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第2話 展示コーナーを荒らしたのは誰?②

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 展示コーナーとは、定期的に図書委員でやる活動のひとつだ。今回は「季節の小説」をテーマに、各図書委員がポップを作って本を並べる。僕も一冊紹介文を書いた。そういえば、今回の展示は間宮先輩が主導で進めていたものだった。

「荒らされてたって、どういうことですか?」

 いや、考えればある程度想像はできるんだけど、その時の僕は思考が止まっていたのだ。

「写真、見てもらったほうが早いか」

 そう言って君島先輩は自分のスマホを取り出すと、僕に見せる。そこには、展示コーナーのために用意された本やブックスタンドが床に散乱している光景が写っていた。

「うわあ……」

 僕は唖然として声を漏らす。いったいなぜ、こんなことに……。

「私たちが朝図書室に入ったら、こんなことになってたわけ」

 間宮先輩が睨みながら言う。なるほど、先輩がぷりぷり怒っている理由がわかってきた。先輩は我が強く自分の企画にも自信を持っている。それがこんな風にめちゃくちゃにされれば、苛立つのも無理はない。

「改めて確認するけど、あなたたちが最後に鍵を閉めたときは、こんなことにはなってなかったのよね」
「え、ええ。はい、もちろん」

 僕は昨日のことを思い返しながら、こくこくと頷く。放課後の当番となった図書委員は、閉館の時間になると鍵を閉める。その前に、館内を見回りし、残っている人や本が置きっぱなしになっていないかを確認するのも仕事だ。それが終わると、鍵を職員室へと返しに行くことになっている。

 昨日、僕と一ノ瀬先輩が最後に図書室の中を見て回った時、展示コーナーは写真のような惨状にはなっていなかったはずだ。

 けれどそれならおかしなことになる。鍵を閉めたが最後、誰も図書室の中には立ち入れない。鍵は職員室に返す。鍵を手に入れるには、先生の許可がいるはずだ。誰でも入手できるものではない。それなのに、朝になったら荒らされていたというのは妙なことだ。

「あの、鍵ってちゃんとかかってましたか?」
「ああ、それなら大丈夫。俺が朝、鍵を開けた時、きちんとしまってるのは確認してる」

 不安になって思わず問いかけたが、君島先輩が優しく微笑む。安心するが、同時にますますおかしなことになっているのに気づく。鍵がかかっていたなら、誰にも荒らすことなど不可能ではないか?

 まさか、図書室の中に誰かが残っていたのだろうか? いや、それはないだろう。図書室は広々としていて、隠れられるようなスペースは少ない。僕と一ノ瀬先輩、ふたりで見回りもしてるのだ。誰かが残っていたならさすがに気づく。それに、仮に誰かが残っていたとしても、わざわざそこまでして展示コーナーを荒らす意味もわからない。

「……まあ、いいわ。とりあえず、あなたの言っていることは信じます」

 間宮先輩が、言葉とは裏腹にあまり信じてない様子で言った。まあそうだろう。僕と君島先輩の言葉がどちらも正しいなら、絶対に不可能な事態が起きているわけなのだから。

「とにかく、こんなことになったのはどう考えたって理由があるはずよ。絶対犯人を捕まえてやるんだから!」

 間宮先輩は鼻を鳴らして息巻く。その脇で、君島先輩は苦笑を浮かべていた。

「……まあ、そういうわけだから。雛子も何かわかったら教えてくれよな」

 ふたりはそう言って、一年生のフロアから去っていった。残された僕は手を振り彼らを見送りながら考える。いったいなぜ、こんな奇妙なことが起こってしまったのか。


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 展示コーナーとは、定期的に図書委員でやる活動のひとつだ。今回は「季節の小説」をテーマに、各図書委員がポップを作って本を並べる。僕も一冊紹介文を書いた。そういえば、今回の展示は間宮先輩が主導で進めていたものだった。
「荒らされてたって、どういうことですか?」
 いや、考えればある程度想像はできるんだけど、その時の僕は思考が止まっていたのだ。
「写真、見てもらったほうが早いか」
 そう言って君島先輩は自分のスマホを取り出すと、僕に見せる。そこには、展示コーナーのために用意された本やブックスタンドが床に散乱している光景が写っていた。
「うわあ……」
 僕は唖然として声を漏らす。いったいなぜ、こんなことに……。
「私たちが朝図書室に入ったら、こんなことになってたわけ」
 間宮先輩が睨みながら言う。なるほど、先輩がぷりぷり怒っている理由がわかってきた。先輩は我が強く自分の企画にも自信を持っている。それがこんな風にめちゃくちゃにされれば、苛立つのも無理はない。
「改めて確認するけど、あなたたちが最後に鍵を閉めたときは、こんなことにはなってなかったのよね」
「え、ええ。はい、もちろん」
 僕は昨日のことを思い返しながら、こくこくと頷く。放課後の当番となった図書委員は、閉館の時間になると鍵を閉める。その前に、館内を見回りし、残っている人や本が置きっぱなしになっていないかを確認するのも仕事だ。それが終わると、鍵を職員室へと返しに行くことになっている。
 昨日、僕と一ノ瀬先輩が最後に図書室の中を見て回った時、展示コーナーは写真のような惨状にはなっていなかったはずだ。
 けれどそれならおかしなことになる。鍵を閉めたが最後、誰も図書室の中には立ち入れない。鍵は職員室に返す。鍵を手に入れるには、先生の許可がいるはずだ。誰でも入手できるものではない。それなのに、朝になったら荒らされていたというのは妙なことだ。
「あの、鍵ってちゃんとかかってましたか?」
「ああ、それなら大丈夫。俺が朝、鍵を開けた時、きちんとしまってるのは確認してる」
 不安になって思わず問いかけたが、君島先輩が優しく微笑む。安心するが、同時にますますおかしなことになっているのに気づく。鍵がかかっていたなら、誰にも荒らすことなど不可能ではないか?
 まさか、図書室の中に誰かが残っていたのだろうか? いや、それはないだろう。図書室は広々としていて、隠れられるようなスペースは少ない。僕と一ノ瀬先輩、ふたりで見回りもしてるのだ。誰かが残っていたならさすがに気づく。それに、仮に誰かが残っていたとしても、わざわざそこまでして展示コーナーを荒らす意味もわからない。
「……まあ、いいわ。とりあえず、あなたの言っていることは信じます」
 間宮先輩が、言葉とは裏腹にあまり信じてない様子で言った。まあそうだろう。僕と君島先輩の言葉がどちらも正しいなら、絶対に不可能な事態が起きているわけなのだから。
「とにかく、こんなことになったのはどう考えたって理由があるはずよ。絶対犯人を捕まえてやるんだから!」
 間宮先輩は鼻を鳴らして息巻く。その脇で、君島先輩は苦笑を浮かべていた。
「……まあ、そういうわけだから。雛子も何かわかったら教えてくれよな」
 ふたりはそう言って、一年生のフロアから去っていった。残された僕は手を振り彼らを見送りながら考える。いったいなぜ、こんな奇妙なことが起こってしまったのか。