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第14話 13番目の本はなんのために

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 一ノ瀬先輩が首をかしげる。泉さんが僕に顎で指示した。仰せのままに、僕はスマホを掲げ先輩方に見せる。そこには間宮先輩からもらった写真、荒らされた展示コーナーが写っている。

「ここにはひとつ奇妙な点があります。散らばっているのは十二冊の本。けれどブックスタンドは十三個です。なぜ数が合わないのか」

 泉さんは一呼吸おいてから続ける。

「本が減った? それはないですよね。展示コーナーはすぐに間宮先輩と君島先輩の手で直されました。ふたりは今の展示コーナーの様子に疑問は抱いていない。盗まれた本があるならすぐに気づいたはずです。ということは、本が減ったのではなく、ブックスタンドが増えたんです」
「それは、そうかもしれないが……」

 君島先輩が、困ったように呟く。言ってることは分かる。だけど、なんでそんなことに? という疑問の顔だ。僕もよくわかってない。なんだって増えるんだ? たとえば、本を盗み、そのさいに展示コーナーを荒らしたのならわかる。それでブックスタンドがひとつ余っているとか。でもそうじゃなく、本の数をそのままに、ブックスタンドをひとつ増やしていくというのには理由が思いつかない。

「展示コーナーが荒らされたときに、近くの棚から落っこちてきたんじゃないの?」と間宮先輩。

「あり得ません。今見てもわかるように、展示コーナーの近くに他のブックスタンドは置かれていない。そしてブックスタンドは、離れたところにあるカウンターのそばで保管されている。増やすには、誰かが意図的に運ぶしかない」
「うん。まあ、そうだよね」

 一ノ瀬先輩は釈然としない様子だ。

「で、だからなんなのよ」

 イライラした様子を隠さず間宮先輩は言う。それに対し泉さんは、淡々と答えた。

「私も考えました。犯人はなんのためにそんなことをしたのか。増えたブックスタンドの意味。……私の答えはシンプルです。ブックスタンドは本を置くために使われたんです」

 ……先輩方の間に脱力したような空気が流れる。なんだそれ、という様子だ。

「納得できませんか? ですが、そう考えるのが自然では? ブックスタンドは木製の小さく軽いものです。もっと大きなものだったら、展示コーナーを荒らすための道具だと考えることもできるかもしれませんが、これは違う。これは本を支えるために使われるものなんですから、そのために使われたと考えるのが自然です」
「えっと、ごめん。それってどういうこと?」

 僕は思わず口を挟んだ。彼女の言ってることはわかる。ブックスタンドは本を立てかけるためのものだ。だからそのために使われた。そうかもしれない。でもそれが犯人特定につながるんだろうか。

「とりあえず、聞いて。順を追って話すのが一番早いと思うから。……みなさん、考えてください。ブックスタンドは本を置くために使われた。なら、次に考えるべきことは何ですか?」
「なんの本が置かれていたか、とかか?」

 君島先輩の答えに泉さんは首を横に振る。

「それも大事ですが、違います。今の段階では、特定するすべがありませんから。……考えるべきなのは、なんのために本が置かれたのかです」
「なんのために……」

 誰かが展示コーナーに本を置いた。わざわざブックスタンドまで使って丁寧に立てかけて。ならその意図は……


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 一ノ瀬先輩が首をかしげる。泉さんが僕に顎で指示した。仰せのままに、僕はスマホを掲げ先輩方に見せる。そこには間宮先輩からもらった写真、荒らされた展示コーナーが写っている。
「ここにはひとつ奇妙な点があります。散らばっているのは十二冊の本。けれどブックスタンドは十三個です。なぜ数が合わないのか」
 泉さんは一呼吸おいてから続ける。
「本が減った? それはないですよね。展示コーナーはすぐに間宮先輩と君島先輩の手で直されました。ふたりは今の展示コーナーの様子に疑問は抱いていない。盗まれた本があるならすぐに気づいたはずです。ということは、本が減ったのではなく、ブックスタンドが増えたんです」
「それは、そうかもしれないが……」
 君島先輩が、困ったように呟く。言ってることは分かる。だけど、なんでそんなことに? という疑問の顔だ。僕もよくわかってない。なんだって増えるんだ? たとえば、本を盗み、そのさいに展示コーナーを荒らしたのならわかる。それでブックスタンドがひとつ余っているとか。でもそうじゃなく、本の数をそのままに、ブックスタンドをひとつ増やしていくというのには理由が思いつかない。
「展示コーナーが荒らされたときに、近くの棚から落っこちてきたんじゃないの?」と間宮先輩。
「あり得ません。今見てもわかるように、展示コーナーの近くに他のブックスタンドは置かれていない。そしてブックスタンドは、離れたところにあるカウンターのそばで保管されている。増やすには、誰かが意図的に運ぶしかない」
「うん。まあ、そうだよね」
 一ノ瀬先輩は釈然としない様子だ。
「で、だからなんなのよ」
 イライラした様子を隠さず間宮先輩は言う。それに対し泉さんは、淡々と答えた。
「私も考えました。犯人はなんのためにそんなことをしたのか。増えたブックスタンドの意味。……私の答えはシンプルです。ブックスタンドは本を置くために使われたんです」
 ……先輩方の間に脱力したような空気が流れる。なんだそれ、という様子だ。
「納得できませんか? ですが、そう考えるのが自然では? ブックスタンドは木製の小さく軽いものです。もっと大きなものだったら、展示コーナーを荒らすための道具だと考えることもできるかもしれませんが、これは違う。これは本を支えるために使われるものなんですから、そのために使われたと考えるのが自然です」
「えっと、ごめん。それってどういうこと?」
 僕は思わず口を挟んだ。彼女の言ってることはわかる。ブックスタンドは本を立てかけるためのものだ。だからそのために使われた。そうかもしれない。でもそれが犯人特定につながるんだろうか。
「とりあえず、聞いて。順を追って話すのが一番早いと思うから。……みなさん、考えてください。ブックスタンドは本を置くために使われた。なら、次に考えるべきことは何ですか?」
「なんの本が置かれていたか、とかか?」
 君島先輩の答えに泉さんは首を横に振る。
「それも大事ですが、違います。今の段階では、特定するすべがありませんから。……考えるべきなのは、なんのために本が置かれたのかです」
「なんのために……」
 誰かが展示コーナーに本を置いた。わざわざブックスタンドまで使って丁寧に立てかけて。ならその意図は……