表示設定
表示設定
目次 目次




【Chapter1】①

ー/ー



 闇の中、突然の(まばゆ)い光。

 (かおる)は寝転んだ状態で、緩慢に顔を横に向ける。
 光源はシーツの上のスマートフォンだった。電話着信の合図。
 寝る前だからではなく、音もバイブレーションも学校で切ったままになっていた。普段なら学校を出るなり設定し直すのだが、今日はとてもそんな余裕はなかったのだ。……時間ではなく、心の。
 派手に点滅を繰り返すわけでもなく、この光だけで眠りが妨げられることはなさそうだが、映画館でスマートフォン使用が迷惑がられる理由はよくわかる。
 それ程に、真っ暗闇の中の光の存在感は強烈だった。

 ──部屋の照明を消して、ベッドに身体を投げ出して一時間は経つ。まだ十時前で、眠気など欠片もなく目を閉じてさえいなかった。

 ディスプレイに表示されている名は石和(いさわ)。誰かと思い巡らせるまでもなく繋がった。クラスメイトの石和 大雅(たいが)だ。
 同じクラスになって番号やIDは交換していたものの、学校外で通信アプリや電話を通じた付き合いは一度もない。
 つまりその程度の『トモダチ』に過ぎないのだけれど。
 一瞬の迷いの末、郁は通話ボタンを押した。

「……はい。なんだよ、珍しいな」
羽住(はすみ)、遅くに悪い。……ちょっといいか?』
「……いいけど?」
 大雅の深刻な声。もともとふざけることなどない友人だが、それにしても。

『あの、──あのさ。八木(やぎ)先生が結婚するって、羽住知ってたのか?』
 背筋がぞくりとした。
 何故。……何故、わざわざこんな時間に電話して来てまでそれを、訊く?





スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 【Chapter1】②


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



 闇の中、突然の|眩《まばゆ》い光。
 |郁《かおる》は寝転んだ状態で、緩慢に顔を横に向ける。
 光源はシーツの上のスマートフォンだった。電話着信の合図。
 寝る前だからではなく、音もバイブレーションも学校で切ったままになっていた。普段なら学校を出るなり設定し直すのだが、今日はとてもそんな余裕はなかったのだ。……時間ではなく、心の。
 派手に点滅を繰り返すわけでもなく、この光だけで眠りが妨げられることはなさそうだが、映画館でスマートフォン使用が迷惑がられる理由はよくわかる。
 それ程に、真っ暗闇の中の光の存在感は強烈だった。
 ──部屋の照明を消して、ベッドに身体を投げ出して一時間は経つ。まだ十時前で、眠気など欠片もなく目を閉じてさえいなかった。
 ディスプレイに表示されている名は|石和《いさわ》。誰かと思い巡らせるまでもなく繋がった。クラスメイトの石和 |大雅《たいが》だ。
 同じクラスになって番号やIDは交換していたものの、学校外で通信アプリや電話を通じた付き合いは一度もない。
 つまりその程度の『トモダチ』に過ぎないのだけれど。
 一瞬の迷いの末、郁は通話ボタンを押した。
「……はい。なんだよ、珍しいな」
『|羽住《はすみ》、遅くに悪い。……ちょっといいか?』
「……いいけど?」
 大雅の深刻な声。もともとふざけることなどない友人だが、それにしても。
『あの、──あのさ。|八木《やぎ》先生が結婚するって、羽住知ってたのか?』
 背筋がぞくりとした。
 何故。……何故、わざわざこんな時間に電話して来てまでそれを、訊く?