プロローグ
ー/ー 隣に見える大きな背中。父さんの横に、並んで座るのが好きだった。
毎年恒例の、夏の風物詩。窓から見るそれは、眩い彩りをこの目に映し、爆音と共に視界から消える。
次に打ち出されるまでの、妙な静けさも好きだった。優しい横顔を見るのも、好きだった。
「幸せって何だと思う?」
いつもの優しい横顔から、そんな質問が飛んできた。そんなことを聞かれても、難しいことは子供の俺にはわからない。それに答えを言えたとしても、その頃には爆音が答えをかき消すに違いない。
俺はゆっくりと頭を左右に振り、答えがわからないことを胸ぬ響くくらいの爆音と共に伝えた。
「これだよ。この瞬間が、父さんの幸せなんだ」
そんなにも花火を見られて嬉しいのかと、俺は何だか可笑しくなって笑った。
そんな俺を見て、嬉しそうに父さんも笑った。
「ほら、これだよ。こう言う瞬間が、幸せなんだ」
そう言った父さんの瞳には、花火は映っていなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
朝が来た。
何だか懐かしい夢を見たような気がする。心なしか泣きそうになっているように感じる。
そんな中、俺はいつものように制服に着替え、玄関の扉を開けた。
「行ってきます」
後ろに立つ母に声をかけると、返事を待つことなく俺は玄関のドアノブを捻った。微かに聞こえる「行ってらっしゃい」の声は、俺の意識に入ることはなく、ドアの閉まる音でかき消された。
夏の朝。猛暑の中で、駅まで歩くその道のりが、苦痛で苦痛で仕方なかった。リュックと背中の間には、滝のように汗が流れ、首にかけたタオルで額を拭うも、次々と零れる汗は止まろうとしない。
こんな思いをして、なぜ俺は学校になんて向かうのか。行ったって、何もいいことなんか無いのに。
俺の視線の先で、1人の少女が歩いている。
「あぁ……あんな小さい頃に戻りたいな」
ただただ何も考えずひたすら遊び、やりたいことを好きなだけ見つけ、好きなだけ実行し、世の中のいいところだけを直視できるそんな頃に。
「はぁ……ん?」
足が勝手に動いていた、頭では考えていない。信号は赤だった、悪いのは車だ。
ーーーーーー何やってんだ? 俺。
手のひらが少女に触れた。間に合った、良かった。
安堵は束の間、現実は大型トラックと共に押し寄せた。
『翼のない俺たちに幸せの粉を‼︎』
毎年恒例の、夏の風物詩。窓から見るそれは、眩い彩りをこの目に映し、爆音と共に視界から消える。
次に打ち出されるまでの、妙な静けさも好きだった。優しい横顔を見るのも、好きだった。
「幸せって何だと思う?」
いつもの優しい横顔から、そんな質問が飛んできた。そんなことを聞かれても、難しいことは子供の俺にはわからない。それに答えを言えたとしても、その頃には爆音が答えをかき消すに違いない。
俺はゆっくりと頭を左右に振り、答えがわからないことを胸ぬ響くくらいの爆音と共に伝えた。
「これだよ。この瞬間が、父さんの幸せなんだ」
そんなにも花火を見られて嬉しいのかと、俺は何だか可笑しくなって笑った。
そんな俺を見て、嬉しそうに父さんも笑った。
「ほら、これだよ。こう言う瞬間が、幸せなんだ」
そう言った父さんの瞳には、花火は映っていなかった。
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朝が来た。
何だか懐かしい夢を見たような気がする。心なしか泣きそうになっているように感じる。
そんな中、俺はいつものように制服に着替え、玄関の扉を開けた。
「行ってきます」
後ろに立つ母に声をかけると、返事を待つことなく俺は玄関のドアノブを捻った。微かに聞こえる「行ってらっしゃい」の声は、俺の意識に入ることはなく、ドアの閉まる音でかき消された。
夏の朝。猛暑の中で、駅まで歩くその道のりが、苦痛で苦痛で仕方なかった。リュックと背中の間には、滝のように汗が流れ、首にかけたタオルで額を拭うも、次々と零れる汗は止まろうとしない。
こんな思いをして、なぜ俺は学校になんて向かうのか。行ったって、何もいいことなんか無いのに。
俺の視線の先で、1人の少女が歩いている。
「あぁ……あんな小さい頃に戻りたいな」
ただただ何も考えずひたすら遊び、やりたいことを好きなだけ見つけ、好きなだけ実行し、世の中のいいところだけを直視できるそんな頃に。
「はぁ……ん?」
足が勝手に動いていた、頭では考えていない。信号は赤だった、悪いのは車だ。
ーーーーーー何やってんだ? 俺。
手のひらが少女に触れた。間に合った、良かった。
安堵は束の間、現実は大型トラックと共に押し寄せた。
『翼のない俺たちに幸せの粉を‼︎』
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