第15話 隠されたふたりの意図
ー/ー「見てほしかった?」
「そう。ブックスタンドを使うのは、置いた本がよく見えるように。でもだったら、なんで荒らす必要があるの?」
「あ……」
間宮先輩がはっとした表情を浮かべる。たしかにそうだ。見てもらうために使われたブックスタンドと、展示コーナーを荒らすという行動は矛盾する。
「つまり、ブックスタンドを置いた人物と展示コーナーを荒らした人物は別人なんです」
「犯人が二人いるっていうこと?」
「いいえ、そうじゃありません。展示コーナーを荒らしたのはひとりです。そしてそのひとりは、ブックスタンドを置いた人物とは反対の目的を持っていたと想像できる。わざわざ展示コーナーをめちゃくちゃにして、そして置かれた本を隠した。隠したのは、その本を誰にも見られたくなかったからです」
僕らの間に沈黙が落ちる。先ほどの呆れた空気とは違う。ひやりと悪寒が走る静けさだ。
「本が誰かに見せるために置かれた、とするなら、その『誰か』とは誰でしょうか? 図書室に来る生徒たち全員? だったら、開館中にそっと置いておけばいい。展示コーナーに本を一冊置くくらい、誰に注意されることもなくできるでしょう。しかし、見回りをしたタイミングで展示コーナーに異変があったという話はされていない。雛子君と一ノ瀬先輩は互いに図書館の中を見て回っている。開館中に本が置かれたなら、たとえ片方が本を置いた人物でも、もう片方が異常に気づいているはずです。本を置くタイミングは、閉館後、どちらかの見回りが終わった後からしかない。
つまり本は『みんな』に見せたかったわけではない。見せたいのは、特定の『誰か』です。そしてその『誰か』は、展示コーナーが荒らされるという事件が起きなかった場合を想定して考えればいい」
もしも、展示コーナーが荒らされていなかったら。きっとその場所には新たに増えた一冊の本が置いてあった。そしてそれを一番に見るはずだったのは……。
「図書室の鍵を開け、荒らされた現場を一番初めに発見したのは君島先輩です。……けれど、早朝のカウンター当番は間宮先輩でした。君島先輩はたまたま朝早くに来て、間宮先輩から鍵を預かっただけ。本来であれば、一番初めに図書室に入るのは間宮先輩のはずでした」
三人の顔色が変わる。それは様々な表情だった。間宮先輩は目を見開き、君島先輩は顔を伏せ、一ノ瀬先輩はどこか遠くを見つめたまま視線が動かない。
「では、誰が置いたのか。先に図書室に入った君島先輩が本を置いたのだとしたら、展示コーナーが荒らされているのは意味不明です。これは間宮先輩が本当は先に図書室に入っていたと仮定した場合でも同じです。ふたりが本を置くことはない。本を置いたのは、雛子君、一ノ瀬先輩のうちのどちらかです」
当然、本を置いたのは僕ではない。つまり、置いたのは一ノ瀬先輩ということだ。僕は彼女に視線を向けた。けれど彼女は微動だにしていなかった。ただ静かに、泉さんの話を聞いている。
間宮先輩の視線が僕と一ノ瀬先輩の間でさまよう。はっきりとした答えを欲しがるように泉さんを見た。けれど泉さんはその問いには答えず続けた。
「そう。ブックスタンドを使うのは、置いた本がよく見えるように。でもだったら、なんで荒らす必要があるの?」
「あ……」
間宮先輩がはっとした表情を浮かべる。たしかにそうだ。見てもらうために使われたブックスタンドと、展示コーナーを荒らすという行動は矛盾する。
「つまり、ブックスタンドを置いた人物と展示コーナーを荒らした人物は別人なんです」
「犯人が二人いるっていうこと?」
「いいえ、そうじゃありません。展示コーナーを荒らしたのはひとりです。そしてそのひとりは、ブックスタンドを置いた人物とは反対の目的を持っていたと想像できる。わざわざ展示コーナーをめちゃくちゃにして、そして置かれた本を隠した。隠したのは、その本を誰にも見られたくなかったからです」
僕らの間に沈黙が落ちる。先ほどの呆れた空気とは違う。ひやりと悪寒が走る静けさだ。
「本が誰かに見せるために置かれた、とするなら、その『誰か』とは誰でしょうか? 図書室に来る生徒たち全員? だったら、開館中にそっと置いておけばいい。展示コーナーに本を一冊置くくらい、誰に注意されることもなくできるでしょう。しかし、見回りをしたタイミングで展示コーナーに異変があったという話はされていない。雛子君と一ノ瀬先輩は互いに図書館の中を見て回っている。開館中に本が置かれたなら、たとえ片方が本を置いた人物でも、もう片方が異常に気づいているはずです。本を置くタイミングは、閉館後、どちらかの見回りが終わった後からしかない。
つまり本は『みんな』に見せたかったわけではない。見せたいのは、特定の『誰か』です。そしてその『誰か』は、展示コーナーが荒らされるという事件が起きなかった場合を想定して考えればいい」
もしも、展示コーナーが荒らされていなかったら。きっとその場所には新たに増えた一冊の本が置いてあった。そしてそれを一番に見るはずだったのは……。
「図書室の鍵を開け、荒らされた現場を一番初めに発見したのは君島先輩です。……けれど、早朝のカウンター当番は間宮先輩でした。君島先輩はたまたま朝早くに来て、間宮先輩から鍵を預かっただけ。本来であれば、一番初めに図書室に入るのは間宮先輩のはずでした」
三人の顔色が変わる。それは様々な表情だった。間宮先輩は目を見開き、君島先輩は顔を伏せ、一ノ瀬先輩はどこか遠くを見つめたまま視線が動かない。
「では、誰が置いたのか。先に図書室に入った君島先輩が本を置いたのだとしたら、展示コーナーが荒らされているのは意味不明です。これは間宮先輩が本当は先に図書室に入っていたと仮定した場合でも同じです。ふたりが本を置くことはない。本を置いたのは、雛子君、一ノ瀬先輩のうちのどちらかです」
当然、本を置いたのは僕ではない。つまり、置いたのは一ノ瀬先輩ということだ。僕は彼女に視線を向けた。けれど彼女は微動だにしていなかった。ただ静かに、泉さんの話を聞いている。
間宮先輩の視線が僕と一ノ瀬先輩の間でさまよう。はっきりとした答えを欲しがるように泉さんを見た。けれど泉さんはその問いには答えず続けた。
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