表示設定
表示設定
目次 目次




第7話 調査/小さな謎②

ー/ー



「変って、なにが?」
「ブックスタンド」


 泉さんは短く答える。なにか考えているのか、僕の疑問に丁寧に答えてはくれなかった。おかげで自分で考えるしかない。
 ブックスタンド? どういう意味か。改めて僕と間宮先輩はスマホを覗きこむ。
 ブックスタンドは木製で、本を立てかけるタイプのものだ。いかにも安物で、重たい本だったら壊れてしまいそうな簡単な作りをしている。


「…………あ」


 しばらく写真を眺めて、ようやく泉さんの言葉の意味に気づく。
 ブックスタンドの数がおかしい。床に散らばっている本の数は十二。けれど、ブックスタンドは十三個ある。


「ほんとね……」


 間宮先輩も、驚きながら改めて数を数え直している。


「展示コーナーの本の数は、もともとはいくつですか?」
「十二であってるはずよ。今回は、季節のおすすめ本ってテーマで図書委員が選んだものだから。それに、並べ直してる時になくなってる本があったとは思わなかったし」


 今回の展示コーナーは、間宮先輩が主導で企画していたものだ。真面目な彼女は熱心にその仕事に取り組んでいた。展示する本はしっかり把握しているだろう。その彼女が違和感に気づかないということは、本が入れ替わったり消えてしまっていることはないはずだ。それに、僕自身の目から見ても散らばっている本は間違いなくすべて展示されていたものだ。


「荒らされているのを見て、写真を撮って、それから片付けをしたんですよね。ブックスタンドが増えていることには気づかなかったんですか?」


 その質問に、間宮先輩は思い返すように斜めに視線をやりながら答える。


「どうかしら……。あの時は気が動転していたから。でも、そうね。何も気にしないで片付け終わったし……気づかなかったんじゃないかしら」


 なるほど。だが妙じゃないか。片付けていて、ブックスタンドが一個余ったら不自然だ。それとも、それは今だから言えることであって、いきなり展示コーナーが荒らされているのを見た後ではそれどころではなくなってしまうものか。
 と、そんなところで朝のチャイムが鳴った。僕は泉さんと顔を見合わせる。聞きたいことは聞けたかと目で尋ねると、泉さんはこくりと頷いた。


「えっと、話聞かせてくれてありがとうございました。またなにかあったら、よろしくお願いします」


 僕がお礼を言って頭を下げる。泉さんは軽く会釈をしただけだった。


「……ええ。泉さん、だったかしら。お願いね」


 おお。この短時間で、泉さんは間宮先輩から多少の信頼を勝ち取ったらしい。写真の違和感に気づいた成果か。
 けれど件の女子高生は、すでに背を向けて歩き出している。僕は先輩に愛想笑いと会釈をして、慌てて彼女のあとを追った。


スタンプを贈って作者を応援しよう!

次のエピソードへ進む 第8話 延滞者は誰?


みんなのリアクション



おすすめ作品を読み込み中です…



「変って、なにが?」
「ブックスタンド」
 泉さんは短く答える。なにか考えているのか、僕の疑問に丁寧に答えてはくれなかった。おかげで自分で考えるしかない。
 ブックスタンド? どういう意味か。改めて僕と間宮先輩はスマホを覗きこむ。
 ブックスタンドは木製で、本を立てかけるタイプのものだ。いかにも安物で、重たい本だったら壊れてしまいそうな簡単な作りをしている。
「…………あ」
 しばらく写真を眺めて、ようやく泉さんの言葉の意味に気づく。
 ブックスタンドの数がおかしい。床に散らばっている本の数は十二。けれど、ブックスタンドは十三個ある。
「ほんとね……」
 間宮先輩も、驚きながら改めて数を数え直している。
「展示コーナーの本の数は、もともとはいくつですか?」
「十二であってるはずよ。今回は、季節のおすすめ本ってテーマで図書委員が選んだものだから。それに、並べ直してる時になくなってる本があったとは思わなかったし」
 今回の展示コーナーは、間宮先輩が主導で企画していたものだ。真面目な彼女は熱心にその仕事に取り組んでいた。展示する本はしっかり把握しているだろう。その彼女が違和感に気づかないということは、本が入れ替わったり消えてしまっていることはないはずだ。それに、僕自身の目から見ても散らばっている本は間違いなくすべて展示されていたものだ。
「荒らされているのを見て、写真を撮って、それから片付けをしたんですよね。ブックスタンドが増えていることには気づかなかったんですか?」
 その質問に、間宮先輩は思い返すように斜めに視線をやりながら答える。
「どうかしら……。あの時は気が動転していたから。でも、そうね。何も気にしないで片付け終わったし……気づかなかったんじゃないかしら」
 なるほど。だが妙じゃないか。片付けていて、ブックスタンドが一個余ったら不自然だ。それとも、それは今だから言えることであって、いきなり展示コーナーが荒らされているのを見た後ではそれどころではなくなってしまうものか。
 と、そんなところで朝のチャイムが鳴った。僕は泉さんと顔を見合わせる。聞きたいことは聞けたかと目で尋ねると、泉さんはこくりと頷いた。
「えっと、話聞かせてくれてありがとうございました。またなにかあったら、よろしくお願いします」
 僕がお礼を言って頭を下げる。泉さんは軽く会釈をしただけだった。
「……ええ。泉さん、だったかしら。お願いね」
 おお。この短時間で、泉さんは間宮先輩から多少の信頼を勝ち取ったらしい。写真の違和感に気づいた成果か。
 けれど件の女子高生は、すでに背を向けて歩き出している。僕は先輩に愛想笑いと会釈をして、慌てて彼女のあとを追った。