっと近くで確認しようと、近寄ると――――――。
サッ
と、身を翻して茶サバ色の猫は、走り去って行った。
「警戒心の強いヤツだな……」
一人言をつぶやいたあとに、『時のコカリナ』の|能力《チカラ》を使って、
「なかなか懐かない近所のネコを撫でてみたい!」
彼女が、そんなことを言っていたことを思い出し、
(アイテムなしで、あのネコを手懐けるには、骨が折れるかもな……)
と、苦笑しながら、公園を出て自宅に戻ることにした。
※
その日の夜、夕食を終えて、自室に戻り、動画サイトを見ながら時間を潰していると、
《小嶋夏海:新着メッセージがあります》
スマホの画面上部に、メッセージアプリの着信を示す通知が表示された。
通知部分をタップすると、
==============
今日は、ゴメンね。
いま、だいじょうぶ?
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こんなメッセージが現れたので、すぐに返事を返す。
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今日のことは気にしないでくれ
あと、ちょうど暇していた。
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メッセージを送信すると、すぐに既読のマークがつき、
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良かった!
時間があるなら、
ちょっと、話せない?
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と、返信が返ってきた。
《OK!》と、クマのキャラクターのスタンプを返すと、程なくして通話の着信音が響いた。
画面を確認すると、中央部に《小嶋夏海》と表示されている。
通話ボタンをタップし、
「お疲れさま。体調は、どうだ?小嶋」
すぐに声を掛けると、
「うん、ありがと。もう大丈夫だから……」
と、返事が返ってきた。落ち着いた口調で、声の張りも戻っているようだ。
「そうか! それなら、良かった。それより、話したいことがあったのか?」
そうたずねると、
「うん……今日、急に気分が悪くなった理由について、坂井に聞いてもらいたい、って思ってね…………」
と、彼女は言い、過去の思い出について話し始めた。