表示設定
表示設定
目次 目次




【2】②

ー/ー



「子どもたちも馴染んでくれてるし、俺と結婚してください。四人で幸せになりましょう」
「ありがとう。でも私は雪ちゃんが一番なんです。だから雪ちゃんに訊いてからお返事します。……それに結婚しても、雪ちゃんの次は航ちゃんで、隆則さんはその次になると思うけど。それでもいいんですか?」
 当然今までも「結婚」を前提の交際だった。だからこそ家族も交えての関係を持っていたのだ。
 半年が経ち、機は熟したのではと求婚した隆則に、涼音は真顔で答える。
 何度も四人で会って、互いの親子で相手方の印象を慎重に確かめていた。
 何でも飲み込んでしまいがちな航大が心配で、彼女に告げる前に、と最終確認していた。

「ぼくはいいと思う。三枝さんはやさしいし雪ちゃんはかわいい。ふたりとも好きだし、家族になるならああいう人たちがいい」
 息子は躊躇も見せず、明確に意思を表した。

『電話で失礼ですが、早く知らせたくて。お受けします。どうぞよろしくお願いします』
 その日の夜には涼音からの入電で、二人の結婚話は纏まった。


    ◇  ◇  ◇
 最も危惧していた親の反対は、拍子抜けするほどに何もなかった。

「航ちゃんがいいって言ってるならそれでいいわ。良さそうな方みたいじゃない。お子さんも。もうあんたもいい年だし、しないけどもし反対したってやめないでしょ。それで孫に会えなくなる方が辛いもの。……まあでも、顔合わせの場は設けてよ。『親族』になるんだしね」
 母が何らかの答えを出せば、父はよほどのことがない限り異を唱えることはない。
 隆則にとって母の言葉は正直意外で、──しかしどこか納得が行ったのも確かだった。

 離婚について話し合う中で、元妻はいきなり声を荒らげたのだ。「航大なんていらない!」と。
 なんてことを。
 それが「どうして俺が離婚なんて」と苛立つ心を、決断させた最後の一撃だった気がする。
 もしかしたら母は元妻の、……航大の実母についてなにか感じるものがあったのか。
 それが結局は、自分の息子(隆則)に起因するものであるということも。
 実際に、離婚に際して母が元妻を責めたり罵ったりしたことはなかった。

「あたしは時代もあったし我慢して来たわ。でもそれを七海子(なみこ)さんに強要はできない。あたしも全然平気だったわけじゃないのよ」
 ただぽつりと隆則に目も向けず零した言葉は、母が秘めていた本心に違いない。
 お前が悪いのだ、と口には出さない母の声が胸に突き刺さるようだった。
 だからこそ「航大()がいいならそれで良い」という結論に達したのだろう。
 親との話し合いの前に、航大は祖父母の家に呼ばれていた。
 おそらくそこで、「父親の再婚について」話を重ねたのだろうことは想像に難くない。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 【2】③


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「子どもたちも馴染んでくれてるし、俺と結婚してください。四人で幸せになりましょう」
「ありがとう。でも私は雪ちゃんが一番なんです。だから雪ちゃんに訊いてからお返事します。……それに結婚しても、雪ちゃんの次は航ちゃんで、隆則さんはその次になると思うけど。それでもいいんですか?」
 当然今までも「結婚」を前提の交際だった。だからこそ家族も交えての関係を持っていたのだ。
 半年が経ち、機は熟したのではと求婚した隆則に、涼音は真顔で答える。
 何度も四人で会って、互いの親子で相手方の印象を慎重に確かめていた。
 何でも飲み込んでしまいがちな航大が心配で、彼女に告げる前に、と最終確認していた。
「ぼくはいいと思う。三枝さんはやさしいし雪ちゃんはかわいい。ふたりとも好きだし、家族になるならああいう人たちがいい」
 息子は躊躇も見せず、明確に意思を表した。
『電話で失礼ですが、早く知らせたくて。お受けします。どうぞよろしくお願いします』
 その日の夜には涼音からの入電で、二人の結婚話は纏まった。
    ◇  ◇  ◇
 最も危惧していた親の反対は、拍子抜けするほどに何もなかった。
「航ちゃんがいいって言ってるならそれでいいわ。良さそうな方みたいじゃない。お子さんも。もうあんたもいい年だし、しないけどもし反対したってやめないでしょ。それで孫に会えなくなる方が辛いもの。……まあでも、顔合わせの場は設けてよ。『親族』になるんだしね」
 母が何らかの答えを出せば、父はよほどのことがない限り異を唱えることはない。
 隆則にとって母の言葉は正直意外で、──しかしどこか納得が行ったのも確かだった。
 離婚について話し合う中で、元妻はいきなり声を荒らげたのだ。「航大なんていらない!」と。
 《《母親のくせに》》なんてことを。
 それが「どうして俺が離婚なんて」と苛立つ心を、決断させた最後の一撃だった気がする。
 もしかしたら母は元妻の、……航大の実母についてなにか感じるものがあったのか。
 それが結局は、|自分の息子《隆則》に起因するものであるということも。
 実際に、離婚に際して母が元妻を責めたり罵ったりしたことはなかった。
「あたしは時代もあったし我慢して来たわ。でもそれを|七海子《なみこ》さんに強要はできない。あたしも全然平気だったわけじゃないのよ」
 ただぽつりと隆則に目も向けず零した言葉は、母が秘めていた本心に違いない。
 お前が悪いのだ、と口には出さない母の声が胸に突き刺さるようだった。
 だからこそ「|航大《孫》がいいならそれで良い」という結論に達したのだろう。
 親との話し合いの前に、航大は祖父母の家に呼ばれていた。
 おそらくそこで、「父親の再婚について」話を重ねたのだろうことは想像に難くない。