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身分証明 2

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「あーはいはい、連絡石で一人来るって聞いてたよん。私は試験官の『ルー』召喚術師よ! よろしく」  ルーと名乗る試験官は背丈がモモよりも頭2つ分小さく、まるで子供のようだった。その大きな胸以外はだが。  少し不健康そうな白い肌と銀髪。それと対照的な紺色の魔術師が着るようなローブを身にまとっていた。 「モモと申します、よろしくお願いします」  ルーは片手を差し出して握手を求めてきた。その小さい手を軽く握るとバサリと大げさにローブをはためかせて話し始める。 「モモちゃんには私が今から出す精霊とあの上で戦ってもらうよ、それで勝ったら終わり。簡単でしょ? でも油断すると怪我じゃ済まないかもね」  ルーは闘技場中央の石畳を指さして言った。ギルドの試験での怪我や死亡事故は全て自己責任と、さきほど念書を書かされたのはその為かとモモは納得する。 「なるほど、わかりやすくて良さそうだ」  モモが闘技場の中心に立つとルーは杖を掲げ光らせる。そんな光景を観客席にポツリと座ったムツヤは見ていた。  ルーが何かを唱えると青白い鎧をまとった精霊が3体モモの周りに現れる。  モモはまず左端の1体に飛びかかった、相手の剣をするりとかわすと懐から切り上げて一撃を食らわせ、押し倒されないよう蹴り飛ばした。  次の攻撃を仕掛けてきたのは右端の精霊だ。剣を振り下ろしきる前にモモは盾でそれを受け止めて鎧の隙間から剣を突き刺してそのまま乱暴に抜く。  束ねた後ろ髪をたなびかせ、くるりと半回転し最後の敵に対峙する。横薙ぎに来た斬撃は後ろに飛び跳ねてかわし、そのまましゃがみ込んで大きく前へ踏み出し精霊を切り捨てる。 「はーい、終了終了。モモちゃん中々やるねー」  試験はあっさりと終わってしまい、ルーは手をパンパンと叩いて喜んでいた、モモは少し恥ずかしそうに笑うと石畳を降りて合格のサインがされた用紙を受け取る。  こうしてモモは晴れて冒険者になった。そしてムツヤはというと。 「おめでとうございますモモさん……」 「そう落ち込まないで下さいムツヤ殿……」  ムツヤは落ち込む時、それはもう分かりやすいぐらいに落ち込む。靴を脱いでギルドのソファの上で三角座りをしてコンパクトムツヤになっていた。 「おい、にいちゃん訳ありだろ?」  ムツヤに声を掛けたのは先程の大男、確かゴラテと呼ばれていた男だ。モモはあからさまにその男に対して警戒心をあらわにする。 「冒険者になる方法は2つあるってのは知ってるかい?」  ムツヤはその言葉を聞いて顔を上げた。するとゴラテはニヤリと笑う。 「そのオークのねぇちゃんみたいに手続きをする方法とあと一つ」  ここでゴラテは勿体ぶって一呼吸を入れる。その数秒がムツヤにはとても長く感じた。 「冒険者として10年以上活動している奴の推薦状があれば身分証なんてもんが無くてもなれるんだ」  冒険者になれる可能性があると聞いてムツヤの顔はパーッと明るくなる。モモの方はまだ懐疑心があるようだったが。 「そ、それじゃあお願いします、俺に推薦状を下さい!」  ムツヤはバッとゴラテに頭を下げる、それを見てゴラテはガッハッハと笑った。 「悪いが、条件がある。3つの内どれでも良い、1つは百万バレシを俺に渡すこと」  そこまで聞いてモモはため息を付いて話を遮る。  百万バレシなどという大金を吹っ掛けてくるなんて、この男はこちらを馬鹿にしに来たのか、それとも弱みにつけ込む詐欺師まがいかだと思った。 「ムツヤ殿、これ以上耳を貸すのは無駄です」 「まぁ待て、推薦状を書いて冒険者になった奴が何か問題を起こしたら俺も責任を取らされるんだぞ? これぐらいの金は当たり前だと思うがな」  顎下に蓄えたヒゲを触りながらゴラテはニヤニヤと笑っている。モモは不快そうにそれを見ていた。 「それだったら別の良心的な冒険者に頼むことにする」 「それも上手くいくかな? ワケありの人間なんてカモにされるのがオチだぞ? それに良心的な冒険者なら目の前にいるだろう」 「それはどこにいるのか教えてもらいたいものだな」  モモはハッと笑ってゴラテに対し一歩も譲らない。するとゴラテはわざとらしく参った参ったと両手を上げてみた。 「それじゃ2年間『ウソクヤ』の葉っぱをカゴいっぱいに俺に届けてくれ、そうしたら推薦状を書いても良い」  少しハードルが下がった、ウソクヤの葉は解熱・鎮痛の効果がある薬草だ。森へ入ればそれなりに生えているので難しいことではない。 「2年も待でません! 俺には夢があるんです!」  ムツヤは少し大きな声でそう言った。その言葉を待ってましたとばかりにゴラテはまた笑う。



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「あーはいはい、連絡石で一人来るって聞いてたよん。私は試験官の『ルー』召喚術師よ! よろしく」  ルーと名乗る試験官は背丈がモモよりも頭2つ分小さく、まるで子供のようだった。その大きな胸以外はだが。  少し不健康そうな白い肌と銀髪。それと対照的な紺色の魔術師が着るようなローブを身にまとっていた。 「モモと申します、よろしくお願いします」  ルーは片手を差し出して握手を求めてきた。その小さい手を軽く握るとバサリと大げさにローブをはためかせて話し始める。 「モモちゃんには私が今から出す精霊とあの上で戦ってもらうよ、それで勝ったら終わり。簡単でしょ? でも油断すると怪我じゃ済まないかもね」  ルーは闘技場中央の石畳を指さして言った。ギルドの試験での怪我や死亡事故は全て自己責任と、さきほど念書を書かされたのはその為かとモモは納得する。 「なるほど、わかりやすくて良さそうだ」  モモが闘技場の中心に立つとルーは杖を掲げ光らせる。そんな光景を観客席にポツリと座ったムツヤは見ていた。  ルーが何かを唱えると青白い鎧をまとった精霊が3体モモの周りに現れる。  モモはまず左端の1体に飛びかかった、相手の剣をするりとかわすと懐から切り上げて一撃を食らわせ、押し倒されないよう蹴り飛ばした。  次の攻撃を仕掛けてきたのは右端の精霊だ。剣を振り下ろしきる前にモモは盾でそれを受け止めて鎧の隙間から剣を突き刺してそのまま乱暴に抜く。  束ねた後ろ髪をたなびかせ、くるりと半回転し最後の敵に対峙する。横薙ぎに来た斬撃は後ろに飛び跳ねてかわし、そのまましゃがみ込んで大きく前へ踏み出し精霊を切り捨てる。 「はーい、終了終了。モモちゃん中々やるねー」  試験はあっさりと終わってしまい、ルーは手をパンパンと叩いて喜んでいた、モモは少し恥ずかしそうに笑うと石畳を降りて合格のサインがされた用紙を受け取る。  こうしてモモは晴れて冒険者になった。そしてムツヤはというと。 「おめでとうございますモモさん……」 「そう落ち込まないで下さいムツヤ殿……」  ムツヤは落ち込む時、それはもう分かりやすいぐらいに落ち込む。靴を脱いでギルドのソファの上で三角座りをしてコンパクトムツヤになっていた。 「おい、にいちゃん訳ありだろ?」  ムツヤに声を掛けたのは先程の大男、確かゴラテと呼ばれていた男だ。モモはあからさまにその男に対して警戒心をあらわにする。 「冒険者になる方法は2つあるってのは知ってるかい?」  ムツヤはその言葉を聞いて顔を上げた。するとゴラテはニヤリと笑う。 「そのオークのねぇちゃんみたいに手続きをする方法とあと一つ」  ここでゴラテは勿体ぶって一呼吸を入れる。その数秒がムツヤにはとても長く感じた。 「冒険者として10年以上活動している奴の推薦状があれば身分証なんてもんが無くてもなれるんだ」  冒険者になれる可能性があると聞いてムツヤの顔はパーッと明るくなる。モモの方はまだ懐疑心があるようだったが。 「そ、それじゃあお願いします、俺に推薦状を下さい!」  ムツヤはバッとゴラテに頭を下げる、それを見てゴラテはガッハッハと笑った。 「悪いが、条件がある。3つの内どれでも良い、1つは百万バレシを俺に渡すこと」  そこまで聞いてモモはため息を付いて話を遮る。  百万バレシなどという大金を吹っ掛けてくるなんて、この男はこちらを馬鹿にしに来たのか、それとも弱みにつけ込む詐欺師まがいかだと思った。 「ムツヤ殿、これ以上耳を貸すのは無駄です」 「まぁ待て、推薦状を書いて冒険者になった奴が何か問題を起こしたら俺も責任を取らされるんだぞ? これぐらいの金は当たり前だと思うがな」  顎下に蓄えたヒゲを触りながらゴラテはニヤニヤと笑っている。モモは不快そうにそれを見ていた。 「それだったら別の良心的な冒険者に頼むことにする」 「それも上手くいくかな? ワケありの人間なんてカモにされるのがオチだぞ? それに良心的な冒険者なら目の前にいるだろう」 「それはどこにいるのか教えてもらいたいものだな」  モモはハッと笑ってゴラテに対し一歩も譲らない。するとゴラテはわざとらしく参った参ったと両手を上げてみた。 「それじゃ2年間『ウソクヤ』の葉っぱをカゴいっぱいに俺に届けてくれ、そうしたら推薦状を書いても良い」  少しハードルが下がった、ウソクヤの葉は解熱・鎮痛の効果がある薬草だ。森へ入ればそれなりに生えているので難しいことではない。 「2年も待でません! 俺には夢があるんです!」  ムツヤは少し大きな声でそう言った。その言葉を待ってましたとばかりにゴラテはまた笑う。



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