「子どもたちも馴染んでくれてるし、俺と結婚してください。四人で幸せになりましょう」
「ありがとう。でも私は雪ちゃんが一番なんです。だから雪ちゃんに訊いてからお返事します。……それに結婚しても、雪ちゃんの次は航ちゃんで、隆則さんはその次になると思うけど。それでもいいんですか?」
当然今までも「結婚」を前提の交際だった。だからこそ家族も交えての関係を持っていたのだ。
半年が経ち、機は熟したのではと求婚した隆則に、涼音は真顔で答える。
何度も四人で会って、互いの親子で相手方の印象を慎重に確かめていた。
何でも飲み込んでしまいがちな航大が心配で、彼女に告げる前に、と最終確認していた。
「ぼくはいいと思う。三枝さんはやさしいし雪ちゃんはかわいい。ふたりとも好きだし、家族になるならああいう人たちがいい」
息子は躊躇も見せず、明確に意思を表した。
『電話で失礼ですが、早く知らせたくて。お受けします。どうぞよろしくお願いします』
その日の夜には涼音からの入電で、二人の結婚話は纏まった。
◇ ◇ ◇
最も危惧していた親の反対は、拍子抜けするほどに何もなかった。
「航ちゃんがいいって言ってるならそれでいいわ。良さそうな方みたいじゃない。お子さんも。もうあんたもいい年だし、しないけどもし反対したってやめないでしょ。それで孫に会えなくなる方が辛いもの。……まあでも、顔合わせの場は設けてよ。『親族』になるんだしね」
母が何らかの答えを出せば、父はよほどのことがない限り異を唱えることはない。
隆則にとって母の言葉は正直意外で、──しかしどこか納得が行ったのも確かだった。
離婚について話し合う中で、元妻はいきなり声を荒らげたのだ。「航大なんていらない!」と。
母親のくせになんてことを。
それが「どうして俺が離婚なんて」と苛立つ心を、決断させた最後の一撃だった気がする。
もしかしたら母は元妻の、……航大の実母についてなにか感じるものがあったのか。
それが結局は、自分の息子に起因するものであるということも。
実際に、離婚に際して母が元妻を責めたり罵ったりしたことはなかった。
「あたしは時代もあったし我慢して来たわ。でもそれを七海子さんに強要はできない。あたしも全然平気だったわけじゃないのよ」
ただぽつりと隆則に目も向けず零した言葉は、母が秘めていた本心に違いない。
お前が悪いのだ、と口には出さない母の声が胸に突き刺さるようだった。
だからこそ「航大がいいならそれで良い」という結論に達したのだろう。
親との話し合いの前に、航大は祖父母の家に呼ばれていた。
おそらくそこで、「父親の再婚について」話を重ねたのだろうことは想像に難くない。