二人で話して、結婚式に類することは行わないことにした。
双方の実家に四人揃って挨拶に行き、結婚報告をしたくらいだ。
隆則はともかく、まだ若く式を挙げたことのない涼音のために何かするべきでは、と必死で考えた。
せめてウェディングドレスを着せてやりたい。
それが『女の子』の夢なんだろうから、と身構えていたのだが、彼女は特に興味もない、とあっさりしたものだった。
「記念は何か欲しいから家族写真を撮りましょうよ。ちょっとお洒落して写真館で。あとレストランでお食事、って言っても子どもがいるからいいお店は無理だけど。どう?」
「ああ、いいな。じゃ予約しとこう! 写真館と、レストランはどこにする?」
涼音の提案に不満などない。
承諾を返した隆則に、彼女は当然のように答えた。
「それは子どもの好みで選んだ方がいいんじゃない? 二人が気楽に過ごせるところ。だからファミレスでもいいわ。航ちゃんは何か食べたいものあるかな。行きたいところとか。隆則さん、訊いておいてよ。雪ちゃんがいるから小さい子も大丈夫なお店にしてもらえたら」
この女性は本当に「子どもが一番」なのだ。表向きでも口先だけでもなく。
女性の夢だと信じて疑わなかったウェディングドレスや、「主役」になりスポットライトを浴びることより、息子たちの希望の食事に意識が行く。
隆則が『最後の伴侶』として、どうしても共に生きたいと願う人。
「そりゃそうか。わかった。雪ちゃんは好き嫌いあったっけ?」
「絶対に食べられないものはないわ。トマトは苦手だけど、出されたら食べるわよ。給食でも残さないって」
言葉通り、隆則は後回しで「一番最後」になるのかもしれない。
それでも構わなかった。待てば必ず順番は回って来る。
かつて待たせるのみで放置したままだった自分には、むしろ贅沢かもしれないと胸のどこかが痛んだ。