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第3章〜⑫〜

ー/ー



学習室へと戻ったあと、わずか五分ほど前まで順調に進んでいた課題は、まったく捗らなくなってしまった。

(『ツカサさん』に、『ナツミちゃん』か……二人は、どういう関係なんだ?)
(そりゃ、文献調査で、まったく役に立たない自分じゃ、相手にされないだろうが……)
(調査について相談してるって言ってたけど、まさか、コカリナの秘密を話してないだろうな?)

 そんあ想いが、ぐるぐる、ぐるぐると、頭の中を駆け巡る。
 珍しく良好な関係を築くことができていた『夏休みの友』を、例年通り持て余し、意味もなくスマホをいじったり、課題冊子のページをめくったりして、一人悶々としながら過ごしていると、いつのまにか、昼前になっていた。
 何気なくスマホの待ち受け画面で、時刻を確認していると、メッセージアプリの着信記録が表示された。

《小嶋夏海:新着メッセージがあります》

==============

今日は、お昼はどうする?

==============

 アプリを開いて、メッセージを確認し、しばし黙考する。

(今は、小嶋夏海とも()()()()()とやらとも、顔を合わせたくないが……)
(かと言って、この、モヤモヤした気持ちを午後まで引きずるもなぁ……)
(しかし、昼時にツカサさんが一緒だと、思いっきり気まずくなるし……)
(とは言え、彼が一緒に昼飯を食べるのかを聞くのも、気が引けるし……)

などと、またも、ぐるぐると駆け巡る思考と折り合いをつけながら、とりあえず、返信をせねば、とメッセージを打ち込む。


==============

確認させてもらうが、
ツカサさんも一緒なのか?
(三人なら場所を考えよう)

==============


 これなら、第三者に気を使いつつ、彼が昼食に同行するかどうかも確認できる。
 名案を思いついた自分自身に満足し、送信ボタンをタップしつつ、出来れば三人での会食は避けたい、などと勝手な想いを抱いていると、

==============

ツカサさんは、もう帰ったよ。

それより、
坂井に言いたいことがある。

==============

と、すぐに返信が返ってきた。
 なかば予想していたことではあるが、やはり、先ほどのオレの言動に対して、彼女は思うところがあったようだ。



 コカリナを首に掛け、スマホと昼食を購入するための財布をポケットに突っ込んで、図書館一階の交流ルームを通りかかると、小嶋夏海がベンチに腰掛けていた。
 彼女の座るベンチに近づき、「お待たせ」と声を掛けると、彼女は、こちらをチラリと一瞥し、

「お昼を食べに行く前に、坂井に話しておきたいことがある。そこに座って」

 有無を言わさない、という態度で、一席離れた場所のベンチを指した。
 無言で席に着いたオレに対し、鋭い視線を向け、

「ツカサさんを紹介した時のあの態度はナニ? 誰にでも愛想をふりまけなんて言わないけど、協力してくれている人に対して、あんな態度を取るなんて、どういうこと?」

 まるで、母親か担任教師が、素行の悪い子供を叱りつけるような口調で、まくし立てる。
 彼女の言うことは、確かに正論であり、反省すべき点を自覚している自分にとって耳が痛いが、こちらとしても、言いたいことはある。

「悪かったと思うし、反省してる。けど、クラスメートにすら愛想のない小嶋に、そんなことを言われるとは思わなかったぜ」

「ハァ!? 私の学校での態度と何の関係があるって言うの?自分の態度を注意されたから、逆ギレするの?あり得ないんだけど!?」

 完全に、売り言葉に買い言葉の応酬になってしまっている。
 自分でも余計な一言を言ってしまった、と後悔するが、言葉を口にしてしまったため、引っ込みがつかない状態になってしまっている。
 そんな状態のなか、目の前の相手は、少し悲しそうに、

「ハァ……坂井が、こんな人間だとは思わなかった……ユミコになんて言おう」

と、つぶやいた。
 その口調は気になったが、それ以上に、彼女の口から出た、大嶋裕美子の名前も気になる。
 自分たちの口論を、なぜ、第三者に伝える必要があるのか?
 女子特有の周りを巻き込みつつ、自己正当化を図る例のアレなのか?

(いや、それこそ、この話しに大嶋は関係ないだろ。なんで、関係ない人間を巻き込もうとするなよ!)

 その言葉を口に出そうとした時、小嶋夏海のスマホが着信音を奏で始めた。


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学習室へと戻ったあと、わずか五分ほど前まで順調に進んでいた課題は、まったく捗らなくなってしまった。
(『ツカサさん』に、『ナツミちゃん』か……二人は、どういう関係なんだ?)
(そりゃ、文献調査で、まったく役に立たない自分じゃ、相手にされないだろうが……)
(調査について相談してるって言ってたけど、まさか、コカリナの秘密を話してないだろうな?)
 そんあ想いが、ぐるぐる、ぐるぐると、頭の中を駆け巡る。
 珍しく良好な関係を築くことができていた『夏休みの友』を、例年通り持て余し、意味もなくスマホをいじったり、課題冊子のページをめくったりして、一人悶々としながら過ごしていると、いつのまにか、昼前になっていた。
 何気なくスマホの待ち受け画面で、時刻を確認していると、メッセージアプリの着信記録が表示された。
《小嶋夏海:新着メッセージがあります》
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今日は、お昼はどうする?
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 アプリを開いて、メッセージを確認し、しばし黙考する。
(今は、小嶋夏海とも|ツ《・》|カ《・》|サ《・》|さ《・》|ん《・》とやらとも、顔を合わせたくないが……)
(かと言って、この、モヤモヤした気持ちを午後まで引きずるもなぁ……)
(しかし、昼時にツカサさんが一緒だと、思いっきり気まずくなるし……)
(とは言え、彼が一緒に昼飯を食べるのかを聞くのも、気が引けるし……)
などと、またも、ぐるぐると駆け巡る思考と折り合いをつけながら、とりあえず、返信をせねば、とメッセージを打ち込む。
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確認させてもらうが、
ツカサさんも一緒なのか?
(三人なら場所を考えよう)
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 これなら、第三者に気を使いつつ、彼が昼食に同行するかどうかも確認できる。
 名案を思いついた自分自身に満足し、送信ボタンをタップしつつ、出来れば三人での会食は避けたい、などと勝手な想いを抱いていると、
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ツカサさんは、もう帰ったよ。
それより、
坂井に言いたいことがある。
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と、すぐに返信が返ってきた。
 なかば予想していたことではあるが、やはり、先ほどのオレの言動に対して、彼女は思うところがあったようだ。
 コカリナを首に掛け、スマホと昼食を購入するための財布をポケットに突っ込んで、図書館一階の交流ルームを通りかかると、小嶋夏海がベンチに腰掛けていた。
 彼女の座るベンチに近づき、「お待たせ」と声を掛けると、彼女は、こちらをチラリと一瞥し、
「お昼を食べに行く前に、坂井に話しておきたいことがある。そこに座って」
 有無を言わさない、という態度で、一席離れた場所のベンチを指した。
 無言で席に着いたオレに対し、鋭い視線を向け、
「ツカサさんを紹介した時のあの態度はナニ? 誰にでも愛想をふりまけなんて言わないけど、協力してくれている人に対して、あんな態度を取るなんて、どういうこと?」
 まるで、母親か担任教師が、素行の悪い子供を叱りつけるような口調で、まくし立てる。
 彼女の言うことは、確かに正論であり、反省すべき点を自覚している自分にとって耳が痛いが、こちらとしても、言いたいことはある。
「悪かったと思うし、反省してる。けど、クラスメートにすら愛想のない小嶋に、そんなことを言われるとは思わなかったぜ」
「ハァ!? 私の学校での態度と何の関係があるって言うの?自分の態度を注意されたから、逆ギレするの?あり得ないんだけど!?」
 完全に、売り言葉に買い言葉の応酬になってしまっている。
 自分でも余計な一言を言ってしまった、と後悔するが、言葉を口にしてしまったため、引っ込みがつかない状態になってしまっている。
 そんな状態のなか、目の前の相手は、少し悲しそうに、
「ハァ……坂井が、こんな人間だとは思わなかった……ユミコになんて言おう」
と、つぶやいた。
 その口調は気になったが、それ以上に、彼女の口から出た、大嶋裕美子の名前も気になる。
 自分たちの口論を、なぜ、第三者に伝える必要があるのか?
 女子特有の周りを巻き込みつつ、自己正当化を図る例のアレなのか?
(いや、それこそ、この話しに大嶋は関係ないだろ。なんで、関係ない人間を巻き込もうとするなよ!)
 その言葉を口に出そうとした時、小嶋夏海のスマホが着信音を奏で始めた。