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身分証明 1

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 二人は石造りの立派な建物の前に再びやってきた。1時間前には食事を摂るために来たが今度は違う。  ムツヤは愛刀であり魔剣『ムゲンジゴク』のレプリカを腰に付け、裏ダンジョンで拾った鎧からしたら見劣りはするが、充分に立派な皮の鎧を着ている。  まず、この世界で冒険者になる為にはこの冒険者ギルドで登録を済ますことがほぼ必須条件だ。  何故ならば冒険者としての登録がないと各地から集まる依頼を受けることが出来ず、つまりは生計を立てることが出来ないのだ。  ムツヤは興奮を抑えられずに居た、ここから自分の冒険者としての旅が始まるという事と。  そして、念願のハーレムを作る第一歩を踏みしめることが出来る喜び。  受付に並び、そしてムツヤは自分を落ち着かせて言った。 「あのっ、冒険者になりだいんですが!」  すると受付の女性はにこやかに言葉を返す。 「はい、それではこちらの用紙へ記入と身分証をご提示頂けますでしょうか?」 「みぶん?」  しまったとモモは思う。自分の中でもまだムツヤが隔離された別世界から来たという事を甘く見ていたことを痛感した。  正直に話したらサズァンの言う通り良からぬ輩に目を付けられるだろう。ここは言葉を濁しながら話すことにする。 「こちらのムツヤ殿は異国の地から来たのです」 「それでしたら外国人登録証をお持ちですか?」  決して嘘は言ってないが下手なことは言うものじゃなかったと頭を抱える。  このままでは冒険者としての登録どころか不審人物としてムツヤ殿が目を付けられてしまう。どうしようかと考えていると後ろから声が掛かる。 「なんだ、お前冒険者になりたいのか?」  大柄で立派なヒゲを蓄えた男がそこには居た。種族は人だがその見た目は背の高いドワーフと言われてもおかしくはない。 「ゴラテさん……」  受付嬢があまりいい顔をせずにその男の名前を呼んだのをモモは見落とさなかった。理由はわからないが、いい話にはならない気がする。 「まぁ、困ったことがあったら俺に言いな。悪いようにはしないからよ」  モモは返事をしなかった、いくらなんでも胡散臭いというか、なるべく関わり合いになりたくないタイプの人間だ。しかしムツヤは違う。 「本当で」  モモはまた後ろから抑え込むようにムツヤの口を抑え、そして男に言った。 「いや、結構だ」 「そうかい、まー気が変わったら来てくれや」  男はそれだけ言うとノシノシと歩いて二人の元を去っていく。  そして、ムツヤを抱き寄せて口をふさいだ事にモモは赤面して頭の中に色んな考えがグルグルと浮かんでいた。 「あのー、ところでオークのお嬢さんはどうなさいますか? 身分証と簡単な戦闘のテストを受けていただければ冒険者として登録ができますが」  受付嬢はおずおずとそう言ってきた。モモは冒険者になるつもりは無かったので断ろうとするが、続けられた言葉で少し考えが変わる。 「オークのお嬢さんが冒険者になれば、そちらの方も従者としてなら一緒に依頼やモンスターの討伐を受けることができますが」 「そうなのか!?」 「はい」  モモが驚いて言うと受付嬢はにこやかにそう返事をした。だがモモは冷静に考えてみる。  自分が冒険者になればムツヤ殿と一緒に色々と冒険ができるのだろうが、それはムツヤ殿が冒険者になるという目標の達成にはならない。  そしてふとムツヤの顔を見る。ムツヤは酸っぱいものでも食べた様に顔をクシャクシャにして悔しがっていた、そしてそのまま言う。 「モモさんが良ければ冒険者になってください、俺は従者でもいいです」  モモは「はい」と小さく言って手続きを進めた、その間もムツヤはクシャクシャムツヤのまま悔しがっている。物凄く気まずい空気が冒険者ギルドの受付を支配していた。 「はい、ありがとうございます。書類上は何も問題がありませんので、準備さえ整っていればすぐにでも戦闘のテストを始めますが」 「よろしく頼む」 「ではこの書類を持ってギルドの闘技場、ここからずーっと歩いて左側ですね。そちらに向かって下さい」  モモは椅子に座っているクシャクシャムツヤに声を掛ける。 「ムツヤ殿、この後私のテストがあるらしいので一緒に行きませんか?」  ムツヤはまだ落ち込んでいたが、モモの後を付いて行き、ギルドの闘技場へ来た。  おそらく戦うであろう場所は四角い大きな石畳が正方形に敷き詰められており、そこをぐるりと囲んで観客席がある。  観客席にはぽつりぽつりと人がいるが、みんな暇つぶしや足休めに座っているだけのようだ。



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前のエピソード 冒険者になろう 4

身分証明 1

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 二人は石造りの立派な建物の前に再びやってきた。1時間前には食事を摂るために来たが今度は違う。  ムツヤは愛刀であり魔剣『ムゲンジゴク』のレプリカを腰に付け、裏ダンジョンで拾った鎧からしたら見劣りはするが、充分に立派な皮の鎧を着ている。  まず、この世界で冒険者になる為にはこの冒険者ギルドで登録を済ますことがほぼ必須条件だ。  何故ならば冒険者としての登録がないと各地から集まる依頼を受けることが出来ず、つまりは生計を立てることが出来ないのだ。  ムツヤは興奮を抑えられずに居た、ここから自分の冒険者としての旅が始まるという事と。  そして、念願のハーレムを作る第一歩を踏みしめることが出来る喜び。  受付に並び、そしてムツヤは自分を落ち着かせて言った。 「あのっ、冒険者になりだいんですが!」  すると受付の女性はにこやかに言葉を返す。 「はい、それではこちらの用紙へ記入と身分証をご提示頂けますでしょうか?」 「みぶん?」  しまったとモモは思う。自分の中でもまだムツヤが隔離された別世界から来たという事を甘く見ていたことを痛感した。  正直に話したらサズァンの言う通り良からぬ輩に目を付けられるだろう。ここは言葉を濁しながら話すことにする。 「こちらのムツヤ殿は異国の地から来たのです」 「それでしたら外国人登録証をお持ちですか?」  決して嘘は言ってないが下手なことは言うものじゃなかったと頭を抱える。  このままでは冒険者としての登録どころか不審人物としてムツヤ殿が目を付けられてしまう。どうしようかと考えていると後ろから声が掛かる。 「なんだ、お前冒険者になりたいのか?」  大柄で立派なヒゲを蓄えた男がそこには居た。種族は人だがその見た目は背の高いドワーフと言われてもおかしくはない。 「ゴラテさん……」  受付嬢があまりいい顔をせずにその男の名前を呼んだのをモモは見落とさなかった。理由はわからないが、いい話にはならない気がする。 「まぁ、困ったことがあったら俺に言いな。悪いようにはしないからよ」  モモは返事をしなかった、いくらなんでも胡散臭いというか、なるべく関わり合いになりたくないタイプの人間だ。しかしムツヤは違う。 「本当で」  モモはまた後ろから抑え込むようにムツヤの口を抑え、そして男に言った。 「いや、結構だ」 「そうかい、まー気が変わったら来てくれや」  男はそれだけ言うとノシノシと歩いて二人の元を去っていく。  そして、ムツヤを抱き寄せて口をふさいだ事にモモは赤面して頭の中に色んな考えがグルグルと浮かんでいた。 「あのー、ところでオークのお嬢さんはどうなさいますか? 身分証と簡単な戦闘のテストを受けていただければ冒険者として登録ができますが」  受付嬢はおずおずとそう言ってきた。モモは冒険者になるつもりは無かったので断ろうとするが、続けられた言葉で少し考えが変わる。 「オークのお嬢さんが冒険者になれば、そちらの方も従者としてなら一緒に依頼やモンスターの討伐を受けることができますが」 「そうなのか!?」 「はい」  モモが驚いて言うと受付嬢はにこやかにそう返事をした。だがモモは冷静に考えてみる。  自分が冒険者になればムツヤ殿と一緒に色々と冒険ができるのだろうが、それはムツヤ殿が冒険者になるという目標の達成にはならない。  そしてふとムツヤの顔を見る。ムツヤは酸っぱいものでも食べた様に顔をクシャクシャにして悔しがっていた、そしてそのまま言う。 「モモさんが良ければ冒険者になってください、俺は従者でもいいです」  モモは「はい」と小さく言って手続きを進めた、その間もムツヤはクシャクシャムツヤのまま悔しがっている。物凄く気まずい空気が冒険者ギルドの受付を支配していた。 「はい、ありがとうございます。書類上は何も問題がありませんので、準備さえ整っていればすぐにでも戦闘のテストを始めますが」 「よろしく頼む」 「ではこの書類を持ってギルドの闘技場、ここからずーっと歩いて左側ですね。そちらに向かって下さい」  モモは椅子に座っているクシャクシャムツヤに声を掛ける。 「ムツヤ殿、この後私のテストがあるらしいので一緒に行きませんか?」  ムツヤはまだ落ち込んでいたが、モモの後を付いて行き、ギルドの闘技場へ来た。  おそらく戦うであろう場所は四角い大きな石畳が正方形に敷き詰められており、そこをぐるりと囲んで観客席がある。  観客席にはぽつりぽつりと人がいるが、みんな暇つぶしや足休めに座っているだけのようだ。



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