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閑話:美しい白竜(明蓮視点)

ー/ー



 あーもう、なんなのよアイツは!

 前から変なドラゴンだと思ってたけど、まさか人間に化けて学園に転入するなんて。それがまた妙に可愛いし。中性的な童顔で背も低いから何故か着てきたスカートの制服がやたらと似合ってて、背が高いせいでイマイチ制服が似合ってない私には羨ましすぎるんですけど! 嫌味? 私に対する嫌味なの?

 私に興味があるなんて言ってやたらグイグイ来るわりにどことなく素っ気ない態度だったり、勉強を教えるなんて言って密着してくるくせに私のことを見てなかったり、ホント何考えてるか分からない。なんか肌スベスベだしまつ毛長いしいい匂いがするし……!



――思えば、出会いからして他のマレビトとはまるで違っていた。

『君か、幽世の扉を開く能力を持つ人間というのは』

 学園から家に帰る途中、突然声が聞こえてきた。そう、声()()が。不思議と恐怖は感じなかった。

 マレビトとの遭遇はいつも緊張の連続だ。両親を火事で亡くし、頼るあてもなかった私は自分の特技を利用してマレビト相手の商売を始めた。彼等は誰もが尊大な態度で接してきたし、中には自分の力を誇示するために無関係の人間を殺してみせる者もいた。そんな連中と共に異世界の道を歩いて遥か宇宙の彼方にある惑星へと旅をするのだ。一度の旅は二時間程度だが、常に死を意識する恐怖の旅路だった。

 なのに、その声はとても優しく聞こえた。

「どこにいるの?」

 私は自分から声の主を探して歩き始める。すぐに戸惑いを含んだ新たな声が脳に響く。

『待ちなさい、まずは交渉しなくては。必要もないのに顔を合わせてもお互いの利益にならない』

 変なの。マレビトはみんな見せたがりなのに。この声はこんな街中で話しかけてこられるほどの力があるのに、交渉なんて始めようとしてる。普通なら居丈高に命令してきて、旅の終わりにはした金を投げつけて去っていくのに。

「交渉って? 異星に行くんでしょう?」

『ああ、そうだ。私はアルファケンタウリという星の近くにある惑星に用がある。そこまでの旅行費用はいくらになるか教えて貰いたい。あいにく人間の金はあまり持ち合わせていないものでね』

「……一応、私も生活のためにやってるからあんまり安いと困るんだけど」

 恐怖を感じないせいか、気安い態度で返事をしてしまう。しまったと思う間もなく、声は答えた。

『一千万円で足りるだろうか?』

「高っ!? そんなにいらないよ!」

 金銭感覚がおかしすぎて、思わずツッコミを入れてしまった。結局一回二万円という、私にとっては十分に破格の条件で話が決まり、彼の結界へと案内されたのだった。もしかしたら、あそこで変に欲を出していたら破談になったか殺されていたのかも知れない。

……いや、現在の河伯の奇行を見る限りそんなことにはならなかったのだろう。

 そして結界に入った私を待っていたのは、純白の竜神だった。その姿を見た時、金銭感覚がおかしいのに納得してしまった。竜は金銀財宝を貯めこむものと相場が決まっているからね。

 幽世を渡り、アルファケンタウリへと旅する間も河伯は多くの知識を語り、また私のことも聞いてきた。あまりにも他のマレビトと違う態度に戸惑いと疑心暗鬼が生まれ、やはり警戒しながら旅に付き合うようになったのだった。



 思い返しても、やっぱり河伯の考えは分からない。私に興味があるというのはたぶん本当だろうけど、人間の男が口にするような興味の持ち方とは違うんだろうな。

 まあ、私は男からそんな目を向けられたことなんてないけどね!

 むしろ女の子がやたらと寄ってくるけどね!!

 なーにが「お姉さま(はぁと)」じゃ! 私にそんな趣味はなーーーーい!!

……女の子っぽい見た目の河伯にドキドキしちゃったのはいつも女の子に寄ってこられているせいじゃないよね? 一応アイツは男だって言ってたし! スカート履いてたけど。

 はあー、勉強しなきゃいけないのになんでこんなことばっかり考えてるんだろ、私。


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 あーもう、なんなのよアイツは!
 前から変なドラゴンだと思ってたけど、まさか人間に化けて学園に転入するなんて。それがまた妙に可愛いし。中性的な童顔で背も低いから何故か着てきたスカートの制服がやたらと似合ってて、背が高いせいでイマイチ制服が似合ってない私には羨ましすぎるんですけど! 嫌味? 私に対する嫌味なの?
 私に興味があるなんて言ってやたらグイグイ来るわりにどことなく素っ気ない態度だったり、勉強を教えるなんて言って密着してくるくせに私のことを見てなかったり、ホント何考えてるか分からない。なんか肌スベスベだしまつ毛長いしいい匂いがするし……!
――思えば、出会いからして他のマレビトとはまるで違っていた。
『君か、幽世の扉を開く能力を持つ人間というのは』
 学園から家に帰る途中、突然声が聞こえてきた。そう、声|だ《・》|け《・》が。不思議と恐怖は感じなかった。
 マレビトとの遭遇はいつも緊張の連続だ。両親を火事で亡くし、頼るあてもなかった私は自分の特技を利用してマレビト相手の商売を始めた。彼等は誰もが尊大な態度で接してきたし、中には自分の力を誇示するために無関係の人間を殺してみせる者もいた。そんな連中と共に異世界の道を歩いて遥か宇宙の彼方にある惑星へと旅をするのだ。一度の旅は二時間程度だが、常に死を意識する恐怖の旅路だった。
 なのに、その声はとても優しく聞こえた。
「どこにいるの?」
 私は自分から声の主を探して歩き始める。すぐに戸惑いを含んだ新たな声が脳に響く。
『待ちなさい、まずは交渉しなくては。必要もないのに顔を合わせてもお互いの利益にならない』
 変なの。マレビトはみんな見せたがりなのに。この声はこんな街中で話しかけてこられるほどの力があるのに、交渉なんて始めようとしてる。普通なら居丈高に命令してきて、旅の終わりにはした金を投げつけて去っていくのに。
「交渉って? 異星に行くんでしょう?」
『ああ、そうだ。私はアルファケンタウリという星の近くにある惑星に用がある。そこまでの旅行費用はいくらになるか教えて貰いたい。あいにく人間の金はあまり持ち合わせていないものでね』
「……一応、私も生活のためにやってるからあんまり安いと困るんだけど」
 恐怖を感じないせいか、気安い態度で返事をしてしまう。しまったと思う間もなく、声は答えた。
『一千万円で足りるだろうか?』
「高っ!? そんなにいらないよ!」
 金銭感覚がおかしすぎて、思わずツッコミを入れてしまった。結局一回二万円という、私にとっては十分に破格の条件で話が決まり、彼の結界へと案内されたのだった。もしかしたら、あそこで変に欲を出していたら破談になったか殺されていたのかも知れない。
……いや、現在の河伯の奇行を見る限りそんなことにはならなかったのだろう。
 そして結界に入った私を待っていたのは、純白の竜神だった。その姿を見た時、金銭感覚がおかしいのに納得してしまった。竜は金銀財宝を貯めこむものと相場が決まっているからね。
 幽世を渡り、アルファケンタウリへと旅する間も河伯は多くの知識を語り、また私のことも聞いてきた。あまりにも他のマレビトと違う態度に戸惑いと疑心暗鬼が生まれ、やはり警戒しながら旅に付き合うようになったのだった。
 思い返しても、やっぱり河伯の考えは分からない。私に興味があるというのはたぶん本当だろうけど、人間の男が口にするような興味の持ち方とは違うんだろうな。
 まあ、私は男からそんな目を向けられたことなんてないけどね!
 むしろ女の子がやたらと寄ってくるけどね!!
 なーにが「お姉さま(はぁと)」じゃ! 私にそんな趣味はなーーーーい!!
……女の子っぽい見た目の河伯にドキドキしちゃったのはいつも女の子に寄ってこられているせいじゃないよね? 一応アイツは男だって言ってたし! スカート履いてたけど。
 はあー、勉強しなきゃいけないのになんでこんなことばっかり考えてるんだろ、私。