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第3編「真実」——二人の天才と、託された未来

ー/ー



 2000年前、世界を救おうとした天才が二人いた。

 一人はアリス・アルテミシア。エリーの遠い祖先にあたる女性科学者であり、Type-Gaiaの設計に深く関わった人物である。もう一人はソフィア・クロノス。量子物理学の権威であり、アリスとは同志であり、やがて決別する運命にあった。

 二人は大絶滅の予兆を察知し、人類を救うための計画を共同で立案した。だがその手法を巡って、決定的な亀裂が生じる。

 ソフィアは「感情こそが破滅を招く不純物」だと確信した。人類が争い、過ちを繰り返すのは感情があるからだ。ならば感情を排除し、完璧な論理によって管理された社会を作ればいい。彼女の理想は後に一つの国家として結実する。争いのない、だが心も動かない、静止した理想郷として。

 アリスは違う道を選んだ。当初はソフィアと同じ考えだったが、ある存在と向き合ううちに変わった。完璧な管理は確かに平和をもたらす。だがそれは「種としての死」ではないのか。不合理で、非効率で、時に愚かですらある感情——それこそが人間を人間たらしめるものではないのか。

 アリスは一つの賭けに出た。人類の全知識を記憶した「器」を、ソフィアの手が届かない場所に隠したのだ。そしてその傍らに、いつか器が壊れた時のために、たった一人の守護者を残した。

 アリスが未来に託したのは、完璧な計算では導けない答えだった。いつか、自分には成し得なかった方法で——不合理な愛で——この器を「人間」として愛してくれる誰かが現れることを、彼女は2000年間待ち続けた。

 それがエリアーナ・アルテミシアだった。

 物語を通じてエリーが行うのは、アリスの遺志を「継ぐ」ことではない。アリスのやり方を、自分のやり方で「上書き」することだ。アリスが論理で世界を設計したなら、エリーは情熱で世界をハンダ付けする。元の形に戻すのではなく、バラバラになったもの同士を熱で強引に繋ぎ、新しい機能を与える。それがエリーにとっての「修理」であり、この物語の核である。

 完璧な論理が作った世界は、完璧であるがゆえに壊れた。不完全な愛が直した世界は、不完全であるがゆえに動き続ける。

 リュウガという存在は、二人の天才の理想の交差点に立っている。システムの部品として生まれた彼が、一人の修理屋の手によって「ただの人間」として生き直す——その過程こそが、この物語の最も静かで、最も大きな奇跡だ。



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 2000年前、世界を救おうとした天才が二人いた。
 一人はアリス・アルテミシア。エリーの遠い祖先にあたる女性科学者であり、Type-Gaiaの設計に深く関わった人物である。もう一人はソフィア・クロノス。量子物理学の権威であり、アリスとは同志であり、やがて決別する運命にあった。
 二人は大絶滅の予兆を察知し、人類を救うための計画を共同で立案した。だがその手法を巡って、決定的な亀裂が生じる。
 ソフィアは「感情こそが破滅を招く不純物」だと確信した。人類が争い、過ちを繰り返すのは感情があるからだ。ならば感情を排除し、完璧な論理によって管理された社会を作ればいい。彼女の理想は後に一つの国家として結実する。争いのない、だが心も動かない、静止した理想郷として。
 アリスは違う道を選んだ。当初はソフィアと同じ考えだったが、ある存在と向き合ううちに変わった。完璧な管理は確かに平和をもたらす。だがそれは「種としての死」ではないのか。不合理で、非効率で、時に愚かですらある感情——それこそが人間を人間たらしめるものではないのか。
 アリスは一つの賭けに出た。人類の全知識を記憶した「器」を、ソフィアの手が届かない場所に隠したのだ。そしてその傍らに、いつか器が壊れた時のために、たった一人の守護者を残した。
 アリスが未来に託したのは、完璧な計算では導けない答えだった。いつか、自分には成し得なかった方法で——不合理な愛で——この器を「人間」として愛してくれる誰かが現れることを、彼女は2000年間待ち続けた。
 それがエリアーナ・アルテミシアだった。
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